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第一章 理不尽の塊

Ep.1 売却

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痛みはなかった。
ただ、何かが無くなったような気がした。
それは頭か、それとも体の他の部分か、それとも魂か何かか。元々持っていたものが、すっぽりと穴が空いてしまったように、無くなってしまった。

ーーそして目を覚ますと、見知らぬ天井があった。

ここはどこなのか。俺は死んだのでは無いのか。
もし学校から飛び降りて、それで死なずに病院に搬送されたとしたら、なんと間抜けなことだろうか。家族やクラスメイトにも、どのような顔をして会えばいいのか分からない。

少し辺りを見渡してみる。
何だか視野が狭いような気がするのは気のせいだろうか。
病院ーーには見えない。
建物は木造建築のように見えるし、何か大きな機械があるようにも見えない。
病院に運ばれない程度の怪我だったーーという訳でもないと思うが。

誰かいるのか。声を出そうとしたが、上手く声が出ない。
「うー。あー。」
もしかして、喉がおかしくなってしまったのか。
「うーうー。おあー。」
声を出し続けていると、男と女の声が聞こえてきた。

「うるさいわね!静かに出来ないのかしら!」
「こら、下手に刺激して力が暴発したらどうする!」
「そ、そうね。それでも静かにしなさい!」

名前も知らない男女から俺は嫌われているのだろうか。
だとしたら少しショックだ。

俺が人知れずショックを受けているのもつい知らず、男女は話を続けている。

「でもこの子、金になるのよね?」
「ああ。それは間違いないよ。」

金になる?一体何の話をしているのだろうか。
もしかしてーー

俺、売られる?

◇◈◇◈◇◈◇◈◇◈◇

その三日後、俺が目を覚ますと、また知らない天井だった。案の定、売られたのだろう。人身売買か、おっかない。

ただ、3日もすれば何となく今自分がどういう状況に置かれているのかが分かってきた。

まず、鏡を見て驚いた。なぜなら、鏡の向こう側にはこの前までのブスメンメガネはどこへやら、超可愛い赤ちゃんが居たのだ。
つまり、俺は生まれ変わったのだ。
誰だこれー!?うあうー!?
「うるさい!!」
なんて一幕もあったのだが。

そして、ここは日本じゃないらしい。
生まれ変わって外国に転生したのか、それとも地球とはどこか遠い世界に転生したのか、それは分からないが、とにかく生まれ変わったことは確かだろう。

というか、自殺して人って生まれ変わるもんなのか?
普通、不慮の事故で亡くなって気がついたら異世界に、とかのような気がするのだが。

ただ、結局分からないことの方が多かったりする。
例えば、俺を売り飛ばした若い男女二人。俺の生みの親なのか、それとも捨ててあったところを拾ったのか。まあ、もし親だったとしても、まだ一歳にも満たないだろう子供を売り飛ばすんだから親とも呼べないが。

そして1番不可解なのが、どうやら俺が持っているらしい『力』だ。
あの二人は、定期的に俺が力を持っている、なんて話をしていた。ただ、それをいい事と思っているよりは、むしろその力を恐れているように見えたが。
もしかすると、俺にはチート能力があって、異世界でこれから無双する、とかかもしれない。なんていう楽しい妄想をしていたいのは山々なのだがーー

何しろ俺は、学校の屋上から飛び降りて自殺して、
目を覚ますと知らないところで知らない人に生まれ変わっていて、
自分でも分からない力とやらのせいで、
知らない男女に嫌われて売り飛ばされて。
字面だけでみても無茶苦茶すぎる。

俺はこれからどうなるのだろうか。奴隷として働かされるのか、解剖されるのか、人体実験の被験者になるのか。考えただけでゾッとする。

ただ、俺は1度、死を体験した。
そして、それに対して怖い、という感情を抱いてしまっている。
死への恐怖、猛スピードで近づいてくる地面、顔から地面に突っ込む衝撃。
できることなら、もうあんな思いはしたくない。
俺はもう二度と、死にたくはない。

俺はもう一度、生きてみようと思った。
たとえ、どれだけ辛いことがあったとしても。
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