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ドレスとコスプレ
しおりを挟むあと数日に迫った結婚式の準備で、王宮も城下もあわただしくなっていた。
王の結婚式だから賓客も相当なもので、既にドラニスター国へ来て王宮内に滞在する他国の王族、城下の貴族街で屋敷を借り上げて準備をする遠方の貴族なんかで溢れかえっていた。
それにコスプレの話を詳しく説明したら、トルシエ嬢が僕に結婚式のドレスのデザインをと言って来たのもあって、ちょっと忙しくしてるのも事実だった。
ただ、さすがにそんな数日でドレスなんて出来るものではないから、披露宴で着るドレスのアレンジ程度を引き受けることになった。
「イル、無理してないか?」
僕が手掛ける事になったコスプレ事業と結婚式関係のドレスを心配して、たびたびこうやって声をかけてくれるようになったんだけど、だがしかし! この上なくウザい。
「ねぇ、アス様。
僕は、僕のやりたいことをお仕事としてやらせてもらってます。
そりゃ、学園は中退だし、家門からも除籍されてますけど、この国では十五歳で成人扱いだって言うじゃないですか。
立派な社会人なんですよ。
いつまでも保護者が職場に来てたらおかしくないですか? 僕は恥ずかしいですよ」
それに、前世って言っていいのか分からないけど、一応フォロワー数で食べて行けるくらいのことはしてたんだから。
「しかし、もしイルの可愛さに懸想する者が現れたら」
「う~ん、僕は浮気性では無いと思うし、一応今はアス様とお付き合いしてるわけですから、心配しないでください」
とは言え、逆の立場だったら嫌かもなぁ。
しかも答え的には保留って感じだし、恋人らしい事も何にもしてないし。
馬車の中でほっぺにキスされてから、実は何も無かった。
寧ろ、舞踏会の時とか、ここまで来る道中の馬車の中の方が、恋人ぽかった気がした。
待てをさせておいて言える事じゃないんだけど。
「私たちは付き合ってはいるが、何も、その、恋人らしい事は出来ていないではないか」
モジモジと顔を赤くしてるイケメンって、ヤバイわ。
「アス様もこの国の宰相補佐を始めて、法律とかを学ばれるのに忙しいじゃないですか。
それにトルシエ嬢の結婚式が終わったら、色んな事が落ち着くだろうしそこからでも遅くないと思ってるよ?」
そう、僕たちはまだ始まったばかりで、この世界に入り込んで数週間しか経っていなかった。
ようやく世界と言うか、この国の基準と言うかゲームでは分からなかった事を、現実として理解し始めたばかりで、恋人とかカップルとかそう言う恋愛に気持ちを割く余裕も無かったんだ。
「私がイルを好きだと言う気持ちは伝わっているだろうか?」
不安げに僕に軽くハグをするアス様の背中をポンポンと叩いて、分かってる、とだけ答えた。
本当は嫌いじゃない。
寧ろ、多分、好き。
イケメンで頭の切れる宰相になるべく努力してる彼が、僕の前や家族の前ではポンコツだって所も好きだ。
でも、まだ、その気持ちを認めるには、ちっぽけなプライドが邪魔してるって自分でも分かってた。
「もうすぐ、僕の初めてのコスプレ衣装が出来上がるので、それを一番最初に見てくれたら、嬉しい……」
自分で言ってて恥ずかしくなったけど、今僕がアス様に応えられる精一杯の気持ちだった。
「もちろんだ」
一際嬉しそうに笑うアス様の笑顔に、イケメンの破壊力半端ねぇ、と思った事は言うまでも無い。
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