上 下
61 / 105

59

しおりを挟む


いま、ここに居る俺たち3人以外には知らない話だよ、一志さん。

なんとか涙を止めようと、息をつめた。

ぎゅうぎゅうと締め付けられて、むしろ息ができないって!

タップして緩めて貰いながら、泣き顔を侑士に確認されて、また抱きしめられた。



「まあ、まあ、
 あんたたちも言い過ぎだ。
 口は禍の元だろ?」

海江田さんが、その場を収めるように話してくれた。

「知らないわよ!
 そんな話!
 知ってたら、」
オネェが言い掛けて、海江田さんと須藤さんがん?と言う顔をした。

「知ってたら?」

「あ、えっと
 聞いてた話と全然違うから!」

やっばり誰かから頼まれてたんだ。

「どんなふうに、誰から?
 聞いた話はどんな?」 

海江田さんが肉食獣の様な鋭い眼光で、オネェ達を睨みつけた。

「あ、あたし達は、ビッチがいい男を手玉に取って、好き勝手してる、とか
 オーナーに取り行って、ビルを貰ったとか、弱みを握られてマスターたちはビッチに縛りつけられてるって。
 だから、追い出してやろうって言われたのよ!」

話がかなり酷い盛られからしてるな。

「ほう、誰に?」

「え、あ、」

「誰に言われて、営業妨害しに来たんだ?」

「聞いた、だけだから!」

普通、聞いただけなら見に来るかもしれないが、わざわざこんな風にしない。
一志さん達がかっこいいから、ではここまでの攻撃的な事は言えない。
なら、誰かが指示しているとしか思えない。

「行動に移したら、お前らが犯罪者になってるんだが、理解できてるか?」

「犯罪者なんて、
 悪いことなんかしてないわよ」

「意図してこの方を排除する為に来た、と言いましたよ。
 録音と録画があります。
 業務妨害にあたりますね。
 オーナーはカイさんですから。」

須藤さんたち、それでオネェ連中に張り付いてたのか。
なんか、俺がいなくなればとか、この傷のせいでとかグルグルしてたけど、冷静になれば悪いのはどっかのストーカーで、俺じゃない!

ぎゅうって、2人を抱きしめ返して、笑ってみせた。

「逃げないよ。
 この傷が2人の枷になってるんじゃないかって、ずっと思ってた。
 けど、やっぱり2人と居たいんだ。
 愛してるから。」 

「当たり前だ!
 どれだけお前を捕まえておくのが大変だと思ってんだ!
 居なくなったら、俺は生きていけない!」

「俺もだよ。
 さとるが居なければ、意味がないんだから。」

「愛してる」
「愛してるよ」

「うん、俺も愛してる」

お店にいた、お客様には閉めませんから、お時間が許すなら、と謝罪をした。
有難い事に誰も帰るとは言わずに、いてくれた。

オネェたちは、奥のバックヤード的な個室に移動させ、侑士と海江田さんが話を聞く事になった。

お客様1人1人に謝罪し、シャンパンを一杯ずつサービスをしていると、たくさんの人から慰められた。

「カイくんは頑張り屋さんだよ
 みんなちゃんと知ってるから、ね
 負けちゃダメだよ。」

「そうそう、マスターたちのあの過保護を見に来てる様なもんなんだからさw」

「さっきのカウンターを飛び越えたのはカッコよかったよなーw
 カイ君の泣き顔は超絶エロいし!」

あ、一志さんが睨んでますよーw

「ありがとうございます。」

そうか、あれは一種のショーになってたか。
まさか、それで?
いやないない!
単に、自分たちがしたいだけだ、あれは!

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

貞操逆転世界の男教師

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:176

ヘタレαにつかまりまして 2

BL / 連載中 24h.ポイント:92pt お気に入り:1,430

異世界転移で生産と魔法チートで誰にも縛られず自由に暮らします!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:170pt お気に入り:2,451

ハッコウ少女とネクラな俺と

青春 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

笑顔でナニ言ってんですか?

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:408

転生王子はダラけたい

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:11,132pt お気に入り:29,330

その日の空は蒼かった

恋愛 / 完結 24h.ポイント:447pt お気に入り:6,835

処理中です...