お隣りのJKさんと料理下手くされ大学生のお裾分け晩御飯

muku

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031 ライカのカメラ

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「おじいさんは…大丈夫ですか…?」と心配そうに桃花は翔に尋ねた。

今朝、翔はスマホの着信音で目を覚ました。着信相手は翔の母親からであり、翔の母の父親。つまり翔の母方の祖父が、朝から農業の仕事をしている最中に倒れたという知らせを耳にした。

「おじいちゃん、貧血で倒れただけだったらしいんだけど、その時に頭打っちゃったらしくて、でも今は意識もしっかりしてるし、明日には神戸の方に帰るよ。」

翔がそういうと、「翔っ!もっとおってくれんか~。せっかく会えたのに爺ちゃん寂しいぞ!」と元気そうな年配男性の声が桃花のスマホから聞こえた。

「ごめんっ、病院の中だし、爺ちゃんうるさいから切るね。」

「あっ、はい。お電話ありがとうございました。」

「明日も実習頑張ってね!っじゃあ、また明日。」

「はい!また明日。」

三秒ほどの静けさの後、桃花がスマホを耳元から離すと、通話中の文字はそれからまた三秒ほどたってから消えた。

翌日から桃花は、午前中は簡単な仕込みの作業を手伝ったり、お昼どきになるとご飯をよそったり、味噌汁をついで学生たちに手渡すなどの仕事を中心に、いろいろな仕事を経験させてもらった。

お昼時は、講義を終えた学生や大学職員たちが一斉にやってくるので、食堂内はみなてんやわんやの忙しさであったのだが、長年食堂で働く桃花以外の人たちは、てきぱきと無駄な動き無く、スピーディーかつ丁寧にバラエティーある定食を提供した。

「いやぁ、よく頑張ってくれたね。疲れたでしょ。」

桃花の隣で配膳していたおばちゃんが話しかけてきた。昼のピーク時を過ぎ、食堂内はさきほどと打って変わって静かになっている。昼食を済ませたが、次の講義まで時間を持て余している学生たちが、スマホをいじりながらだらけているのがちらほら見受けられる程度だ。

「いえいえ、すみません。手際よくできなくて…。」

申し訳なさそうにいう桃花は、「全然そんなことないよ。」と励まされ、食堂のまかないをおじさん、おばさんたちと一緒に食べた。

夕方に差し掛かり、桃花の実習が終わるころ、翔が食堂に入ってくるのが見えた。

「わぁ、翔さん!来てくれたんですね!」

翔の姿を見て、桃花の顔が輝いた。

「いやー、なかなかじいちゃんが離してくれなくてね…。もう、今日の実習は終わったの?」

「はい。今さっき掃除も終わって、あとは着替えて帰るだけです。」

「そうなんだ。っじゃあ、よかったら一緒に帰ろうか。」

「えっ、いいんですか。…ありがとうございます///」

「その前に、せっかくだから一枚撮っていい?」

翔は紺色のトートバックから、彼の掌におさまるサイズのコンパクトなカメラを取り出した。

「あっ、翔さんカメラ買ったんですか?」

「いや、じいちゃん元気になって、色々雑談してたらカメラの話になってさ。最近カメラ買おうと思ってるって話をしたら、もう使ってないカメラが家にあるから持って行けって。」

よく見ると翔の手にあるカメラは、確かにレトロな形式で、少し使い込まれた感じがあった。しかし、目立つような傷はなく、レンズもしっかり整備され、丁寧に大切に扱われてきたビンテージなオーラを漂わせている。

「なんてメーカーですか…?LE…ICA?あの…これってすごい高級メーカーでは…?」

「ライカ(LEICA)の M型っていうんだけど、正直僕が持つには恐れ多いんだよな…。でも、せっかくだから、いいカメラで素敵な写真を撮れたらなって。」

翔は長年使い込まれ、鈍く光るカメラのレンズを桃花に向け、ファインダーをのぞき込む。

「僕の記念すべき一枚目は、じいちゃんを撮ったんだけど、二枚目は桃花ちゃんが食堂で働く姿ということで。」

「えっ、ちょっと恥ずかしいです。汗で髪の毛くちゃくちゃだし。」

桃花は急いで髪を整えようとする。

「あー、自然な姿でいいのに…。まぁいいか、撮るよー。」

“カシャッ”とレトロな機械音が鳴り、桃花が少し恥ずかしそうに、控えめにピースして微笑む姿が切り取られた。
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