【本編完結】金色の魔法使い→続編あります

ビーバー父さん

文字の大きさ
17 / 19

断罪が始まる

しおりを挟む

 
 やっと軍法会議でも確実に処罰できる言質を得た瞬間、第四王子が動いていた。

「はあぁぁ!!」

 ソードマスターと言われる覇気を纏い、ゲート代わりの扉を打ち抜いた。

 ドオオン!!

 埃と破片で目が開けられなかった。
 やっと埃とか破片とかが落ちて、なんとか視界が広がった時には既に第四王子の剣は領主を捕えていた。

「おい、貴様、死ぬ覚悟は出来ているんだろうな」

 あんなに優しくて穏やかな第四王子が般若の顔つきになって、その剣を領主の首に突きつけた。

「ひぁ、え?」

「お前は誰だ!」

 領主は情けない声をあげ、ベオクの父親は第四王子に向かって誰だと聞くし、護衛と称した連中はギルバルディとカサルが取り押さえていた。

「お父さん! お母さん!
 もう、大丈夫だよ!
 なんで人形と入れ替わったんだよ!!」

 半泣きになりながらお父さん達に駆け寄り、治癒魔法を使った。
 金色の光が肩や、そこ以外の傷を包み込んで、まるで逆再生する様に治っていった。

「お母さんも!
 危険じゃないか!」

 二人を抱きしめて、大泣きした。
 小さい頃のように、声を上げて泣いた。

「お、い、お前、シアンなのか?」

 ベオクが驚愕を隠さずに聞いて来た。

「だったら、なに?」

 涙を拭う事なく、睨み据えた。

「魔力なんか無かっただろ」

「君のお陰と言うべきか、いや違うな。
 今ここにいる、両親や僕を思って大事にしてくれる人のお陰で、金色の魔法使いになれた」

「あは、あははは、そっか、そうなのか!
 俺にも運が残ってた!
 しかもすげー幸運が!」

 嬉しそうに醜悪な顔で笑うベオクに吐き気がした。

「ねぇ、黙ってくれる?」

「ぅ!」

 口を無くしてやった。

「僕が金色の魔法使いだけど、それが君に関係あるかなぁ?
 うちの親になんて事してくれてんの?
 脳筋でバカだ、バカだと思ってだけど、更にクズになってるとか、ほんと救い様が無いな」

「んー!」

 必死に訴えてるけど、聞く気は全く無かった。

「シアン! おじさんが小さい頃可愛がってあげたじゃないか!
 お前が金色の魔法使いならこんなに素晴らしい事は無い!
 ベオクを治してやってくれ!
 第二夫人が嫌なら第一夫人で」
「もう、奥さんがいるじゃない。
 そこの領主の娘さんがね。
 なんだっけ、ベオクの色が一色も入ってない緑の髪に黒い瞳だって?
 笑っちゃうね。
 誰かと共有なんて、僕ならしないよ。
 前にも言ったけどね。
 それにこんな事されて、なんで僕が治すと思ってんの? 気持ち悪い!」

 親子揃って頭悪いなぁ、と最後に付け加えた。

 そんな僕を見て、第四王子が凄く嬉しそうに領主の首を剣で軽く突いて、ポチポチと血を出させていた。
 犬が尻尾を千切れんばかりに、ぶん回しているようにしか見えなかった。

「な、何を言うか!
 お前だってその腹はなんだ!
 ガキをこさえたんだろうが!」

「「「私の子です」」」

 なんで三人とも!?

「僕だけの子です!」

「あ? お前、子供を産める因子は無かったと聞いていたが、まさか、ベオクの子か!?」

 気持ち悪くニヤつく。

「は! ハッハー!
 本当の私の孫がいるんだな!?」

 踊り出さんばかりのベオクの父親とは対照的に、本人は驚きに目を見開いていた。

「私の子、延いては皇室の子だ。
 不敬だぞ」

 我慢し切れなくなった第四王子は、あっさりと領主の首を切り落としながら、ベオクの父親に向かって剣を振り下ろした。

「な」

 首の持ち主たちは、自分の首が落ちた事さえ気づけないくらい、一瞬の出来事だった。

 それを見て涙目になっているベオクに口を戻してやった。
 
「ひぃぁぁぁ!
 なんだ、なんでだよ!
 俺は悪くないだろ!
 シアンを愛してるんだから!」

 車椅子から転げ落ちて、カエルが潰されたように這いつくばる姿を見て、なんでこんな奴が好きだとか思って体を差し出したんだろう、あの頃の僕を殴りたくなった。

 首が落ちた二人を見て、護衛たちや従者は諦めたようにへたり込んだ。

「ギルバルディ殿、処罰はどうしましょうか?
 私が許されたのは、商家と領主なので、軍部として考えるなら、このまま引き渡しますか?」

「た、助けてくれ!
 な、シアン、俺が悪かった!
 ちゃんとシアンだけを大事にする!
 ソリチュアとは別れる!
 だから」

「えー、私のエルモアに何言って」  
「ラグランジュ様! 黙って!」

 第四王子がピャッと耳を垂れた感じで、思いっきり股の間に尻尾を挟んだように見えた。

「だ、だってね、あの」
「分かりましたから、ベオクの行いは自身の口から語って頂きましたし、軍部で裁いて頂くのが筋でしょう。
 ソリチュア・ロンダンに関しては領主の死をもって財産も何もかも剥奪されるでしょうし、女性一人で子を育てるのは厳しい上に、彼女は働く事もして来なかった身なら、その子を然るべき家庭に養子に出す事で処罰として下さい。
 ただし、二度と子を産む事が出来ないようにする事、養子に出した先を教えない事、万が一養子先に現れたなら、死をもって償う事でどうでしょう?」

 この世界で子供を欲している家庭がどのくらいかと言うと、かなりだ。
 産めない家庭が多いから。
 子供には罪が無いが、自分本位に生きて来た彼女が育てられるかと問えば、甚だ疑問だった。

「うむ、エルモアがそれで良いなら」

「ええんとちゃう?
 どうせそこのド屑は処刑は免れないだろうし、嫁さんはコイツ以外の子を産んだとずっと後ろ指をさされるんや」

「ベオク、僕は最高に幸せになります。
 貴方は、ほんの数日だけ息が出来ると言う地獄へ行ってらっしゃい。
 その先に行く場所にはきっと、お父様と義父が待っていてくださいますよ」

 鼻水と涙でグチャグチャな上、動かない下半身から垂れ流した物で汚れたまま、駆けつけた軍部の兵士が引き摺って行き、皇室の護衛騎士らが後始末を従者達にさせて、この場を後にした。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】転生した悪役令息は、お望み通り近付きません

カシナシ
BL
「お前など、愛す価値もない」 ディディア・ファントム侯爵令息が階段から落ちる時見たのは、婚約者が従兄弟を抱きしめている姿。 (これって、ディディアーーBLゲームの悪役令息じゃないか!) 妹の笑顔を見るためにやりこんでいたBLゲーム。引くほどレベルを上げた主人公のスキルが、なぜかディディアに転生してそのまま引き継いでいる。 スキルなしとして家族に『失敗作』と蔑まれていたのは、そのスキルのレベルが高すぎたかららしい。 スキルと自分を取り戻したディディアは、婚約者を追いかけまわすのを辞め、自立に向けて淡々と準備をする。 もちろん元婚約者と従兄弟には近付かないので、絡んでこないでいただけます? 十万文字程度。 3/7 完結しました! ※主人公:マイペース美人受け ※女性向けHOTランキング1位、ありがとうございました。完結までの12日間に渡り、ほとんど2〜5位と食い込めた作品となりました!あああありがとうございます……!。゚(゚´Д`゚)゚。 たくさんの閲覧、イイね、エール、感想は、作者の血肉になります……!(o´ω`o)ありがとうございます!(●′ω`人′ω`●)

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

【完結】運命じゃない香りの、恋

麻田夏与/Kayo Asada
BL
オメガ性のリュカ・レバノンは、王国の第一王子ダイセルが見初めた、彼の運命の番だ。だが、ダイセル王子に無体な真似を働かれ、リュカは婚約の王命を断ろうとする。当然、王宮からの追っ手が来たところで──「そなた、何やら素晴らしい香りをしているな」。その声は、国一番の魔術師兼調香師のマシレ・グラースのものだった。調香師アルファ×不幸めオメガのラブストーリー。

君さえ笑ってくれれば最高

大根
BL
ダリオ・ジュレの悩みは1つ。「氷の貴公子」の異名を持つ婚約者、ロベルト・トンプソンがただ1度も笑顔を見せてくれないことだ。感情が顔に出やすいダリオとは対照的な彼の態度に不安を覚えたダリオは、どうにかロベルトの笑顔を引き出そうと毎週様々な作戦を仕掛けるが。 (クーデレ?溺愛美形攻め × 顔に出やすい素直平凡受け) 異世界BLです。

歳上公爵さまは、子供っぽい僕には興味がないようです

チョロケロ
BL
《公爵×男爵令息》 歳上の公爵様に求婚されたセルビット。最初はおじさんだから嫌だと思っていたのだが、公爵の優しさに段々心を開いてゆく。無事結婚をして、初夜を迎えることになった。だが、そこで公爵は驚くべき行動にでたのだった。   ほのぼのです。よろしくお願いします。 ※ムーンライトノベルズ様でも投稿しています。

既成事実さえあれば大丈夫

ふじの
BL
名家出身のオメガであるサミュエルは、第三王子に婚約を一方的に破棄された。名家とはいえ貧乏な家のためにも新しく誰かと番う必要がある。だがサミュエルは行き遅れなので、もはや選んでいる立場ではない。そうだ、既成事実さえあればどこかに嫁げるだろう。そう考えたサミュエルは、ヒート誘発薬を持って夜会に乗り込んだ。そこで出会った美丈夫のアルファ、ハリムと意気投合したが───。

Bランク冒険者の転落

しそみょうが
BL
幼馴染の才能に嫉妬したBランク冒険者の主人公が、出奔した先で騙されて名有りモブ冒険者に隷属させられて性的に可哀想な日々を過ごしていたところに、激重友情で探しに来た粘着幼馴染がモブ✕主人公のあれこれを見て脳が破壊されてメリバ風になるお話です。 ◯前半は名有りモブ✕主人公で後半は幼馴染✕主人公  ◯お下品ワードがちょいちょい出てきて主人公はずっと性的に可哀想な感じです(・_・;) ◯今のところほとんどのページにちょっとずつ性描写があります

【完結】一生に一度だけでいいから、好きなひとに抱かれてみたい。

村松砂音(抹茶砂糖)
BL
第13回BL大賞で奨励賞をいただきました! ありがとうございました!! いつも不機嫌そうな美形の騎士×特異体質の不憫な騎士見習い <あらすじ> 魔力欠乏体質者との性行為は、死ぬほど気持ちがいい。そんな噂が流れている「魔力欠乏体質」であるリュカは、父の命令で第二王子を誘惑するために見習い騎士として騎士団に入る。 見習い騎士には、側仕えとして先輩騎士と宿舎で同室となり、身の回りの世話をするという規則があり、リュカは隊長を務めるアレックスの側仕えとなった。 いつも不機嫌そうな態度とちぐはぐなアレックスのやさしさに触れていくにつれて、アレックスに惹かれていくリュカ。 ある日、リュカの前に第二王子のウィルフリッドが現れ、衝撃の事実を告げてきて……。 親のいいなりで生きてきた不憫な青年が、恋をして、しあわせをもらう物語。 ※性描写が多めの作品になっていますのでご注意ください。 └性描写が含まれる話のサブタイトルには※をつけています。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」さまで作成しました。

処理中です...