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転移者 滝隆二
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エルビスによって集団召喚された転生者。正確には転移者の一人、滝隆二は焦っていた。
昨日までは戦況はこちらに有利だったはずだ。しかし、早朝に襲来したドラゴンにより、その有利は崩れ去った。しかし、隆二は内心余裕であった。神より授かったチートスキル“雷の加護”これさえあれば余裕で勝てる。その上、そんな反則級のスキルを持つ仲間が20人。これで負ける方がおかしいというものだ。
そして、今朝方到着した500人にも及ぶ死者の軍勢。弱小民族を相手にするのに過剰な戦力だとは思うが、相手は卑怯で下劣な民族。一人でも残せばまた争いの種になると、そんな邪悪な民族の住むこの森も更地にせねば平和は訪れないと、この世界に召喚されたときにエリスガル伯爵の隣にいた黒いローブを着た男がいっていた。
召還時、この街の説明をされた折にいやと言うほど見てきたこの街の悲惨な状況。
ようやく邪悪な民族に抵抗する手段が出来たのだと、エリスガル伯爵は泣いて喜んでいた。
男なら誰しも夢見る力を手に入れ、弱き者を助け、邪悪な存在に立ち向かうというシチュエーション。
だと言うのに。
「ガルルアアアア!!」
「ええい!」
だがこの状況はどうだ。邪悪な民族どころか俺は狼にすら苦戦している。
チートスキルで得た雷の速さを持ってしても、この狼は余裕でこの速さに付いてくる。先程までジリ貧だった様子は何処へやら、こちらの攻撃を見切って、じわじわと追い詰めてくる。
「くそっ!」
隆二は思わず舌打ちをした。こんなはずじゃない。俺の力は神から与えられた最強の雷のスキルなんだ。
炎を纏う狼は隆二にさらに追撃を仕掛ける。隆二は寸での所で避けると一気に空中まで離脱する。
「これでも・・・喰らえ!」
隆二は空中から一気に加速し、炎を纏う狼へと突進する。その姿はまさに天から降り注ぐ雷そのもの。対する狼は動く気配すらない。
そして、炎と雷がぶつかる。
「なにっ?!ぐあぁぁ!!」
隆二にはいつまで経っても狼とぶつかった衝撃波こなかった。代わりに、背中が燃えるような痛みに襲われた。
なんと、目の前の狼は隆二の攻撃を紙一重のところで躱し、すぐさまカウンターとして炎を放ったのである。
隆二の持っている能力はこの世界ではかなり上位の力を持つ物ではあったが、戦いにおける駆け引きは天で素人だったため、直線的な攻撃はかわされ、反撃を許してしまった。
「グルルルルル・・・」
「く・・・くそぉ・・・」
狼が威嚇しながらこちらに来る。しかし隆二は立ち上がることが出来ない。
なんと過去の窮地を脱する方法が無いかと辺りを見渡す。そのとき、隆二の視界の端にある物が映った。
それは、茂みの影にいた女。その周りには目の前にいる狼よりも一回り小さな黒い狼。
そうか、コイツか。コイツがこの狼を。
隆二の口元が醜く歪んだ。
昨日までは戦況はこちらに有利だったはずだ。しかし、早朝に襲来したドラゴンにより、その有利は崩れ去った。しかし、隆二は内心余裕であった。神より授かったチートスキル“雷の加護”これさえあれば余裕で勝てる。その上、そんな反則級のスキルを持つ仲間が20人。これで負ける方がおかしいというものだ。
そして、今朝方到着した500人にも及ぶ死者の軍勢。弱小民族を相手にするのに過剰な戦力だとは思うが、相手は卑怯で下劣な民族。一人でも残せばまた争いの種になると、そんな邪悪な民族の住むこの森も更地にせねば平和は訪れないと、この世界に召喚されたときにエリスガル伯爵の隣にいた黒いローブを着た男がいっていた。
召還時、この街の説明をされた折にいやと言うほど見てきたこの街の悲惨な状況。
ようやく邪悪な民族に抵抗する手段が出来たのだと、エリスガル伯爵は泣いて喜んでいた。
男なら誰しも夢見る力を手に入れ、弱き者を助け、邪悪な存在に立ち向かうというシチュエーション。
だと言うのに。
「ガルルアアアア!!」
「ええい!」
だがこの状況はどうだ。邪悪な民族どころか俺は狼にすら苦戦している。
チートスキルで得た雷の速さを持ってしても、この狼は余裕でこの速さに付いてくる。先程までジリ貧だった様子は何処へやら、こちらの攻撃を見切って、じわじわと追い詰めてくる。
「くそっ!」
隆二は思わず舌打ちをした。こんなはずじゃない。俺の力は神から与えられた最強の雷のスキルなんだ。
炎を纏う狼は隆二にさらに追撃を仕掛ける。隆二は寸での所で避けると一気に空中まで離脱する。
「これでも・・・喰らえ!」
隆二は空中から一気に加速し、炎を纏う狼へと突進する。その姿はまさに天から降り注ぐ雷そのもの。対する狼は動く気配すらない。
そして、炎と雷がぶつかる。
「なにっ?!ぐあぁぁ!!」
隆二にはいつまで経っても狼とぶつかった衝撃波こなかった。代わりに、背中が燃えるような痛みに襲われた。
なんと、目の前の狼は隆二の攻撃を紙一重のところで躱し、すぐさまカウンターとして炎を放ったのである。
隆二の持っている能力はこの世界ではかなり上位の力を持つ物ではあったが、戦いにおける駆け引きは天で素人だったため、直線的な攻撃はかわされ、反撃を許してしまった。
「グルルルルル・・・」
「く・・・くそぉ・・・」
狼が威嚇しながらこちらに来る。しかし隆二は立ち上がることが出来ない。
なんと過去の窮地を脱する方法が無いかと辺りを見渡す。そのとき、隆二の視界の端にある物が映った。
それは、茂みの影にいた女。その周りには目の前にいる狼よりも一回り小さな黒い狼。
そうか、コイツか。コイツがこの狼を。
隆二の口元が醜く歪んだ。
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