不遇ステータス《魅力》に極降りした結果、《姫》になりました

俊郎

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35 縁の下のアイテム持ち!

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 アズをメンバーに紹介し終わった後、素材を集める為の狩りへ出掛けることになった。
 少しでも効率を上げる為に、二手に分かれての行動だ。

 俺とサンゾウとでペア。
 残り皆でパーティー狩り。

 火力とか回復のバランスを考えてこうなった。
 効率的にこっちが落ちるだろうから、少し集めてる上に集めやすい≪強靭な闘志≫の素材の担当にしてある。

 俺達がやって来たのは、南の森。
 今回の目的は経験値よりも素材だ。
 それなら単純に数の多くて弱いこっちの方が効率が良い。
 ソロじゃなければ素材集めも作業感が無くて良いね。

「ござっ! ござそうろう! ござそうろう!」

「流石サンゾウさんですね」

「はは、この辺りの敵はもう敵ではないでござるな」

 レベルも以前より上がっているし、武器を更新したお陰か、熊以外は一撃で落ちる。
 熊も数回切り付けたら倒せているから誤差でしかない。

 これ、俺がいない方が効率はいいのかもしれない。
 俺を置いて行かないように歩くペースを合わせてくれてるみたいだし。
 スタミナの存在しないこのゲームでは、ひたすら走り続けられる。

 サンゾウの最高速度で走り続けられたら、俺には絶対追いつけない。
 ≪敏捷≫なんて1しかないからな!

「サンゾウさん強いですね!」

「はっはっは、いやー、照れるでござる!」

 照れ臭そうに笑うサンゾウは、背後から飛びかかってきたキッキーに対して、宙返りして交差した。
 その瞬間に短剣を叩き込んだようで、キッキーは哀れにも空中で力尽きてドロップアイテムと共に落ちてきた。
 なんてアクロバティックな。

 とまぁ、いくら効率が良かろうが、ソロは作業になりがちだ。
 強敵やギリギリの相手ならともかく、素材集めなんかは特に。
 それならペアの方が絶対に楽しい。
 効率よりも楽しさだ。
 少なくとも、俺はそう思う。

 ソロで素材集めは三十分が限界だな。
 それ以上するくらいなら、トラストルにちやほやされながら後をついて歩いた方がまだマシだ。

 一時間のペア狩りを終えた後、一旦たまり場へ戻ってきた。
 しばらく駄弁りながら待っていると、別行動していた全員がぞろっと集合した。

「皆さんおかえりなさい」

「おかえりでござる」

「ただいま」

「ただ今戻りましたお姉様!」

「戻りましたよ」

「おう、姫さん達早ぇな! ただいま!」

「ただいまー!」

 皆ごきげんだ。
 早速とばかりに成果を話し合う。

 俺達の方は、サンゾウの活躍でノルマの五百個を達成した。
 夕方に集めた分も合わせてのことだから、やはり先に集めておいて正解だった。
 途中から狩場に人が増えて効率が落ちたんだよな。

「私達の方は、後二百個くらいですね。もう一回行けば今度は三十分くらいで集まると思います!」

「そうだね。僕達は二層に行かないといけなかったから、その分かな。効率自体は良かったよ」

「ですね。僕の筋肉も活躍しましたし」

「オレの筋肉もな! ただそれなりに痛かったから新しい盾が欲しいぜ!」

 リリィ達が担当した≪強剛なる有志≫の素材は、≪魚介系モンスターの素材×500≫。
 一層には該当するモンスターが居なかった為、二層へ向かったようだ。
 
 二層に行く為には、一層ダンジョンの奥にいるボスを倒す必要がある。
 一度倒してしまえば、ストーレの街から転送で運んでもらえる。
 俺達は既に倒したが、ゲームを始めたばかりのアズは当然まだだった。

 その為、ダンジョンの奥まで行ってボスを倒すところからスタートしたそうだ。
 それは時間がかかってしまっても仕方がない。

「あの、アズのせいで、ごめんなさい!」

「いえいえ、必要なことだったんですから、気にしなくて大丈夫ですよ。ねぇ、リリィさん」

「はいお姉様。アズちゃん、お姉様の言う通り気にしなくても大丈夫。アズちゃんがいてくれたお陰で所持重量を気にせずに狩りが出来たんだから、助かっちゃったわ」

「そうだな。俺達の中じゃダイナくらいしかろくに持てねぇし」

「そうですね。その僕も武器や防具の重量でかなり食われてしまいますから」

 何か今もずく兄弟みたいだったな。
 それは気にしないでおこう。

 このゲームでは、アイテムごとに重さが設定されていて、持てる重さに限界がある。
 その限界は種族やクラスによっても微妙に変わるが、一番影響が大きいのは≪筋力≫の数値だ。

 だからダイナ以外筋力に振っていない俺達では、そんなに沢山のアイテムは持てない。
 所持重量の限界の五割を超えると、HPとMPの自然回復が止まる。
 七割を超えるとあらゆる速度が一定の割合低下する。
 九割を超えると、もう攻撃もスキルの使用も出来なくなってしまう、というわけだ。

「アズ、役に立てた?」

「はい、もう大活躍だったみたいですよ」

「やった!」

 アズは、≪カート≫と呼ばれる荷車のようなものを引いている。
 これは本人のステータスとは関係なく一定の重量までアイテムを収納できる、追加ストレージ
だ。
 このカートだけで、≪筋力≫に振っていない人の十倍近くアイテムが入るらしい。
 しかも限界まで詰め込んでも、ペナルティは一切ない。

 聞いてるだけで便利だ。
 ドロップアイテムを拾う為には、優先度の低いアイテムはNPCの倉庫サービスに預けておかないといけない。
 が、カートがあればかなり余裕がある。
 備えとしてのアイテムを豊富に用意しておけるわけで、いざという時にも対応がしやすい。

 俺が持ってたら確実にごちゃっとするが、とにもかくにも超便利だ。
 戦闘に参加出来なくても、立派な役割と言えるだろう。

「それじゃあ少し休憩してから、もう一回、今度は全員で行きましょうか」

 俺の提案に、皆の了承の声が返って来た。

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