神獣ってモテますか？(モテないゲイは、魔法使いを目指す！@異世界版）

異世界は続くよどこまでも

35

丸いシャボン玉の様な中に、ライカスが閉じ込められていた。

「ライカス！！
　ライカス！！」

手を伸ばすけど、動けない体でライカスの球体にも届かない。

「お前、ライカスに何をした！！」

「なあんにも？
　ただ、仮死って感じかな～」

悪びれもせず、ライカスを仮死にしたとこの醜悪な奴は言った。
笑いながら。

「ライカスを死なせてみろ、この世界全てを滅ぼしてやる！」

「アキよ、お前の選択肢は一つだ。
　叔父上との真名を解除して、人間の国の糧になれ」

醜悪なトリスタン。

「俺があの人から離れても、お前は選ばれない！
　絶対に。
　自分の姿を見てみろ
　皮が溶けてるぞ」

何か魔法で皮を取り繕っていたのか、腐って溶け始めていた。

「あぁ、実はさっきね
　クソガキは処刑になったのさ。
　一応さ、皇太子の嫁を傷物にしたって罪でさ。
　お前を、もう少し甚振ってやりたくて、死体をもらったんだけどね。
　長く持たなかったなー。」

狂ってる。

元々、こうだったのかも知れない。

「分かった、ライカスには手を出さないで」













城の中から、二人の気配が突如掻き消えた。

「カスティア！！
　二人はどこだ！！」

「ご主人様！
　大変で御座います！
　お二人の姿が消えました！」

結界があったはずだ、なのに！
オプスクリタスは、真名でその痕跡を追った。
辿り着いた先は、当然といえば当然の人間の国。
王宮内の一室だった。

どうやって取り戻すか思案していると、意識の無いアキの翼が折れ、脹脛が切り裂かれた。

「アキ！！」
「ご主人様！！
　早く
　アキ様を！」

「シムラクルを喚べ！
　七精霊王も、全てだ！
　神の鉄槌を下す！！」

カスティアが魔蝶を作り、すぐに飛ばした。
ところが、飛んだ魔蝶を捕まえて、神シムラクルが顕現した。

「オプスクリタス！！」

神に続いて、精霊王も揃い、魔族の諸侯たちも揃った。
フィルもその中にいた。

「お前も感じだか？！
　アキが拐われ、体を、翼を折られ脚を切り裂かれた！」

「オプスクリタス、お前は真名を繋げてるから、痛みも共有しているだろうが、アキの苦しみは…」

「人間など滅びてしまえばよい
　アキ様を苦しめる輩を排除すればいい」

大地の精霊王セルゲートは地形を変える怒りを噴出させていた。

それは他の精霊王も同じで、その怒りの矛先は人間へと向かっていた。

フィルだけが、このシナリオの違和感に気づいていた。
これだけの戦力差を考えないはずがない。
何か切り札なり、秘密兵器なりの火力差を持ってない人間が神に弓引くとは思えなかった。


「あのさ、こんだけ力の差があるのに、喧嘩売れる理由はなんだろ？」

勝ち目なんかあるはずが無い。
それでも、神獣がいるから、なんて理由は浅い。
これは、仕組まれたものでは無いだろうか、と結論づけた。