モブですけど!

ビーバー父さん

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「お前、どれだけ私が探したか分かってないだろ?」

「え、や、聞きましたよ? あのクソなギルマスから」

 捕食者の目になってる!

「あ~、そう言えば、虐殺の魔闘士でしたっけ?
 ふふふ、ゲオルグ先生が冒険者になったら、そりゃぁ凄いって分かる気がしますけど」

「そうだ、お前を探すために冒険者になって、依頼を出すのが一番確実で早かった。
 空間移動が使えるのもSランク以上の冒険者とギルマスに限られているから、とにかくランクを上げたかった」

「そうなんですね」

「蒼月の瞳だろうが、お前がなりたいようになればいい。
 その為に私が使える力は全て使う。
 それでも足りなければ、魔王にでもなってお前を手に入れる」

 魔王、ってフラグ回収に来てるじゃん。

「ダメです。
 ゲイオルグ、魔王にならないで、お願い」

 僕はゲオルグに抱きついて、魔王ってキーワードを消したかった。
 神様、僕自由に生きてるようで、設定に振り回されてるよ。

「ラグ、初めて名前を呼んでくれたな」

 何その懐かない猫が懐いたみたいな感じ。

「今までも呼んでましたよ?」

「先生か様がついていた」

 あ、今度はツンになった。

「そんなに重要ですか?」

「私にとっては最重要だ!」

 この人って、一つの事に執着したら、それを納得いくまで弄って観察してやり過ぎちゃうタイプなんだ。

「ゲオルグ、お願いだから、魔王にならないで。
 僕をずっと好きでいて」

「私は、お前に振り向いて欲しくて、その笑顔で私の名を呼んで欲しくて、胸を掻きむしるくらいにお前を探した。
 ギルドに依頼したとしても、お前がギルドを頼らなければ見つかることも無く、永遠にこの時間が続くような気さえして気が狂いそうだった」

 二年も探してたって再会した時は言ってた。
 僕が学校免除資格を持って出て行って、記憶操作を自力で解除してからずっと探してたって。
 
「だって、国に報告するって言うし、こんな蒼月の瞳とかその時はパパと誤解も知らされていなかった事実とかもあって、親子関係がうまく行ってなかったから、平民になる事しか考えて無かったもん。
 それに、いつあのボンクラ王子が仕掛けてくるかと思ったら、逃げる一択でした」

「その話は再会してから聞いて、私があいつを殺しておけば良かったと思ったくらいだ」

 そっか、セバスたちはボンクラを殺して僕の蒼月と言う秘密を守ってくれたんだ。

「もう、一人で抱えてる事は無いか?」

「あ、えっと。
 僕、前世の記憶があるんですよ」

 サラッと言ってみた時のゲオルグの顔は今でも筆舌し難い。

「なんでも私に言うと約束してくれ」

「それなら、僕も。
 貴族なんて知りませんでしたよ?」

 ゲオルグが気を取り直したところで、色々聞きたい事を聞いてみる。

「あー、まぁ、そうだな。
 カスターノは伯爵家で、学校関係者が多く輩出されてる家系だ。
 その中で、私は次男と言う事もあり所謂スペアとして育てられた。
 優秀でなければならない長男と、優秀過ぎてはならない次男、そして有事の際には身代わりになれる次男として生きて行くだけだった。
 だが学校へ入学すると、自分が持っている魔力や魔法、それに闘う知識それらをずっと探求したくて学校に残ったら、筆頭教官になっていたってだけだ。
 そして、ラグが受験に来た」
  
 いやいや、その前って言うか、その間があるでしょ!
 あの紫頭との!

「紫頭のシュタインとは何も無かったんですか?」

「無いぞ?」

「嘘はつかないでくださいね?
 何もないのに、あれほどシュタインが執着しますか?」

「何も無かったからじゃないか?
 私も、ラグに何もできていなかったから、今、暴走してる自信があるしな」

「じゃぁ、これから僕に何かしたら、もう飽きるって事ですか?」

「これからどんどん大人になって、益々綺麗になって周りから注目されるような恋人に、飽きるなんてあり得ないだろ?
 こっちの方が飽きられない様に必死だ」

 ゲオルグは世界樹に取り込まれてしまうかもしれない僕じゃなくて、恋人としての僕の未来だけを話してくれる。
 蒼月である僕を不安にさせないように。
 いつも僕の感情なんか無視してる気がしたけど、手を引いてくれる先は必ず僕が迷わずに安心できるように、そんな未来を選んでくれようとしてたんだ。
 僕が先走って、表面だけで動いていても、警戒心が足りないって言われても、それを補って僕を自由にさせてくれていたんだ。

「ラグが好きなように生きると良い。
 必ず私がそれを叶えてやる」

「うん、それなら、必ずゲオルグは僕の隣にいて」

 僕はその首に腕を回して、大人のキスをゲオルグにした。


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