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ザクロの姿を見ると膝から崩れ落ち、涙ながらにジョスクが訴えた事は「お腹の子は旦那様の子です」だった。
「そうか」
「ああ、旦那様、嬉しい……、あんな汚らわしい奴より、私を選んでくださったのですね」
ジョスクの妊娠したはずのお腹はそれ程目立ってはいなかったが、ザクロは一瞬この腹を踏みつぶしたらどうなるのだろうか、と考えた。
「お前は私の子を孕んだと言うが、日数が合わないが?」
「そんな、毎晩抱いてくださったではありませんか」
ジョスクが収監されて、共犯と言う事で裁判になり判決までに半年は要していた。
判決後は執行猶予がついて釈放されたはずだったが、それから数えても本来ならかなり育って無いとおかしかった。
言い換えれば、半年以上テイトとの婚姻が出来ていないと言う事でもあった。
神に嫁す神事を執り行うにはトウカの指導は必須だったが、半分はザクロへの嫌がらせの為に大分丁寧な指導だった。
漸くそろそろ神事を執り行う日程を切り出そうとしていた時に、ジョスクが現れた。
まるでそのタイミングを見計らったように。
どこか焦点の合わないジョスクの顔を見ると、多汗に指先などの震え更には妄想と言える発言で、薬物をすぐさま疑った。
「お前、どこで薬をやった?」
「旦那様が与えて下さったのですよ、お忘れですか?
私が、私は、わたし、ワタシ、は、あれから。あれ?
あれは、いつ?
あああ! いや、いやだ! 私を捨てないで!!
旦那様! 助けて!」
ジョスクの状態が急変し、妄想やら何かのフラッシュバックが幻覚として見えているようで、暴れ始めた。
「誰かいるか?!」
「ここに」
ザクロの身辺警護としている影が、スッとザクロに向き合う様に現れ、ジョスクをすぐさま拘束した。
拘束したと同時位に、執事に手配させた医者が到着すると、ジョスクの状態を見てすぐさま「麻薬の禁断症状の一種」だと診断した。
「では妊娠は?」
「妊娠はしておりますが、ここまで薬に依存しているとなれば、既に薬の影響で胎児はまともではないでしょう。
時間の問題かと思われますが、この状態ではこの方の命も危ぶまれます。
できれば専門の施設に入れて、堕胎が望ましいかと」
ザクロの中でジョスクの命などどうでも良かった。
釈放されて男爵家も取り潰しになって、行き場が無かったのだろう。
以前から体を売っていた場所へ行き、その対価で暮らしているうちに薬漬けにされ、ヤクザの慰み者になっていったのが容易く想像出来た。
以前いた世界はそれが当たり前だったからだ。
だからと言って同情はしなかった。
「私の所へ来たからと言って、助けてやる筋合いも無いが。
その身体を奉仕していた対価として、施設へ入れてやろう。
だがテイトや私の庇護下にある者たちへ危害を加えれば、その場で処分する。
施設へは浮浪者として出自不明で入れろ、本人が男爵だと言ってもこれでは誰も信じまい」
「畏まりました。
では施設への手配は出来ますが、資金についてはどこかの慈善団体を通すか」
新しく雇用した医者は随分と機転が利くらしく、ザクロの望む形を素早く理解していた。
「執事! 私と関りが無いように、適当な慈善団体を作って、そこから資金を出せ。
正し、こいつが途中でまともになったりしないように、一生妄想の中で生きていられるようにしろ。
もしくは、二度と目覚めない世界へつれて行け!
そうだな、適当な施設を買い取ってしまえ、世間に出られないような施設をな」
「御意」
「胎の子は、処置するには早い方がいいだろう」
「畏まりました」
最後はザクロも言い淀んでいた。
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