その瞳の先

sherry

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ーーーーー亜蓮視点ーーーーー

零を留学させてから、僕の心はポッカリと穴が空いたような気持ちになった。大事な何かを失くしたような・・・湊斗といても埋まらないすごく嫌な気分だ。それからもその穴は埋まることなく日々は過ぎていった。冬になり、春が来て、僕が日本に帰ってきて1年が経った。あの頃は皆が良くしてくれて、零を1人にするためにいろんな事をした。

その春、風紀の田嶌があの頃の事を聞いてきた。今まで何もしなかったくせにと、何も教えてやらなかった。だけどあいつは周りの奴らにも聞いて回るようになった。そこから少しづつ周りの反応が変わっていった。僕はずっと湊斗にくっついてそれを無視した。だっていなくなってほしくてやったことだけど、騙される方も悪い。それに僕だけが悪いんじゃない。みんなそれに応じて零を孤立させたんだから。

長期休暇になる度、叔母が帰ってこないのと連絡してきた。昔は仲が良かったけど、あの人を見ると母を思い出すから会いたくなかった。だから長期休暇は湊斗の処で過ごした。湊斗も生徒会を引退し、これまで以上に 一緒に居てくれた。2人で受験勉強をしたり、僕は何がしたいかなんて考えてなかったから、湊斗と同じ大学を受験した。

結局どんなに忙しくしても、誰かといても穴が埋まることはなかった。卒業式前日、叔父から式が終わったら大事な話があると言われた。大事な話とは何だろう。これからの生活の事だろうか・・・結局式当日パーティーがあるため忙しいと終わってからすることとなった。式は無事終わり、後輩たちや親衛隊をしてくれた人達とお別れをした。その時一人の子が話しかけてきた。

「ご卒業おめでとうございます。式典会場で蓮見先輩に会いました。これまで間違っていたこと改めて感じました。私たちの勘違いをずっと内緒にしてくださり、あなた様が笑って過ごせて良かったと仰っておられました。亜蓮様、もしどこかで蓮見先輩にお会いすることがあったら、また前のように仲良くしてください。」

零が帰ってきてる。何で・・・零の事だからもう絶対帰ってこないと思ったのに。僕はその子にありがとう。とだけ言った。

そのままパーティー会場に行き、しばらくすると田嶌と笑って話す零を見つけた。どういうつもりで帰ってきたのか聞きたかったが、周りに人もいたためあいさつだけした。そしてパーティー終盤零が会場を一人で抜け出すところを見つけ、湊斗たちから離れた。そのまま出入り口で会場に入ろうとする零の腕を掴み外へ連れ出した。しかし、外に出てすぐ僕を呼ぶ声がした。そちらを見ると、あれほど会いたかった母がいた。

あの事件に関わっていた母・・・あぁ僕はまた捨てられるのかとそのまま走り出した。
・・・どうして・・・どうして僕だけ・・・
そう思い無我夢中で走っていると、後ろから零が僕を呼ぶ声がした。
・・・うるさい・うるさい・うるさい・・・お前がまた現れるから・・・・また・・・

その時後ろから手を引かれ、零が目の前で車と事故を起こしていた。僕は突然の出来事でその場から動けなかった。そんな僕を零が見た気がして駆け寄った。零は頭から血を流し足は車に挟まれていた。僕が零を呼ぶと

「亜蓮・・・無事で良かった・・・」

と言って、そのまま動かなくなった。僕は助けを呼び、そのまま病院へと連れ添った。

・・・どうして・・・何で助けたの?・・・僕なんて・・・

僕は手術室の前でずっと膝を抱えていた。バタバタと走る足音が聞こえ、そこに零の両親と母、そして湊斗と田嶌がいた。僕はみんなが怖くて何も言えなかった。それからみんな静かに手術が終わるのを待った。

しばらくして零が出てきた。出てきた零は青白い顔で眠っていた。零は頭を打っているものの今のところ目立った外傷はなく、検査でも異常は出なかったが、車に挟まれていた足は損傷が激しく、最悪動かなくなると言われた。それを聞いて僕は怖くて立ってられなくて、なんとか湊斗が支えながら立っててくれた。

・・・僕のせいだ・・・僕が・・・

「亜蓮・・・あなたのせいじゃないわ。あの子はそんなこと思ってないはずよ」

叔母さんはそう言ってくれたけど、僕は何も言えず首を振ることしか出来なかった。
僕が前を見ていれば、いや零が呼んでいる時に立ち止まっていればとそんなことを思っていた。

「とりあえず、命に別状がなくてよかった。」

「そうね。あの子は大丈夫よ。そう言う星に生まれた子ですもの。」

叔父と叔母の話を聞きながら、僕は零を見ていた。そのまましばらくいると叔母が、

「零がいないけど・・・亜蓮、少し話をしましょうか。湊斗くん達も聞いてちょうだい」

と話し始めた。








 
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