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男娼

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「ふっ、あは、あは、あははは!!!」

 いい気分だ。
 タツキもこの世界に生まれてた!
 随分、有名人じゃないか。
 確か、金色の魔法使い様だっけ? タツキの親って帝国最上の魔法使い様だっけ。
 父親は皇族の第四王子とか、恵まれすぎじゃないか。
 しかも、タツキって名乗るって、前世をバラしてる様なもんじゃないか。
 まあ、分からないだろうって思ったんだろうけど。
 部屋でタツキが出て行った後のベッドを片付けていると、ノックもなくいきなりドアが開けられた。

「おい、今朝の客がお前を指名するって、前金を置いて行ったぞ」

 娼館の受付をしている番頭の様な役割の中年男が、僕に教えてくれた。
 指名なんて三日にあげず、通って来なければ意味の無いものだけど、ダイチという名が気になって通って来るだろうって、思っていた。




 なのに、夜になっても、翌日になっても、タツキは来なかった。

 あの時、あんなにたくさん刺して、たくさん血を流すタツキが、やっと僕だけのものになったと思ったのに!

 腹が立つ、腹が立っておさまらない。
 この世界に生まれて? いや、この体に憑依したっていうのかな? タツキと一緒に死ねたはずなのに、僕だけ知らない場所に立っていた。
 こんな娼館の娼妓として生きた男の体で。
 こいつの体の記憶なんか全くなかった。
 ただいきなり知らない男たちに抱かれて、凌辱されて初めてこの体の男が所謂ウリ専なんだって理解した。
 
 前世の僕と同じだった。
 ウリをやってた時に連れて行ってもらった会員制のゲイバーで、初めてタツキを見た。
 隣に客がいなけりゃ、絶対に声を掛けてた。
 
 今とそんなに変わりないタツキ、僕はひと目見た瞬間に理解したんだ。

 「運命の相手」だって。

 じゃなきゃ、こんな異次元だか異世界だかで出会えるはずがないさ。

 なのに、なのに! 何で来ないんだ!
 迎えに来るべきだろ!!
 抱き合った時に、運命だって分かったはずなのに!

 そっか。
 また、殺しちゃえばいいんだ。
 タツキが僕を愛してくれないなら、また、次の世界で出会えば良いんだ。
 なんだ、簡単じゃないか。
 だってこの世界でも出会えたんだから、これは運命なんだ。
 
 早速、娼館から出て行こうとした所で、番頭から止められた。

「おい! 勝手に外へ行くな!」

「用事があるから行くんだけど、煩いよ」

 手に隠し持っていた細くて鋭いナイフで、番頭の喉を横一文字に切り裂いた。
 
「ぐひゅっ!」

「魔法道具って便利だなぁ。
 こんなナイフでしっかりキレるんだもんなぁ」

 それに、この世界は魔力がある。
 魔法がある。
 僕だって結構な魔力量だと思うんだよね。
 ちゃんと測定した事ないけどさ。



「あー、魔法もあるし、タツキの今の親兄弟、親戚も全員殺しちゃえば良いんだ」

 タツキを殺すより、邪魔な奴らを殺しちゃえば、僕と二人じゃないか。
 そうだ、そうしよう~。

 娼館に火を付けて、綺麗に着飾ってタツキを迎えに行った。
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