18 / 38
017 隣りのJKとの屋台巡り
しおりを挟む翔と桃花の二人は、一つ一つの屋台を覗きながら、「これは食べてみたい!」と桃花が反応したものを買って回った。
しかし、桃花本人は一度も「これが食べたい!」と言葉では表明することはなかった。
というのも、一応大学生であるトミーと翔が、「屋台で買い物するくらいのお金は出すよ。」と見栄を張ってしまった結果、桃花は遠慮をして言い出せずにいるようだった。
「何でも欲しい物いいなよ?」
「そうですね…。ありがとうございます。」
煮え切らない態度をとる桃花に対し、翔は屋台を一緒に周りながら、桃花の目がきらきらと輝いた屋台で、一つずつ商品を買っていった。
「すみません。これ一つください。」
「えっ!?なんで、私が食べてみたいと思ったのがわかるんですか?」
屋台で三つ目の買い物をしたところで、桃花は驚きの声をあげた。
「いやだって…、桃花ちゃん。本当に食べてみたいって思った時は、子どもがおもちゃを欲しがるように目を輝かせて見てるからさ。簡単、かんたん!」
「そうだったんですか…。お恥ずかしい///」
「まぁ本当に食べたいものは気を遣わなくていいから。僕も桃花ちゃんが選んだものなら食べてみたいしさ。遠慮せずに、どんどん言ってよ。」
「…はい。ありがとうございます!」
それからは、桃花のお眼鏡にかなったものがあれば、「これ…食べてみたいです!」と目を輝かせて、桃花は自身の気持ちを言葉で伝えるようになった。
お昼時が近づくにつれて、人の数も増えてきた。家族連れやカップルなど、たくさんの人がイベントを楽しんでいる。
「すみません!ちょっといいですか?」
カップルに声をかけられ、翔は快く神戸港をバックに写真を撮ってあげた。
「それにしても…、翔さん本当によく声をかけられますね。」
十分ほど前、先ほどは迷子になった子どもが、泣きながら翔のズボンを掴んでいた。
迷子センターまで送ってやり、翔が割りばしと輪ゴムを使った即興マジックでその子を泣き止ませていた頃に、保護者がやってきた。
「まぁもう慣れたよ。」
困ったように笑う翔の顔には、目じりが下がるとともに口角が穏やかに上がり、人柄のよさがにじみ出ている。いつしか桃花はその笑顔が大好きになっていた。
「なんだか…人が増えてきましたね。」
「そうだね。もうすぐお昼どきだからね。」
先ほどから、手を繋いで歩くカップルの姿がちらちらと横目に入り、桃花はそれを意識せざるを得なかった。
“いきなり手を繋ぎたいって言ったら、翔さんはどんな反応するだろう?”
絶対そんなことを言う勇気はないのだけれど…、とぼんやり他のカップル達の仲睦まじげな様子を見ながら桃花は考えていた。
すると、彼女の手首をそっと、誰かの手が優しく触れるのを桃花は感じた。
「こらこら、ぼーっとしてたらはぐれちゃうよ?」
翔は人込みに流されそうな桃花を見て、彼女の華奢な手首をそっと掴んだ。
「トミー達もそろそろ買い物終わったらしいし、ちょっと急ごうか。」
「あっ、すみません。」
人込みを抜けるまで、人の壁を翔がかき分けてスペースを作り、桃花の手首を軽く握って先導した。
人込みを抜けると翔は手を離したが、桃花の掴まれていた手首にはまだ温かなぬくもりの感触が残っていた。
0
あなたにおすすめの小説
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
還暦妻と若い彼 継承される情熱
MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。
しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。
母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。
同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。
【完結】一番腹黒いのはだあれ?
やまぐちこはる
恋愛
■□■
貧しいコイント子爵家のソンドールは、貴族学院には進学せず、騎士学校に通って若くして正騎士となった有望株である。
三歳でコイント家に養子に来たソンドールの生家はパートルム公爵家。
しかし、関わりを持たずに生きてきたため、自分が公爵家生まれだったことなどすっかり忘れていた。
ある日、実の父がソンドールに会いに来て、自分の出自を改めて知り、勝手なことを言う実父に憤りながらも、生家の騒動に巻き込まれていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる