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手助け☆誘惑

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パシッ──


頬を叩かれた勢いでバランスを崩し、結月は倒れてしまった。


「最近、付き合い悪いよな。なんで?」


ジャラジャラと身に付けている金属が明かりに反射して眩しい。インディーズでロックバンドとして活躍している唯花《いちか》は仕事のストレスが溜まっているのかやけにむしゃくしゃしていた。


「……指名が多くて……。希望休は通らないと……」
「何やってんだよ。だから良いように使われんだろ」
「……ごめんなさい……」
「明日は夜からだから、今から付き合え」
「……はい」


自分の都合が何より大事な唯花はそのまま結月の身体の上に馬乗りになった。


「客にもやらせてんじゃねぇの?」
「してません……。ボクは……貴方としか……」
「ホントかなぁ?」


服の上からなぞるように触られ、結月はビクビクと震えていた。
お触り有りのゲイ・バーで働いている結月は指名率が高く、容姿も麗しい。儚げな美人として色気もあるので客引きにもなっていた。


「触られただけでこんなに感じてるの、おかしくない?」
「……っ」
「いくらお触り有りって言っても、相手は男だろ?盛るんじゃねぇの?」
「……それでも……ボクはしてない……」
「でも、してほしいんだろ?」
「……えっ……」
「お前、凌辱願望あるだろ?偶にそういう物欲しそうな表情してるぜ」
「なっ……違います……!そんなこと……!」 
「うるさい。何ムキになってんの?図星?」
「……あんまりです……」
「まぁ、誰としてようが構わねえけどな。最後にお前を抱くのは俺だ」
「唯花……」


高校時代から唯花とは付き合っていた。お互い、自身の性にコンプレックスを感じており、理解出来る存在が近くにいた事もあって、そういう関係になった。


「うっ……ぁ、あっ……」
「きっつ……。慣らさなくても入るようにしとけよ」
「……痛っ……」
「まだ先っぽしか入んねぇ。もっと力抜け」
「……い、いちか……。待っ……て……」
「待たねー。時間の無駄。言うこと聞かないから無理矢理やるぞ。痛くても我慢しろよ」
「んっ……! 」


ギチギチとぶっといものが中にめり込んでくる。いくら力を抜こうとしても震えてしまい、痛みが先に押し寄せてきた。


「やっと半分……。お前、いつでも出来るように自分でもやっとけって俺言ったよな?」
「っ……ごめ……」
「痛いのは結月なんだから。自慰行為きらい?」
「……き……きもち、悪くて……。うまく……出来ない……」
「じゃあ、慣れるまでやれ。俺もキツイのはやだ」
「あっ……痛っ……」
「切れても仕方ねぇよな。ま、その内気持ちよくなんだろ」
「んっ……」


幾ら結月が痛がっていても唯花は途中でやめない。無理矢理続けるタイプ。対して結月はただ只管痛みと慣れない快感に耐えるしかない。抵抗なんて元から有り得ない。


「全部入ったから動くぞ」
「っ……ひぁあ……」 
「いっぱい啼いてくれよ、結月」


パンパンと思い切り突かれ、同時にくる快楽と多少の痛みに身体がずっと震えている。唯花はそんなに上手い方じゃない。なのに気持ちよくさせていると自惚れている。それを結月は敢えて言わない。口に出したら殺されてもおかしくない位、唯花は狂っているのだ。


「や、ぁあ……っ……」
「奥気持ちいいだろ?前立腺当たってるし」
「……んっ……!あっ……」
「ちゃんとイカせてやるからな」
「いっ……あぁ……っ……!激し……」
「お前の中すげー気持ちいいし」
「やぁ……、ア……あっ……んっ……」
「中に出すからさ、零すなよ」 
「な、中は……だめ……!やめっ……」
「拒否する権利無いんだけど」
「お腹……壊れる……。中……いやだ……」
「嫌だじゃねーんだよ、ブス。黙って犯されてろ」
「っ……い、ちか……」
「お前はいい子で抱かれてりゃいいんだよ」


奥まで突き上げられ、一気に快感が押し寄せてくる。先程までの痛みは完全に快楽に乗っ取られた。


「……ぁあ”……っ……」
「中あっついな……。締め付けて離さねぇ……。気持ちいいだろ?」
「……いち、か……」
「わかる?中に精液出されたの。これからもっと出してやるからな」
「えっ……」
「一回で終わるとか期待した?お前は何回も抱いてやらねーと分からねぇもんなぁ」
「……嫌……っ……」
「身体の調子は自分でどうにかしろよ」
「唯花……やめて……。今日は……」
「うるさい」


刺すような視線を向けられ、結月はもう何も言えなかった。唯花の性欲は変態並だ。抱き潰される頃には一人でスッキリしており、結月のケアなどは放置。
この日の夜も長かった。


「……いちかぁ……もう……」
「なに?トびそう?最後までちゃんと感じてくれなきゃつまんねぇなぁ」
「むり……もう……出ない……」
「俺はまだまだ出るけど。潮でも吹いとけば」
「あ、やぁ……!触、な……」
「ほら、熱くなってきた。イッた後に擦ると出やすいんだとよ」
「待っ……!ダメ……嫌っ……放し……」
「んー?」


もう何が何だか分からなくなっていた結月は迫ってくる快感に息が上がっていた。


「っ……、あ”──っ……!」


噴水のように透明な液体が吹き出し、結月は痙攣したまま。それでも構わずに唯花は腰を動かした。


「もう一回やって。まだ出せんだろ?」
「やだ……もうむり……!唯花……おねが……」
「誰に指図してんの?」


ガシッと首元を掴まれ、苦しさと快楽が混在した。


「人ってさぁ、苦しい時も快楽に浸るんだって。だから、お前がイッた瞬間に首絞めたら、また潮吹きそうじゃね?」
「っ……」
「ものは試しってやつだな」
「……やっ……」


結月の反応を遮るように激しく腰を動かし、唯花は一人で愉しんでいた。


「……あー……イキそ……」
「いち、か……」


パンパンパン、と音が大きくなっていく。結月は再度込み上げてくる慣れない快感に耐えるしかなかった。


「くっ……」


唯花がイッたのと同時に首を絞められ、その苦しさに声も出せなかった。


「……お。また出来たじゃん、偉いえらい」
「はっ……げほっ……」
「後始末大変そー。じゃあ、俺先に風呂入ってくるから」
「っ……」


抜かれたのと同時に中に出された精液がドボっと零れ出した。自分で掻き出さないと腹痛になってしまうので、結月は仕方なくアナルに指を入れた。


「んっ……」


自分で自分のアナルを弄るのは屈辱でしかない。何度やっても慣れないし、うまく掻き出せない。それが焦れったくて余計ストレスになった。


「──なんだよ。まだ後始末出来てねーの?」


唯花の風呂はカラスの行水だ。まぁ、彼の場合は洗い流すだけで済むのだから早くて当然だ。


「やってやろうか」
「……いいの……ですか?」
「俺の所為にされても困るし」


結月の足を広げ、唯花は二本の指をアナルに入れた。彼の指が中を刺激する。グチュグチュと気持ち悪い音が耳についた。


「……ん、ぁあ……」
「よし、出た。結構出したなぁ。もう、動けんだろ?風呂行ってこい」
「……はい……」


若干、フラフラしながら結月は浴室へと向かった。



「──唯花」


結月もサクッとシャワーを浴びてバスローブ姿になりながら出た。ベッドの上で寛いでいた唯花は結月を隣に手招きした。


「……少し、痕ついちまったな」
「いえ……」
「俺のこと、殴りたいだろ?」
「……そんなことしません」
「あんなに無理矢理したのに?それでも傷付いてねーの?」
「……好きな人に抱かれて……傷付く訳ない……」
「まだ……俺のこと好きって言えるのか……」
「唯花は……違うんですか……?」
「……俺のことばっか好いてたら、もっと辛い思いする……。俺がそうさせちまう……。だから……」
「嫌です!」


唯花の言葉を遮り、結月は全力で拒否した。


「結月……」
「ボクは唯花の事が好きだから、一緒にいるんです。離れたくありません」 
「でも……今日だって痛かっただろ?苦しかっただろ?嫌になるような抱き方したもんな……」
「関係ないじゃないですか……。どんなことされても、唯花にならって思えるんです。ホントに嫌だったら貴方を刺してでも逃げますよ」
「……結月……」
「お願いします……。別れたくない……。ずっと……唯花と一緒にいたい……。仕事はそろそろ辞める心算です」
「給料良いんだろ?勿体ないだろ」
「休みも取れないような仕事なんてやるだけ無意味です」
「……そっか」
「唯花は……ボクと居るの嫌ですか……?」
「そうじゃねぇ。抑制効かなくてお前のこと乱暴にするのが怖いんだ……」
「壊しても良いです。貴方が別れたいというなら、ボクは死にます」
「……大袈裟」


溜息混じりに呟きながら唯花は結月を抱き寄せた。


「誰が手放すかっての。俺だって嫌だわ」
「……唯花……」
「何年一緒にいるんだよ」
「10年弱……?」 
「結婚出来ねーのが虚しいよな」
「似たようなものじゃないですか」
「お前さ、仕事辞めてどうすんの?」


ガラッと話を変えられ、結月は返答に遅れてしまった。


「近くのカフェで店員募集をしてたので、受けようかと」 
「ま、カフェなら時間も取れるしな。金は?儲かるの?」
「最近、メディアにも取り上げられているそうなので客足には困らないらしいです」
「いい所見つけたな」
「はい」
「職場の奴に何かされたらすぐに言えよ」
「ありがとうございます」


まだこの時は何もかもが上手くいくと思っていた。





「辞める?」


ゲイ・バーのオーナー、ミツエはいかにも不機嫌そうに結月を睨みつけた。


「すみません……。家庭の事情で………」 
「残念ねぇ。指名率ナンバーワンの貴方に抜けられたら、このお店潰れちゃうかも」
「えっ……」
「お給料も今の倍にするから、辞めないでくれない?」
「……いや……そういうことじゃ……」
「なに?みんなを裏切るの?そういう性格だったの?あなた……。見損なったわ」
「オーナー……!」
「辞めるんならそれなりに頭の下げ方ってもんがあるでしょ?いきなりナンバーワンが消えた店の末路、知ってる?それくらい迷惑かけるんだから、わかるわよね?」
「……すみません……」
「今日、仕事終わったら残って。いいわね?」
「はい……」


オーナーの圧に押され、結月は頷いてしまった。
このゲイ・バーは近所でも有名で結構お客さんにも恵まれていた。働きやすさもあったが多忙期が続いてしまい、連続勤務になることも多々あったので、店員の入れ替わりも激しかった。


「今日もお疲れ様ー。ってことで集合ー!」


無事に閉店し、店内清掃も済んだ頃、オーナーがみんなを呼び寄せた。全スタッフが集合するととても不格好な絵図になる。その中で結月の存在はまさにエースだった。


「皆さんに報告がありまーす。なんと、うちの看板娘が今日で辞めちゃいまーす」


オーナーが伝えるとスタッフ達から色んな声が上がった。


「だからぁ、最後にみんなからお別れの挨拶としてぇ、結月ちゃんを輪姦すってことでどうかしらぁ?そしたら辞めてもいいわよねぇ?」
「えっ……なにを……」


突然訳の分からないことを言い出すオーナーに結月は困惑した。スタッフ達は浮き足立って喜んでいる。


「あなたの抜けた穴を埋めるのがどれ程大変か解らせてやるって言ってんの」
「でも……輪姦すって……」
「そうよ。迷惑かける分、身体で支払って貰わないと。みんな、密かに貴方のこと抱きたいって思ってたのよぉ。私もだけど」
「……嫌……っ……。こんなの犯罪……!」
「結月……!」


聞き慣れた声に呼ばれ、結月が振り向くと親しくしていた後輩のミシェルがスタッフ達に捕らわれていた。


「……何故……彼が……」
「保険よ。貴方が逃げた場合、彼に責任負って貰うから」
「ミシェルは関係ないでしょう!それにまだ経験も……」
「ならテメェがやれよ、ビッチ!勝手な都合で振り回すんなら、ちゃんと責任取れや」


急に男性として怒りを露にするオーナーにビビってしまい、結月は怖くなってしまった。


「大丈夫よ。優しーく気持ちよくさせるから。それならみんなも納得するわ」
「っ……」


抗えない雰囲気に結月は丸め込まれてしまった。





ドンッ、と誰かとぶつかり、ミシェルは尻もちをついてしまった。


「ごめんなさい……!」
「平気平気。キミは大丈夫?」
「はい……」
「随分と切羽詰まった表情してるね。誰かに追われてるの?」
「あっ……お、オレじゃなくて……先輩が……」
「……ん?なんか見覚えあると思ったら、ミシェル?」
「えっ……」
「お店で一回だけ相手してくれたの覚えてない?可愛いから次も指名しようと思ってたんだ」
「……あ!お得意様の……。あの……!た、助けて下さい……!」


ミシェルは青年に縋るように助けを求めた。早くしないと収集のつかない事態になってしまう。二人はダッシュで店へと急いだ。



店では大変盛り上がりを見せていた。
結月はオーナーに足を持ち上げられ、何の抵抗も出来ず好き放題されていた。


「ほら、もっと力抜かないと入らないじゃない」
「……やっ……」
「今日で最後なんだから、楽しませてね」
「嫌っ……そんなの入らな……」
「あらあら。すんなり入っちゃったわよ」
「あっ……」
「全員回るまで持つかしらね」
「……やぁ………」


唯花──!


そう呼んだら来てくれると思った。
けれどそんな都合のいい話など無い。代わりに現れたのは見慣れた客だった。


「あら……?」


裏口から入ったミシェルと青年にオーナーがすぐに気付いた。


「盛り上がってる最中すみませんねぇ、ミツエさん」
「あなた……どうして……」
「この子からSOS貰ったので。その子に何してるの?」
「……急に辞めるって言い出したから、最後にみんなで奉仕してあげようと思って」
「嫌がってるようにしか見えないけどなぁ」
「素直じゃないのよ」
「まぁ、どーでも良いんだけどね。お気に入りの子が俺以外の奴に虐められんのは癪に障るんだよ」


不意に取り出した銃に、その場にいた全員が怯んだ。


「その子、返してくれたら殺さない」
「……な、に言ってるの……?銃刀法違反じゃない」
「うるさいなぁ。俺はトクベツなんだよ」


青年は笑いながらオーナーの足に一発ぶちかました。


「ぎゃぁああ……っ!」
「オーナー!」
「てめぇ、何しやがる!」


予期せぬ出来事に男に戻るスタッフ達。そのドタバタに紛れて結月は解放された。


「言うこと聞かないと全員殺すよ。あ、その方が都合いいかな。証言者とか面倒なことになるし。さぁ、じゃあ誰から死にたい?」


柔らかな表情と言葉が合っていない。その優しげな雰囲気とは裏腹に人を殺めることになんの抵抗も持っていない青年。流石に銃という武器の前では恐怖の方が勝ってしまい、誰も何も出来なかった。


「ケーサツに言ったら殺すから。逃げても無駄だよ。全員の顔覚えてるし、家も知ってるからさぁ」
「ひっ……」


青年は防犯カメラを見つけ、それも銃で撃ち抜いた。


「早く手当てしてもらいなよ、ミツエさん」


結月はミシェルに支えられるようにして店から出た。


「キミも俺ん家来なよ。その子のこと任せていい?」
「はい……」


青年は少し店の前で様子見していた。案の定、オーナーが足を引き摺り電話しながら出てきた。


「誰に連絡してんの?ケーサツ?」
「ひぃ……」
「あ、ヤクザとか?止めた方がいいよー。その人、俺の知り合いだから。お店燃やされたく無かったら早く消えてくれない?」


見えない圧にオーナーはもう恐れに勝てなかった。



「これでもう大丈夫だろ。あのオーナー、明日にはこの街から消えてるかも」 


青年の行動には驚いたがミシェルはすぐに順応し、青年の後についていった。
案内されたのは高層マンションの一室。ミシェルの家とは比べ物にならない位、見晴らしが良かった。


「ただいまー」
「おっそい、緋音!夕飯冷めちまう……」


出迎えたのは見目麗しき美人。結月と同等かそれ以上か。


「……なに、そいつら。新手?」
「助けた。暫く家に置く」
「は?唐突に何言ってんの……」
「先にこの子の手当てして貰っていい?」
「……後でちゃんと説明しろよ。──雀!」


美人は怒りながらもミシェル達を追い払わなかった。中に通されると広いスペースに感心してしまった。


「ソファーに寝かせろ。今タオル持ってくるから拭いてやれ」


その綺麗な外見に似合わない口調が印象的だった。人間離れしているような美しさに呑まれてしまいそうだ。


「人助け?緋音もお人好しだね」


タオルを渡してくれた彼も美人だった。先程の美人とはまた違った色っぽさがあった。


「悪いね、突然。行きつけの店で揉めたらしくてさ」
「あぁ……あのゲイ・バー?」
「そう。ちょっとヤバそうだったから保護したの」
「連絡くらいしろよ……」
「早めにケアしたかったし」


話している二人の横でミシェルは結月の身体を拭いていく。なにをされたのか、所々ベトベトで異様な臭いもした。


「……ミシェル……?」
「あ、結月……。身体、痛む?」
「……平気……。ありがとうございます」
「お得意様のお客様が助けてくれたんだよ」
「……緋音様……」


結月に呼ばれ、青年は振り向いた。


「おー。結月、災難だったなぁ」
「あの……助けて頂きありがとうございます……」
「うん。あのオーナー、気に入らなかったし、俺としても好都合だったからね」
「ですが……仕返しとかされたら……」
「無い無い。ちゃんと脅しかけたし、次現れたらホントに殺しちゃうよ」 
「……殺し……?」
「まぁ、大丈夫でしょ。暫く家に居なよ。あ、二人に紹介するね」


青年のペースに流されるように自己紹介が始まった。


「緋音の知り合いなら、多目に見るけど……。うちは透韻。この子は朱雀。緋音とは……恋人……?親族……?みたいなもんだ」
「そこは恋人って言って欲しいなぁ、透韻」
「黙れ、変態」
「ひっど……。あ、次は結月達の番だよ」 


サラッと促され、結月が先に名乗った。


「緋音様には良くして頂いた恩もありますし……」
「結月は可愛からなぁ。ミシェルもだけど」
「オレはまだ……新入りで……」
「ゲイ・バーで働いてた位だから、そういう相手もいる訳?」
「はい……。彼には連絡しました……」
「……そう」


不意に透韻が結月に近付き、顔を合わせてきた。結月はどうしたらいいのか分からず、ずっと見つめてしまった。


「……やっぱり……希澄に似てる気がする……」
「えっ……」
「雰囲気とか。親近感っていうやつ?」
「どなたのことですか……?」
「……あ、悪い。こっちの話。仲間に似てたから」
「仲間……?」
「目に毒でもねぇし、同居ならいいぜ」


透韻と同じ意見だったのか、隣で朱雀も頷いていた。


「ですが……迷惑では……」
「ここにいれば一番安心だし、万が一の事もあるでしょ」
「二人増えてもスペースあるしな」


結月とミシェルも暫くの同居には抵抗は無かった。
けれど、許さないだろう人物が一人……。


「携帯鳴ってるの誰?」
「……あ、すみません。ボクです……」


携帯の画面には彼氏の名前。結月は出るのを躊躇ったが後が怖いので渋々応答ボタンを押した。


『結月……大丈夫か?』
「……えっ……」
『後で事情聞くけど、今どこ?』
「あの……知り合いの家に……」


結月は今いる住所を伝え、電話を切った。


「彼氏?」
「はい……。10分位で着くそうです」
「そっか」


落ち着いたのも束の間だった。
まさかこの後、とんでもないことになろうとは、この時は誰も予期していなかった。
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