その執着は今更です。

ビーバー父さん

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ギルドマスターと受付の人

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 モンブラン公爵の権威はさすがとしか言いようがなかった。

 隣国のはずなのに、モンブラン公爵家はここでも家門として確立されていた。
 普通は外交とかで訪れる貴族として、それなりな歓待は受けるだろうけど、こんな武者修行と称して剣と指環以外証明する物が何もないあやしい人物を、その名前でねじ伏せる事が出来るなんて。

「これも父上のお陰だ」

 少し照れ臭そうに呟いた。

「これから、ですよ」

「そうだな」

 離婚するまで殆ど言葉を交わしたことも無かったし、彼がどんな人かも知らなかったのに、今の方がたくさん知ってる様な気がした。

「モンブラン公爵様、ギルドマスターがお会いになります。
 応接室へお越しください」

 受付の人が彼だけを応接室に促そうとして、その本人であるモンブラン公爵から否を唱えられた。

「此度の話はこの冒険者ルイの事でもある。
 彼の持っている証拠と証言が必要になるので、彼も同行させる」

「ですが」
「都合が悪い事でもあるのか?
 君にとってはありそうだが」

 受付の人の側に立ち、その耳に近づいて囁いた。
 囁くと言うには大分大きな声だったけど。

「っく、畏まりました」

 言葉を詰まらせ、ブルブルと震えながら僕ら二人を案内するように前に立った。

 受付の人は前を向いているものの、どこか焦っているようにも見られた。

「おい、随分と奥まってるな」

「えぇ、ギルドマスターのお部屋ですから、それなりに結界等が必要ですし」

「そうか、そうか、なぜ目くらましの魔法が掛けられている廊下を延々と進まねばならないのか不思議だった。
 ここのギルドマスターとやらは随分と臆病者なんだなぁ」

「なっ!!」

 モンブラン公爵はいきなり権を抜いて、受付の人の首にその刃を当てた。

「おい、いい加減にしろよ?
 お前がルイに偽物の地図を渡して、どっかのチャラい冒険者から追い払おうとしたんだろ?
 それに、ギルドマスターはこの建物の中にはいない、違うか?」

 ブルブルと震えながらも、ギルドの人間だけあって気丈にもモンブラン公爵に意見をした。

「そこのFランク冒険者がロイズに構ってもらうのが悪いのです!
 依頼を失敗して、冒険者を辞めるか、いっそ魔獣に襲われて再起不能になれば良かったんです!!」

 うんうん、そうだと思ってた。

「悪意だった、ということだな?」

「悪意? ギルドの総意です!!」

「ほう、総意か」

 そう言うと僕の更に後ろを見て笑った。

「モンブラン家を敵に回すか。
 果ては、王室をも敵に回すということだな?」

 気配もなく暗がりから細身のホストの様な男が現れ、モンブラン公爵に「とんでもない事でございます」と頭を下げた。

「外交問題にするつもりもありませんし、この者は既にギルドの者ではございません。
 そのまま切り捨てて頂いて結構」

 不敵に笑い合いながら会話する二人から視線を逸らし、受付の人を見ると蒼白になっていた。

「マ、マスター、」

「ん、君がロイズなんてチャラ男を好きだったなんて、ちっとも知らなかったよ」

 蒼白な頬をひと撫ですると、ぷしゅっと音を立てて血が流れだした。
 頬はザクロの様に裂けて、中の組織がしっかり見えてしまった。
 まるでブラッ〇・ジ〇〇クの漫画に出てた手術中の絵面が、リアルな色付きで再現されていた。

「ひ、ぎゃぁぁ!」

 一瞬の沈黙のあと、悲鳴が上がった。
 傷が深すぎて分からないっていうアレだ。

「ここまで深いとかなりお金を積まないと、綺麗には治せないねぇ」

 いかれてる。
 ロイズの事なんかに夢中になる連中もおかしいけど、いくら外交問題にしたくないからって、簡単に切り捨てるとか。

「貴殿がギルドマスターと思うが、処罰するのはルイの意志であって、貴殿ではない。
 寧ろ、貴殿も上司として処罰対象だと思うが」

 モンブラン公爵は首に当てていた剣を下し、ギルドマスターと思わしき人物を睨み据えた。
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