俺と俺の天使と俺の上司

ビーバー父さん

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天界革命

冷たい瞳のウリエル

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田舎の一軒家の間取りは、広かった。

地下があり、そこに天界と地獄への門を開いていて、音も漏れないような防音の作りになっていた。
なんでもカラオケ好きな金持ちの別宅だったとか。

遊戯施設かと思うようなビリヤード台が置いてあったり、庭には少し小さいけどプールとジャグジーバスがあったりして、想像の遥か上を行く作りだった。
ほんと、どんだけ広い家なんだ。

確かに周りに何にもないし、少し高台だから擁壁をきちんと作って地下にできたのも分かるけど、これ、一軒家って言うよりマンションとかそんなんじゃないの?
広いお風呂、アイランドキッチンで広々としたリビングに高い天井が窮屈にさせない。

元日本の貧乏庶民は、平屋長屋の台所も食べるところも、寝るところも一緒の生活だったし、こんなの雑誌やテレビでしかなかった。

「イズ、私たちの部屋は最上階の部屋だ。
 屋上にある」

えっと、最上階と屋上は別物では?という突っ込みをしたくなったけど、有事の際に襲われても空に出るのが早い方がいいという選択らしい。

「でも、大抵、みんな翼があるんだから、空から来ない?
 すでに空は包囲されてる気がするんだけど」

「大丈夫だ。
 屋上にも転移門を作ってある
 何かあった時は、ガレオスたちの店へ転移するようにしてある」

「それって、マズくない?
 いきなり、とか」

「あそこはガレオス以下主だった者たちは皆悪魔だ。
 だから、問題ない」

天使が悪魔だから問題ないとか、発言も変わってきたなぁ。
それにあそこは悪魔が経営する店だったのか。



最上階の屋上という意味が分かった。

屋上に、一部屋作られていた。
元々は、星を見たりするための部屋なのだろう。
天井が強化ガラスで張られ、空が目一杯に入ってくる。

夏は地獄かもしれないな、とちょっと笑ってしまった。
だから、ベランダでもなく、屋上なんだ。

屋上庭園とかにしたらよかったのに、と思ってしまった。

そのくらい広かった。

「ウリエル、俺のアパートの部屋より広いよ
 出勤するのはちょっと大変かなぁ」

「まぁ、明日は出勤できないだろうけどな。」

既に今日だけど、少し寝たらしたくしないとな。

広いベッドにウリエルか腰かけて、疲れたな、と一言漏らして横になった。
その端に近づいて、やっと言えた一言だった。

「ウリエル、あの、また会えて良かった」

ぎこちなく、会いたかったとは言えない自分。

「イズ、私は多少なりとも怒っていいのではないだろうか?」

「えっと、ごめん、なさい」

「不安にさせた私が悪いとは言え、私はイズをどうしたら繋ぎとめておけるのだろうか?
 教えてくれ」

酷く疲れた表情で、俺を見るウリエルの冷たい瞳が、昔を思い出させた。

「あ、そう、そうだよね
 ごめんなさい
 何度も面倒くさい事させちゃって、え、えっと
 その、ガブリエルのことも、ごめんなさい」

もう、ウリエルの冷たい瞳を見ていることが出来なくて、顔を体ごと背けて、外を見るようなフリをして窓側に行った。

「今日も、みんなの前だから、気を使って抱きしめてくれたの、凄く嬉しかった。
 いい思い出になったよ。
 だから、ね 
 ウリ、エルが、本当に好きな人と
 一緒になって、いい、からね」

自分で言っておきながら、心が悲鳴をあげて拒否していた。

「そうか、分かった」

「うん、お願いね」

なるべく、明るい声で答えたと思う。

「ウリエルはゆっくり休んで。
 俺は約束したから、どこにも消えたりしないし、ね」

涙は出さなかった。
極力明るい笑顔で、死んだ表情筋を必死で使って、笑って見せた。

「もう、逃げないから」

俺は、ウリエルが誰かと結ばれるのをちゃんと見届けてあげないといけないんだ。
伴侶の誓いなんかをさせてしまった責任がある。

「俺に、できることがあったら、言って」

「なら、こちらへ来てくれないか」

熱くなる目頭を、ぐっと力を入れて目を見開く。
瞬きなんかしたら、涙が落ちてしまうかもしれなかった。

冷たいウリエルの瞳を見れなくて、視線をそらしながら側まで行くと、腰に腕が巻き付いて引っ張られてベッドに倒された。

「うわっ!!」

「イズ!バカな事言った罰だ!」

両の手頸をひとまとめに掴みあげられて、そのままキスをされた。




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