ピンク砲、その執着は今更です~乙女ゲームのヒロインのはずが、BLゲームのネタ枠ってどう言う事?!~

ビーバー父さん

文字の大きさ
2 / 5

乙女ゲームって枠

しおりを挟む



 倒れていた場所の名称は、分からずじまいだった。
 と言うのも、それなりに広さのある街道と思わしき場所だったが、人通りが無かった。
 半日? 自分の腹時計と感覚では半日、その場所に留まってみたが、誰一人通る子は無かった。
 本当は三時間ほどだったが、退屈過ぎで半日と、決めつけていた。
 着ていた服装も、どうも、大分古い時代っぽいワンピースで、どこかに自分のスマホが堕ちて無いかと探したが、どこにも見当たらなかった。

「仕方がない。 どっかに川なんか無いかしら?」

 自分の容姿を早く確認する必要があった。
 口では異世界転生と言ってみたものの、実際にピンク色の髪は不安にしかならなかった。

「公衆トイレとかあったら鏡で確認したいけど、見渡したところどっかの田舎の道で舗装もされてないし。
 建物一つ無いって事は、バス停とか駅なんかとてもじゃないけど無いって事よね?」

 もしかして家の抗争に巻き込まれて、拉致られて捨てられたのかもしれないと思い始めていた。
 
「拉致られたんなら、臓器売られてそうだけど……」

 五体満足で髪の毛の色だけおかしい女になってると胸を撫でおろした。

 とにかく!とその場から街道と思われる道を歩けば、どこかしらには着くはず!と杏璃は歩き出した。
 街道から少し外れた脇道になぜか妙に引かれて進んで行った。

「お腹はすくし、街道っぽいから当然川なんか無いし、気になる脇道に入ったら何かあるかと思ったのに、はぁ~散々だわ。
 捨てるにしても、あ、捨てたんなら森とか林とか崖下とかか、なら、まだ親切な方だったわね」

 ポジティブだった。
 杏璃の強みと言うか長所でもあったが、短所でもあった。

「スマホがあれば位置なんてすぐ分かるのに、拉致犯はご丁寧に服まで着替えさせて、スマホも捨てたってわけね」

 誰だか分からない拉致犯に怒りをぶつける言葉を吐きつつ、とにかく歩くとやっと、日が暮れた所で壁の前を歩く人影を見つけた。
 脇道を引き返すことなく奥へ来たら見えて来た壁だった。

「なにあれ、何の建物かしら?
 あ、人がいるみたい!」

 俄かに人がいた事で安堵感を覚えたが、その人の格好に立ち尽くした。
 壁の前を行ったり来たりしている人物は男性で、その手には槍を持っていた。

「嘘、やだ、」

 日が暮れるところでかろうじて見えていた人影が、近づくにつれて夜になりつつあるところで見えた姿だった。

「槍って何よ?」

 日本の平和な世界で生きて来た杏璃には驚きしかなかった。
 ただ、ヤクザだった実家のせいで暴力沙汰には慣れっこではあった。

 段々と深くなる闇に紛れる様にして、槍を持った人物に近づくと、音を立てないようにして背後から首を絞めた。
 女性の力でも、首の頸動脈を締めれば呼吸が出来なくなって、気絶させることは出来る。
 更に締め続ければ殺すことも可能だった。

 崩れ落ちる男を支える事は難しくて、膝がガクンとなった所で締めている腕をはずさずにそのまま体が倒れ込むに任せた。
 落ちた事を確認して、壁伝いに歩いて行くと大きな城門と言えるような扉が見えた。

「まるっきり映画かゲームの世界じゃない……、これ、見覚えがあるわ。
 まさか、よね」

 扉の存在に杏璃は想像した事が、現実だったのでは?と思い始めた。

「異世界って言うか、ゲームの世界? 
 ちょっと怖いけど、誰かいるなら電話でも貸してもらって」

 扉の前に呼び鈴らしきものは無く、ノッカーを叩くしかなかった。

「ここまで凝ってると引くわ」

 誰も出てこない。
 廃墟なら、と恐ろしさもあったが、中へ足を踏み入れその中で自分の姿を確認することが出来た。
 ピンク色の髪の見た事ある女性が、今の自分の姿だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王太子が護衛に組み敷かれるのは日常

ミクリ21 (新)
BL
王太子が護衛に抱かれる話。

シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました

無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。 前世持ちだが結局役に立たなかった。 そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。 そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。 目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。 …あれ? 僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

処理中です...