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しおりを挟む呪いみたいなものだってのと、運命の片割れじゃなかったって事は理解した。
まだ童貞とか、その、あの、処女童貞とか、そう言うのがどう関係するのか分からなかった。
「レオ、さっき伴侶を解消させるには、無理やりヤルしかないって言っただろ?
それは、伴侶の誓いをした側は浮気ができないから、されてしまうなら仕方ないって事なんだよ。
なら、レオは出来るか?
ヴラドを犯せるのか?」
好きな人を無理やりなんて出来ないよ!
解消する事が目的なんてダメだよ!
「出来ない
そもそも、うまくやれる自信もないのに、無理やりなんて」
「そうだ、それにお互いが好きあってるなら、既に浮気になる。
だからどっちにしても、解消はできねーな」
そっかー、そうなんだ。
「それにな、伴侶の誓いは、他を想う気持ちも薄れてしまう効果がある。」
解消出来ないなら、俺がこれからする事はどんな影響が出るんだろう。
「お父さん、俺、ジルを殺すよ
その場合、ヴラディスラウスはどうなるの?」
どこかふざけてた表情が一瞬だけ固まり、また表情を戻した。
「かーっ、そこまでの事をアイツはやらかしたんかぁ
まあ、仕方ねーな。
伴侶の誓いは解消されるな。
ただ、お前にどんなペナが来るかは、分からん」
そこでお母様が、取り替え子にされたルアンの死を告げた。
悍しくも、ジルの手引きによって来た異界の悪魔のような奴に、食われていた事を聞いたお父さんは、ヴラドを殴り飛ばした。
一瞬だった。
殴るモーションも、怒りの感情も見せずに、ヴラドの体が衝撃を受けた。
「俺ぁ、だからオマエが信用できねーんだわ
てめぇの眷属が間違ってるの分かってて、なんで放置してやがる?!
あぁ?
なぁ?レオが連れ去られた時、ティターニアがどんな状態だったか知ってるよな?
あのワンコロが笑ってやがった理由がこれか。
レオ、俺が殺る
息子の仇を取るのは親の役目だからな」
「いいえ、家族の役目よ
私も同じです」
こんな憎しみの連鎖はダメだ。
「ヴラディスラウス、この状況をどう思いますか?
俺は、こんな憎しみの連鎖は嫌です。
終わらせたいと思っています。」
「私も、いや、私の責任だ。
私がジルを殺す
それが貴方達への贖罪だ。」
それが一番、いや当たり前の事だ。
上の者が下の責任を取るんだから。
周りに控えていた使用人たちの何人かが泣いていた。
ルアンの死の真相を聞かせていなかったから、知ってしまった皆んなの表情は歪んでいた。
「ヴラディスラウス様がヘタレなせいで、レオ様をお迎え出来ないなんて…
ルアン様が御可哀想です。
私、あのバカにお仕えするのは無理です。
いま、この時、この限りでお暇を頂きとうございます!」
1人が口火を切ると、次々に同じ様に辞職を申し出た。
驚く事に、あのロイスまでもが、だ。
「旦那様がお生まれになられた時からお仕えさせて頂きましたが、此度はさすがにジルへの甘さに腹が立ちました。
それに、私の方が嶺緒様には相応しいと思いましたので。
最初の宣言通り、嶺緒様を私の番いにします」
ロイスが言い切った。
聞き逃しそうになったけど、ヴラドが生まれる前から、ロイスがいたって何かおかしくない?
「そして、オベロン様、ティターニア様にご報告があります。
そこのドライアドが、ジルが侵入する手筈を整えたようです。
取り替え子をしたのも、ジルとお前だと報告が上がっている」
あ、れ?
そう言えば、取り替え子をしたのはドライアドってヴラドも言ってた気がする。
いきなりな話しで、誰がとかより取り替え子って言葉だけが残ってたから。
だから、ドライアドに確認したんだっけ。
あー、俺、なんか頭に血が上りすぎてる。
ジルの手先になってるの?ドライアドも?
お母様の味方じゃないの?
「ティターニア様の御子様を外へ出せるのは、オベロン様の眷属か、ティターニア様の眷属しかいない。
もっと絞れば、空間移動出来る眷属はドライアド、お前しかいないんだよ。
ジルと結託した理由は何だ?」
お母様は側にいたドライアドから距離を置く様に、お父さんの脇へと回り込んだ。
「ホホホ、全ては伴侶の誓いのせい
想う事自体、薄れていくとは言われていても消えてしまう想いではない。
レイオニード様も実感していらっしゃることかと思いますれば。」
「呪いなら仕方ない事で、本当に想い合う相手なら、幸せな誓いではありませんか?」
正直、納得がいくかと聞かれたら、ヴラドがジルの策で俺と思って交わした誓いなら、無効だろ!って叫びたいくらいだ。
でも、その策が分からなかったヴラドに、正直、幻滅していた。
「俺は聞きたい。
ドライアドは、騙して苦しめて、自分に想いが向いていなくても、誓いさえしてしまえば、自分のものになると
そう思うのか?
愛される事が無くても?」
きっと自分に想いが向かないのなら、体も愛される事が無いなら、騙したと言う負い目をずっと抱えて過ごすなんて、俺は出来ない。
「私は!
レオが憎い!
ティターニア様とオベロン様の御子として生まれた、貴方が憎い!
ティターニア様を母の様に、姉の様に、私が家族だと思っていた!
いつか、私がティターニア様から精霊王を継承すると、私を慈しんで下さると信じていたのに、運命の片割れに出会ってしまった事で、私はいらない存在になってしまった。」
歪んでる。
「ドライアド、貴方はそんな風に…」
お母様は、思ってもいなかったんだろうな。
「私は、家族になりたかった!
レオが生まれてしまったら、私はどうやっても家族にはなれない!
だから、だから!
ジルがレオが赤児のうちに殺しまえば良いと言われた時に、私はそれが幸せになるための手段だと、世界が開けた気がした。
ジルはヴラドを手に入れるために、力を欲したが、ティターニア様を与える訳にはいかない。
なら、私が精霊王になれば、力を貸せると約束しいずれ精霊王になるかもしれないレオを殺して貰えば良かったのだ。
ジルに赤児を渡した時に、精霊王の加護が強すぎて殺せないと分かった。
赤児が連れ去られた事で、ティターニア様は深い眠りにつき漸く、大変な事をしてしまったと狼狽たが、もう、引き返せなかった。
私の罪を誤魔化す為に取り替え子として、ルアンを連れて来て、シーオークへ落とす前にアルプに与えた。
一部を残しておく様にジルに言い含められたアルプが、まさか目の前に来るとも、レオが死に戻りヴラドと番うなど、許せなかった。
でも、その反面、レオが生きていてくれた事にホッとした。」
もう、何から何まで、ジルの独り善がりな考え方が、沢山の人を不幸にしていた。
ドライアドにも十分責任はある。
「ドライアド、俺はお前も許せない一人になった。
お前の独り善がりな恋慕は、誰も幸せになれないのは、ジルを見ていても分からないのか?」
お父さんは、お母様を抱きしめていたからか、本当はもっと怒鳴りたいのを我慢している様だった。
項垂れ涙を流すドライアドに、お母様も声をかけるかと思いきや、ハッキリとした嫌悪感を表した。
その表情を見たドライアドは、ショックを受けていた。
「何を驚く事がある?
ドライアド、お前がした事は嫌悪感しかない事だろ?」
お父さんは、最も辛辣な言葉を選んだんだと思った。
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