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心の拠り所
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長い休暇の始まりが娼館だなんて、我ながらクズだなと笑いが漏れた。
母様が烈火のごとく怒ってきそうだ、と。
日の出とともに娼館を後にして空を見上げると、金色と赤みがかった光の朝焼けを目にして、母様への罪悪感を思い出した。
そしてダイチと名乗った男娼になぜか不安にも似た胸騒ぎと、懐かしいと思う気持ちとが混在してどう整理して良いか分からなくなっていた。
「母様に話すのが一番だけど、ミラがいるしなぁ」
伯父上とミラの関係は親族以上のものがあるのだろう、私は、血のつながらない甥っ子だから。
父様は愛情を恥ずかしくなるくらい注いで育ててくれたけど、転生者の前世持ちで生まれてすぐに覚醒した赤ん坊が、出生の秘密を理解してるとは思っていなかっただろう。
この体の遺伝子上の父親の為に一族郎党全てに処罰が下って、上位貴族も陛下から厳命を受けていたとしても、人の口に戸は立てられない。
母様と登城した時に囁いて来る奴らはどこにでもいた。
特に、どこぞの貴族令嬢は、父様の隣に並ぼうと母様を貶める為だけに血筋の話を出して、修道院へ送られることが増えて、もう知らない子供の振りをする事が限界だった時、それらをこっそり父様が潰していた事を知って驚きもしたけど、溜飲が下がる思いだった。
そして今では私の役目になっていた。
母様を傷つけたり、悩ませたりする輩はいなくなればいい、それが家の裏の家訓になっていた。
「リュシアンは私と母様を守る騎士だもんな」
「はい! 父様!」
こんな幸せな家族になれたからこそ、ミラの幸せを邪魔するわけにはいかなかった。
母様によく似たミラに、伯父上の心が動かないはずがないんだ。
今はまだちょっと、二人を見るのは辛いから、ちゃんと家族として幸せを祈れるようになるから、それまで待ってて欲しい。
だから、実家に帰省するのは心の整理がついてからって事で、セフレの所に顔を出してから小旅行に出ようと決めた。
魔法を使えば移動なんて何てことないけど、旅のだいご味は移動する時の景色だったり、先々の名物だったり特色だったりなんだからと自分の馬に乗って移動した。
「リュシアン、一人旅なんて大丈夫かい?」
「中年のおじさんにはきついかもだけど、私は若いからね。
旅先で何かお土産を見繕うよ」
自分より大分年上で中年と言うより初老と言った方が正解かもしれない。
お互いをセフレと割り切っての付き合いで、年上だからこその包容力に魅力を感じていた。
穏やかな笑顔でいつでも迎えてくれるから、つい、ズルズルとこんな関係を続けていたけど、今回の休みで気持ちを切り替えたら彼を一生の伴侶として誓いたいとも思っていた。
寧ろダイチって男娼のお陰で、彼の大切さが分かった気がした。
「楽しんでおいで」
「あぁ、行ってくる」
笑顔で送りだされて、彼は暖かい気持ちを持たせてくれた。
そして、その笑顔を見たのが最期だったのは、馬を走らせていた時に飛んできた鷹の報せだった。
湖のほとりを馬で走り、途中で見かけた動物を追いかけたりしながら、時々出会う人たちと挨拶を交わしながら進んでいた時だった。
まだ皇都を出て一日半くらいしか経っていなかったこともあり、今いる湖は比較的近場のリゾート地みたいな場所だった。
前世でドライブに行った中禅寺湖とか、そんな感じで緑がたくさんあって癒されていた。
ピィーイ、ピィーイ
独特の高い鳴き声が聞こえて空を見上げると、魔法鳥の鷹が急降下してくるところだった。
「何かあったのか!?」
皇族使用の魔法鳥が来るなんて、何か重大な事があったに違いなかった。
魔法鳥は母様が市井に出ている時に襲われ、それを庇った平民の中高年の男性が犠牲になって亡くなった事、そして庇いきれなかったらしく母様も重症を負ったと。
「どうして! 魔法が使えなかったのか!」
防御なんていくらでも出来るだろうに。
短い緊急の伝言ではこれ以上の内容が無かったので、母様が得意の空間移動であるドアを作りだして実家へと急いだ。
母様が烈火のごとく怒ってきそうだ、と。
日の出とともに娼館を後にして空を見上げると、金色と赤みがかった光の朝焼けを目にして、母様への罪悪感を思い出した。
そしてダイチと名乗った男娼になぜか不安にも似た胸騒ぎと、懐かしいと思う気持ちとが混在してどう整理して良いか分からなくなっていた。
「母様に話すのが一番だけど、ミラがいるしなぁ」
伯父上とミラの関係は親族以上のものがあるのだろう、私は、血のつながらない甥っ子だから。
父様は愛情を恥ずかしくなるくらい注いで育ててくれたけど、転生者の前世持ちで生まれてすぐに覚醒した赤ん坊が、出生の秘密を理解してるとは思っていなかっただろう。
この体の遺伝子上の父親の為に一族郎党全てに処罰が下って、上位貴族も陛下から厳命を受けていたとしても、人の口に戸は立てられない。
母様と登城した時に囁いて来る奴らはどこにでもいた。
特に、どこぞの貴族令嬢は、父様の隣に並ぼうと母様を貶める為だけに血筋の話を出して、修道院へ送られることが増えて、もう知らない子供の振りをする事が限界だった時、それらをこっそり父様が潰していた事を知って驚きもしたけど、溜飲が下がる思いだった。
そして今では私の役目になっていた。
母様を傷つけたり、悩ませたりする輩はいなくなればいい、それが家の裏の家訓になっていた。
「リュシアンは私と母様を守る騎士だもんな」
「はい! 父様!」
こんな幸せな家族になれたからこそ、ミラの幸せを邪魔するわけにはいかなかった。
母様によく似たミラに、伯父上の心が動かないはずがないんだ。
今はまだちょっと、二人を見るのは辛いから、ちゃんと家族として幸せを祈れるようになるから、それまで待ってて欲しい。
だから、実家に帰省するのは心の整理がついてからって事で、セフレの所に顔を出してから小旅行に出ようと決めた。
魔法を使えば移動なんて何てことないけど、旅のだいご味は移動する時の景色だったり、先々の名物だったり特色だったりなんだからと自分の馬に乗って移動した。
「リュシアン、一人旅なんて大丈夫かい?」
「中年のおじさんにはきついかもだけど、私は若いからね。
旅先で何かお土産を見繕うよ」
自分より大分年上で中年と言うより初老と言った方が正解かもしれない。
お互いをセフレと割り切っての付き合いで、年上だからこその包容力に魅力を感じていた。
穏やかな笑顔でいつでも迎えてくれるから、つい、ズルズルとこんな関係を続けていたけど、今回の休みで気持ちを切り替えたら彼を一生の伴侶として誓いたいとも思っていた。
寧ろダイチって男娼のお陰で、彼の大切さが分かった気がした。
「楽しんでおいで」
「あぁ、行ってくる」
笑顔で送りだされて、彼は暖かい気持ちを持たせてくれた。
そして、その笑顔を見たのが最期だったのは、馬を走らせていた時に飛んできた鷹の報せだった。
湖のほとりを馬で走り、途中で見かけた動物を追いかけたりしながら、時々出会う人たちと挨拶を交わしながら進んでいた時だった。
まだ皇都を出て一日半くらいしか経っていなかったこともあり、今いる湖は比較的近場のリゾート地みたいな場所だった。
前世でドライブに行った中禅寺湖とか、そんな感じで緑がたくさんあって癒されていた。
ピィーイ、ピィーイ
独特の高い鳴き声が聞こえて空を見上げると、魔法鳥の鷹が急降下してくるところだった。
「何かあったのか!?」
皇族使用の魔法鳥が来るなんて、何か重大な事があったに違いなかった。
魔法鳥は母様が市井に出ている時に襲われ、それを庇った平民の中高年の男性が犠牲になって亡くなった事、そして庇いきれなかったらしく母様も重症を負ったと。
「どうして! 魔法が使えなかったのか!」
防御なんていくらでも出来るだろうに。
短い緊急の伝言ではこれ以上の内容が無かったので、母様が得意の空間移動であるドアを作りだして実家へと急いだ。
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