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ビルに入る時、やっぱり怖くて足が竦んでしまった。

「どうする?
 今日はやめておきますか?」

ちょっと、ニヤって笑った!
お義父さんて意外とスパルタ!
頑張るもん!!フンス

「入る!
 ちゃんと、歩けるから!
 もう少し待って。」

意地悪!

「さとる、抱っこする?」
侑士が抱っこの手を出して来たけど、それじゃダメなんだよ。
俺が自分で歩かなきゃ、ダメなんだよ。

「ううん、それじゃダメなの、
 侑士も一志さんも、俺がダメな時はちゃんとダメって言って。
 甘やかすだけじゃ、ダメだって今回の事でわかって。」

俺が言えた義理じゃないけどさ、甘やかして隠した結果が、これだから。
勉強料としては高くついたよね。

生まれたての子鹿だと、みんなが笑うし!

膝がガクガクして震えてたから仕方ないし!

「さとる、ここには1人でいるの?
 違うだろ?
 私も、バカ息子たち、盾にしかならない海江田がいる
 どうしても怖かったら、叫んで助けを求めて良いんだ。」

お義父さん、結構、キツいね。
海江田さん、扱い酷いね。

でも、そっか。

「うん、怖くない、大丈夫!」

最初の一歩がね。

地下駐車場からエレベーターまではなんとか歩けたけど、エレベーターになかなか乗り込めなかった。

6人乗りで、全員乗れるんだけど、扉が閉まるときに息が詰まりそうになって、震えが止まらなかった。

多分、エレベーターは一人で乗れるようになるのは、なかなか無理かも。

あの閉まるときに伸びてきた腕が、掴まれた胸倉の感触が蘇って、過呼吸になりかけた。

その時だけはお義父さんが、抱きしめてくれた。

ごめんね、一志さんたちがいなかったから、お義父さんの方が居てくれる安心感がなぜか違うんだ。
まるで、まだ、信用してないって体が言ってるようで、申し訳なかった。


一番の難関はお店で降りることだった。

これは、侑士がどうしても抱っこするって言って、抱っこになった。

身体の体温や、筋肉の動き、心臓の音とか、匂いがやっと落ち着けた。

「侑士、いた
 良かった」

無意識に呟いてた。

頭をガシガシやられて、もうってみたら、侑士が泣き笑いしてるのがわかった。

「さとる、いたね。」

おでこを侑士の肩にスリスリして、ふふふって笑った。

お店の中は、内装も全部変わっていた。

窓とか明り取りが全部無くなって、照明器具が増えていた。
入口のつくりも二重扉ですぐに入れなくなっていた。

外から見えない作りで、二重扉も互い違いに開くようになってるから、簡単に侵入はできないようになっていた。


もう、あの時の面影は全くなかった。

どちらかというと、華奢だった内装が、重厚なお城の広間のようになっていた。
まるで中世のヨーロッパのようだった。

「凄い!
 こんな風にできるんだ 
 秘密のお城だね」


何もかもが違って、苦しくはならなかった。

これからどんな場面で出ちゃうかわからないけど、その時は名前を呼ぶよ。










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