不思議なユリが光った時

榛名レオ

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第一章 江田愛との出会い (4)

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 帰り道、僕は帰路を辿っている。住宅街が並び、アスファルトの地面でできた少し狭めの道を歩いている。僕は、さっきのことを思い返していた。なんというか、頭から離れられなかった。それに、『また明日ね!』彼女は確かに言った。僕は、少し理解できなかった。こんな僕に、宜しくやることなんてあるのだろうか。頭を抱えながら考えた。けど、わからない。
 僕は、近くの公園に入り、自動販売機で、好物のコーラを買った。この自動販売機は、ルーレット式の当たりハズレがあり、当たるともう一本好きな飲み物が選べる。結果、外れた。とりあえず、ベンチに腰を下ろす。蓋を開けて、一気に喉に流した。 「……そういえば、」と僕は言って、
「あいつ、同じ学年と言えど、学校にいたっけ?」
 違う学年ならまだしも、同じ学年なら、多少は面識はあるはずだ。しかし、俺の場合、性格だけに、元々いた人を知らなかっただけなのかもしれない。まあ、考えてもしょうがない。
 僕は、立ち上がり、空っぽになったペットボトルを、近くのゴミ箱に捨てて、公園を去った。






 自宅に着き、玄関のドアを開ける。「ただいまー。」といい、リビングに入ると、エプロンを着けた母が、「おかえりー。」と、キッチンから優しい声で言った。
「遅かったけど、どこか寄ったの?」
「まあ…ちょっとね。」
別に言うことでもなかったので、あえて濁らせておく。
「今日から三年生でしよ?最後の高校生活なんだから、気を引き締めなさい。一番大事な時期なんだから。」
「わかってるよー。」
と、軽い返事をしたあと、自分の部屋に向かった。
 部屋に入ると、疲れが出ていたので、すかさずベッドに横になった。
 ちらっと横を見ると、茶色い紙袋に包まれた何かがあった。そういえば、この前買った小説本、まだ開けてなかったんだっけ。とりあえず、テープを丁寧に剥がし、袋口を開けた。二人の少年少女がおり、彩りのある背景の描かれた表紙に、少し厚めの小説本が入っていた。「こんなの買ってたなぁ。」とか呟きながら、表紙をめくって読み始めた。
 僕の場合、ファンタジー小説が好きだ。現実では起こるはずがない出来事を、頭のなかで想像しながら読み進めるのが、とても良い。しばらく読み進めていると、突然携帯の着メロがなった。僕は、画面を見た途端、早速電話に出る。
『よお!歩!』
「相変わらず元気だな。」
『そんなのいつものことだろ。そんなことより、頼みがあるんだけどさー。』
「……なんとなく言われることはわかるが一応聞こう。なんだ?」
『明日、あの格ゲーの全国大会があるんだけどさー。それでお前出て……』
「出ないぞ。」
『なんで!?』
「何回も言ってるだろ。僕はただ単にゲームを楽しみたいだけで、大会には参加しないって。」
『頼むよ!メンバーが一人足りないんだよお!』
「他を誘えばいいだけの話だろ。」
こいつは、小笠原直人(おがさわらなおと)。よくゲームの大会に出場している。幼い頃からゲームが好きで、僕も一緒に遊んでいた。学校でも、よくゲームの話で盛り上がる。まあほとんどが、こいつから話題を振ってくるわけだけど。だが、こいつの場合、格ゲーには滅法強い。何回も対戦しているが、一度も勝ったことがない。たくさん賞を取っているらしいから、当たり前だろうけど、そこまで大会に固執するのは、僕には理解ができない。僕の場合、自由にゲームがしたい。ゲームがしたいときにして、したくないときにしない。大会とかの為に、自分のゲームするときの好みのペースを縛られたくなかった。だから、こうやっていつも誘いは断っているのだが、こいつは諦めるかと、必死に誘ってくる。今回も、誘いの話だろうと察していたが、見事的中した。
『マジで頼むよお!お前、強いし、知識もあるから、それを大会に活かそうぜ?』
「わかった。派遣料金五千円ね。」
『金取るのかよ!?』
「行きたくもないのに行かされるし、遠征費もバカじゃないんだから、金取るのは当たり前だろ?」
『ぬぅー、そうだ!シューティングゲームの試合もあるんだけど、それならどう……』
鬱陶しく感じたので、無理やり電話を切った。諦めが悪いやつだ。いい加減、誘いの話は持ち込まないでほしい。すると下から、「晩御飯だよー。」という声が聞こえたので、僕は、スマホをテーブルにおいて、部屋を後にした。




 晩御飯を食べ、風呂に入ったあと、自分の部屋で、読書の続きをしていた。やはり読み進めると、面白味が出てくる。小説は、絵もないし、文が多すぎるから読まないってやつがいるが、そこがいいと僕は思う。映画で見るよりも、本で読んだ方が、内容も濃く、はっきりと伝わる。それが本に関する僕の意見だ。
 夢中で読んでいると、いつの間にか時刻は十時。そろそろ寝ようと布団に入った。目を瞑りながら、学校での出来事を思い返していた。
『また明日ね!』
不意に彼女の言った言葉が脳裏を横切った。僕は顔を半分まで毛布を隠したのだった。
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