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二学期 六章 文化祭
031 シスコンとロリコンとバブルティ
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ちろると別れた後、文化祭で盛り上がる一年フロアの様子を概ね写真におさめた俺は、階段を上がって二年フロアへと向かった。
「おぉ! 青葉じゃないか!」
声の主は、同じサッカー部の”デイフェンスに定評のある男”こと池上であった。
池上は赤いベレー帽のようなものを被っている、何だかオシャレなカフェ店員みたいな恰好だ。
「何してんの……?」
池上は「ふっふっふ……」と不敵な笑みを浮かべながら答えた。
「我がクラスは、女子に大人気! バブルティーの店を出してるんだよ。」
「バブルティー? 何だそれ?」
「何だ、そんなものも知らないのか。タピオカの入った飲料の別称だよ。」
「タピオカねぇ……。」
正直、全然興味がない。
ス〇バですら、なんちゃらフラペチーノとかを敬遠して、普通のコーヒーしか頼まない奴が興味を示すわけもない。
廊下の窓から覗くと、同じくサッカー部の剛田の姿が見えた。ごつい身体にオシャレなカフェ店員の恰好がなんともミスマッチである。
「剛田も頑張ってるな……。おぉっ!? 何か他にも見知ったやつがいるんだけど……。」
丸いテーブルに座っているのは、朗らかなに笑う天真爛漫そうな少女と、どこか気弱そうな黒髪の少女である。見知ったも何も、片方は我が妹の風花であり、もう片方はその友達の絵梨ちゃんであった。
教室に足を踏み入れると、風花よりも先に絵梨ちゃんが俺の姿に気が付いた。
「あっ……お兄さん……。」
「えっ? お兄ちゃん?」
絵梨ちゃんの言葉に、対面で座っていた風花もこちらに振り返った。
「おぉ! エンカするとは奇遇だねぇ。お兄ちゃん! かまちょ、かまちょ!」
エンカ……エンカウントするって意味か。風花のやつも、文化祭だからか知らんが、何だかテンション高そうだ。
「何してんの?」
「何って……タピってるのだよ。なかなかエモいお店多いくてよきよき。来年からJKブランドの仲間入りすると思うと、今からアゲミざわだね~。」
「絵梨ちゃん、ごめん通訳して」
「えっ……と……、タピオカを……飲んでるんだよ。なかなか……情緒的なお店が多くていいね……。来年から……女子高生になれると思うと……、テンションあがるね……。」
「なるほど、ありがとう。」
「お兄ちゃんも一緒にタピる?」
風花は飲みかけのタピオカミルクティーを、くるくる回しながらそう言った。
「いや、俺はタピオカ好きじゃないからいいわ。」
見た目も食感も、カエルの卵みたいで気持ち悪い――とは、さすがに彼女たちの前では言わなかった。
その時、バブルティーを運営する教室に、見知った丸眼鏡の男がいることに気が付いた。
次期副会長である伊達丸尾である。彼もまた、バブルティーの衣装に身を包んでおり、すたすたとこちらに一直線で歩いてくる。
「おぉ、青葉くん。記録写真の方は順調かね?」
「今まさに撮影して回っているよ。ってか丸尾って、剛田や池上と同じクラスだったんだな。」
「そうだ。ちなみに、女性人気を得るためにこの妙案を出したのは私だ。」
「なるほど……。今年一番どうでもいい情報だな。」
丸尾は俺と話しつつも、先ほどからちらちらと風花と絵梨ちゃんを横目で見ている。
「と、ところで……、そちらのお嬢さん方は……青葉くんの知り合いかね?」
「こんにちは~。兄がいつもお世話になってまーす。こっちは私の友達のえりりんです。」
丸尾の視線に気が付いた風花が、いかにも社交辞令的な挨拶をした。絵梨ちゃんもまた、ぺこっと頭を下げて丸尾にあいさつした。
「……可愛い。」
丸尾がぼそっと言ったのを俺は聞き逃さなかった。風花と絵梨ちゃんが可愛いのは事実だが、全くこのロリコン野郎は。
「おい、ロリコン眼鏡。妹たちにちょっかい出したら、俺とバックベアード様がただじゃすませねぇぞ。」
「だっ、だれがロリコン眼鏡だ! 失敬な! こんな可愛い妹がいるなんて聞いてないぞ!」
「何でお前に言わなきゃいけねぇんだよ。」
風花は俺と丸尾のやり取りを見て、下をぺろっと出してにやついた。これは何か悪戯を思いついた時の顔つきである。
風花はいきなり俺の腕をとり、こつんと頭を寄せながら言う。
「お兄ちゃんはやっぱり、今日もかっこいいなぁ~! お兄ちゃん大好きっ!」
そう言って風花は、ぎゅっと俺に抱き着いた。シスコンの俺としては、非常に幸せな僥倖時間であったが、一応は公の場なので「こらこら」と風花を引き離そうとする。
「…………憎い。」
「はぁ?」
低く唸るような声に目をやると、伊達丸尾は両目から血の涙を流しながら直立していた。
「憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎いっ! こんな世の中不公平だっー!」
丸尾は大声でわめきながら、教室を駆けだしていった。
「あはは! 高校って面白い人がいるね~! 高校入学が楽しみだね、えりりん!」
風花はころころ笑いながら、絵梨ちゃんに言った。
しかし絵梨ちゃんは、「ちょっと……あの人……怖いかも……。」と言ってドン引きしていた。
「おぉ! 青葉じゃないか!」
声の主は、同じサッカー部の”デイフェンスに定評のある男”こと池上であった。
池上は赤いベレー帽のようなものを被っている、何だかオシャレなカフェ店員みたいな恰好だ。
「何してんの……?」
池上は「ふっふっふ……」と不敵な笑みを浮かべながら答えた。
「我がクラスは、女子に大人気! バブルティーの店を出してるんだよ。」
「バブルティー? 何だそれ?」
「何だ、そんなものも知らないのか。タピオカの入った飲料の別称だよ。」
「タピオカねぇ……。」
正直、全然興味がない。
ス〇バですら、なんちゃらフラペチーノとかを敬遠して、普通のコーヒーしか頼まない奴が興味を示すわけもない。
廊下の窓から覗くと、同じくサッカー部の剛田の姿が見えた。ごつい身体にオシャレなカフェ店員の恰好がなんともミスマッチである。
「剛田も頑張ってるな……。おぉっ!? 何か他にも見知ったやつがいるんだけど……。」
丸いテーブルに座っているのは、朗らかなに笑う天真爛漫そうな少女と、どこか気弱そうな黒髪の少女である。見知ったも何も、片方は我が妹の風花であり、もう片方はその友達の絵梨ちゃんであった。
教室に足を踏み入れると、風花よりも先に絵梨ちゃんが俺の姿に気が付いた。
「あっ……お兄さん……。」
「えっ? お兄ちゃん?」
絵梨ちゃんの言葉に、対面で座っていた風花もこちらに振り返った。
「おぉ! エンカするとは奇遇だねぇ。お兄ちゃん! かまちょ、かまちょ!」
エンカ……エンカウントするって意味か。風花のやつも、文化祭だからか知らんが、何だかテンション高そうだ。
「何してんの?」
「何って……タピってるのだよ。なかなかエモいお店多いくてよきよき。来年からJKブランドの仲間入りすると思うと、今からアゲミざわだね~。」
「絵梨ちゃん、ごめん通訳して」
「えっ……と……、タピオカを……飲んでるんだよ。なかなか……情緒的なお店が多くていいね……。来年から……女子高生になれると思うと……、テンションあがるね……。」
「なるほど、ありがとう。」
「お兄ちゃんも一緒にタピる?」
風花は飲みかけのタピオカミルクティーを、くるくる回しながらそう言った。
「いや、俺はタピオカ好きじゃないからいいわ。」
見た目も食感も、カエルの卵みたいで気持ち悪い――とは、さすがに彼女たちの前では言わなかった。
その時、バブルティーを運営する教室に、見知った丸眼鏡の男がいることに気が付いた。
次期副会長である伊達丸尾である。彼もまた、バブルティーの衣装に身を包んでおり、すたすたとこちらに一直線で歩いてくる。
「おぉ、青葉くん。記録写真の方は順調かね?」
「今まさに撮影して回っているよ。ってか丸尾って、剛田や池上と同じクラスだったんだな。」
「そうだ。ちなみに、女性人気を得るためにこの妙案を出したのは私だ。」
「なるほど……。今年一番どうでもいい情報だな。」
丸尾は俺と話しつつも、先ほどからちらちらと風花と絵梨ちゃんを横目で見ている。
「と、ところで……、そちらのお嬢さん方は……青葉くんの知り合いかね?」
「こんにちは~。兄がいつもお世話になってまーす。こっちは私の友達のえりりんです。」
丸尾の視線に気が付いた風花が、いかにも社交辞令的な挨拶をした。絵梨ちゃんもまた、ぺこっと頭を下げて丸尾にあいさつした。
「……可愛い。」
丸尾がぼそっと言ったのを俺は聞き逃さなかった。風花と絵梨ちゃんが可愛いのは事実だが、全くこのロリコン野郎は。
「おい、ロリコン眼鏡。妹たちにちょっかい出したら、俺とバックベアード様がただじゃすませねぇぞ。」
「だっ、だれがロリコン眼鏡だ! 失敬な! こんな可愛い妹がいるなんて聞いてないぞ!」
「何でお前に言わなきゃいけねぇんだよ。」
風花は俺と丸尾のやり取りを見て、下をぺろっと出してにやついた。これは何か悪戯を思いついた時の顔つきである。
風花はいきなり俺の腕をとり、こつんと頭を寄せながら言う。
「お兄ちゃんはやっぱり、今日もかっこいいなぁ~! お兄ちゃん大好きっ!」
そう言って風花は、ぎゅっと俺に抱き着いた。シスコンの俺としては、非常に幸せな僥倖時間であったが、一応は公の場なので「こらこら」と風花を引き離そうとする。
「…………憎い。」
「はぁ?」
低く唸るような声に目をやると、伊達丸尾は両目から血の涙を流しながら直立していた。
「憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎いっ! こんな世の中不公平だっー!」
丸尾は大声でわめきながら、教室を駆けだしていった。
「あはは! 高校って面白い人がいるね~! 高校入学が楽しみだね、えりりん!」
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