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二学期 六章 文化祭
033 戦慄迷宮~貞子VS呪怨VSジェ〇ソンVSエイリアンVSチ〇ッキーVSペニーワ〇ズ
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演劇の終演とともに教室内の照明が灯り、照度の急激な変化に目が眩む。
ようやく目が慣れてきた頃、観客席端っこの方に、照明よりも眩い輝きを放つ美少女がいた。
「あっ、神崎さんだ。」
神崎さんは音響御機材のようなものの傍にいたが、俺の姿を見つけると「あっ! 雪くんだ~」と笑顔で駆け寄ってきてくれた。
「演劇観に来てくれたんだね~!」
「うん、まぁ記録の仕事も兼ねてだけど。」
俺はやや照れながら、首にかけているカメラを持ち上げた。神崎さんは「生徒会のお仕事お疲れ様~!」と労いの言葉をかけてくれた。
「神崎さんも、演劇の音響の仕事お疲れさま。」
「うん。でもさっきの公演で休憩に入るから、この後は自由時間なんだ~! あっ、よかったらさ、雪くん一緒にお化け屋敷いかない?」
「えっ、お化け屋敷?」
思いがけないお誘いに対し、俺は戸惑いを示した。
「あっ、でも雪くん……生徒会のお仕事忙しいもんね。」
しゅんと肩を落とす神崎さんを見て、俺はすぐさま答えた。
「いや……、確かお化け屋敷って三年生の出店だったよね? この後丁度三年生のフロアの記録写真を撮りに行くつもりだったから、よければ一緒に行ってもいいかな?」
その言葉に、神崎さんはきらきらと瑞々しい瞳を輝かせた。
「ほんとにっ!? よかった~! みんな誘っても、女同士で行ってもつまらないでしょって断られたのだよ~。」
「そうだったんだ。」
女同士でお化け屋敷も楽しそうだけどな。男同士で行く悲惨さに比べれば、全然いいと思うけど。
「ほら……やっぱり、一人でお化け屋敷いくのは……ちょっと寂しいし///」
神崎さんは少し照れながら言った。そりゃまぁ、一人でお化け屋敷に入るなんて、鋼のメンタルがなければ不可能である。
「神崎さんってお化け屋敷とか、ホラー系が好きなの?」
お化け屋敷に向かう途中で、俺は隣を歩く神崎さんに尋ねた。なんだか文化祭デートみたいで、つい気持ちが高ぶってしまう。
「うぅ~ん。そういうわけでもないんだけど……」
神崎さんは俺の問いに対し、何とも歯切れの悪い答えを返した。
「ホラー映画とかってさ、観たら怖くて夜寝られなくなるんだけど……でも、つい観たくなっちゃうの。わかる? この気持ち?」
神崎さんのそんな子供っぽいところが愛らしく、微笑ましい。
「そうだね。わかるよ、その気持ちは。」
「おぉ! さすが雪くんはわかってくれますか~!」
神崎さんは共感されたことに、とても満足げな笑みを浮かべた。
「それにしても、文化祭のお化け屋敷って……そんなクオリティ高くないイメージだけど。」
某日本一大きなお化け屋敷を一度体験してしまうと、文化祭の学祭なんておままごとのようなものだ。
「いや、今年のはめっちゃ怖いって噂なんだからね~。ほら、あそこがお化け屋敷だよ。」
神崎さんが指さした方を見ると、真っ赤なおどろおどろしい文字で、『戦慄迷宮~貞子VS呪怨VSジェ〇ソンVSエイリアンVSチ〇ッキーVSペニーワ〇ズ』と書かれた看板があった。
「何だこれ……お化けと怪物たちの大乱闘じゃないか。」
「あっ、今空いてるみたいだよ! 早くいこー!」
そう言って神崎さんは、俺の袖をきゅっと掴んで急かし始めた。
あぁっ――つい幸せを感じざるを得ない。言いようのない多幸感が溢れてくる。しかし、お化け屋敷の中では、さらに大きな最大級の幸福に包まれることになる。
お化け屋敷の中に足を踏み入れる。
室内はパーテンションで仕切られ、迷路のようなコースになっている。真っ暗な中を懐中電灯の明かりを頼りに進んで行くと、大きな井戸が出てきた。
「すごい……なかなか、雰囲気あるね……。」
神崎さんの声は若干震えていた。やはりホラー系は、そこまで得意ではないらしい。
井戸の前には立て札が立っており、そこに血文字で『井戸の前にあるお札を取れ……』と書かれている。
「神崎さん、井戸の前のお札を取るんだってさ。」
「えっ!? わたしが取るの~?」
「そりゃ、お化け屋敷行きたいって言ったの神崎さんじゃないか。」
「うぅ~、わかったよぉ。でも、ちゃんと明かり照らしておいてね。」
神崎さんはおっかなびっくり、井戸の方へと近づいていった。びびりまくりな彼女の姿に、思わず驚かせたい欲求に駆られた。
懐中電灯の明かりを突然消したり、つけたりを繰り返してみる。
すると――神崎さんはその場で跳びあがり、慌ててこちらに戻ってきた。
「わぁぁぁぁんっ! もう! いじわるっ!」
神崎さんは涙目になって、ぽかぽかと俺の肩を叩いてきた。
「ごめん、ごめん! あまりに怖がってるから、つい……」
「もう、雪くんがこんな事する人だなんて思わなかったよ! おこだよ、おこ!」
神崎さんはそう言って、俺の腕にぎゅっとしがみついた。柔らかな感触と、神崎さんの胸の鼓動が伝わってくる。おそらく本気で驚いたのだろう。かなり心拍数が高まっている。
俺もまた、彼女とは別の理由で心拍数が高まっていた。神崎さんにしがみ付かれ、ドキドキが止まらない。
「ごめん。もう絶対しないから。」
「もう、雪くんは信用できません。」
神崎さんはぷくっと頬をふくらませながら、上目遣いで言った。
「だから……、一緒にいこ?」
神崎さんは、俺の腕にしがみついたまま離さない。
おそらく井戸の中では、貞子の恰好に扮した生徒が待ち構えているのだろう。俺たちのバカップルみたいなやり取りに、そろそろ業を煮やしているかもしれない。
お札を取ると、案の定――乱れた長い髪の貞子が井戸から跳びだして来た。
「っきゃぁ!」
神崎さんは可愛らしい悲鳴をあげ、俺の背中に隠れて顔をうずめている。
貞子は怒り心頭の様子で怒声をあげた。
「さっさと立ち去れぇっ! リア充爆ぜろっ!」
貞子はどうやら男子生徒が扮していたようだ。ガチの怨念に満ちた低い声だった。
その後は、看板にあった通りの名立たるお化けや怪物に扮した生徒に追いかけまわされ、その度に神崎さんは俺にひしっと抱き着いてきた。
(……幸せすぎる)
なかなかクオリィティの高いお化け屋敷だったが、恐がる神崎さんの方にばかり目がいってしまった。
お化け屋敷を出た後、「もう一回いく?」と神崎さんに尋ねたところ、「雪くんとはもういかないもんっ!」と、ぷいっと顔をそむけられてしまった。
ようやく目が慣れてきた頃、観客席端っこの方に、照明よりも眩い輝きを放つ美少女がいた。
「あっ、神崎さんだ。」
神崎さんは音響御機材のようなものの傍にいたが、俺の姿を見つけると「あっ! 雪くんだ~」と笑顔で駆け寄ってきてくれた。
「演劇観に来てくれたんだね~!」
「うん、まぁ記録の仕事も兼ねてだけど。」
俺はやや照れながら、首にかけているカメラを持ち上げた。神崎さんは「生徒会のお仕事お疲れ様~!」と労いの言葉をかけてくれた。
「神崎さんも、演劇の音響の仕事お疲れさま。」
「うん。でもさっきの公演で休憩に入るから、この後は自由時間なんだ~! あっ、よかったらさ、雪くん一緒にお化け屋敷いかない?」
「えっ、お化け屋敷?」
思いがけないお誘いに対し、俺は戸惑いを示した。
「あっ、でも雪くん……生徒会のお仕事忙しいもんね。」
しゅんと肩を落とす神崎さんを見て、俺はすぐさま答えた。
「いや……、確かお化け屋敷って三年生の出店だったよね? この後丁度三年生のフロアの記録写真を撮りに行くつもりだったから、よければ一緒に行ってもいいかな?」
その言葉に、神崎さんはきらきらと瑞々しい瞳を輝かせた。
「ほんとにっ!? よかった~! みんな誘っても、女同士で行ってもつまらないでしょって断られたのだよ~。」
「そうだったんだ。」
女同士でお化け屋敷も楽しそうだけどな。男同士で行く悲惨さに比べれば、全然いいと思うけど。
「ほら……やっぱり、一人でお化け屋敷いくのは……ちょっと寂しいし///」
神崎さんは少し照れながら言った。そりゃまぁ、一人でお化け屋敷に入るなんて、鋼のメンタルがなければ不可能である。
「神崎さんってお化け屋敷とか、ホラー系が好きなの?」
お化け屋敷に向かう途中で、俺は隣を歩く神崎さんに尋ねた。なんだか文化祭デートみたいで、つい気持ちが高ぶってしまう。
「うぅ~ん。そういうわけでもないんだけど……」
神崎さんは俺の問いに対し、何とも歯切れの悪い答えを返した。
「ホラー映画とかってさ、観たら怖くて夜寝られなくなるんだけど……でも、つい観たくなっちゃうの。わかる? この気持ち?」
神崎さんのそんな子供っぽいところが愛らしく、微笑ましい。
「そうだね。わかるよ、その気持ちは。」
「おぉ! さすが雪くんはわかってくれますか~!」
神崎さんは共感されたことに、とても満足げな笑みを浮かべた。
「それにしても、文化祭のお化け屋敷って……そんなクオリティ高くないイメージだけど。」
某日本一大きなお化け屋敷を一度体験してしまうと、文化祭の学祭なんておままごとのようなものだ。
「いや、今年のはめっちゃ怖いって噂なんだからね~。ほら、あそこがお化け屋敷だよ。」
神崎さんが指さした方を見ると、真っ赤なおどろおどろしい文字で、『戦慄迷宮~貞子VS呪怨VSジェ〇ソンVSエイリアンVSチ〇ッキーVSペニーワ〇ズ』と書かれた看板があった。
「何だこれ……お化けと怪物たちの大乱闘じゃないか。」
「あっ、今空いてるみたいだよ! 早くいこー!」
そう言って神崎さんは、俺の袖をきゅっと掴んで急かし始めた。
あぁっ――つい幸せを感じざるを得ない。言いようのない多幸感が溢れてくる。しかし、お化け屋敷の中では、さらに大きな最大級の幸福に包まれることになる。
お化け屋敷の中に足を踏み入れる。
室内はパーテンションで仕切られ、迷路のようなコースになっている。真っ暗な中を懐中電灯の明かりを頼りに進んで行くと、大きな井戸が出てきた。
「すごい……なかなか、雰囲気あるね……。」
神崎さんの声は若干震えていた。やはりホラー系は、そこまで得意ではないらしい。
井戸の前には立て札が立っており、そこに血文字で『井戸の前にあるお札を取れ……』と書かれている。
「神崎さん、井戸の前のお札を取るんだってさ。」
「えっ!? わたしが取るの~?」
「そりゃ、お化け屋敷行きたいって言ったの神崎さんじゃないか。」
「うぅ~、わかったよぉ。でも、ちゃんと明かり照らしておいてね。」
神崎さんはおっかなびっくり、井戸の方へと近づいていった。びびりまくりな彼女の姿に、思わず驚かせたい欲求に駆られた。
懐中電灯の明かりを突然消したり、つけたりを繰り返してみる。
すると――神崎さんはその場で跳びあがり、慌ててこちらに戻ってきた。
「わぁぁぁぁんっ! もう! いじわるっ!」
神崎さんは涙目になって、ぽかぽかと俺の肩を叩いてきた。
「ごめん、ごめん! あまりに怖がってるから、つい……」
「もう、雪くんがこんな事する人だなんて思わなかったよ! おこだよ、おこ!」
神崎さんはそう言って、俺の腕にぎゅっとしがみついた。柔らかな感触と、神崎さんの胸の鼓動が伝わってくる。おそらく本気で驚いたのだろう。かなり心拍数が高まっている。
俺もまた、彼女とは別の理由で心拍数が高まっていた。神崎さんにしがみ付かれ、ドキドキが止まらない。
「ごめん。もう絶対しないから。」
「もう、雪くんは信用できません。」
神崎さんはぷくっと頬をふくらませながら、上目遣いで言った。
「だから……、一緒にいこ?」
神崎さんは、俺の腕にしがみついたまま離さない。
おそらく井戸の中では、貞子の恰好に扮した生徒が待ち構えているのだろう。俺たちのバカップルみたいなやり取りに、そろそろ業を煮やしているかもしれない。
お札を取ると、案の定――乱れた長い髪の貞子が井戸から跳びだして来た。
「っきゃぁ!」
神崎さんは可愛らしい悲鳴をあげ、俺の背中に隠れて顔をうずめている。
貞子は怒り心頭の様子で怒声をあげた。
「さっさと立ち去れぇっ! リア充爆ぜろっ!」
貞子はどうやら男子生徒が扮していたようだ。ガチの怨念に満ちた低い声だった。
その後は、看板にあった通りの名立たるお化けや怪物に扮した生徒に追いかけまわされ、その度に神崎さんは俺にひしっと抱き着いてきた。
(……幸せすぎる)
なかなかクオリィティの高いお化け屋敷だったが、恐がる神崎さんの方にばかり目がいってしまった。
お化け屋敷を出た後、「もう一回いく?」と神崎さんに尋ねたところ、「雪くんとはもういかないもんっ!」と、ぷいっと顔をそむけられてしまった。
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