色欲天使は調教師どもに喰われるそうです。

あわつき

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邂逅☆解放

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地下室──。


その呪文を唱えると辺りは光に包まれた。棺の中で眠る綺麗な青年。彼の中に感情が戻っていく。長い夢の中にいた青年はゆっくりと目を開けた。


「おはよう、雪凪(ゆきな)」
「…………お前は……魔女か……」 
「そうよ。身体の調子はどう?」
「…………倦怠感がウザい……。頭も痛い……」
「ここは空気が澱んでいるから。リビングへ行きましょう」


冥燈は青年を連れて地下室から出ていった。
屋敷の中はとても静かで二人の足音しかしない。


「お腹は空いてる?」
「…………僕の感情で遊んだの……?父さんはどこ……?」
「居ないわ。魔術師だった貴方の父はワタシが殺しちゃったから」
「…………キミが?」
「貴方の為よ、雪凪。あの人のやり方だと雪凪が傷つくと思ったの。だから……!」


バシッ、と思い切り頬を叩かれ、冥燈はふらついた。


「勝手なことを……。父さんの事は僕の手で殺りたかったのに……!余計な真似を……!」
「雪凪……」
「うるさい!」


ドンと突き飛ばされた冥燈はその拍子に後ろの食器棚に強く背中を打ってしまった。


「キミを具現化したのは間違いだったみたいだね」


ゆっくりと冥燈に近付く青年。彼の前では冥燈の魔力も無効化されてしまう為、抵抗が出来ない。


「元々、憂鬱なんて【七つの大罪】から外れた不用品だ。役に立たなくて当然か」
「……どうして……雪凪……。ワタシは貴方のこと……ずっと大好きだっ……」
「もう喋るなよ、ブス」


ガシッと頭を掴まれ、そのまま引き摺られるように床に叩きつけられた。仰向けに倒れた冥燈の腹部を何の躊躇いもなく踏みつける青年。


「っ……!ゆき、な……」
「お前に名前を呼ばれたくない。吐き気がする。気持ち悪い」
「……なん、で……。ワタシは……」
「もういいから、大人しく死んでよ。憐れな魔女サン」 
「……雪凪……」


──バンッ、と扉が開かれ、青年の手が止まる。入ってきたのは透韻達だった。


「騒々しいと思ったら、何やってんだ……」
「と、おい……」
「冥燈……?」


青年に足蹴にされている冥燈の姿に透韻は状況を理解するのに遅れてしまった。


「お前は……誰だ……?」
「……僕は、キミの主だよ。色欲の」
「主……?」
「この魔女が勝手に弄んだ僕の感情だろう?キミは」
「……お前が………」
「そう。名は雪凪。感情のコントロールが出来ない障害があって、それを治す為に実験台として感情を弄ばれた可哀想な青年だよ」
「実験台……」
「この魔女が迷惑かけたみたいだね。ごめんね」
「……いや……」
「僕はこの魔女を殺して自由に生きる。色欲の。キミも自由に生きなさい。僕の中に戻る必要は……」
「創葉は?」
「……誰だ?創葉……?あぁ……怠惰か。僕の中にいるよ」


その事実に透韻はへたりこんだ。創葉が回収されていた。冥燈が生きていた時点で気付くべきだった。


「創葉……」
「怠惰と一緒にいたい?」
「……戻して……。うちも創葉の傍に……」
「透韻!」


朱雀が咄嗟に透韻を止める。


「元々、色欲なんて僕には必要無いから、後はキミ次第だよ」
「透韻、ダメだよ……。オレを一人にしないで……」
「雀……」
「一緒に生きて……。お願い……」
「……でも……」
「そうしてあげなよ、透韻」


緋音も雀に加担した。透韻も戻らない方が良いことは分かっている。でも、愛しい者がいないのは生きていくより辛い。


「透韻……」 
「……ごめん、雀。もう、独りにしないから」
「一緒にいてくれる……?」
「あぁ……」


それまで意識が逸れていた冥燈が青年の足を退け、透韻に向かって魔力を放った。


「冥燈……!」
「お前だけ幸せになるな……!透韻!」


光が透韻を包み込む。雀が必死に透韻に抱きつき、行かせないように留めている。


「余計な事をしないでよ」


グシャっと冥燈の腹部を青年の腕が貫いた。その影響で魔力は途絶え、透韻は消えずに済んだ。


「……雪凪……。なぜ……」
「さっさと殺しておけば良かったね。いくら魔女と言えど、キミは僕から生まれた感情だ。元の主には逆らえない」
「……ゆき、な……。愛し、てた……のに……」
「想いが届かなくて残念だったね。もう、眠りなさい」


冥燈はそのまま光に包まれ、音もなく空へと消えていった。


「さぁ。キミ達ももうここから去った方が良い。帰る場所があるだろう」
「あんたは?」
「ここは僕の家だから、ここで暮らしていくよ。朱雀も色欲も、好きに生きると良い。キミ達の行く末を祈っているよ」



屋敷から出るともう陽が登っていた。


「さて。晴れて自由の身になった訳だけど、これからどうする?」


緋音が二人に問いかける。


「自由にって言われてもなぁ……」
「オレは透韻と一緒なら、何でもいい。あんたに抱かれたって構わない」
「──なら、二人とも俺と暮らさない?その代わり、家賃代は稼いで貰うけど」
「良いのか……?」
「モチロン。美人二人も居てくれるなら大歓迎」
「……居場所があるなら…」
「決まりだな。さっさと帰ろうぜ」


少しだけ、振り返ろうとした透韻を緋音が顎を掴んで止めさせた。


「未練がましいよ」
「っ……!」
「もう終わったんだから、これからの事を見据えてよ」
「…………あぁ。そうだな」


過ぎたことはどうしようも無い。
解放された今となってはただの色欲の天使だ。いずれ、感情から生まれたことも仲間のことも創葉のことも忘れていく。そうして普通の人間になっていく。そういう風に出来ている。


「ごめんね……創葉……」


彼女の名を呟くのも今日で終わり。
これからは、側にいてくれる朱雀と緋音とともに生きていく。
やがて、この命尽きるまで……。
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