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幸せの形【本編終了】
しおりを挟むベオクの処分は異例の早さで下された。
翌日には斬首された領主と商家の主人の首と共に、街の広場に晒された。
蛮行だと思う所が無くも無いが、この世界でのルールに従ったまでだ。
上官からの証言、その側近たちが集めた情報、更には魔法石に記録された映像と本人の口から出た言葉が決めてとなって、即日執行されることになった。
彼は最期まで身を挺して上官を救ったのに、と訴えていたが当然そんな言葉を信じる者は誰一人としていなかった。
ベオクの父親が営んでいた大規模商家は、全てを没収され一族郎党すべての者にそれなりの処罰が下った。
それはまだ年端も行かない第三婦人の息子にもだった。
領主ロンダン家の娘については、産んだ子供がベオクの子供ではない事だけ公表され、それ以外の情報は伏せられたまま、緑色の髪を持つ子供は同じ緑色の髪を持った新しい家族の元へ送られた。
条件は実子として育てる事、決して養子であることを知らせない事、漏洩した場合その子への賠償と処罰が下る事を契約魔法で厳命した。
ソリチュア・ロンダンは医療施設で不妊を施され、どこか遠い町の教会へと送られその後を知る事は無かった。
街では豪商が潰れた事で、今まで抑えられていた中小の商家がこれまでと違い、組合を作ることでお互いを助け合う仕組みを擁立して行った。
明らかに領主とベオクの父親はやらかし過ぎていたからだ。
帝国が決めた税より多くを徴収したり、帝国法に疎い民衆に酷い借金を背負わせたりと、それを容認していた帝都経理部の中でも契約魔法を管理していた数人の官僚が処罰され、税務部は解体再編成を余儀なくされた。
驚くことにこれだけの事が執行されたのが、ほんの一週間程度での事だった。
このスピード執行に一番尽力したのは第四王子で、皇室の権威を多少は使ったらしいけど、何より僕の子供が生まれる前に汚いものは全て排除したかったそうだ。
「私たちの子供には、綺麗なものだけ見て欲しいんですよ」
「えーっと、まず、貴方の子供じゃ」
「私の子です!
絶対生まれて来る子は私の子なんです!
私の子を産んでくれてありがとう!」
「いや、まだ産んでませんし」
「あとひと月くらい?」
「そうです。
来月に入ったら、予定日が来ます」
いつの間にか僕はお腹の子に耳を澄ます第四王子を受け入れていた。
絆されたと言えばそうなんだけど、第四王子の本当に僕だけの為の行動が嬉しくて、すぐにでも結婚式をしようと言うのをなんとか産んだ後にと説き伏せた。
皇帝陛下も皇妃もノリノリで子供を含めた三人の結婚式を企画してると言うし、まだ慣れない幸せに戸惑っていた。
「生まれてきたら、三人で結婚式をして、ご両親にもお祝いをしてもらおう」
「気が早いですよ」
「遅いくらいだ。
私は生まれる前に結婚式をしたかったのに」
大きいお腹を抱えてはさすがに、皇室の恥にしかならないだろうと諦めて貰った。
それに、生まれたら気が変わるかもしれないし。
「もし、あの、もし、僕に似ていなかったら、その、」
「私の子に何も変わりはありません。
次の子だって、その次の子だって、家族ですよ」
言葉にしたら答えに詰まるような事も、軽く言ってのける第四王子に、やっと心から彼に笑いかける事が出来た。
「あの、グラン、その、幸せになりましょうね」
一瞬大きく目を見開いてから、綺麗な笑顔で当然です、と付け加えてから初めて唇へのキスをした。
「エルモア、いえ、シアン、愛してます」
両親しか呼べなくなった名前を、グランが呼んでくれた。
「父上がシアンの名前を復活させると言ってました。
もう、隠す必要が無いですからね」
「えっと?」
「これからは、エルモア・シアン・ド・ラキューです。
そして私の名前もラグランジュ・ド・ラキューになります」
「皇室はそれでいいの?」
「元々継承権なんて遠すぎる順位でしたし、シアンといる方が大事ですからね」
ぎゅっと抱きしめてくる力と体温が心地よかった。
「グラン、僕、幸せだ」
本編終了です。
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