【完結】僕の好きな旦那様

ビーバー父さん

文字の大きさ
32 / 36

32 閲覧注意※胸糞案件

しおりを挟む

※胸糞案件あります。


 ザクロの姿を見ると膝から崩れ落ち、涙ながらにジョスクが訴えた事は「お腹の子は旦那様の子です」だった。

「そうか」

「ああ、旦那様、嬉しい……、あんな汚らわしい奴より、私を選んでくださったのですね」

 ジョスクの妊娠したはずのお腹はそれ程目立ってはいなかったが、ザクロは一瞬この腹を踏みつぶしたらどうなるのだろうか、と考えた。

「お前は私の子を孕んだと言うが、日数が合わないが?」

「そんな、毎晩抱いてくださったではありませんか」

 ジョスクが収監されて、共犯と言う事で裁判になり判決までに半年は要していた。
 判決後は執行猶予がついて釈放されたはずだったが、それから数えても本来ならかなり育って無いとおかしかった。

 言い換えれば、半年以上テイトとの婚姻が出来ていないと言う事でもあった。
 神に嫁す神事を執り行うにはトウカの指導は必須だったが、半分はザクロへの嫌がらせの為に大分丁寧な指導だった。
 漸くそろそろ神事を執り行う日程を切り出そうとしていた時に、ジョスクが現れた。
 まるでそのタイミングを見計らったように。

 どこか焦点の合わないジョスクの顔を見ると、多汗に指先などの震え更には妄想と言える発言で、薬物をすぐさま疑った。

「お前、どこで薬をやった?」

「旦那様が与えて下さったのですよ、お忘れですか?
 私が、私は、わたし、ワタシ、は、あれから。あれ?
 あれは、いつ?
 あああ! いや、いやだ! 私を捨てないで!!
 旦那様! 助けて!」

 ジョスクの状態が急変し、妄想やら何かのフラッシュバックが幻覚として見えているようで、暴れ始めた。

「誰かいるか?!」

「ここに」

 ザクロの身辺警護としている影が、スッとザクロに向き合う様に現れ、ジョスクをすぐさま拘束した。
 拘束したと同時位に、執事に手配させた医者が到着すると、ジョスクの状態を見てすぐさま「麻薬の禁断症状の一種」だと診断した。
 
「では妊娠は?」

「妊娠はしておりますが、ここまで薬に依存しているとなれば、既に薬の影響で胎児はまともではないでしょう。
 時間の問題かと思われますが、この状態ではこの方の命も危ぶまれます。
 できれば専門の施設に入れて、堕胎が望ましいかと」

 ザクロの中でジョスクの命などどうでも良かった。
 釈放されて男爵家も取り潰しになって、行き場が無かったのだろう。
 以前から体を売っていた場所へ行き、その対価で暮らしているうちに薬漬けにされ、ヤクザの慰み者になっていったのが容易く想像出来た。
 以前いた世界はそれが当たり前だったからだ。
 だからと言って同情はしなかった。

「私の所へ来たからと言って、助けてやる筋合いも無いが。
 その身体を奉仕していた対価として、施設へ入れてやろう。
 だがテイトや私の庇護下にある者たちへ危害を加えれば、その場で処分する。
 施設へは浮浪者として出自不明で入れろ、本人が男爵だと言ってもこれでは誰も信じまい」

「畏まりました。
 では施設への手配は出来ますが、資金についてはどこかの慈善団体を通すか」

 新しく雇用した医者は随分と機転が利くらしく、ザクロの望む形を素早く理解していた。

「執事! 私と関りが無いように、適当な慈善団体を作って、そこから資金を出せ。
 正し、こいつが途中でまともになったりしないように、一生妄想の中で生きていられるようにしろ。
 もしくは、二度と目覚めない世界へつれて行け!
 そうだな、適当な施設を買い取ってしまえ、世間に出られないような施設をな」

「御意」

「胎の子は、処置するには早い方がいいだろう」

「畏まりました」

 最後はザクロも言い淀んでいた。

 





 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる

七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。 だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。 そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。 唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。 優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。 穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。 ――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! できるかぎり毎日? お話の予告と皆の裏話? のあがるインスタとYouTube インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

処理中です...