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開店して、1ヶ月。

意外と客足は落ちなかった。
さすが、一等地!

常連さんにだけ、まかないとか、そう言う裏メニュー的なのを作ってもいいかもね、って、なんか特別感があると嬉しいし。
いままでは、ナッツとかチョコくらいだったし、長い時間いるならそういうのもいいかもって話になった。
賄担当は俺だから、毎日のメニューを考えるのも今は楽しい。

あの、アフィニティの人は1週間で三日置きくらいに来ては、俺を揶揄いながら飲んで帰る。
こっちでの常連さんは有難いからね。
今夜あたり来たら、声をかけてみようと思ってるんだ。



生活リズムも決まってきた。
店を仕舞いにして、上にあがるのが大体2時。
同じビルって言うのは本当に助かる。
軽くシャワーを浴びて、まあ、大体この辺りでラブラブタイムに入るんだけど。
実際寝るのは4時かなー
濃厚なラブラブタイムはお店を休みにしてる日曜日前の土曜日とか、かな。
10時くらいに起き出す、そんな生活になった。





3人でいることがすごく自然で、精神的にも落ち着いた。
お店もびっくりするくらい、順調に来てると思う。
それだけじゃなく、テナント収入もあるけど、自分たちのお店があるのがいい。

将来的に、ゲイばっかりの会社とか面白いかも。
俺も会社員や、派遣やってて大抵の人が彼女は?嫁は?って聞くんだわ。
あれ、地味に面倒臭い。
カミングアウトも出来ないし、誤魔化すとしつこい人は、合コンだのお見合いだの、うるさい。
カミングアウトできる職場にがあると、俺たちみたいなのは助かる。
生活も安定するしね。

まだ、こんな話しはしないけど。
お義父さんの会社は、そう言うのに問題なさそう。
自分もバイで息子はゲイだもんね。

余程の事情がない限り、3人でご飯を食べてお店にでる。 
誰一人欠けちゃいけないっていうか、なんだおろ?
一志さんがいればいいっていうのから、侑士もいて初めて俺たちの形みたいな。
足りないところをお互いで埋めて、ブロックとかジグゾーパズルの形が合ってるみたいな、不思議な感じ。
一部であり、全部になった。
左手の薬指には、3人で結婚指輪をしてる。
これはお店でも外さない暗黙のルール。





さて、今日も頑張ります。

店のオープン準備で空き瓶出したり、おしぼり確認したり、割とやることあるのだ。

賄のメニューも考え中。
多分、今日の賄はリゾット系かスープ系かな。
というのも、ちょっと胃が痛いので、優しい物を考えてる。


店の看板に灯を入れてオープンすると、カップルが知らずに入ってくることが多い。
最近は侑士も慣れたもので、満席で引き下がってもらえるような言いまわしにしている。

まぁ、普通なら粘らないんだよ。
早い時間はね、他に行けばいいから。

このお店に入りたいって思ってもらえるのは有難いんだけど、お店の外で作業してた侑士に連絡先を聞くとか、SNSのIDを聞くとか、侑士目当てだったかw

侑士も、ちょっと嬉しそうだったな。
見てたからね、俺!w


カラン♪

いらっしゃいませー


若い男の子と年配の男性が入ってきた。

初めてのお客さんだけど、ちょっと異質だった。

うちのコンセプトとしては男性だから問題ないんだけど、若い男の子の方がちょっと気になった。
なんかうまく言えないけど、黒い感じ。
悪さしそうな感じっていうのかな。

「いらっしゃいませ、当店は初めてですよね?」

おしぼりを出しながら、俺が注文取りを兼ねて聞いてみる。

「今回が初めてだね。
 こちらがオープンして行きたいってこの子が言うものだから」

「そうでしたか、ありがとうございます。
 私、カイと申します。
 以後お見知りおきを。」

「おすすめは何があるかね?」

「そうですね、お好み的にはワイン、ウィスキーカクテルなどでしたら甘めの方よろしいですか?」

にっこりと笑って、あえて甘めを進言してみる。
若いこの子をどう扱ってるのかわからないから。


甘めに乗ってきたら要注意かな。

店でのトラブルは勘弁して欲しいしね。

「辛口過ぎず、さっぱりがいいね。」

「畏まりました。
 こちらの若いお客様も同じでしょうか?」

「俺は、わからないんで適当に」

「畏まりました」

一志さんに向かってオーダーをお願いした。

「ウィスキー・ミストをお願いします」

若い子にはシャンディガフを俺が作った。
年配男性にウィスキー・ミストを差し出し、若い子にはシャンディガフを出した。

「ほう、ウィスキーか、レモンで確かにさっぱりするな」

「お若い方には、飲みやすいビールベースのジンジャーエールで」

クルミのきなこチョコレートかけを出した。
これは俺の手作りで、ちょっと自信作。

「いいね、こんなお店ができて、嬉しい限りだ。」

「ありがとうございます。」

隣の若い子との関係はあえて聞かずにおこうと思ったけど、やたらにらんで来るんだよね。
なんかした、俺?

「ねぇ、カイさんて誰とでも寝るって本当?
 この辺のウリ専が迷惑してるんだけど。」

はぁ?!誰情報だよ、ったく!
どうせ、あのクソ辺りじゃねーの?

一志さんと侑士が凄い怒ってる。
俺も怒ってるけどね!

「面白いことを、
 私はただのバーテンですよ。
 ですが、お客様、お連れ様のお立場をお考えになれないなら、
 ウリ専にも向いてないですね。
 その辺の公園のトイレにでもお行きなさい。」

買ってしまった。

「ユウ、あいつに電話しろ!
 この辺のウリ専はあいつの管轄だろ」

「もうしてる~
 あ、こんばんは。
 ん、そう、やらかしてんね。
 はい、はい、すぐね」


あ、この前の若頭風の人か、めんどくさい佐々がくるんかな~
それとも、何でかにらんで来るリーマン風かね~

どちらにしても憂鬱だわ。

2人の夫を持ってるから、ビッチ言われたら、う~ん、否定できないかも・・・だけど。









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