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007 隣りのJKとの待ち合わせ
しおりを挟む桃花との約束の日、翔は午前中で大学の講義を終え、JR神戸駅へと向かった。
待ち合わせ場所のハーバーランド近くにあるカフェで、コーヒーを飲みながら彼女の到着を待つ。
「すいません!遅くなっちゃって。」
ショートボブの黒髪を揺らしながら、ぱたぱたとこちらに駆けてくる桃花の姿が見えた。
神戸の調理科がある高校に通う立花桃花である。
学校帰りということで、桃花は学校指定の紺のブレザー、胸元には赤色のリボン、茶色が基調のチェック柄スカートを身にまとっていた。
彼女の制服姿を見て、翔は“あぁ、いいなぁ。”とふと思った。
制服というものは、もちろん、毎日着る服を悩まなくてもいいという機能性の利点もあるが、デザイン性もかなり素晴しい。可愛らしさを損なわず、どこか神秘的な美しさも感じられる。
制服に身を包んだ桃花は、これぞまさに真面目な清純女子高生、という姿に見えた。
「いやいや、僕もさっき着いたところだよ。」
「すみません…。高校の友達に捕まっちゃって、遅くなっちゃいました。」
そう言いながら、桃花は少し困ったような顔で、後ろを振り返った。彼女の視線の先には、桃花と同じ制服を着た二人の女子高生の姿が見えた。
「はじめまして!桃花の友達の落合沙織でーす。どうぞよろしゅうしたってな!」
「はじめまして、同じく桃花の友達の落合栞と申します。」
よく通る溌剌とした声で元気よく挨拶する沙織と、少し控えめな低音で丁寧に挨拶をする栞と名乗る二人が、桃花の後ろから飛び出してくるように現れた。
「どうも…、初めまして。桃花ちゃんの…なんだろう?隣の部屋に住んでいる田中翔です。二人ともよろしくね。」
翔が挨拶をすると、沙織と栞は、桃花の後ろでごにょごにょと何か密談をし始めた。
「どう思うよ…栞?なんかすんごい優しそうな顔してるで。」
「いや、ああ見えてわからへんよ?たくさんの女はべらかす悪い男かもしれへんよ?」
二人は密談をしているつもりらしいが、おもいきり声がこちらにまで聞こえてくる。
「もう、今日は約束があるからって言ったのに!もういいでしょ?」
桃花は不満そうに二人に言及した。
「いや~、お昼で授業が終わるんで、おしゃれシティ神戸で一緒にショッピングしよいうたんやけどね。」
「どうやら、桃花ちゃんは先約があったみたいでして…。私たち二人は、デートかなぁと思いまして、ついてきちゃいました。」
どこか大阪っぽいイントネーションの沙織と、京都っぽいイントネーションの栞はそういった。
「桃花ちゃん初心だから。もし、悪い男に捕まったら大変だと思いましてね。」
「兄ちゃん、優しそうだから、さぞ女の子にもてそうやしね?桃花ちゃんがちょろまかされへんか、心配で心配で…。」
そう弁明するように沙織と栞は告げた。
しかし、彼らの言葉には、あからさまに自分への疑念を含んだ棘が、そこら中に張り巡らされているように翔は感じた。
「そうなんだ。それは先約を取ってしまって悪いことをしちゃったね。よかったら一緒にお昼でも食べるかい?何かご馳走するよ。」
翔がそう告げると、「えっ、いいの?」とケロッと沙織は表情を和らげた。
「騙されたらいけないよ、沙織!これは巧妙な罠だよ。」
未だ栞は、翔への疑念を抱いているようだったが、ハーバーランドの近くにある、パンケーキの美味しいお店で奢ってやると、栞も完全にその疑念の壁を取り壊してくれた。
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