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【1章-1】神聖の血を継ぐ者
1章-1
神聖の血を継ぐ者-1
ーーこの世界にまだ天界と魔界が繋がっていた頃、神と魔王はこの世界の支配権を巡り、争いを起こした。
人間は地族と呼ばれ、その神と魔王の争いに巻き込まれた。彼らは生き残るために、選択を迫られた。
ある者は神に身を捧げ、天族となり、ある者は魔に身を落とし、魔族となった。
そしてある者は支配に抗い、獣族に進化し、ある者は支配から逃げ、地族を維持した。
彼らは、「平和な世界」のために争い、血で血を洗う戦いを繰り広げていた。たとえ、この世の繋がりから、天界と魔界が消えても、人間の報復の連鎖は止まらなかった。
この地では神と魔王から与えられた「遺物」を使う「司令」により、強化された人間、天族と魔族の争い、「天魔戦争」と呼ばれた争いが続き、大地は荒れ、死体は積まれ、負の感情に支配されていた。
…「楽園」が作られるまで。
天界と魔界、二つの遺物が置かれた台座を、天族と魔族の司令、そして地族と獣族の代表者が囲む。天族と魔族の司令が魔力を注ぐと二つの遺物は浮き上がる。それに続いて、地族と獣族の代表者も数少ない魔力を注いだ。
二人の司令が再び遺物を操作する。相反するはずの遺物は、地族と獣族の魔力を受け取ると互いに結びつき合い、融合した。その光は争いで朽ち果てた大地を神々しく照らした。
四種族の代表は魔力を注ぎながら謡う。
ー 種火を作り 篝火を託す
焼け跡は歴史となり 道標となる
我らは違い 我らは同じ
人の証を ここに残す
謡い終えると、置かれた台座の周りの地が盛り上がり、融合された遺物は天に向かい光を放った。盛り上がった大地の周りの荒れ果てた地に草木の生命が宿り、天に放たれた光は透明で大きな光の盾を築いた。
四種族の代表はそれを見届けると誓いを立てた。
「神と魔王は消え、我々人の時代が来た。今、ここに四種族の誓いを立てる。」
「我らは天から恵みを与え、すべての種族を守護する盾を授ける」
「我らは地から恵みを与え、すべての種族を守護する力を授ける」
「我らは誓いの証人者となり、すべての種族の平和を約束する」
「我らは誓いの伝道者となり、すべての種族の調和を約束する」
「「「「我らは誓おう。この楽園に四重奏が永遠に奏でられることを」」」」
天の英雄、スピカ。彼女は天の「規律」を破り、人としての調和を唱えた。
魔の英雄、サラ。 彼女は魔の「欲望」を抑え、争いの連鎖を止めた。
地の英雄、ショウ。 彼は地の「知恵」を広め、楽園の礎を作った。
獣の英雄、ジョセフ。彼は獣の「体力」を使い、四種族の夢を叶えた。
誓いの声は重なり合い、調和の音色を響かせた。
エデン。...「楽園」の物語はここから始まった。
ーーー
「はあ...はあ...ぐッ...うぅッ....」
「...天、魔、地、獣、すべての血が流れ込む...俺に融合する...」
「この痛みは...覚えている...俺たちを切り捨てた、...痛み...」
「ようやく...解放される時がきた...」
「さあ...「楽園」を作ろう...。」
ーーー
快晴の空の西に一つの光が見える。楽園を支える融合遺物は変わらず今日を照らしている。
天族、魔族、獣族、地族、四種族が生きる国、エデン。その東に位置する神聖都市ポラリスの神聖闘技場で、最強の戦士のいる、警備隊支部を決める大会、警備隊対抗戦、その事前試合が開かれていた。
警備隊対抗戦は、エデンの建国記念祭の祭事の一つであり、エデン設立当初から存在する歴史ある大会だ。その内容はいたってシンプル。東西南北、そして中央の各警備隊支部の、拳を武器に戦う「戦士」が所属する、警備隊第一隊隊員から代表者2名選ばれ、最大3試合、タイマンの獣族のリングルール(時間無制限、降参か再起不能のKOもしくは3回ダウンによるTKOによる決着)に乗っ取って、殴り合い、2勝先取した警備隊が勝ちというルールだ。互いに1勝ずつした場合は、勝った者同士で戦い、勝敗を決める。
現在行われている試合は、祭事の際、決勝戦で戦う支部を決める事前試合であり、現在は、四角いロープに囲まれたリングでタクティカルグローブを身に着けた、東警備隊の天族の男と西警備隊の地族の男が拳を交わしていた。
「フッ!はあっ!」
「ッ!おらああッ!」
互いにこの日のために鍛え上げた肉体を盾に近距離での応酬が続いていた。
一試合目は既に終わっており、東警備隊の地族 対 西警備隊の天族 の勝負は、東警備隊の勝利で決着がついていた。
今戦っている西警備隊の地族はこの戦いに勝利することが必要であり、かつ、連続して1試合目勝利した東警備隊の地族に勝たなければ決勝へ行けない状況であった。
「...ッ!はあ..はあ...」
しかし、西警備隊の地族の男は既に一度ボディによるダウンを奪われており、くっきりと6つに割れた腹筋は何度も打たれ変色し、東警備隊の天族の男より動きが鈍くなっていた。
「シッシッ、はあッ!」
天族は、攻撃頻度が落ちている地族を逃がさないよう体格を活かし、圧をかけ、攻め立てる。
「グッ...!!」
ガードしている腕に重いパンチが容赦なくぶつけられ、地族の男はじりじりと後退していく。
彼は必死に耐え、チャンスを待っていた。
「ふんッ」
天族がガードを崩すためのアッパーを放つことを。
それを完全に見切り、躱すと同時にもらったお返しとばかりにスキのできた天族のボディに豪快なフックを叩き込んだ。
「ッグうッ...!」
確かな手ごたえに地族の男は気持ちが高ぶる。その後の天族がひるむことを予測し、今度はこちらから足を前に踏み出し、テンプルに向けてアッパーを繰り出そうとした。
しかし、その予測は甘かった。天族の男は攻撃を即座に繰り出していた。
狙いは一番ダメージを受けている地族の右脇腹。そこに前に踏み出していた相手の反動の乗った天族の男の拳が入った。
「ぐおうッッ!?」
自分のアッパーが着弾する前に弱点を打たれ、大きな呻き声を上げると共に、地族の男の構えは完全に崩れる。
そのスキを天族の男は逃さない。振るう拳は綺麗な弧を描き、止めをさすように相手の鳩尾を突き刺した。
ドスンッッ!
「カハッッッ!」
重い打撃音が会場に鳴り響く
地族はその衝撃を受け、目を見開き、そのまま前のめりに倒れた。
「ダウン!1、2、...」
審判によりダウンの宣言が言われ、カウントが数えられていく。
「アッ...クッああああッ」
ボディブローによる二度目のダウン。彼は四つん這いで悶絶しつつ、唾液を垂らしながら目の前の敵を見上げた。
太陽に照らされ神々と輝く白銀の髪に翡翠のように透き通った緑の目の中に天族の特徴である菱形の瞳が見える。鼻筋も通り天族らしい整った美しさとは裏腹に、鍛え上げ盛り上がった胸板、無骨な凹凸がある8つに割れた腹筋、強烈な一撃で自分の腹筋を破壊した太く力強い腕。まさに男が見ても惚れる強い漢がそこに立ち、こちらを見下ろしていた。
「...終わりか?」
カウントが進む中、天族の男は煽るかのように言う。
「...天族野郎ッ...ッ...なめるなああッ!」
屈辱による怒りに身を任せて、苦痛を乗り越え、カウント8でなんとか立ち上がり、目の前の天族を睨みつけながら戦意を示す構えを取る。
別に天族の男にダメージが入っていないわけではない。その整った顔と体には何度も拳をぶつけており、彼はロープにもたれかけ、荒れた呼吸を整えていた。
まだ、チャンスはある。そう信じて地族の男は拳を握り直した。
「続行ッ!ファイッ!」
カーン
継続の鐘の合図があると、力をふり絞り、地族の男は天族の元へ雄叫びを挙げ近づいた。
「うおおおおおおおおッ」
既に後がない彼はほぼガードを捨て、インファイトを仕掛ける。天族の男もそれに応じて殴り合いが始まる。
バスッガッ
「クッ..ッ...!」
拳が先ほど強撃を与えた腹部に当たり、天族の男の顔が歪む。しかし、ダメージ差は歴然であり、倍以上のダメージが彼を襲う。
「ブフうッ、がはああッ」
顔面とボディのコンビネーションをまともに食らう。
食らいつこうとしても攻撃が当たるたびにひるんでしまい、瞬く間に背中にはロープの感触がしていた。
「ぐうッ...!」
地族の男は賭けに出るしかなかった。最後の渾身の一撃を、あの嫉妬する顔にぶち当て逆転勝利を狙った。
「おおおおおッッ!!!」
が、
グボオオオオッ
「ごああああああああああッッ...!?」
彼の全力の拳は空しくも空を切っていた。代わりに天族の男の拳が鈍い音を立て、再び彼の鳩尾を抉り上げていた。
「あ...があ....」
彼の口から唾液が吹き出す。一瞬宙に浮くかのように持ち上がった体はそのまま意識とともに仰向けに地に落ちた。
3ダウン。試合終了のゴングが鳴る。
「勝者!東警備隊!アッシュ!」
そういわれ、審判の男はアッシュの左手を挙げる。アッシュは特に喜びもせず、彼はただ天を見つめる。
代表の二人が勝利をおさめ、東警備隊は決勝の舞台へと駒を進めた。
ーーー
「やったな!アッシュ!これで警備隊最強まであと一歩だ!!」
そういって酒場カウンター席で肩に手を回し、喜んでいるのは、警備隊の先輩に当たるユウヤだ。
地族と魔族のハーフで東警備隊隊員の中で一番親しく、そして自分に並んで東警備隊の中では実力者で、切磋琢磨しあうライバルでもある。そして今回の警備隊対抗戦のパートナーだ。
「先輩のおかげです。俺はまだまだ...今回の試合も、反省点が多かった。」
実際、序盤苦戦して、それなりにいいパンチを何回かもらっており、試合終了後は医療ポッドでの治療が必要なラインだった。
「お前、確かに強いけどよ、熱くなって突っ込みすぎる傾向あるよなぁ。あ、これ日々の業務も含めてな。」
「...わかってます。意識しようとしているんですけど、熱くなるとつい...はあ...」
「まあ、そこがお前の良さでもあるのは違いないし、とりあえず、今日は勝ったんだから、祝おうぜ!」
「...ありがとうございます。」
そういって二人はノンアルコールの酒の入ったお互いのグラスを当てた。
アッシュはエデンの東警備隊に属しており、普段は主にパトロールや暴力事件などの武力解決が必要な事件の対応をしている。
本拠点の中央本部と支部として東西南北の4都市にそれぞれ拠点があり、訓練生として厳しい訓練を行った後、各支部に配属される。国家の安全規約上、警備隊員は種族が偏らないよう、バラバラに配置される。とはいえ、戦争時代の各拠点となった種族、東警備隊のいる神聖都市ポラリスで言えば天族の比率が高く、アッシュもまた、天族の一人であった。
彼の所属する警備隊第一隊は先ほど述べた事件解決のほか、エデンの名物である警備隊対抗戦の選手として出場することが義務づけられている。これは警備隊の武力向上とエデンの盛り上げを兼ねたもので、「天魔戦争」が終わり、エデンができた頃から続いている伝統でもある。
歴史を重ねるごとに規模は大きくなり、その大会と同時に他イベントや出店なども出店する「建国記念祭」の一部となった。初日はここ神聖都市ポラリスの神聖闘技場で行われ、街の住人や他都市からの観光客からも人気が高い大会だ。
本選で勝てば賞金がもらえ、大衆から人気が出るのもそうだが、なにより各支部の強さのバロメーターとして視認されることもあり、警備隊第一隊の男たちのプライドバトルの場でもある。
「決勝の相手は...北警備隊か...。」
「...あいつがいるのか...」
「あいつ...?」
アッシュが問うと、ユウヤは少し俯きながら答えた。
「北警備隊の魔族...ブラインだ。」
「前回...去年の東警備隊は3位だっただろ?俺はその時東警備隊の二人目として出場したんだけどよ、事前戦でそいつにボコボコにされてな...ダウン一つさえ奪えず、2-0のストレート負けして、決勝に上がれなかったんだ。」
「また、再戦できる...次こそは...必ず...ッ」
先輩のテーブルに置いた手は拳を作り、強く握っていた。
共に鍛錬を積んできた同志として、自分も気持ちが熱くなった。
「先輩ならできます...今度は俺たちがストレート勝ちしましょう。」
そう先輩の意思に応えるよう、気持ちを伝えた。
「へへッそうだな!ここまで鍛えたんだ。お前と俺がいれば負けるわけないよな!」
そういって、彼は雄々しい腕を掲げ、力こぶを作り二カッっと笑う。誰に対しても気さくで明るいムードメーカーであり、表情の乏しい自分とは正反対。その親しみやすさに少しあこがれていた。
「...俺が、必ず先輩に勝利の景色を見せます。」
そういい、自分も鍛えた腕を上げる。
「おう!頑張ろうぜ!アッシュ!」
魔族の血が入り、やや褐色肌の地族である先輩に映える青色の目と自分の目を合わせる。
互いに挙げた腕を合わせ、勝利の誓いをした。
へへっと言うと先輩は正面を向いてグラスの飲み物を飲み始めた。自分も少し笑い、顔を正面に戻して飲み物を飲んだ。
そして話は戻り、自分の次の対戦相手についてになった。
「そういや、北警備隊のもう一人の奴...次のお前の相手は...獣族の新人、レックスって奴だな。去年優勝した南警備隊の奴に余裕のKO勝ちを収めたらしい。お前に並ぶくらい注目されてるな。」
「...。」
レックス。新人でありながらも今回の警備隊対抗戦の北警備隊の代表に選ばれており、前優勝者を圧倒したことからも名が上がっている一人である。
そして自分も...天魔戦争時代を経験している「四天戦士」の一人、現在東警備隊の隊長を勤めるジーク、その息子。そして開催都市、神聖都市ポラリスに属する「天族」の警備隊員として、新人ながら注目、期待されていた。
「父さ...隊長の名に恥じないよう、誰だろうと倒す。勝って、自分の強さが本物であることを示してやる。」
結局、いつ誰と当たろうが倒すだけだ。そう自分に言い聞かせた。
「おう!その意義だ!ぶっ倒してやれ!」
そう声を張り上げ、先輩は自分の肩に手をやる。
「...でも、いくらジーク隊長の息子だからって気張りすぎんなよ。お前はお前だ。俺がわかってるからな。」
続けて小声でそういい、自分の背中を軽く2回叩いた。
「...ありがとうございます。先輩。」
ジークの息子としてより、一人の天族の警備隊員として見てくれているところ、それがアッシュにとって嬉しかった。だからこそ、父さん以外で一番心を許せる人間なのだと改めて思った。
再び談笑をしていると傍のラジオからあるニュースが聞こえてきた。
「続いて速報です。北エデン、機械都市シラヌイで、魔族による暴力事件が発生しました。既に警備隊により暴徒は鎮圧されましたが、一般人と警備隊合わせて7人に被害が及んでいるとの情報が入っています。ここ半年で類似する魔族による襲撃は6回発生しており、警備隊は因果関係を調査しています。
…続いてのニュースです。魔導ネットワークを開発した、「カイセイ」のシュンタ社長が行方不明になった事件が発生し約9カ月が経過しました。依然として行方が掴めておらず...」
「...。」
先輩は自分との談笑を止め、そのニュースに聞き入っていた。
今、エデンで一番話題になっている魔族による襲撃事件。突然無造作に人を襲うのが特徴で、エデン各地で発生している。有名人の行方不明事件といい、少し物騒な話題が世間に広がっていた。
「...最近、多いですね。関係無い人を襲って、なにを考えているんだ...?」
「ここ最近、魔族の警備隊員...いや、市民さえ、肩身が狭くなってる。「神託の声」はこの事件を利用して、あることないことを勝手に捏造して、自分たちが正しいと活動を活発化させている。その活動を抑える父さん達のことまで侮辱して...どちらも許せない。」
自分は困惑と怒りが混じった感情でそう意見を述べた。
何度も繰り返し行われているが故に、現在、東警備隊がいる、神聖都市ポラリスでは魔族を忌み嫌う天族の宗教団体「神託の声」が魔族に対しての抗議運動を各地で開始しており、「神」による天族至上主義を布教している。彼らは、このエデンの建国のために尽力した四英雄の一人、天の英雄スピカを愚者と呼び、それに連なる直属兵、「四天戦士」、その一人であり、自分たちの活動の邪魔をする警備隊隊長ジークのことを反逆者と呼んでいる。その息子である、自分も彼らにいろいろ言われ続けており、今大会もコネで手に入れた代表とホラを吹かれていた。
もちろん天族そしてここに住むそれ以外の種族の大半は、彼らのことを疎ましく思っているが、この都市でも起きた昨今の事件によって、戦争時代、元天族の拠点だった神聖都市ポラリスは特に、魔族に対しての当たりが厳しくなっていた。
「...。そうだな。」
ユウヤは深い溜息をつくと、自分の発言にうなずいた。
「事件はともかく、29年前まで続いていた天魔戦争の再来か!とかいうメディアもいるけど、おおげさだよな。今の時代、魔族にそんなことしてなんのメリットがあるんだか。」
天魔戦争は29年前まで起っていた天族と魔族の争いであり、多くの犠牲者を互いに出している。
しかし、既にそれは過去のもの。四種族の誓いが結ばれて以降、現在のエデン、特にエデン中央にある楽園首都セントラルでは種族関係なく様々な職につき、共存している。若い世代を中心に種族の差別による隔たりは薄くなっていた。
この騒動にはさまざまな憶測が流れており、ここ最近のメディアを賑わせていた。
「それは、俺もそう思います。...でも、「神託の声」が魔族を嫌うように、魔族の組織「アビス」も天族を嫌って、そういうことを仕掛けている可能性はあると思います。」
「「アビス」は西警備隊の奴ら曰く、自分たちの縄張り以外に関わるような奴らじゃないらしいけど...。...わからんな。」
西エデンの歓楽都市グラードのメインともいえるカジノを運営している、魔族の組織「アビス」。彼らはその独自の組織を動かし、歓楽都市を支えているが、現地の西警備隊とは一切連携を取らず、中には行き過ぎた「私刑」を行うこともあるため、危険視されている。基本的にその縄張りで「余計なこと」をしなければ何事もない...と言われているが、警備隊でも内部事情を知るものはほとんどいないため謎の多い組織となっている。
「隊長クラスが連携して動いているようだし、いつかは俺たちにも詳細な情報が来るだろうけどな。」
自分の意見を聞き、頭に両手を組みながら、先輩は適当な考えを言う。
「...そうですね。なんだか、不穏な感じがします...コルミロ抗争の時のように、大きくならないといいですけど...。」
南エデンの鉱山都市コルミロで起こった獣族のギャング「ウロボロス」と警備隊との抗争。11年前、エデンが建国されてから初めて起こった大規模な争い...警備隊そして市民の中に死者が複数人出るレベルで最悪なものだった。ウロボロスは壊滅したものの、幼かったアッシュにも、その時のメディア媒体で見た映像は目に焼き付いていた。
「まあ、ともかく俺たちが今できることは、その脅威からこの拳で市民を守ることだ。大会もだが、業務も頑張ろうぜ。アッシュ。」
先輩は考えるのをやめて、こちらを向いて言った。自分もそれに応える。
「...はい、先輩。強さだけじゃなく正義のためにこの拳ある。そう教わっていますから。」
幼いころから教わっていた父さん、隊長ジークの教え。それを胸に自分は警備隊の一歩を踏みだしたことを、改めて意識し、最後のグラスの中身を飲み干した。
ーーー
先輩と別れ帰路につく。
…独りになるといろいろ考えてしまう性質だ。
次の試合、建国記念祭は3日後。先輩にはああ力強く言ったものの、やはり重圧を感じていた。
戦争時代、猛威を振るった、天族最強と名高い「四天戦士」、現東警備隊隊長、ジークの息子。その名に恥じぬよう、欲抑えてひたすらに鍛錬を重ね、強靭な肉体を手に入れ、東警備隊で一番の実力者として新人で対抗戦の出場を勝ち取った。
名に負けない強さを手に入れたと、...「七光り」と暴言を吐く、「神託の声」の信者が言うような虚勢の男じゃないと自負しているつもりだ。
だが、前回大会優勝者を余裕のKOで勝ち上がった同じ新人が相手となると、消そうとしても消えない不安が残った。
「...はぁ...」
少し大きい溜息をつくと、携帯端末に着信が鳴った。
…ジーク...父さんからだった。
「...ジーク隊長。こちら第一隊、アッシュです。どうしましたか。」
父さんからとわかっていても業務で私情を入れないよう、敬語を使って話す。
「業務連絡じゃない。個人的な連絡だ。...父さんいいぞ。」
そういい、優しい声でアッシュに話しかける。だいたい返答の声色でわかるがいつも丁寧に状況を言ってくれる。
「...父さん。どうかした?」
ここ最近はジークが忙しく、あまり親子のプライベートな時間はなかった。
久しぶりの親子の時間に少し声が上ずった。
「今日の警備隊対抗戦の事前戦について一言、言っておきたくてな。アッシュ、決勝戦おめでとう!まぎれもないお前の力で得た機会だ。」
ジークは嬉しそうに息子の勝利を祝った。
純粋に嬉しかった。しかし、アッシュは普段通りの情緒で返答した。
「...ありがとう。父さん。でも、本当の戦いはこれからだ。俺が目指さないといけないのは、ただ優勝だけ。」
「東警備隊が一番強いことを俺が証明して、父さんが見た、同じ景色を見るんだ。それまでは、...あまり喜べない。」
そう強く答えた。
「ハハッそうか。アッシュ、この大会代表に選ばれるだけでも名誉なことなんだぞ。もっと喜んでいいのに...お前は昔から真面目だな。」
ジークは少し寂しそうに答え言葉を続ける。
「だがらこそ、父さんも、お前が勝ち上がってその夢を叶えられることを信じてるよ。自信を持て。お前は東警備隊第一隊の中で一番強いんだからな。」
そう背中を押すようアッシュを励ました。
「だが、無理だけはするなよ。お前は頑張り屋さんだからな。父さんはそれが一番心配だ。...アッシュ、なにか不安はないか?「奴ら」に、なにか言われてないか?父さんに吐き出していいんだからな。」
一瞬、言葉がでかかるがそれを噛み殺し、平静を装った。
「大丈夫。心配してくれてありがとう。...父さん、忙しいんだよな。わざわざごめん。」
その謝罪には、不安がないという嘘をついたことも入っていた。
「なんで謝るんだ。俺からかけたんだぞ。ちゃんと俺の口からお前を褒めてあげたかったんだ。このくらいの時間、痛くも痒くもない。」
「俺の方こそ、あまり構えてやれないですまない。お前には苦労をかけてばかりだ...本当は、もっと...」
アッシュが物心つく頃には母親は亡くなっており、父子家庭で育った。子供の時からジークは警備隊隊長として忙しい日々を送っていた。勤務の日は帰ってくるのが夜遅くが当たり前であり、それまで一人で家にいることが多かった。
それでもできる限り、自分との時間を大切にしてくれていたことは知っているし、大人になった今、父親の仕事の大変さはよく理解していた。
「父さん、もう子供じゃないんだ。わかってる。」
「...悪いな。」
ジークは小さくそう答えると、咳払いをして、声の調子を戻した。
「お前たち以外の東警備隊は、当日、神聖闘技場の警備を担当するが、試合の時間、警備隊総司令、クレイドルの好意でお前の雄姿を見れることになったんだ。その時を楽しみにしている。...頑張れよ、アッシュ。」
「...ああ。」
自然と拳に力が入った。
「それじゃあ、また明日だ。鍛錬は仕事に支障がないくらいにしとくんだぞ?」
「わかってる。じゃあ。」
そう言って、連絡を切った。
言葉の節々から父さんの愛が伝わってきた。
...無理しているつもりはない。...でも。
みんなの期待に応えたい...応えないと...。偉大な父さんと、母さんに相応しい漢として...。
聖都の闘技場で、歴史ある大会で勝利を収めて証明しなくては...コネなんかじゃない。神聖の血を継ぐ者としての強さを...!
…。
「...少し走りこむか。」
不安を消すため、少しでも鍛錬して帰ることにした。
ーーー
いつも走りこむ場所は聖都から離れた人気の少ない旧街道。周りは過去の戦争の遺産である白い建物の残骸と自然が一体化しているものが多く、この先にある星見の丘から見る景色は神聖都市を一望でき、楽園首都の中心にあるセントラルタワーの最上階の祭殿、そこで輝く融合遺物が遠く、小さく輝いているのが見える絶景スポットだ。
小さい頃はよく、この道の先にある「星見の丘」という場所で、父さんと一緒に景色を見ていた。
夜風を浴びながら集中して自分と向き合って走れることもあり、自分のお気に入りの場所である。
「はあ...はあ...」
煌めく星と災厄を防ぐ天の盾の輝きに照らされ、魔の恵みの得た草原の道を孤独に走り込む。
自分を追い込むことで少しでも不安を消すために。
その静寂の最中、突如大きな破壊音が響いた。
「...!何だッ!」
そう遠くない走れば数分でつく建物からだった。あきらかに人為的なもの、そう思い、考えるよりも先に体が動いていた。
ーーー
「...!」
音が鳴った現場に到着する。そこはいつ何のために使われてるかわからない昔の廃倉庫だった。
その中には3人いるのがわかった。
2人は倒れており、一人は地族の男、もう一人は獣族、どちらも服は破け、ほぼ上半身裸。そこそこ鍛錬された体つきをしているがその体はアザと血だらけであり、白目を向いて気絶していた。
そしてそのすぐそばに立っている男。濃い褐色肌に黒い髪の上から角が生えている典型的な魔族。そしてその横顔に見覚えがあった。
「指名手配の魔族...ゼル...ッ」
今晩でもニュースになっていた、魔族の連続襲撃事件、その実行犯の一人とされている男。逃亡し、行方をくらませており、度々同様の現場で目撃報告があり、危険度が高い判断で多額の懸賞金がかけられている。
「...誰かと思ったら、...ハハッ面白い。新人の天族の坊やじゃないか。」
そういい、彼は赤い眼差しと共にこちらに体を向ける。それだけで強さがわかった。
着ていたシャツは開いており、そのはだけた部分から濃い褐色肌の筋肉の塊をのぞかせていた。大胸筋は大きく張り、残ったシャツに綺麗なラインと影を作っており、大きく開いた広背筋に沿ってくっきりと見える外腹斜筋と8つに割れた彫刻のような凹凸を持つ厚い腹筋が現れ、腕を捲り見えてる筋肉は太く綺麗な弧を描き、一つ一つの筋肉の筋と血管が露わになっていた。
自分の父親、いや、それ以上の筋力の持ち主...姿を見て少し圧巻していたが、すぐに気を戻し、指名手配犯に向かって警告をする。
「手を頭に組んで、そのまま伏せろッ!さもなければ武力行使に移る!」
指名手配犯を捕まえるのは第一隊の仕事であり、警告による命令に従わない場合は武力行使に移ることができる。ゼルを睨みつけ、拳を構えて戦闘態勢をとる。最近の襲撃の件もあり、いままで以上に声を荒げ警告した。しかし、彼は一切動じずにやけた顔で答えた。
「ふん、武力行使か。...まさか俺とタイマンでやりあうと?」
「「スピカ」の息子...いや世間体を考えてジークの息子にしとこうか。自分を買い被りすぎじゃないか?」
「...!お前、どこでッ!」
スピカ、自分の母親の名前...!それは父親のジーク含めごく一部しか知らないはずの事実だ。
なぜ...この指名手配犯は知っている...!?
「知らないわけがないだろう?ああ、知らない訳がない...。」
ゼルは目を閉じながら答える。
「...ッ!尚更だ。指名手配犯、地に伏せろッ!」
そうさらに声を荒げ命令する。
魔族はゆっくり目を開け、臨戦態勢をとる警備隊に対し、口を開いた。
「...俺にしか興味がないのか?もっとお前が気にするべきとこはあると思うが。」
ゼルは地べたにひれ伏した二人に一瞥した後、一切態度を変えない自分を見て、嘲笑った。
「まあ、ちょうどいい。教えて欲しいか?なら、ほら、お前の手で俺を捕まえてみろ。」
「その拳をぶつけてくるなら、俺が直々にお前を「教育」してやろう。」
そういい、彼は両手を広げ、まるで体を見せつけるかのように挑発してきた。
答えは決まっていた。高額な懸賞金の危険人物、次いつ現れるかわからない。魔族の襲撃事件にかかわりがあるかもしれない。
それに、スピカの息子であることを知っている理由...。
ここで倒して、俺が暴く。そのための力だ。
彼の気持ちは正義心で熱くなっており、目の前の指名手配犯を倒すことだけを考えていた。
「従わないんだな。なら実力行使を開始する!」
そう自分を鼓舞すると、ゼルに向かい走り出し、躊躇なく顔面に向かって拳を繰り出した。
しかし、彼はなんなく躱し、続けざまに繰り出した攻撃も最小限のバックステップでよけていく。
「...ほう、なかなかいい拳だな。当てれば俺といい勝負ができるかもなあ?」
「ッ!今その減らず口、黙らせてやるッ!」
煽られカッとなったアッシュは休まずパンチを繰り出す。
ゼルはそれを嘲笑いながら回避するだけで、一切攻撃しない。
「どうした?当てないと捕まえるどころの話じゃないんじゃないか?」
「ッ!!」
余裕と言った表情で挑発をやめない彼に対し、アッシュは一度拳をおろし、立ち止まった。
(ッ...冷静になれ...あいつはわざと軌道を読んで寸前での回避に集中している...ならッ)
「はあッ!!」
アッシュはゼルの顔面に向かい大振りの拳を振るう。
「ふッ」
ゼルは余裕の表情でバックステップを踏み、躱す。しかしそれがアッシュの狙いだった。
「うおおおおおッ!」
「ッ!?」
アッシュは大振りの拳は降りぬかず力をすぐ抜き、そのままゼルの体へ体当たりした。
重心を後ろにずらしていたゼルはそのまま後方に吹き飛び、体制が崩れる。そのスキを逃がさずゼルのボディに重い一撃を叩き込む。
ドスッ
「んっ...!」
その一発に、初めて魔族の表情に苦痛が生まれる。
初めて当てた彼の腹筋は鋼のように固く、鈍い音と共に自分の腕に大きな反動が伝わった。
しかし効いてはいる。
彼が足を一歩引いたのを見てすかさずもう一度全身で体当たりする。
彼の体は倉庫の角近くの壁に打ち付けられ、彼の逃げ場を完全にふさいだ。
アッシュはさっきまでの挑発を返すようにゼルに吐き捨てた。
「言われた通り当ててやる。耐えれるなら耐えてみろッ!」
そう言い、鍛えた筋肉を全力で使い、相手に猛攻を仕掛ける。
ドスッ、バシッ、ガシッ、ゴスッ
「ッ...ッ!...グッ...うッ...!!」
追い込まれたゼルはガードに徹するがアッシュのいくつかの重い拳はそれを破り、綺麗な褐色肌だった場所を鈍い打撃音を鳴らして赤く染めていく。
効いてはいるはず。しかし、何度攻撃しても、ゼルのガードは下がらず、ほとんどの拳がそれにはじかれた。
「チッ...。」
アッシュは耐えられている現状に苛立ちを隠せないでいた。
なら、もっと強力な一発を。そう思い、連打を浴びせながら渾身の一撃を放つ部位を見定める。
ターゲットにした部位は比較的ガードの甘いボディ。アッシュは雄たけびをあげ、この持久戦を終わらせる一発を放った。
「うおおおおおおおおおッ!!」
彼の放ったボディアッパーはガードの下をかいくぐり、狙い通り強靭な肉体の鳩尾に突き刺さった。
「がはッッ」
その拳は鋼のボディをも貫通し、ゼルの体をくの字に折った。完全な感触。あの試合の決めた感覚そのままだった。
これであの犯罪者は沈む、そう思い目を前に向けると、想定とは違うことが起こった。
「ぐおおッッ!?」
沈んだと思っていた相手の右腕がいつのまにか自分の鳩尾に突き刺さっていた。予期せぬ反撃で力を入れられずもろにボディダメージ食らい後ろにたじろぐ。
顔をあげると、にやけた顔をみせて、こちらに向かって歩いてくるゼルの姿があった。
「...ああ。いい...お前の拳、すごく効いた...。流石はジークの息子といったところか?」
「なッ...!?」
確実な威力のダメージを与えたはずだった。経験通りならダウンしてもおかしくないはずだ。なのに最初に会った時と同じように、痛みを感じさせない歩みで指名手配犯はこちらに迫っていた。
「気に入った。じゃあ、次は俺の番だ。」
そういい、瞬く間にゼルはアッシュとの距離を詰め、拳を打ち付ける。
顔正面、アッシュは軌道を読みすぐさまガードを固める。
しかし、
バスッッ!
「ぐあッ!?」
正面に来たはずの拳は彼のガード外の左にあり、その威力で顔を大きく右にそむけてしまう。
「がはッ!?ぐううッ!?!?」
意識が背いてる間にボディへの重厚な2連撃がぶつけられ、後ろへと後退していく。
バスッドスッ
「うッ!ぐうッ」
続け様のボディブローをなんとかエイトパックを固めて受け止めるも、その重さに呻き声が出た。
急いで拳を返そうとするが、反撃する隙を与えないように次々と拳が飛び、ガードをすり抜け、壊し、自分の白い肌に衝撃を与えてきた。
「がはッぐおおッ」
読めない軌道、読めても破壊してくる威力、顔は左右に吹き飛ばされ、腹は衝撃で折れ曲がり、後退を余儀なくされる...圧倒的な実力差があることに今更気が付いた。
「ッ...!グッ!んッ...!」
「どうした?ホラ、反撃しないのか??」
「ぐうッううッ」
アッシュはいつの間にか体を丸め、全身をガードする選択肢しかなくなっていた。
なんとか耐えて機会を待つ...が、その機会は一向に巡ってこず、ただ一歩的にやられていく。
「人の耐久力は、筋肉量に比例してできる外部魔力の量で決まる。筋肉量の多い戦士は、並大抵の攻撃じゃ沈まなくなる。」
「どうすれば弱体化するか、お前ならわかるよな?」
ゼルは口角を上げて、丸まったアッシュをこじ開けるかのようにボディ中心で殴り上げた。
「ぐッ、ウッ、あ゛ッ」
腹は魔力が貯槽される場所である。外部魔力は自然生成されるシールドであり、身体能力を向上させるもの。だから戦士達は腹筋を鍛え、簡単に破壊されないようし、強敵相手にはその腹筋を破壊し、弱体化を狙う。
ジリ貧なのはわかっていても、なんとかしようとガードを固めて対処する。が、ゼルの剛腕に虚しく破壊され、露わになった腹筋を突き上げられた。
「ガハッッ、ぐうッ、ううッ!?」
自分の自慢のエイトパックは、褐色の剛腕が抉るたび、徐々に徐々にゼルの拳を奥深くまで受け入れてしまっていた。自分のそれは、赤黒く腫れあがり、拳が食い込むたび、圧迫と痛みで悲鳴をあげた。
自分が痛みに悶え、嗚咽を吐く度、彼の拳は嬉しそうに威力を調整し、彼のボディを潰していった。自分の苦しむ姿を楽しみ、自分に現実を教えるかのように。
「ぐハッッ、ッッう゛ぐ!?」
敵わない...。
ドスンッ
「がああ゛うッ!?うう...ッ」
一旦、退かないと...。
執拗な攻めに耐えかねた自分は逃げるように大きく後ろに後退した。しかし、冷たいものにぶつかり、足がとまる。
「ッ...!!」
そこは先ほどまでゼルを追いつめていた角場であった。
その事実を知り、自分は顔をあげる。その指名手配犯の魔族は満足そうな笑みを浮かべながら荒い吐息を吐いた。
「残念だなあ?もう、逃げ場はないぞ?」
自分の歪んだ表情を見ると、赤い目を光らせて低い声で言い放った。
「天族の坊や、耐えてみせろよ?」
そういい、先ほど以上の容赦のない拳の雨がアッシュを襲った。
バスッドスッンガッボスッ
「がああッグッブハッうグハッおうッ!?」
もはやガードは完全に意味を成さず、強靭だった肉体と整っていた顔に絶え間なく無慈悲な拳がめり込んでいく。
「ブハッ、グあッ、ガッッ!?ごああッ」
壁際に追い込まれたアッシュは、腕を横に垂らしたただのサンドバックと化していた。
「ぐあ...があ゛...ッ...」
崩れそうになる体を足を開き、必死に支える。
もはや勝敗はついていたが、彼のプライドが、体を地につけることを拒んでいた。
「ほう?なるほど。そうか...ふふ、いい、なおさら気に入った。」
「俺は決めた。」
ゼルは辛うじて立っているサンドバックへの連打をやめ、その精神に惚れ惚れするように話しかけた。
「う...ぐう...。」
極限までダメージが蓄積しているアッシュに答える余裕はなかった。
それでも力をふり絞り、再び構えを取ってかすかな戦意を伝える。
その様子を見てフフッと微笑すると、ゼルは拳を握り直し、肘を後ろに大きく動かした。
「だから、まずは俺の特大の一発...受け入れろよ?」
そういうと、溜めた拳をアッシュの赤黒く染め上げた腹筋へと、勝負へ終わりを告げる一撃を繰り出した。
ボゴオオォッ
「あ゛あッがはあああああああッ!?」
強烈なボディアッパーは無防備な彼の鳩尾を再び抉り、空間に破壊の打撃音が響き渡ったった。彼の口からは、血まじりの唾液が吹き出した。一瞬宙に浮くかのように持ち上がったサンドバックはそのまま壁に打ち付けられ、成すがままに崩れ落ちようとしていた。
しかし、それを魔族は自分の体で壁に押し付け、崩れ落ちるのをわざと防いだ。ほぼゼロ距離の状態で戦意を失いかけているアッシュを見つめる。
「もうダウンするのか?東警備隊最強なんだろう?俺はまだ物足りないんだ。」
「もっと、俺を受け止めてくれよ?なあ?」
既に答える気力も考える気力も残っていない。ただ、倒すはずだった指名手配犯の肩に顔を垂らし、彼の後ろの空間を見つめることしかできなかった。
すると彼は嬉しそうに壊れたサンドバックに向かって煽ってきた。
「お前が誘ったんだぞ?ホラ。」
「どうだ?お前の攻撃を耐えきった俺の肉体は?お前を壊した俺の腕は?雄々しくて興奮するだろう?」
そう吐息を混ぜながら、彼はより一層体を密着させ自身の強さを自分の体に直接誇示した。
アッシュを支えるはずの筋骨隆々の背筋はその自分を破壊した太く屈強な腕に抱きかかえられ、鍛え上げた自慢の白肌の胸筋はさらに分厚い褐色肌の胸筋に押しつぶされた。
「うッ...くう...ッ...」
「フッ、どちらが上か、もっとわからせてやらないとなあ?」
そう言うと、顔を少し自分の方に向け、もう片方の手でなにもできない天族の局部に触れ始める。制服のチャックを開き、パンツの中に手を突っ込み始めた。
「な!?んッ...やめろ...ッ」
突然触れられ、咄嗟に拒否反応がでる。
しかし、その意思に反して、彼の陰茎は徐々に大きくなっていく。戦闘中の興奮状態で接触に敏感になっていた。
そして彼は天族のそれを掴むと外へ引っ張り出した。
「坊やは正直だなぁ...まあ天族も魔族も元は同じ「地族」。感じるのも一緒だ。」
「なかなか大きくて立派なもんもっているじゃないか。」
彼は先ほどまでの無慈悲な暴力とは真逆、甘い吐息混じりの言葉をアッシュに囁き続ける。
「まあ、俺には敵わないがな?」
自分の局部付近に大きいなにかがあたった。いつの間にか、彼のベルトは落ちており、緩くなったジーンズからはみ出るそれは巨大な存在感を見せ、熱い体温を伝えて来ていた。
「ふざ、けるな...ッ」
なんとか筋肉に力を入れ、抵抗しようとする。しかし、それに合わせて褐色の筋肉がピクッと動き自分を抑えた。弱ってる自分の力ではビクともしなかった。
「グッ...!」
「ふ、可愛いやつだ。俺の筋肉から逃れようと必死だな?」
歯を食いしばり抵抗を続ける。指名手配犯に殴り倒されるどころか犯されまでするなど、屈辱以外なにものでもなかった。
そんな自分を嘲笑うかのようにゼルは自身の強靭な筋肉を擦り付けて固定し、自分の優位性をアピールした。
「ほら、もっと抵抗しろ。そろそろ始めるぞ?」
そう耳元で囁き、自分を弄ぶ。
「グッ...ううッ!!」
何度試みても、ただ、体中が痛み、そしてその姿を見ている魔族が興奮するだけだった。
「ふふ、いい無駄な足掻きだ。それじゃあ天族の坊や、俺がお前に、「快楽」を教えてやろう。」
そういうと、彼はアッシュの陰茎を掴み、前後に動かし始めた。
「あっ..クッ..んッ...クソッ...ッ」
感じたくもない快楽が襲い、言いたくもない喘ぎが出る。しかし彼の手は動かすのをやめず、前後の運動は徐々に早くなっていく。
「こういうのは慣れていないようだなあ?ジークは性について教えてくれなかったのか?戦争中の天族、魔族、共通の娯楽だったというのに。」
「んッ...クッ...ンうッ...くうッ」
「ふふ、可愛い坊やだ。」
抵抗し、我慢しようとするも、経験の浅い彼にとって、それは無駄な抵抗だった。
手慣れた手つきにより、彼の亀頭は血が巡りどんどん綺麗な赤色に色づく。
「やめッ、おッ、ろッ、んんッ、くああッ」
魔族はその声を心地よく聞きながら、容赦なく初心な天族の先を揉み解す。
そして天族のそれは、クチュクチュと音を鳴らしながら、先だしの透明な液体を彼の手を流し始めた。
快楽の頂点に達するのは時間の問題だった。
「早いな...まあいい、我慢するな。...ほら、俺にかけろ。この俺に...」
「ぐ、うううッ」
射出を拒否しようとしても頭と体は快楽に呑まれ、いうことを聞かなった。
「う゛ッ、ぁああッ...ッ」
「んッ、あッあ゛ああああッ!」
アッシュの快楽の我慢は限界を向かえた。
彼の亀頭の隙間から白濁の液が飛び出す。
それは密着した魔族の下腹部を汚し、魔族の攻め手から垂れていた。
「んああ...はあ...はあ...はあ...。」
痛みと快楽で頭は混乱したが、なんとか正気を取り戻そうとする。
「...ふっ、こんなにいっぱい出して...俺の手つき、そんなに気に入ったか?」
そして目の焦点が、手にかかった白濁した液を舐め、微笑するゼルの側面を捉えると彼を睨みつけ、精一杯の抵抗をする。
「...変態、野郎ッ...!」
しかし、それを聞き、魔族は笑いながら答えた。
「まだ吠える余裕があるようだなあ?...よかった。こんなので終わられたら、俺の「処理」に困るところだった。」
そういうと彼は支えるのをやめ、乱雑に自分を倒した。
「おああッ!?」
そして大の字の倒れる自分に対し、今度は上からマウントをとる。
「グッ...ク、ソ...離せッ」
下から彼を見上げる。
2本の角の下にある赤い眼はまるで獲物を今から食すかのごとく鋭く光り、自分の翡翠の中の菱形の瞳を見つめていた。
そして、彼のそれは興奮して我慢できない状態であり、無色の液体を自分の腹筋に垂らし、今か今かとその瞬間を待っていた。
「天族の坊や、俺好みの顔、そしてこの逞しい肉体と精神をもっている。仕掛けられてヤラないわけがないだろう?」
「...ッ...!!」
彼はアッシュの腹筋から胸筋の凹凸を指でなぞりながら、顎までいくと、その手で顎を少し上げ、顔を近づけ目を合わせる。そして、
「俺はお前に勝った。もうお前は俺から逃げられない。ちゃんと、俺を受け入れてくれよ?」
低い声でそういうとすぐに彼のデカいブツが自分の中に無理やり入ろうと試みて来た。
「んあ!?いッ...!?」
感じたことのない痛みに体をもがこうとするが、破壊された筋肉に力が入らず、ただ痛みだけが伝わる。
「対抗戦の優勝を目指してるんだろう?このくらい、我慢、できるよな?」
「んッ....あああッ!?」
無理やり開かれた穴に対し、彼は少しずつ「自分」を中に入れていく。
「イッ!?..ぐううッ!」
「ッ...お前の穴は、存外素直だな...んん...悪くない...。」
少し、そしてまた少し、入ってくる。何度も何度も前進と後退を繰り返し奥を目指す。
「あ゛あッ、う゛う゛ッ」
何度目かの激しい痛みを穴に感じた後、ついに「彼」は自分の中にすべて入ってきた。
「...んッ...アァ...ふう...これでお前の中に入れた...。ふふ...いい子だ。」
「はあ...はあ...はあ...はあ...ッ...」
顔は灼熱のように熱くなり、呼吸することさえ苦しくなっていた。
これからどうなるか...考えるだけで吐き気がした。
「やめ...ろ...ッ...。」
必死の呼吸をはさみながら、消えかかるような声で言う。
「ハハッ...何を言っているんだ...これからだぞ、坊や。」
彼は止まらない。
「...俺を愉しませてくれ...ッ!」
そういい、ゼルは体を前後に揺らし始めた。
初心な天族に極上の痛みと快楽が訪れる。
「んんッ!?ああうッ、うんッ、あああッ!!」
突かれるたびに感じたことのない「悦び」を感じ、大きく喘ぐ。筋肉は悲鳴をあげ、壊れてもなお動かそうとする。
その「歌」を聞き、天族の穴に締め付けられるたび、ゼルの精神は高ぶる。
「ああ...気持ち、いいか?...坊や?俺も、気持ちイイ...。んッ...ほら、もっと、気持ちよく、させてやる。」
「あ゛ああッ...あ゛うんッ...んああッ」
理性はとうに消えており、ただ与えられる愉悦を感じるしかなかった。
「ッ...ふう...ふう...ンッ...あぁ...」
動かす速度を速めながら、自分が倒した美しく雄々しい体の天族を見つめ、堪能する。
「ああ、んああッ、ッあん、ンッッ」
魔族に成すがままに体を屠られ、「快楽」という名の痛み以上の屈辱を味わう。
…その時間はとても長く感じた。
無理やり入れられ圧迫感しかなかった肛門はいつしかゼルの潤滑油であふれていた。
ゼルも我慢の限界に来ていた。
「...そろそろ、ッ...いこうか...ッ!」
そういって、今まで以上に激しく腰を振る。
「アんッ、アあッ、ッああッ、ううッ、あぁッ」
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」
二人の激しい衝突音と喘ぎ声がこだまし、最後のクライマックスに向け、テンポが上がる。
ゼルの先だし汁は穴から漏れ出し、アッシュの上向きに太く聳え立つものからも同じ透明液が赤色の噴射口から流れ出ていた。
そして、
「あぁッあッ、んッッあ゛あ゛あああああああッッ」
「んッんんッお゛おおッッ、おおおおうッ、おお...はあ...はあ...。」
互いに絶頂を向かえた。
天族の中に魔族の大量の精液が押し込まれ、それと同時に下位の天族は腰を上げ、2度目の射精を上位の魔族の腹筋へぶちまけた。
魔族の少し赤みがかった褐色の腹筋の凹凸で盛り上がった部分からその白い液が零れ落ちる。
「はあ...はあ...あぁ...いい勉強になったな?天族の坊や。」
ゼルは魔族と天族の精液によって描かれたアッシュと自分の肉体を堪能しながら言った。
「あ、ああ...が、ああ...。」
すべてを出し尽くされた天族は、声にならない呻き声を上げ続けていた。
快楽の時間は終わり、全身の痛みと屈辱だけが残った。
何度目かの満足そうな笑みを浮かべる指名手配犯を最後に、アッシュの意識は途絶えた。
ーーー
「…いいか、アッシュ。」
「強さだけではなく正義のためにこの拳あるんだ。」
「力なき弱き者を助け、力で征服する強き者を挫け。」
「独りで耐える厳しさを覚え、仲間と共に突破する大切さを知れ。」
「そうすれば、お前は立派な警備隊員になれる。」
…夢を語ったあの日、父さんの言葉を思い出す。
「父さん...俺は...」
その思い出に手を伸ばそうとする。
すると目の前の景色は真っ白になった。
「...アッシュ、大丈夫よ...」
ーーー
「...ん...あ...ここは...?」
目を覚ますと見知らぬ白い天井が見えた。あたりを確認するため起き上がろうとする。
「ッ!?いってッ...」
その動作で主に腹筋が痛みをあげ、あの出来事が夢でなかったことを確認する。
…全裸であったため、すぐにその痛みの箇所を確認すると、変色と腫れによる痛々しさは思ってたよりなくなっていた。あと、気分の悪さがあったが、打撲による痛みに比べたら大したものではなかった。
(...誰かが治療、したのか...?だが、誰が?)
周りを見渡して現状を確認しようとする。この家は、木や石など自然の素材でできた、古き天族様式の家であることがわかった。そして、窓から映る景色を見ると、神聖都市ポラリスの全体と遠くに小さく輝く融合遺物が見えていた。
…見覚えのある光景に少しなつかしい気分がした。
「「星見の丘」の...家...?」
なぜ、ここに...そう考えようとすると、よく知った、あの声が聞こえてきた。
「おはよう。天族の坊や。よく眠れたか?」
その声が聞こえた瞬間、アッシュは痛みを忘れ、すぐにその声の主へと距離を詰め、胸倉を掴んだ。
「お前ッ...!」
怒りに震えた声をあげ、拳を構える。
掴まれた魔族、ゼルは既に昨日とは違う白いシャツを着ており、いつもと変わらない余裕そうな笑みを浮かべていた。
「まったく、...あの楽しんだ後、治療までして、この空き家のベットまで寝せてあげたご主人様に、手をあげるのか?」
まるで自分を犯した張本人が、救世主であるかのよう振る舞って、嘲笑うその物言いに、アッシュの怒りは止まらなかった。
「主人??ふざけるなッ!!」
そういって拳を振り上げるが、簡単に止められてしまう。そしてその動きで体のあらゆるところに痛みが走った。
「ぐうッッ!」
その様子をみて、あきれたようにゼルは口を開く。
「その体で、俺と戦ってもまた現実を味わうだけだぞ?もう一回、俺と楽しまないと学べないのか?」
そういうと彼は、さらに頭に血が上っている新人天族に、現実を突きつける。
「それに、身分証明書も入ってる端末含め、持ち物すべて奪われた、文字通り全裸の坊やがとるべき行動は、手を挙げることじゃないんじゃないのか?」
「...ッ!」
彼の言ってることはすべて正しかった。所持品はすべて没収されており、孤立無援の状態...。
怒りを歯で食いしばると、挙げた手をおろし、ゼルを解放した。
「いい子だ。少しは学習したようだな。」
握られたシャツのしわを伸ばしながら、窘めるようにアッシュを見て言う。
やり場のない怒りと屈辱で拳を強く握りしめ腕を震わせる。自分はすぐにゼルから目線を外して、下を向いた。
「ははッまあいい。これからの話をしようか。お前が全裸でも俺は構わないが、...これでも適当に着とけ。」
そういって彼は同じようなシャツとズボンを適当に置き、寝室からリビングへと移動を促した。
「これから...?」
そう呟きながら、仕方なくアッシュは、おそらくゼルのものであろう着衣に着替え、彼の誘導に従った。
---
彼のシャツは自分よりすこし大きかった。胸筋など大きい筋肉部分は素材の上からも盛り上がりをみせるところはあったが、全体的にサイズ負けしており、全身に残る痛みを含め、複雑な気持ちになった。
通されたリビングは埃臭く、現れた朝日によって照らされることで、その部屋の視界を保っていた。
ゼルはそこにあった一つの椅子に足を組んで座ると、「座れ」と自分にも相対するところに座るよう指示した。
指示に従い、向かいの椅子に座り、彼を観察する。
改めて見ると、彼の体の凄さがより分かった。白いシャツの上部3つのボタンはあえてはずしているのかそこから豊満な胸筋がのぞかせており、シャツの中に隠れている筋肉たちはそれに負けないくらい凹凸をつくり、全体のバランスを整えていた。異常なまでに彼と「ふれあい」をした後遺症か、会ったとき以上に彼の体に魅せられていた。
「どうした?そんなにまじまじと見て。俺に惚れたか?魔族とはいえ精神操作魔術の「魅了」は使ってないはずなんだがなあ?」
「ッ!?そんなわけないだろうッ!」
謎に現れた感情をかき消すかのように即座に否定し、再び敵として頭の中に認知させた。
「...さっさと言うなら言え。俺を、...どうする気だ...?」
そういいながら、頭の中で最善の手をシミュレートする。目の前にいる強大な敵から逃れ、警備隊に帰還し反撃する方法...。
…これから拷問されたら?...人質として利用されたら?
表情の裏で焦りを見せる自分を他所に、ゼルは余裕のある表情で自分に言った。
「お前を「教育」したとき、気に入ったといっただろう。」
その深紅の赤い目は自分の目を捕える。
「...!!」
強烈な視線、それに圧倒され、自分の脳内で行われていた喧噪の会議が止まる。
代わりにできた静かな空間には、深紅の映像と、自分とゼル、二人の吐息だけが聞こえるようになった。
「率直に言おう。天族の坊や。」
深紅の瞳は、一度瞬きすると、隙間から差し込む太陽の輝きを得てもう一度自分を見つめた。
「お前は、俺の「もの」になれ。」
「そして「天魔戦争」の再来。それを止める手伝いをしろ。」
...。
...?
...???
「...は?」
指名手配犯に暴行・強姦・誘拐された新人警備隊員の想定していたものとは、違う物語が始まろうとしていた。
神聖の血を継ぐ者-1
ーーこの世界にまだ天界と魔界が繋がっていた頃、神と魔王はこの世界の支配権を巡り、争いを起こした。
人間は地族と呼ばれ、その神と魔王の争いに巻き込まれた。彼らは生き残るために、選択を迫られた。
ある者は神に身を捧げ、天族となり、ある者は魔に身を落とし、魔族となった。
そしてある者は支配に抗い、獣族に進化し、ある者は支配から逃げ、地族を維持した。
彼らは、「平和な世界」のために争い、血で血を洗う戦いを繰り広げていた。たとえ、この世の繋がりから、天界と魔界が消えても、人間の報復の連鎖は止まらなかった。
この地では神と魔王から与えられた「遺物」を使う「司令」により、強化された人間、天族と魔族の争い、「天魔戦争」と呼ばれた争いが続き、大地は荒れ、死体は積まれ、負の感情に支配されていた。
…「楽園」が作られるまで。
天界と魔界、二つの遺物が置かれた台座を、天族と魔族の司令、そして地族と獣族の代表者が囲む。天族と魔族の司令が魔力を注ぐと二つの遺物は浮き上がる。それに続いて、地族と獣族の代表者も数少ない魔力を注いだ。
二人の司令が再び遺物を操作する。相反するはずの遺物は、地族と獣族の魔力を受け取ると互いに結びつき合い、融合した。その光は争いで朽ち果てた大地を神々しく照らした。
四種族の代表は魔力を注ぎながら謡う。
ー 種火を作り 篝火を託す
焼け跡は歴史となり 道標となる
我らは違い 我らは同じ
人の証を ここに残す
謡い終えると、置かれた台座の周りの地が盛り上がり、融合された遺物は天に向かい光を放った。盛り上がった大地の周りの荒れ果てた地に草木の生命が宿り、天に放たれた光は透明で大きな光の盾を築いた。
四種族の代表はそれを見届けると誓いを立てた。
「神と魔王は消え、我々人の時代が来た。今、ここに四種族の誓いを立てる。」
「我らは天から恵みを与え、すべての種族を守護する盾を授ける」
「我らは地から恵みを与え、すべての種族を守護する力を授ける」
「我らは誓いの証人者となり、すべての種族の平和を約束する」
「我らは誓いの伝道者となり、すべての種族の調和を約束する」
「「「「我らは誓おう。この楽園に四重奏が永遠に奏でられることを」」」」
天の英雄、スピカ。彼女は天の「規律」を破り、人としての調和を唱えた。
魔の英雄、サラ。 彼女は魔の「欲望」を抑え、争いの連鎖を止めた。
地の英雄、ショウ。 彼は地の「知恵」を広め、楽園の礎を作った。
獣の英雄、ジョセフ。彼は獣の「体力」を使い、四種族の夢を叶えた。
誓いの声は重なり合い、調和の音色を響かせた。
エデン。...「楽園」の物語はここから始まった。
ーーー
「はあ...はあ...ぐッ...うぅッ....」
「...天、魔、地、獣、すべての血が流れ込む...俺に融合する...」
「この痛みは...覚えている...俺たちを切り捨てた、...痛み...」
「ようやく...解放される時がきた...」
「さあ...「楽園」を作ろう...。」
ーーー
快晴の空の西に一つの光が見える。楽園を支える融合遺物は変わらず今日を照らしている。
天族、魔族、獣族、地族、四種族が生きる国、エデン。その東に位置する神聖都市ポラリスの神聖闘技場で、最強の戦士のいる、警備隊支部を決める大会、警備隊対抗戦、その事前試合が開かれていた。
警備隊対抗戦は、エデンの建国記念祭の祭事の一つであり、エデン設立当初から存在する歴史ある大会だ。その内容はいたってシンプル。東西南北、そして中央の各警備隊支部の、拳を武器に戦う「戦士」が所属する、警備隊第一隊隊員から代表者2名選ばれ、最大3試合、タイマンの獣族のリングルール(時間無制限、降参か再起不能のKOもしくは3回ダウンによるTKOによる決着)に乗っ取って、殴り合い、2勝先取した警備隊が勝ちというルールだ。互いに1勝ずつした場合は、勝った者同士で戦い、勝敗を決める。
現在行われている試合は、祭事の際、決勝戦で戦う支部を決める事前試合であり、現在は、四角いロープに囲まれたリングでタクティカルグローブを身に着けた、東警備隊の天族の男と西警備隊の地族の男が拳を交わしていた。
「フッ!はあっ!」
「ッ!おらああッ!」
互いにこの日のために鍛え上げた肉体を盾に近距離での応酬が続いていた。
一試合目は既に終わっており、東警備隊の地族 対 西警備隊の天族 の勝負は、東警備隊の勝利で決着がついていた。
今戦っている西警備隊の地族はこの戦いに勝利することが必要であり、かつ、連続して1試合目勝利した東警備隊の地族に勝たなければ決勝へ行けない状況であった。
「...ッ!はあ..はあ...」
しかし、西警備隊の地族の男は既に一度ボディによるダウンを奪われており、くっきりと6つに割れた腹筋は何度も打たれ変色し、東警備隊の天族の男より動きが鈍くなっていた。
「シッシッ、はあッ!」
天族は、攻撃頻度が落ちている地族を逃がさないよう体格を活かし、圧をかけ、攻め立てる。
「グッ...!!」
ガードしている腕に重いパンチが容赦なくぶつけられ、地族の男はじりじりと後退していく。
彼は必死に耐え、チャンスを待っていた。
「ふんッ」
天族がガードを崩すためのアッパーを放つことを。
それを完全に見切り、躱すと同時にもらったお返しとばかりにスキのできた天族のボディに豪快なフックを叩き込んだ。
「ッグうッ...!」
確かな手ごたえに地族の男は気持ちが高ぶる。その後の天族がひるむことを予測し、今度はこちらから足を前に踏み出し、テンプルに向けてアッパーを繰り出そうとした。
しかし、その予測は甘かった。天族の男は攻撃を即座に繰り出していた。
狙いは一番ダメージを受けている地族の右脇腹。そこに前に踏み出していた相手の反動の乗った天族の男の拳が入った。
「ぐおうッッ!?」
自分のアッパーが着弾する前に弱点を打たれ、大きな呻き声を上げると共に、地族の男の構えは完全に崩れる。
そのスキを天族の男は逃さない。振るう拳は綺麗な弧を描き、止めをさすように相手の鳩尾を突き刺した。
ドスンッッ!
「カハッッッ!」
重い打撃音が会場に鳴り響く
地族はその衝撃を受け、目を見開き、そのまま前のめりに倒れた。
「ダウン!1、2、...」
審判によりダウンの宣言が言われ、カウントが数えられていく。
「アッ...クッああああッ」
ボディブローによる二度目のダウン。彼は四つん這いで悶絶しつつ、唾液を垂らしながら目の前の敵を見上げた。
太陽に照らされ神々と輝く白銀の髪に翡翠のように透き通った緑の目の中に天族の特徴である菱形の瞳が見える。鼻筋も通り天族らしい整った美しさとは裏腹に、鍛え上げ盛り上がった胸板、無骨な凹凸がある8つに割れた腹筋、強烈な一撃で自分の腹筋を破壊した太く力強い腕。まさに男が見ても惚れる強い漢がそこに立ち、こちらを見下ろしていた。
「...終わりか?」
カウントが進む中、天族の男は煽るかのように言う。
「...天族野郎ッ...ッ...なめるなああッ!」
屈辱による怒りに身を任せて、苦痛を乗り越え、カウント8でなんとか立ち上がり、目の前の天族を睨みつけながら戦意を示す構えを取る。
別に天族の男にダメージが入っていないわけではない。その整った顔と体には何度も拳をぶつけており、彼はロープにもたれかけ、荒れた呼吸を整えていた。
まだ、チャンスはある。そう信じて地族の男は拳を握り直した。
「続行ッ!ファイッ!」
カーン
継続の鐘の合図があると、力をふり絞り、地族の男は天族の元へ雄叫びを挙げ近づいた。
「うおおおおおおおおッ」
既に後がない彼はほぼガードを捨て、インファイトを仕掛ける。天族の男もそれに応じて殴り合いが始まる。
バスッガッ
「クッ..ッ...!」
拳が先ほど強撃を与えた腹部に当たり、天族の男の顔が歪む。しかし、ダメージ差は歴然であり、倍以上のダメージが彼を襲う。
「ブフうッ、がはああッ」
顔面とボディのコンビネーションをまともに食らう。
食らいつこうとしても攻撃が当たるたびにひるんでしまい、瞬く間に背中にはロープの感触がしていた。
「ぐうッ...!」
地族の男は賭けに出るしかなかった。最後の渾身の一撃を、あの嫉妬する顔にぶち当て逆転勝利を狙った。
「おおおおおッッ!!!」
が、
グボオオオオッ
「ごああああああああああッッ...!?」
彼の全力の拳は空しくも空を切っていた。代わりに天族の男の拳が鈍い音を立て、再び彼の鳩尾を抉り上げていた。
「あ...があ....」
彼の口から唾液が吹き出す。一瞬宙に浮くかのように持ち上がった体はそのまま意識とともに仰向けに地に落ちた。
3ダウン。試合終了のゴングが鳴る。
「勝者!東警備隊!アッシュ!」
そういわれ、審判の男はアッシュの左手を挙げる。アッシュは特に喜びもせず、彼はただ天を見つめる。
代表の二人が勝利をおさめ、東警備隊は決勝の舞台へと駒を進めた。
ーーー
「やったな!アッシュ!これで警備隊最強まであと一歩だ!!」
そういって酒場カウンター席で肩に手を回し、喜んでいるのは、警備隊の先輩に当たるユウヤだ。
地族と魔族のハーフで東警備隊隊員の中で一番親しく、そして自分に並んで東警備隊の中では実力者で、切磋琢磨しあうライバルでもある。そして今回の警備隊対抗戦のパートナーだ。
「先輩のおかげです。俺はまだまだ...今回の試合も、反省点が多かった。」
実際、序盤苦戦して、それなりにいいパンチを何回かもらっており、試合終了後は医療ポッドでの治療が必要なラインだった。
「お前、確かに強いけどよ、熱くなって突っ込みすぎる傾向あるよなぁ。あ、これ日々の業務も含めてな。」
「...わかってます。意識しようとしているんですけど、熱くなるとつい...はあ...」
「まあ、そこがお前の良さでもあるのは違いないし、とりあえず、今日は勝ったんだから、祝おうぜ!」
「...ありがとうございます。」
そういって二人はノンアルコールの酒の入ったお互いのグラスを当てた。
アッシュはエデンの東警備隊に属しており、普段は主にパトロールや暴力事件などの武力解決が必要な事件の対応をしている。
本拠点の中央本部と支部として東西南北の4都市にそれぞれ拠点があり、訓練生として厳しい訓練を行った後、各支部に配属される。国家の安全規約上、警備隊員は種族が偏らないよう、バラバラに配置される。とはいえ、戦争時代の各拠点となった種族、東警備隊のいる神聖都市ポラリスで言えば天族の比率が高く、アッシュもまた、天族の一人であった。
彼の所属する警備隊第一隊は先ほど述べた事件解決のほか、エデンの名物である警備隊対抗戦の選手として出場することが義務づけられている。これは警備隊の武力向上とエデンの盛り上げを兼ねたもので、「天魔戦争」が終わり、エデンができた頃から続いている伝統でもある。
歴史を重ねるごとに規模は大きくなり、その大会と同時に他イベントや出店なども出店する「建国記念祭」の一部となった。初日はここ神聖都市ポラリスの神聖闘技場で行われ、街の住人や他都市からの観光客からも人気が高い大会だ。
本選で勝てば賞金がもらえ、大衆から人気が出るのもそうだが、なにより各支部の強さのバロメーターとして視認されることもあり、警備隊第一隊の男たちのプライドバトルの場でもある。
「決勝の相手は...北警備隊か...。」
「...あいつがいるのか...」
「あいつ...?」
アッシュが問うと、ユウヤは少し俯きながら答えた。
「北警備隊の魔族...ブラインだ。」
「前回...去年の東警備隊は3位だっただろ?俺はその時東警備隊の二人目として出場したんだけどよ、事前戦でそいつにボコボコにされてな...ダウン一つさえ奪えず、2-0のストレート負けして、決勝に上がれなかったんだ。」
「また、再戦できる...次こそは...必ず...ッ」
先輩のテーブルに置いた手は拳を作り、強く握っていた。
共に鍛錬を積んできた同志として、自分も気持ちが熱くなった。
「先輩ならできます...今度は俺たちがストレート勝ちしましょう。」
そう先輩の意思に応えるよう、気持ちを伝えた。
「へへッそうだな!ここまで鍛えたんだ。お前と俺がいれば負けるわけないよな!」
そういって、彼は雄々しい腕を掲げ、力こぶを作り二カッっと笑う。誰に対しても気さくで明るいムードメーカーであり、表情の乏しい自分とは正反対。その親しみやすさに少しあこがれていた。
「...俺が、必ず先輩に勝利の景色を見せます。」
そういい、自分も鍛えた腕を上げる。
「おう!頑張ろうぜ!アッシュ!」
魔族の血が入り、やや褐色肌の地族である先輩に映える青色の目と自分の目を合わせる。
互いに挙げた腕を合わせ、勝利の誓いをした。
へへっと言うと先輩は正面を向いてグラスの飲み物を飲み始めた。自分も少し笑い、顔を正面に戻して飲み物を飲んだ。
そして話は戻り、自分の次の対戦相手についてになった。
「そういや、北警備隊のもう一人の奴...次のお前の相手は...獣族の新人、レックスって奴だな。去年優勝した南警備隊の奴に余裕のKO勝ちを収めたらしい。お前に並ぶくらい注目されてるな。」
「...。」
レックス。新人でありながらも今回の警備隊対抗戦の北警備隊の代表に選ばれており、前優勝者を圧倒したことからも名が上がっている一人である。
そして自分も...天魔戦争時代を経験している「四天戦士」の一人、現在東警備隊の隊長を勤めるジーク、その息子。そして開催都市、神聖都市ポラリスに属する「天族」の警備隊員として、新人ながら注目、期待されていた。
「父さ...隊長の名に恥じないよう、誰だろうと倒す。勝って、自分の強さが本物であることを示してやる。」
結局、いつ誰と当たろうが倒すだけだ。そう自分に言い聞かせた。
「おう!その意義だ!ぶっ倒してやれ!」
そう声を張り上げ、先輩は自分の肩に手をやる。
「...でも、いくらジーク隊長の息子だからって気張りすぎんなよ。お前はお前だ。俺がわかってるからな。」
続けて小声でそういい、自分の背中を軽く2回叩いた。
「...ありがとうございます。先輩。」
ジークの息子としてより、一人の天族の警備隊員として見てくれているところ、それがアッシュにとって嬉しかった。だからこそ、父さん以外で一番心を許せる人間なのだと改めて思った。
再び談笑をしていると傍のラジオからあるニュースが聞こえてきた。
「続いて速報です。北エデン、機械都市シラヌイで、魔族による暴力事件が発生しました。既に警備隊により暴徒は鎮圧されましたが、一般人と警備隊合わせて7人に被害が及んでいるとの情報が入っています。ここ半年で類似する魔族による襲撃は6回発生しており、警備隊は因果関係を調査しています。
…続いてのニュースです。魔導ネットワークを開発した、「カイセイ」のシュンタ社長が行方不明になった事件が発生し約9カ月が経過しました。依然として行方が掴めておらず...」
「...。」
先輩は自分との談笑を止め、そのニュースに聞き入っていた。
今、エデンで一番話題になっている魔族による襲撃事件。突然無造作に人を襲うのが特徴で、エデン各地で発生している。有名人の行方不明事件といい、少し物騒な話題が世間に広がっていた。
「...最近、多いですね。関係無い人を襲って、なにを考えているんだ...?」
「ここ最近、魔族の警備隊員...いや、市民さえ、肩身が狭くなってる。「神託の声」はこの事件を利用して、あることないことを勝手に捏造して、自分たちが正しいと活動を活発化させている。その活動を抑える父さん達のことまで侮辱して...どちらも許せない。」
自分は困惑と怒りが混じった感情でそう意見を述べた。
何度も繰り返し行われているが故に、現在、東警備隊がいる、神聖都市ポラリスでは魔族を忌み嫌う天族の宗教団体「神託の声」が魔族に対しての抗議運動を各地で開始しており、「神」による天族至上主義を布教している。彼らは、このエデンの建国のために尽力した四英雄の一人、天の英雄スピカを愚者と呼び、それに連なる直属兵、「四天戦士」、その一人であり、自分たちの活動の邪魔をする警備隊隊長ジークのことを反逆者と呼んでいる。その息子である、自分も彼らにいろいろ言われ続けており、今大会もコネで手に入れた代表とホラを吹かれていた。
もちろん天族そしてここに住むそれ以外の種族の大半は、彼らのことを疎ましく思っているが、この都市でも起きた昨今の事件によって、戦争時代、元天族の拠点だった神聖都市ポラリスは特に、魔族に対しての当たりが厳しくなっていた。
「...。そうだな。」
ユウヤは深い溜息をつくと、自分の発言にうなずいた。
「事件はともかく、29年前まで続いていた天魔戦争の再来か!とかいうメディアもいるけど、おおげさだよな。今の時代、魔族にそんなことしてなんのメリットがあるんだか。」
天魔戦争は29年前まで起っていた天族と魔族の争いであり、多くの犠牲者を互いに出している。
しかし、既にそれは過去のもの。四種族の誓いが結ばれて以降、現在のエデン、特にエデン中央にある楽園首都セントラルでは種族関係なく様々な職につき、共存している。若い世代を中心に種族の差別による隔たりは薄くなっていた。
この騒動にはさまざまな憶測が流れており、ここ最近のメディアを賑わせていた。
「それは、俺もそう思います。...でも、「神託の声」が魔族を嫌うように、魔族の組織「アビス」も天族を嫌って、そういうことを仕掛けている可能性はあると思います。」
「「アビス」は西警備隊の奴ら曰く、自分たちの縄張り以外に関わるような奴らじゃないらしいけど...。...わからんな。」
西エデンの歓楽都市グラードのメインともいえるカジノを運営している、魔族の組織「アビス」。彼らはその独自の組織を動かし、歓楽都市を支えているが、現地の西警備隊とは一切連携を取らず、中には行き過ぎた「私刑」を行うこともあるため、危険視されている。基本的にその縄張りで「余計なこと」をしなければ何事もない...と言われているが、警備隊でも内部事情を知るものはほとんどいないため謎の多い組織となっている。
「隊長クラスが連携して動いているようだし、いつかは俺たちにも詳細な情報が来るだろうけどな。」
自分の意見を聞き、頭に両手を組みながら、先輩は適当な考えを言う。
「...そうですね。なんだか、不穏な感じがします...コルミロ抗争の時のように、大きくならないといいですけど...。」
南エデンの鉱山都市コルミロで起こった獣族のギャング「ウロボロス」と警備隊との抗争。11年前、エデンが建国されてから初めて起こった大規模な争い...警備隊そして市民の中に死者が複数人出るレベルで最悪なものだった。ウロボロスは壊滅したものの、幼かったアッシュにも、その時のメディア媒体で見た映像は目に焼き付いていた。
「まあ、ともかく俺たちが今できることは、その脅威からこの拳で市民を守ることだ。大会もだが、業務も頑張ろうぜ。アッシュ。」
先輩は考えるのをやめて、こちらを向いて言った。自分もそれに応える。
「...はい、先輩。強さだけじゃなく正義のためにこの拳ある。そう教わっていますから。」
幼いころから教わっていた父さん、隊長ジークの教え。それを胸に自分は警備隊の一歩を踏みだしたことを、改めて意識し、最後のグラスの中身を飲み干した。
ーーー
先輩と別れ帰路につく。
…独りになるといろいろ考えてしまう性質だ。
次の試合、建国記念祭は3日後。先輩にはああ力強く言ったものの、やはり重圧を感じていた。
戦争時代、猛威を振るった、天族最強と名高い「四天戦士」、現東警備隊隊長、ジークの息子。その名に恥じぬよう、欲抑えてひたすらに鍛錬を重ね、強靭な肉体を手に入れ、東警備隊で一番の実力者として新人で対抗戦の出場を勝ち取った。
名に負けない強さを手に入れたと、...「七光り」と暴言を吐く、「神託の声」の信者が言うような虚勢の男じゃないと自負しているつもりだ。
だが、前回大会優勝者を余裕のKOで勝ち上がった同じ新人が相手となると、消そうとしても消えない不安が残った。
「...はぁ...」
少し大きい溜息をつくと、携帯端末に着信が鳴った。
…ジーク...父さんからだった。
「...ジーク隊長。こちら第一隊、アッシュです。どうしましたか。」
父さんからとわかっていても業務で私情を入れないよう、敬語を使って話す。
「業務連絡じゃない。個人的な連絡だ。...父さんいいぞ。」
そういい、優しい声でアッシュに話しかける。だいたい返答の声色でわかるがいつも丁寧に状況を言ってくれる。
「...父さん。どうかした?」
ここ最近はジークが忙しく、あまり親子のプライベートな時間はなかった。
久しぶりの親子の時間に少し声が上ずった。
「今日の警備隊対抗戦の事前戦について一言、言っておきたくてな。アッシュ、決勝戦おめでとう!まぎれもないお前の力で得た機会だ。」
ジークは嬉しそうに息子の勝利を祝った。
純粋に嬉しかった。しかし、アッシュは普段通りの情緒で返答した。
「...ありがとう。父さん。でも、本当の戦いはこれからだ。俺が目指さないといけないのは、ただ優勝だけ。」
「東警備隊が一番強いことを俺が証明して、父さんが見た、同じ景色を見るんだ。それまでは、...あまり喜べない。」
そう強く答えた。
「ハハッそうか。アッシュ、この大会代表に選ばれるだけでも名誉なことなんだぞ。もっと喜んでいいのに...お前は昔から真面目だな。」
ジークは少し寂しそうに答え言葉を続ける。
「だがらこそ、父さんも、お前が勝ち上がってその夢を叶えられることを信じてるよ。自信を持て。お前は東警備隊第一隊の中で一番強いんだからな。」
そう背中を押すようアッシュを励ました。
「だが、無理だけはするなよ。お前は頑張り屋さんだからな。父さんはそれが一番心配だ。...アッシュ、なにか不安はないか?「奴ら」に、なにか言われてないか?父さんに吐き出していいんだからな。」
一瞬、言葉がでかかるがそれを噛み殺し、平静を装った。
「大丈夫。心配してくれてありがとう。...父さん、忙しいんだよな。わざわざごめん。」
その謝罪には、不安がないという嘘をついたことも入っていた。
「なんで謝るんだ。俺からかけたんだぞ。ちゃんと俺の口からお前を褒めてあげたかったんだ。このくらいの時間、痛くも痒くもない。」
「俺の方こそ、あまり構えてやれないですまない。お前には苦労をかけてばかりだ...本当は、もっと...」
アッシュが物心つく頃には母親は亡くなっており、父子家庭で育った。子供の時からジークは警備隊隊長として忙しい日々を送っていた。勤務の日は帰ってくるのが夜遅くが当たり前であり、それまで一人で家にいることが多かった。
それでもできる限り、自分との時間を大切にしてくれていたことは知っているし、大人になった今、父親の仕事の大変さはよく理解していた。
「父さん、もう子供じゃないんだ。わかってる。」
「...悪いな。」
ジークは小さくそう答えると、咳払いをして、声の調子を戻した。
「お前たち以外の東警備隊は、当日、神聖闘技場の警備を担当するが、試合の時間、警備隊総司令、クレイドルの好意でお前の雄姿を見れることになったんだ。その時を楽しみにしている。...頑張れよ、アッシュ。」
「...ああ。」
自然と拳に力が入った。
「それじゃあ、また明日だ。鍛錬は仕事に支障がないくらいにしとくんだぞ?」
「わかってる。じゃあ。」
そう言って、連絡を切った。
言葉の節々から父さんの愛が伝わってきた。
...無理しているつもりはない。...でも。
みんなの期待に応えたい...応えないと...。偉大な父さんと、母さんに相応しい漢として...。
聖都の闘技場で、歴史ある大会で勝利を収めて証明しなくては...コネなんかじゃない。神聖の血を継ぐ者としての強さを...!
…。
「...少し走りこむか。」
不安を消すため、少しでも鍛錬して帰ることにした。
ーーー
いつも走りこむ場所は聖都から離れた人気の少ない旧街道。周りは過去の戦争の遺産である白い建物の残骸と自然が一体化しているものが多く、この先にある星見の丘から見る景色は神聖都市を一望でき、楽園首都の中心にあるセントラルタワーの最上階の祭殿、そこで輝く融合遺物が遠く、小さく輝いているのが見える絶景スポットだ。
小さい頃はよく、この道の先にある「星見の丘」という場所で、父さんと一緒に景色を見ていた。
夜風を浴びながら集中して自分と向き合って走れることもあり、自分のお気に入りの場所である。
「はあ...はあ...」
煌めく星と災厄を防ぐ天の盾の輝きに照らされ、魔の恵みの得た草原の道を孤独に走り込む。
自分を追い込むことで少しでも不安を消すために。
その静寂の最中、突如大きな破壊音が響いた。
「...!何だッ!」
そう遠くない走れば数分でつく建物からだった。あきらかに人為的なもの、そう思い、考えるよりも先に体が動いていた。
ーーー
「...!」
音が鳴った現場に到着する。そこはいつ何のために使われてるかわからない昔の廃倉庫だった。
その中には3人いるのがわかった。
2人は倒れており、一人は地族の男、もう一人は獣族、どちらも服は破け、ほぼ上半身裸。そこそこ鍛錬された体つきをしているがその体はアザと血だらけであり、白目を向いて気絶していた。
そしてそのすぐそばに立っている男。濃い褐色肌に黒い髪の上から角が生えている典型的な魔族。そしてその横顔に見覚えがあった。
「指名手配の魔族...ゼル...ッ」
今晩でもニュースになっていた、魔族の連続襲撃事件、その実行犯の一人とされている男。逃亡し、行方をくらませており、度々同様の現場で目撃報告があり、危険度が高い判断で多額の懸賞金がかけられている。
「...誰かと思ったら、...ハハッ面白い。新人の天族の坊やじゃないか。」
そういい、彼は赤い眼差しと共にこちらに体を向ける。それだけで強さがわかった。
着ていたシャツは開いており、そのはだけた部分から濃い褐色肌の筋肉の塊をのぞかせていた。大胸筋は大きく張り、残ったシャツに綺麗なラインと影を作っており、大きく開いた広背筋に沿ってくっきりと見える外腹斜筋と8つに割れた彫刻のような凹凸を持つ厚い腹筋が現れ、腕を捲り見えてる筋肉は太く綺麗な弧を描き、一つ一つの筋肉の筋と血管が露わになっていた。
自分の父親、いや、それ以上の筋力の持ち主...姿を見て少し圧巻していたが、すぐに気を戻し、指名手配犯に向かって警告をする。
「手を頭に組んで、そのまま伏せろッ!さもなければ武力行使に移る!」
指名手配犯を捕まえるのは第一隊の仕事であり、警告による命令に従わない場合は武力行使に移ることができる。ゼルを睨みつけ、拳を構えて戦闘態勢をとる。最近の襲撃の件もあり、いままで以上に声を荒げ警告した。しかし、彼は一切動じずにやけた顔で答えた。
「ふん、武力行使か。...まさか俺とタイマンでやりあうと?」
「「スピカ」の息子...いや世間体を考えてジークの息子にしとこうか。自分を買い被りすぎじゃないか?」
「...!お前、どこでッ!」
スピカ、自分の母親の名前...!それは父親のジーク含めごく一部しか知らないはずの事実だ。
なぜ...この指名手配犯は知っている...!?
「知らないわけがないだろう?ああ、知らない訳がない...。」
ゼルは目を閉じながら答える。
「...ッ!尚更だ。指名手配犯、地に伏せろッ!」
そうさらに声を荒げ命令する。
魔族はゆっくり目を開け、臨戦態勢をとる警備隊に対し、口を開いた。
「...俺にしか興味がないのか?もっとお前が気にするべきとこはあると思うが。」
ゼルは地べたにひれ伏した二人に一瞥した後、一切態度を変えない自分を見て、嘲笑った。
「まあ、ちょうどいい。教えて欲しいか?なら、ほら、お前の手で俺を捕まえてみろ。」
「その拳をぶつけてくるなら、俺が直々にお前を「教育」してやろう。」
そういい、彼は両手を広げ、まるで体を見せつけるかのように挑発してきた。
答えは決まっていた。高額な懸賞金の危険人物、次いつ現れるかわからない。魔族の襲撃事件にかかわりがあるかもしれない。
それに、スピカの息子であることを知っている理由...。
ここで倒して、俺が暴く。そのための力だ。
彼の気持ちは正義心で熱くなっており、目の前の指名手配犯を倒すことだけを考えていた。
「従わないんだな。なら実力行使を開始する!」
そう自分を鼓舞すると、ゼルに向かい走り出し、躊躇なく顔面に向かって拳を繰り出した。
しかし、彼はなんなく躱し、続けざまに繰り出した攻撃も最小限のバックステップでよけていく。
「...ほう、なかなかいい拳だな。当てれば俺といい勝負ができるかもなあ?」
「ッ!今その減らず口、黙らせてやるッ!」
煽られカッとなったアッシュは休まずパンチを繰り出す。
ゼルはそれを嘲笑いながら回避するだけで、一切攻撃しない。
「どうした?当てないと捕まえるどころの話じゃないんじゃないか?」
「ッ!!」
余裕と言った表情で挑発をやめない彼に対し、アッシュは一度拳をおろし、立ち止まった。
(ッ...冷静になれ...あいつはわざと軌道を読んで寸前での回避に集中している...ならッ)
「はあッ!!」
アッシュはゼルの顔面に向かい大振りの拳を振るう。
「ふッ」
ゼルは余裕の表情でバックステップを踏み、躱す。しかしそれがアッシュの狙いだった。
「うおおおおおッ!」
「ッ!?」
アッシュは大振りの拳は降りぬかず力をすぐ抜き、そのままゼルの体へ体当たりした。
重心を後ろにずらしていたゼルはそのまま後方に吹き飛び、体制が崩れる。そのスキを逃がさずゼルのボディに重い一撃を叩き込む。
ドスッ
「んっ...!」
その一発に、初めて魔族の表情に苦痛が生まれる。
初めて当てた彼の腹筋は鋼のように固く、鈍い音と共に自分の腕に大きな反動が伝わった。
しかし効いてはいる。
彼が足を一歩引いたのを見てすかさずもう一度全身で体当たりする。
彼の体は倉庫の角近くの壁に打ち付けられ、彼の逃げ場を完全にふさいだ。
アッシュはさっきまでの挑発を返すようにゼルに吐き捨てた。
「言われた通り当ててやる。耐えれるなら耐えてみろッ!」
そう言い、鍛えた筋肉を全力で使い、相手に猛攻を仕掛ける。
ドスッ、バシッ、ガシッ、ゴスッ
「ッ...ッ!...グッ...うッ...!!」
追い込まれたゼルはガードに徹するがアッシュのいくつかの重い拳はそれを破り、綺麗な褐色肌だった場所を鈍い打撃音を鳴らして赤く染めていく。
効いてはいるはず。しかし、何度攻撃しても、ゼルのガードは下がらず、ほとんどの拳がそれにはじかれた。
「チッ...。」
アッシュは耐えられている現状に苛立ちを隠せないでいた。
なら、もっと強力な一発を。そう思い、連打を浴びせながら渾身の一撃を放つ部位を見定める。
ターゲットにした部位は比較的ガードの甘いボディ。アッシュは雄たけびをあげ、この持久戦を終わらせる一発を放った。
「うおおおおおおおおおッ!!」
彼の放ったボディアッパーはガードの下をかいくぐり、狙い通り強靭な肉体の鳩尾に突き刺さった。
「がはッッ」
その拳は鋼のボディをも貫通し、ゼルの体をくの字に折った。完全な感触。あの試合の決めた感覚そのままだった。
これであの犯罪者は沈む、そう思い目を前に向けると、想定とは違うことが起こった。
「ぐおおッッ!?」
沈んだと思っていた相手の右腕がいつのまにか自分の鳩尾に突き刺さっていた。予期せぬ反撃で力を入れられずもろにボディダメージ食らい後ろにたじろぐ。
顔をあげると、にやけた顔をみせて、こちらに向かって歩いてくるゼルの姿があった。
「...ああ。いい...お前の拳、すごく効いた...。流石はジークの息子といったところか?」
「なッ...!?」
確実な威力のダメージを与えたはずだった。経験通りならダウンしてもおかしくないはずだ。なのに最初に会った時と同じように、痛みを感じさせない歩みで指名手配犯はこちらに迫っていた。
「気に入った。じゃあ、次は俺の番だ。」
そういい、瞬く間にゼルはアッシュとの距離を詰め、拳を打ち付ける。
顔正面、アッシュは軌道を読みすぐさまガードを固める。
しかし、
バスッッ!
「ぐあッ!?」
正面に来たはずの拳は彼のガード外の左にあり、その威力で顔を大きく右にそむけてしまう。
「がはッ!?ぐううッ!?!?」
意識が背いてる間にボディへの重厚な2連撃がぶつけられ、後ろへと後退していく。
バスッドスッ
「うッ!ぐうッ」
続け様のボディブローをなんとかエイトパックを固めて受け止めるも、その重さに呻き声が出た。
急いで拳を返そうとするが、反撃する隙を与えないように次々と拳が飛び、ガードをすり抜け、壊し、自分の白い肌に衝撃を与えてきた。
「がはッぐおおッ」
読めない軌道、読めても破壊してくる威力、顔は左右に吹き飛ばされ、腹は衝撃で折れ曲がり、後退を余儀なくされる...圧倒的な実力差があることに今更気が付いた。
「ッ...!グッ!んッ...!」
「どうした?ホラ、反撃しないのか??」
「ぐうッううッ」
アッシュはいつの間にか体を丸め、全身をガードする選択肢しかなくなっていた。
なんとか耐えて機会を待つ...が、その機会は一向に巡ってこず、ただ一歩的にやられていく。
「人の耐久力は、筋肉量に比例してできる外部魔力の量で決まる。筋肉量の多い戦士は、並大抵の攻撃じゃ沈まなくなる。」
「どうすれば弱体化するか、お前ならわかるよな?」
ゼルは口角を上げて、丸まったアッシュをこじ開けるかのようにボディ中心で殴り上げた。
「ぐッ、ウッ、あ゛ッ」
腹は魔力が貯槽される場所である。外部魔力は自然生成されるシールドであり、身体能力を向上させるもの。だから戦士達は腹筋を鍛え、簡単に破壊されないようし、強敵相手にはその腹筋を破壊し、弱体化を狙う。
ジリ貧なのはわかっていても、なんとかしようとガードを固めて対処する。が、ゼルの剛腕に虚しく破壊され、露わになった腹筋を突き上げられた。
「ガハッッ、ぐうッ、ううッ!?」
自分の自慢のエイトパックは、褐色の剛腕が抉るたび、徐々に徐々にゼルの拳を奥深くまで受け入れてしまっていた。自分のそれは、赤黒く腫れあがり、拳が食い込むたび、圧迫と痛みで悲鳴をあげた。
自分が痛みに悶え、嗚咽を吐く度、彼の拳は嬉しそうに威力を調整し、彼のボディを潰していった。自分の苦しむ姿を楽しみ、自分に現実を教えるかのように。
「ぐハッッ、ッッう゛ぐ!?」
敵わない...。
ドスンッ
「がああ゛うッ!?うう...ッ」
一旦、退かないと...。
執拗な攻めに耐えかねた自分は逃げるように大きく後ろに後退した。しかし、冷たいものにぶつかり、足がとまる。
「ッ...!!」
そこは先ほどまでゼルを追いつめていた角場であった。
その事実を知り、自分は顔をあげる。その指名手配犯の魔族は満足そうな笑みを浮かべながら荒い吐息を吐いた。
「残念だなあ?もう、逃げ場はないぞ?」
自分の歪んだ表情を見ると、赤い目を光らせて低い声で言い放った。
「天族の坊や、耐えてみせろよ?」
そういい、先ほど以上の容赦のない拳の雨がアッシュを襲った。
バスッドスッンガッボスッ
「がああッグッブハッうグハッおうッ!?」
もはやガードは完全に意味を成さず、強靭だった肉体と整っていた顔に絶え間なく無慈悲な拳がめり込んでいく。
「ブハッ、グあッ、ガッッ!?ごああッ」
壁際に追い込まれたアッシュは、腕を横に垂らしたただのサンドバックと化していた。
「ぐあ...があ゛...ッ...」
崩れそうになる体を足を開き、必死に支える。
もはや勝敗はついていたが、彼のプライドが、体を地につけることを拒んでいた。
「ほう?なるほど。そうか...ふふ、いい、なおさら気に入った。」
「俺は決めた。」
ゼルは辛うじて立っているサンドバックへの連打をやめ、その精神に惚れ惚れするように話しかけた。
「う...ぐう...。」
極限までダメージが蓄積しているアッシュに答える余裕はなかった。
それでも力をふり絞り、再び構えを取ってかすかな戦意を伝える。
その様子を見てフフッと微笑すると、ゼルは拳を握り直し、肘を後ろに大きく動かした。
「だから、まずは俺の特大の一発...受け入れろよ?」
そういうと、溜めた拳をアッシュの赤黒く染め上げた腹筋へと、勝負へ終わりを告げる一撃を繰り出した。
ボゴオオォッ
「あ゛あッがはあああああああッ!?」
強烈なボディアッパーは無防備な彼の鳩尾を再び抉り、空間に破壊の打撃音が響き渡ったった。彼の口からは、血まじりの唾液が吹き出した。一瞬宙に浮くかのように持ち上がったサンドバックはそのまま壁に打ち付けられ、成すがままに崩れ落ちようとしていた。
しかし、それを魔族は自分の体で壁に押し付け、崩れ落ちるのをわざと防いだ。ほぼゼロ距離の状態で戦意を失いかけているアッシュを見つめる。
「もうダウンするのか?東警備隊最強なんだろう?俺はまだ物足りないんだ。」
「もっと、俺を受け止めてくれよ?なあ?」
既に答える気力も考える気力も残っていない。ただ、倒すはずだった指名手配犯の肩に顔を垂らし、彼の後ろの空間を見つめることしかできなかった。
すると彼は嬉しそうに壊れたサンドバックに向かって煽ってきた。
「お前が誘ったんだぞ?ホラ。」
「どうだ?お前の攻撃を耐えきった俺の肉体は?お前を壊した俺の腕は?雄々しくて興奮するだろう?」
そう吐息を混ぜながら、彼はより一層体を密着させ自身の強さを自分の体に直接誇示した。
アッシュを支えるはずの筋骨隆々の背筋はその自分を破壊した太く屈強な腕に抱きかかえられ、鍛え上げた自慢の白肌の胸筋はさらに分厚い褐色肌の胸筋に押しつぶされた。
「うッ...くう...ッ...」
「フッ、どちらが上か、もっとわからせてやらないとなあ?」
そう言うと、顔を少し自分の方に向け、もう片方の手でなにもできない天族の局部に触れ始める。制服のチャックを開き、パンツの中に手を突っ込み始めた。
「な!?んッ...やめろ...ッ」
突然触れられ、咄嗟に拒否反応がでる。
しかし、その意思に反して、彼の陰茎は徐々に大きくなっていく。戦闘中の興奮状態で接触に敏感になっていた。
そして彼は天族のそれを掴むと外へ引っ張り出した。
「坊やは正直だなぁ...まあ天族も魔族も元は同じ「地族」。感じるのも一緒だ。」
「なかなか大きくて立派なもんもっているじゃないか。」
彼は先ほどまでの無慈悲な暴力とは真逆、甘い吐息混じりの言葉をアッシュに囁き続ける。
「まあ、俺には敵わないがな?」
自分の局部付近に大きいなにかがあたった。いつの間にか、彼のベルトは落ちており、緩くなったジーンズからはみ出るそれは巨大な存在感を見せ、熱い体温を伝えて来ていた。
「ふざ、けるな...ッ」
なんとか筋肉に力を入れ、抵抗しようとする。しかし、それに合わせて褐色の筋肉がピクッと動き自分を抑えた。弱ってる自分の力ではビクともしなかった。
「グッ...!」
「ふ、可愛いやつだ。俺の筋肉から逃れようと必死だな?」
歯を食いしばり抵抗を続ける。指名手配犯に殴り倒されるどころか犯されまでするなど、屈辱以外なにものでもなかった。
そんな自分を嘲笑うかのようにゼルは自身の強靭な筋肉を擦り付けて固定し、自分の優位性をアピールした。
「ほら、もっと抵抗しろ。そろそろ始めるぞ?」
そう耳元で囁き、自分を弄ぶ。
「グッ...ううッ!!」
何度試みても、ただ、体中が痛み、そしてその姿を見ている魔族が興奮するだけだった。
「ふふ、いい無駄な足掻きだ。それじゃあ天族の坊や、俺がお前に、「快楽」を教えてやろう。」
そういうと、彼はアッシュの陰茎を掴み、前後に動かし始めた。
「あっ..クッ..んッ...クソッ...ッ」
感じたくもない快楽が襲い、言いたくもない喘ぎが出る。しかし彼の手は動かすのをやめず、前後の運動は徐々に早くなっていく。
「こういうのは慣れていないようだなあ?ジークは性について教えてくれなかったのか?戦争中の天族、魔族、共通の娯楽だったというのに。」
「んッ...クッ...ンうッ...くうッ」
「ふふ、可愛い坊やだ。」
抵抗し、我慢しようとするも、経験の浅い彼にとって、それは無駄な抵抗だった。
手慣れた手つきにより、彼の亀頭は血が巡りどんどん綺麗な赤色に色づく。
「やめッ、おッ、ろッ、んんッ、くああッ」
魔族はその声を心地よく聞きながら、容赦なく初心な天族の先を揉み解す。
そして天族のそれは、クチュクチュと音を鳴らしながら、先だしの透明な液体を彼の手を流し始めた。
快楽の頂点に達するのは時間の問題だった。
「早いな...まあいい、我慢するな。...ほら、俺にかけろ。この俺に...」
「ぐ、うううッ」
射出を拒否しようとしても頭と体は快楽に呑まれ、いうことを聞かなった。
「う゛ッ、ぁああッ...ッ」
「んッ、あッあ゛ああああッ!」
アッシュの快楽の我慢は限界を向かえた。
彼の亀頭の隙間から白濁の液が飛び出す。
それは密着した魔族の下腹部を汚し、魔族の攻め手から垂れていた。
「んああ...はあ...はあ...はあ...。」
痛みと快楽で頭は混乱したが、なんとか正気を取り戻そうとする。
「...ふっ、こんなにいっぱい出して...俺の手つき、そんなに気に入ったか?」
そして目の焦点が、手にかかった白濁した液を舐め、微笑するゼルの側面を捉えると彼を睨みつけ、精一杯の抵抗をする。
「...変態、野郎ッ...!」
しかし、それを聞き、魔族は笑いながら答えた。
「まだ吠える余裕があるようだなあ?...よかった。こんなので終わられたら、俺の「処理」に困るところだった。」
そういうと彼は支えるのをやめ、乱雑に自分を倒した。
「おああッ!?」
そして大の字の倒れる自分に対し、今度は上からマウントをとる。
「グッ...ク、ソ...離せッ」
下から彼を見上げる。
2本の角の下にある赤い眼はまるで獲物を今から食すかのごとく鋭く光り、自分の翡翠の中の菱形の瞳を見つめていた。
そして、彼のそれは興奮して我慢できない状態であり、無色の液体を自分の腹筋に垂らし、今か今かとその瞬間を待っていた。
「天族の坊や、俺好みの顔、そしてこの逞しい肉体と精神をもっている。仕掛けられてヤラないわけがないだろう?」
「...ッ...!!」
彼はアッシュの腹筋から胸筋の凹凸を指でなぞりながら、顎までいくと、その手で顎を少し上げ、顔を近づけ目を合わせる。そして、
「俺はお前に勝った。もうお前は俺から逃げられない。ちゃんと、俺を受け入れてくれよ?」
低い声でそういうとすぐに彼のデカいブツが自分の中に無理やり入ろうと試みて来た。
「んあ!?いッ...!?」
感じたことのない痛みに体をもがこうとするが、破壊された筋肉に力が入らず、ただ痛みだけが伝わる。
「対抗戦の優勝を目指してるんだろう?このくらい、我慢、できるよな?」
「んッ....あああッ!?」
無理やり開かれた穴に対し、彼は少しずつ「自分」を中に入れていく。
「イッ!?..ぐううッ!」
「ッ...お前の穴は、存外素直だな...んん...悪くない...。」
少し、そしてまた少し、入ってくる。何度も何度も前進と後退を繰り返し奥を目指す。
「あ゛あッ、う゛う゛ッ」
何度目かの激しい痛みを穴に感じた後、ついに「彼」は自分の中にすべて入ってきた。
「...んッ...アァ...ふう...これでお前の中に入れた...。ふふ...いい子だ。」
「はあ...はあ...はあ...はあ...ッ...」
顔は灼熱のように熱くなり、呼吸することさえ苦しくなっていた。
これからどうなるか...考えるだけで吐き気がした。
「やめ...ろ...ッ...。」
必死の呼吸をはさみながら、消えかかるような声で言う。
「ハハッ...何を言っているんだ...これからだぞ、坊や。」
彼は止まらない。
「...俺を愉しませてくれ...ッ!」
そういい、ゼルは体を前後に揺らし始めた。
初心な天族に極上の痛みと快楽が訪れる。
「んんッ!?ああうッ、うんッ、あああッ!!」
突かれるたびに感じたことのない「悦び」を感じ、大きく喘ぐ。筋肉は悲鳴をあげ、壊れてもなお動かそうとする。
その「歌」を聞き、天族の穴に締め付けられるたび、ゼルの精神は高ぶる。
「ああ...気持ち、いいか?...坊や?俺も、気持ちイイ...。んッ...ほら、もっと、気持ちよく、させてやる。」
「あ゛ああッ...あ゛うんッ...んああッ」
理性はとうに消えており、ただ与えられる愉悦を感じるしかなかった。
「ッ...ふう...ふう...ンッ...あぁ...」
動かす速度を速めながら、自分が倒した美しく雄々しい体の天族を見つめ、堪能する。
「ああ、んああッ、ッあん、ンッッ」
魔族に成すがままに体を屠られ、「快楽」という名の痛み以上の屈辱を味わう。
…その時間はとても長く感じた。
無理やり入れられ圧迫感しかなかった肛門はいつしかゼルの潤滑油であふれていた。
ゼルも我慢の限界に来ていた。
「...そろそろ、ッ...いこうか...ッ!」
そういって、今まで以上に激しく腰を振る。
「アんッ、アあッ、ッああッ、ううッ、あぁッ」
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」
二人の激しい衝突音と喘ぎ声がこだまし、最後のクライマックスに向け、テンポが上がる。
ゼルの先だし汁は穴から漏れ出し、アッシュの上向きに太く聳え立つものからも同じ透明液が赤色の噴射口から流れ出ていた。
そして、
「あぁッあッ、んッッあ゛あ゛あああああああッッ」
「んッんんッお゛おおッッ、おおおおうッ、おお...はあ...はあ...。」
互いに絶頂を向かえた。
天族の中に魔族の大量の精液が押し込まれ、それと同時に下位の天族は腰を上げ、2度目の射精を上位の魔族の腹筋へぶちまけた。
魔族の少し赤みがかった褐色の腹筋の凹凸で盛り上がった部分からその白い液が零れ落ちる。
「はあ...はあ...あぁ...いい勉強になったな?天族の坊や。」
ゼルは魔族と天族の精液によって描かれたアッシュと自分の肉体を堪能しながら言った。
「あ、ああ...が、ああ...。」
すべてを出し尽くされた天族は、声にならない呻き声を上げ続けていた。
快楽の時間は終わり、全身の痛みと屈辱だけが残った。
何度目かの満足そうな笑みを浮かべる指名手配犯を最後に、アッシュの意識は途絶えた。
ーーー
「…いいか、アッシュ。」
「強さだけではなく正義のためにこの拳あるんだ。」
「力なき弱き者を助け、力で征服する強き者を挫け。」
「独りで耐える厳しさを覚え、仲間と共に突破する大切さを知れ。」
「そうすれば、お前は立派な警備隊員になれる。」
…夢を語ったあの日、父さんの言葉を思い出す。
「父さん...俺は...」
その思い出に手を伸ばそうとする。
すると目の前の景色は真っ白になった。
「...アッシュ、大丈夫よ...」
ーーー
「...ん...あ...ここは...?」
目を覚ますと見知らぬ白い天井が見えた。あたりを確認するため起き上がろうとする。
「ッ!?いってッ...」
その動作で主に腹筋が痛みをあげ、あの出来事が夢でなかったことを確認する。
…全裸であったため、すぐにその痛みの箇所を確認すると、変色と腫れによる痛々しさは思ってたよりなくなっていた。あと、気分の悪さがあったが、打撲による痛みに比べたら大したものではなかった。
(...誰かが治療、したのか...?だが、誰が?)
周りを見渡して現状を確認しようとする。この家は、木や石など自然の素材でできた、古き天族様式の家であることがわかった。そして、窓から映る景色を見ると、神聖都市ポラリスの全体と遠くに小さく輝く融合遺物が見えていた。
…見覚えのある光景に少しなつかしい気分がした。
「「星見の丘」の...家...?」
なぜ、ここに...そう考えようとすると、よく知った、あの声が聞こえてきた。
「おはよう。天族の坊や。よく眠れたか?」
その声が聞こえた瞬間、アッシュは痛みを忘れ、すぐにその声の主へと距離を詰め、胸倉を掴んだ。
「お前ッ...!」
怒りに震えた声をあげ、拳を構える。
掴まれた魔族、ゼルは既に昨日とは違う白いシャツを着ており、いつもと変わらない余裕そうな笑みを浮かべていた。
「まったく、...あの楽しんだ後、治療までして、この空き家のベットまで寝せてあげたご主人様に、手をあげるのか?」
まるで自分を犯した張本人が、救世主であるかのよう振る舞って、嘲笑うその物言いに、アッシュの怒りは止まらなかった。
「主人??ふざけるなッ!!」
そういって拳を振り上げるが、簡単に止められてしまう。そしてその動きで体のあらゆるところに痛みが走った。
「ぐうッッ!」
その様子をみて、あきれたようにゼルは口を開く。
「その体で、俺と戦ってもまた現実を味わうだけだぞ?もう一回、俺と楽しまないと学べないのか?」
そういうと彼は、さらに頭に血が上っている新人天族に、現実を突きつける。
「それに、身分証明書も入ってる端末含め、持ち物すべて奪われた、文字通り全裸の坊やがとるべき行動は、手を挙げることじゃないんじゃないのか?」
「...ッ!」
彼の言ってることはすべて正しかった。所持品はすべて没収されており、孤立無援の状態...。
怒りを歯で食いしばると、挙げた手をおろし、ゼルを解放した。
「いい子だ。少しは学習したようだな。」
握られたシャツのしわを伸ばしながら、窘めるようにアッシュを見て言う。
やり場のない怒りと屈辱で拳を強く握りしめ腕を震わせる。自分はすぐにゼルから目線を外して、下を向いた。
「ははッまあいい。これからの話をしようか。お前が全裸でも俺は構わないが、...これでも適当に着とけ。」
そういって彼は同じようなシャツとズボンを適当に置き、寝室からリビングへと移動を促した。
「これから...?」
そう呟きながら、仕方なくアッシュは、おそらくゼルのものであろう着衣に着替え、彼の誘導に従った。
---
彼のシャツは自分よりすこし大きかった。胸筋など大きい筋肉部分は素材の上からも盛り上がりをみせるところはあったが、全体的にサイズ負けしており、全身に残る痛みを含め、複雑な気持ちになった。
通されたリビングは埃臭く、現れた朝日によって照らされることで、その部屋の視界を保っていた。
ゼルはそこにあった一つの椅子に足を組んで座ると、「座れ」と自分にも相対するところに座るよう指示した。
指示に従い、向かいの椅子に座り、彼を観察する。
改めて見ると、彼の体の凄さがより分かった。白いシャツの上部3つのボタンはあえてはずしているのかそこから豊満な胸筋がのぞかせており、シャツの中に隠れている筋肉たちはそれに負けないくらい凹凸をつくり、全体のバランスを整えていた。異常なまでに彼と「ふれあい」をした後遺症か、会ったとき以上に彼の体に魅せられていた。
「どうした?そんなにまじまじと見て。俺に惚れたか?魔族とはいえ精神操作魔術の「魅了」は使ってないはずなんだがなあ?」
「ッ!?そんなわけないだろうッ!」
謎に現れた感情をかき消すかのように即座に否定し、再び敵として頭の中に認知させた。
「...さっさと言うなら言え。俺を、...どうする気だ...?」
そういいながら、頭の中で最善の手をシミュレートする。目の前にいる強大な敵から逃れ、警備隊に帰還し反撃する方法...。
…これから拷問されたら?...人質として利用されたら?
表情の裏で焦りを見せる自分を他所に、ゼルは余裕のある表情で自分に言った。
「お前を「教育」したとき、気に入ったといっただろう。」
その深紅の赤い目は自分の目を捕える。
「...!!」
強烈な視線、それに圧倒され、自分の脳内で行われていた喧噪の会議が止まる。
代わりにできた静かな空間には、深紅の映像と、自分とゼル、二人の吐息だけが聞こえるようになった。
「率直に言おう。天族の坊や。」
深紅の瞳は、一度瞬きすると、隙間から差し込む太陽の輝きを得てもう一度自分を見つめた。
「お前は、俺の「もの」になれ。」
「そして「天魔戦争」の再来。それを止める手伝いをしろ。」
...。
...?
...???
「...は?」
指名手配犯に暴行・強姦・誘拐された新人警備隊員の想定していたものとは、違う物語が始まろうとしていた。
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