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しおりを挟むあの時は拉致られて来たからこの屋敷の構造は全く分かっていなかったけど、子爵の家なのに使用人もいないそして廃屋のような様相になっているのは、リカルドの地位に何かあったんだろうか?
「リカルドは、騎士もしていたと思うけど、王都復興のために何かしてるんだよね、きっと」
「残念ながら、リカルドは復興の手伝いより、王族をここから避難させる隊列に加わってしまいましたから」
アシッドが表情もなく淡々とそう告げた。
「こちらが、旦那様の執務室になります」
ノックをして、アシッドが扉を開けると、そこまで広いわけじゃない執務室が、屈強な男どもで埋め尽くされていた。
「旦那様、ラグ様がお帰りになりました」
アシッドの声で手元の書類から顔を上げたパパが、僕を見つけるなり机を乗り越えてまさに飛んで来た。
「ラグ!! ラグ!!」
途端に力一杯抱きしめられて、号泣されてしまった。
「パパ! パパ、パパ!」
僕も、パパが無事でいてくれた事、僕を待っていてくれた事が嬉しくて、それにパパの顔を見たら安心して涙が止まらなかった。
この部屋にいた、ヒューゴとユリアス以外にも、騎士団からの応援や、ギルドからの冒険者たちが集まっていた。
「これって、ドラゴンが覚醒して地殻変動を起こした災害の対策?」
「そうだ、ラグが帰って来てくれて嬉しいが、今この国だけじゃなく世界でおかしな動きがあるんだ」
世界樹の爺さん再生したら、大地の地下とか山とか海とか、とんでもない伝説の生き物が蠢き出したって事が、天災として人の世界を脅かしてしまったんだ。
「ユグドラ、アンタが再生されても全く良い事ないじゃないか。
世界樹が衰退してしまえば、大地が終わってしまう、でも再生させたら大地が壊れて人が住めなくなるってなんだよ、それ!」
「ラグノーツよ、お前の中途半端な再生が招いた結果だ。
私の全てが再生された訳ではないからな。
途中で出し惜しみしたお前の失態だ」
僕のせい?
僕が、魔力を最後まで与えなかったから?
「貴様! ラグの命までも奪おうとして置いて、その言い草はなんだ!!
お前は人に生かされているんだ、人がいなければ生きる事さえ出来ないモノじゃないか!!」
「ん? お前はラグノーツの親木か。
ふふふ、しかし、中途半端に目覚めてしまった者たちはこれからも増えるだろう」
「今まではどうしてたんだ!?」
「しっかり魔力を最後まで注いでもらって、再生されればあれらもスッキリ目覚めたであろうがな」
「魔力が足りなくて暴れているのか?」
世界樹と、ドラゴンとか他の伝説の生き物は繋がってるって事は何となくわかったけど、足りなくても世界樹の力はそんなもんじゃ無いだろう。
「さぁね」
「うん、だよね、だってさ、足りなくてもお前が力任せにどうにかすりゃ良いんだから。
なんか、逆も出来そうな気がしてきたのは、気の所為かな?」
僕は世界樹が僕の魔力を取ると言うのなら、逆に世界樹の枯渇仕掛かってる力を吸い取ってしまってから、世界樹システムの無い大地を作れば良いんじゃないだろうか。
僕の蒼月の力は神様がこのシステムを壊すために態々、異世界からこちらへ連れて来たってユグドラシルも言ってた。
それをユグドラシルも理解してるって事は、実際に出来るから中途半端にして、悪いことが起きると思い込ませようとしたんじゃないだろうか?
「な、にを、言ってるんだ」
「ユグドラシル、この人の世界で、お前の力が必要な部分って何だろう?
見えない街がいい例じゃないかな?」
既に大地には何も力が残っていなかった。
ただの信仰だけで、大地は人々の魔力でも維持できていた。
なら、僕のスキルで、例えばスプリンクラーのような物を設置したら、魔力は必要なくなる。
スプリンクラーに魔力を通したらいいからだ。
大地は普通に耕して、肥料を加えたりそれは人の手で出来る事だ。
それこそ世界樹なんて神社仏閣と変わらない、ただの象徴だ。
なら、世界樹のシステムが無くても、人は生きていける。
そして、僕のスキルを使って作れる道具は全て作れば良いんだ。
僕は今まで何で出し惜しみしていたんだろう? と不思議に思った。
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