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二学期 四章 生徒会選挙
019 哲学のラビリンスで迷子になるロリ
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自動販売機前のベンチに腰かける俺と氷菓。
少し困惑しながらも、氷菓はぽつぽつと、自分の理想を、志を、マニュフェストを語り始めた。
「この間……吹雪さまから、自分らしい生徒会長を目指せばいいって言われて、ずっと考えてたの――そもそも自分らしさって何だろうって。」
自分らしさ――って何だ。
問うだけ時間を空費する無駄な問い。
それとも人生を有意義にする価値ある問いだろうか。
人間は多面的なペルソナを持ち、一人でいる時、家族といる時、友達といる時で異なる側面を持つ。それらを一概に同じ自分だとは言えないし、ましてや自分の認識する自分と、他者から見た自分が同じとは限らない。
一体どの自分をもって自分らしさと言うべきだろうか。
そんな答えのないものを、自問自答することに意味はない――と以前の自分なら切り捨てていた。しかし、将来を見据えるためにも、俺も最近は似たようなことを時折考えている。
氷菓は自分らしさについて、彼女なりの考察を続けた。
「見た目、性格、話し方、考え方、経験、好悪、色々と考えてみたんだけど、よくわからない。私は何者なの? 何のために生きてるの? 人生ってなに? とまぁ……あれからしばらくは、哲学のラビリンスで迷子だったの。」
迷子――という言葉がこれほど似合うJKは彼女くらいだろう。自分らしさを『個性』だと見るなら、氷菓はガチレズロリなJKというかなり唯一無二の個性の塊である。
しかし、今は茶化すべき空気でない。話の腰を折らずに進めてもらうとしよう。
「それでもね、諦めずに考え続けて思ったのが――自分らしさを突き詰めることって、夢を見つけるのとニアリーイコールじゃないかなって思ってさ。」
「自分らしさが……、夢を見つけることか」
「うん。あくまで私の考えだけどね。」
「いや、異論はない。」
ただし、夢を見つけることが、自分らしさであるという結論には至るには、夢という定義がふわっとしている。
「夢って一言にいってもさ、どんな仕事に就きたいとか、どんな人と結ばれたいとか、どんな事を成し遂げたいとか、色々あると思うんだけど。」
俺の問いに、氷菓はすぐに答えた。
「そうだね。特に仕事ってところの夢だと定義してもらえるといいかな。」
客観的に聞きながら、俺は彼女の話を整理する。
「なるほど、仕事の夢が自分らしさと大きく重なっている――と氷菓は考えた。そこまではOKだ。それで肝心の、お前の生徒会長としての志とどう繋がってくるんだ?」
氷菓は「遠回りの説明になってごめんね。」と、本題への説明を始めた。
「ここで本題に繋がるのだけど……私の夢は何かって考えた時に、人の夢を応援する仕事に就きたいって気持ちが大きかったの。まだそれが具体的に何の職業かは考え中なんだけどね。」
人の夢を応援する――副会長として姉貴を支え、多くの生徒から慕われる氷菓らしいと俺は思った。
「だから、私が生徒会長になって実現したいことも同じなの。この学校の生徒たちの夢を応援していけたらなって思ってる。夢を見つけられていない生徒には夢を見つけるための支援、もう見つけた人には夢を実現させる支援……それをしていきたい。」
夢を見つける、実現するそのための支援。夢はなくても生きられるが、あれば人生は豊かになる。夢を持つことが幸せかどうかはともかく、人生の密度はきっと濃くなる。
「うん、なかなかいいな。いまいち夢がはっきりしていない俺みたいな生徒には有り難い話だ。……ただ、もっと具体的な取り組みの提示はできるのか?」
「より具体的には、希望者に対してキャリアアドバイザーとの面談、様々な職種の職場見学の実施、各界で活躍している卒業生を呼んで講演会の実施、資格取得のための支援……その辺を考えているのだけど。」
「結構しっかり考えているな。まぁ生徒会の権力でどこまで実現できるかは不明だが。」
「うちは生徒主体の進学校だからね。生徒会そのものの権力は大きいし、将来社会で活躍する人材育成のための活動なら、学校側も嫌な顔はしないと思う。」
「よくわかったよ。それで後はプロパガンダムとやらを考えればいいんだな。」
「……プロパガンダね。」
隣に座る氷菓は、呆れた目で俺を見上げた。
宣伝なら、短くて覚えやすいキャッチフレーズがあればいいな。標語みたいな感じか?
「そうだな……。おっ、これとかどうだ?」
“若き夢――見つけ叶える――生徒会”
「五七五調で、いいキャッチコピーだろ。これをあちこち貼る。」
「……むずがゆいなぁ。なんか素人の俳句公募にありそうな、恥ずかしくなるキャッチコピーだね。」
「おい、考えた奴を前にしてそんな事いうな。」
なぜせっかく考えてやったのに、辱めを受けなければならないのだ。
「っじゃあもっとシンプルに、『みんなの夢を応援する生徒会』とか」
「普通すぎるかな。」
全く、注文が多いガチレズロリだ。
「っじゃあ氷菓の写真に、『あなたの夢を叶える請負人』って言葉を添えて学校中に貼り出そう。」
「……いやよ、恥ずかしい。」
文句しか言わねぇ。
「まぁ普通にやってれば、お前が生徒会長になるだろう。しっかり全校生徒前での演説スピーチで、自分の想いを伝えれるように考えとけばいいさ。」
「うーん……。まぁそうかもだけど……。」
しかし、翌週から始まった生徒会選挙は、とある立候補者の登場によって大きな波乱が巻き起こることになった。
少し困惑しながらも、氷菓はぽつぽつと、自分の理想を、志を、マニュフェストを語り始めた。
「この間……吹雪さまから、自分らしい生徒会長を目指せばいいって言われて、ずっと考えてたの――そもそも自分らしさって何だろうって。」
自分らしさ――って何だ。
問うだけ時間を空費する無駄な問い。
それとも人生を有意義にする価値ある問いだろうか。
人間は多面的なペルソナを持ち、一人でいる時、家族といる時、友達といる時で異なる側面を持つ。それらを一概に同じ自分だとは言えないし、ましてや自分の認識する自分と、他者から見た自分が同じとは限らない。
一体どの自分をもって自分らしさと言うべきだろうか。
そんな答えのないものを、自問自答することに意味はない――と以前の自分なら切り捨てていた。しかし、将来を見据えるためにも、俺も最近は似たようなことを時折考えている。
氷菓は自分らしさについて、彼女なりの考察を続けた。
「見た目、性格、話し方、考え方、経験、好悪、色々と考えてみたんだけど、よくわからない。私は何者なの? 何のために生きてるの? 人生ってなに? とまぁ……あれからしばらくは、哲学のラビリンスで迷子だったの。」
迷子――という言葉がこれほど似合うJKは彼女くらいだろう。自分らしさを『個性』だと見るなら、氷菓はガチレズロリなJKというかなり唯一無二の個性の塊である。
しかし、今は茶化すべき空気でない。話の腰を折らずに進めてもらうとしよう。
「それでもね、諦めずに考え続けて思ったのが――自分らしさを突き詰めることって、夢を見つけるのとニアリーイコールじゃないかなって思ってさ。」
「自分らしさが……、夢を見つけることか」
「うん。あくまで私の考えだけどね。」
「いや、異論はない。」
ただし、夢を見つけることが、自分らしさであるという結論には至るには、夢という定義がふわっとしている。
「夢って一言にいってもさ、どんな仕事に就きたいとか、どんな人と結ばれたいとか、どんな事を成し遂げたいとか、色々あると思うんだけど。」
俺の問いに、氷菓はすぐに答えた。
「そうだね。特に仕事ってところの夢だと定義してもらえるといいかな。」
客観的に聞きながら、俺は彼女の話を整理する。
「なるほど、仕事の夢が自分らしさと大きく重なっている――と氷菓は考えた。そこまではOKだ。それで肝心の、お前の生徒会長としての志とどう繋がってくるんだ?」
氷菓は「遠回りの説明になってごめんね。」と、本題への説明を始めた。
「ここで本題に繋がるのだけど……私の夢は何かって考えた時に、人の夢を応援する仕事に就きたいって気持ちが大きかったの。まだそれが具体的に何の職業かは考え中なんだけどね。」
人の夢を応援する――副会長として姉貴を支え、多くの生徒から慕われる氷菓らしいと俺は思った。
「だから、私が生徒会長になって実現したいことも同じなの。この学校の生徒たちの夢を応援していけたらなって思ってる。夢を見つけられていない生徒には夢を見つけるための支援、もう見つけた人には夢を実現させる支援……それをしていきたい。」
夢を見つける、実現するそのための支援。夢はなくても生きられるが、あれば人生は豊かになる。夢を持つことが幸せかどうかはともかく、人生の密度はきっと濃くなる。
「うん、なかなかいいな。いまいち夢がはっきりしていない俺みたいな生徒には有り難い話だ。……ただ、もっと具体的な取り組みの提示はできるのか?」
「より具体的には、希望者に対してキャリアアドバイザーとの面談、様々な職種の職場見学の実施、各界で活躍している卒業生を呼んで講演会の実施、資格取得のための支援……その辺を考えているのだけど。」
「結構しっかり考えているな。まぁ生徒会の権力でどこまで実現できるかは不明だが。」
「うちは生徒主体の進学校だからね。生徒会そのものの権力は大きいし、将来社会で活躍する人材育成のための活動なら、学校側も嫌な顔はしないと思う。」
「よくわかったよ。それで後はプロパガンダムとやらを考えればいいんだな。」
「……プロパガンダね。」
隣に座る氷菓は、呆れた目で俺を見上げた。
宣伝なら、短くて覚えやすいキャッチフレーズがあればいいな。標語みたいな感じか?
「そうだな……。おっ、これとかどうだ?」
“若き夢――見つけ叶える――生徒会”
「五七五調で、いいキャッチコピーだろ。これをあちこち貼る。」
「……むずがゆいなぁ。なんか素人の俳句公募にありそうな、恥ずかしくなるキャッチコピーだね。」
「おい、考えた奴を前にしてそんな事いうな。」
なぜせっかく考えてやったのに、辱めを受けなければならないのだ。
「っじゃあもっとシンプルに、『みんなの夢を応援する生徒会』とか」
「普通すぎるかな。」
全く、注文が多いガチレズロリだ。
「っじゃあ氷菓の写真に、『あなたの夢を叶える請負人』って言葉を添えて学校中に貼り出そう。」
「……いやよ、恥ずかしい。」
文句しか言わねぇ。
「まぁ普通にやってれば、お前が生徒会長になるだろう。しっかり全校生徒前での演説スピーチで、自分の想いを伝えれるように考えとけばいいさ。」
「うーん……。まぁそうかもだけど……。」
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