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ドラニスター王
しおりを挟む肥沃な大地を持つドラニスターは、野性味あふれる風貌が特徴の人が多い国で耳の形が違えば、獣人の国と言われていたかもしれない国だった。
王宮をウロウロしながら待つ王の元へ、王妃になるべくトルシエ・ビランコ公爵令嬢の到着が知らされると、一目散に出迎えの間へ走り出したヒグマがいた。
王宮内のごく一部の者だけが知ってる真実で、ドラニスターの王はその姿をヒグマに変えることが出来た。
「うぉおお! トルシエ嬢が到着したのだな?!」
駆けるヒグマに並列して走る宰相である狼が、その首へ噛みついて走るのを止めさせた。
「陛下! その姿ではなりませぬ! 王妃様はその姿を知りません! 一生秘密にしなくては!」
そう言われて出迎えの間に辿り着く一歩手前で、辛うじて人の姿に戻ることが出来た。
「いい加減に落ち着きなさい! 王妃は私たちドラニスター国の秘密を知りません。
決して、漏洩する事の無いようにお願いしますよ?」
狼から人の姿に戻りつつ、しっかりと小言を言って王の衣服の乱れを整えた。
「だが、子が出来れば分かってしまう事だ。
それならちゃんと」
「では話した結果、この婚姻が結ばれなかった場合どうなるとお考えですか?
獣が国を治めている、そんな事を許さない人族も大勢います」
「それは、そうだが」
「大体、今迄国内の諸侯から王妃を選出しておりましたのに、何故、陛下は他国の公爵令嬢を……」
神経質にイライラしながら、小言が説教へと変わって行った。
「ビランコ公爵家は、この国へ移住されるのだ。
おいそれと出来る判断では無いだろう。
しかも公爵家と言う立場に宰相と言う立場を捨て、一番下の息子に王位を取らせる気でいると聞き及んでいる。
そんな一家が獣人と言う事くらいで」
「甘すぎます! どんなにいい人でも、我ら獣人と人では大きな隔たりがあるんです。
それを一番良く知ってるじゃないですか!」
「そうだ、だが、努力をしたい。
トルシエは私に自由に選択すべきだと教えてくれたのだ」
「ふー、分かりました。
王妃様が驚かない事を切に願っていますよ」
宰相は受け入れてもらえなかったときは、ビランコ家全員使用人に至るまで裏の庭に埋めてしまえばいい、そう考えていた。
「トルシエ、ここがこれからお前がすむ王宮なのだな」
「うむ、トルシエ嬢を幸せにします。
この国にも、私の傍らにも彼女が必要なんです」
切実な表情で、一国の王が公爵夫妻に頭を下げた。
「お父様、私も初めて訪れた国です。
まだ何がどうなるのか分かっておりません。
ただ、ドラニスター王に求められた、それが幸せだと思っております」
しっかりとしたトルシエ嬢の言葉に感動で涙を流す面々に、本当なら感動的な場面のはずなのに思考が突き抜けた家族は、トルシエの子供のころのエピソードなんかを語り始めていた。
「おやめください! お父様!
お母様も止めてください!」
「いやまて、私は聞きたいぞ。
それに兄上様とそちらは婚約者殿ですね、末永くよろしくお願いいたします」
僕を見て、婚約者だと言い切ったと言う事は、アス様は婚約者だと言ってあるってことだ。
「いずれ近いうちには婚約式をするので、ぜひ出席してほしい」
僕を無視して約束を取り付けてる当たり、さすが宰相になる男ですわ。
大分面白くない僕は、アス様から一歩離れて立った。
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