世界を喰らうは誰の夢

水雨杞憂

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海無し国の海の幸

プロローグ

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 この世界はとても広い。
 その広すぎる世界が故、各々が自分たちのテリトリーを築き国を成している。
 それは何億のも人が住み、土地を所有する大国もあれば、数世帯で集落を成している国まで多種多様、住む種族も多種多様だ。
 共通することと言えば、それぞれの国が独自のルールを持っていて民をまとめていることだろうか。
 僕の国だって例外ではない。そこそこの広さを持ち、そこそこの人口を持つこの国は言うなれば「普通の国」である。そんな「普通の国」であっても外からやって来た者にとってはきっと稀有なルールによってまとめられているように見えるだろうか?
 そして、ここはこの国のシンボルとも言える城の上層部。そして、この国を影のルールによって牛耳る大富豪の居城でもある。
 そんな、富豪主を主人に持ち、働いている僕はある意味安定した生活を送っていただろう。だが、そんな僕の日常は突如出会った侵略者によって崩れつつあった。

 そう僕は今、悪魔を見ている。

 左腕を切り落とされたそいつは怪訝そうな表情を見せたかと思うと軽く溜息をついた。
 そして、まるで道端の石を見るように興味の無くなった視線で周りを一瞥するとそれを取り囲んでいた兵士は、一で地面から伸びた影に飲み込まれ、二で雑巾のように絞り上げられ、三で闇の火山が噴火したかのように高い石天井に中身を叩きつけられる。
 ある程度鍛練を積もうとも人間の非力さを突きつけられる圧倒的な暴。その姿は正にただの天災だ。
 もう、この部屋で形を成している人は僕と僕の主人。そして、その悪魔だけであった。
 屋内なのに赤い雨が滴る中、その場に不釣り合いの少女は自分の力を再認識したかのように満足げに獰猛な笑みを浮かべ、口を開いた。
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