19 / 38
018 フローズンヨーグルト事件
しおりを挟む「おーい、翔君!」
背の高いトミーが手を振ると、遠くにいてもよく見える。
トミー、沙織、栞と合流し、お互いの買ってきたものを見せ合った。
「…なんだこれ?」
沙織が嬉しそうに持っていたのは、一見するとただのトーストだった。真ん中に切れ目が入っている。
「ただのトーストを、この沙織ちゃんが買うわけないやろう。」
沙織がトーストの上下を持って引っ張ると、真ん中の切れ目で裂けた中から、虹色のゴムのようなものが現れた。
「うわ、すごい色だな。」
「レインボーチーズトーストやってさ。」
「もはや完全にインスタ映えのための食べ物だな。栞ちゃんは何食べてるの?」
「フローズンヨーグルトのワッフルです。ちょっと溶けてきてますけど、翔さんも食べますか。」
ほっぺに白いフローズンヨーグルトをつけながら、栞はワッフルをこちらに渡してきてた。
「あぁ、ありがとう。…うん!フローズンヨーグルトって初めて食べたけど、バニラアイスよりも爽やかで美味しいな。」
「でしょでしょ~。あっ桃花ちゃんも食べたい?翔さん、桃花ちゃんにあーんしてあげてください。」
「えっ!?なんで…。」
思わぬ栞からの提言に、翔が少し慌てて桃花を見ると、最初は恥ずかしそうにもじもじしていたが、意を決したように、目を閉じて小さい口を開けた。
年下にそこまでされて断るわけにもいかず、翔はワッフルを一口サイズにちぎり、たっぷりフローズンヨーグルトをのせて、口元に運んでやった。
桃花の薄紅がさす柔らかそうな唇に、フローズンヨーグルトが触れた瞬間、その冷たさに、びくっと桃花は体を震わせた。
「…もう少し口開けて。」
「っん!?…ふぁい。」
一口サイズのつもりが少し大きかったようだ。桃花の口元にフローズンヨーグルトがいっぱいついてしまった。
「…なんか、こんな色っぽい感じになるとは思ってなかったです。」
栞が反省するように小さくこぼした。
「これは栞が悪いな。」
沙織もそれに同調している。
「いや、君たちは悪くないさ。翔君がわざとそうやったんだよ…。汚い大人だね。」
トミーたち三人が汚い物を見るような目でこちらを見ている。
「何話してんのかしらないけど、なんか悪口言われてる気がするな…。ごめんね、口元いっぱい付いちゃったね。ハンカチあるから拭いて。」
翔はポケットから紺色のハリネズミの刺繍がついたハンカチを取り出した。
「あっ、すみません。」
控えめに口元を拭くと、桃花が「洗濯して返します。」というので、気にしなくてもと思ったのだが、どうせすぐまた会うだろうと思ってお言葉に甘えることにした。
「翔君たちは何買ったの?」
「あぁ、異国の料理を中心に色々買ったよ。でも、僕もいまいち分からないから桃花ちゃん説明してくれる?」
「はいっ、わかりました!」
翔が包みを広げながら、桃花が説明を始めた。
「この大きな上げ餃子みたいなのは、エンパナーダという料理で、生地の中にはお肉や、玉ねぎ、オリーブなど色んな具材がぎっしり入っています。そして、こちらはプーティーンといって、あげたポテトの上にチーズと熱々のグレービーソースをかけ、とけたチーズとソースを絡めて食べるカナダ料理です。こっちはバナナフライといって、タイの屋台で買いました。」
立て板に水のように、スラスラとそれぞれの料理を桃花は説明した。
「うわー、バナナフライ一つもらっていい?」
スイーツに目がない栞が前のめりになる。
「あっ、はいどうぞ。」
「プーティーンってカロリー凄そうだな。でもめっちゃ旨そう!」
沙織はプーティーンに夢中のようだ。
「なかなか多国籍なランチになったね。」
トミーは富士の宮焼そばを頬張りながら、さらにイカ焼きをビニル袋から取り出した。四人はインターナショナルな食事に舌鼓をうった。
0
あなたにおすすめの小説
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
還暦妻と若い彼 継承される情熱
MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。
しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。
母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。
同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。
【完結】一番腹黒いのはだあれ?
やまぐちこはる
恋愛
■□■
貧しいコイント子爵家のソンドールは、貴族学院には進学せず、騎士学校に通って若くして正騎士となった有望株である。
三歳でコイント家に養子に来たソンドールの生家はパートルム公爵家。
しかし、関わりを持たずに生きてきたため、自分が公爵家生まれだったことなどすっかり忘れていた。
ある日、実の父がソンドールに会いに来て、自分の出自を改めて知り、勝手なことを言う実父に憤りながらも、生家の騒動に巻き込まれていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる