ガシャドクロの怪談

水雨杞憂

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誘い道

エピローグ

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「ただいまぁ」 
「んー。おかえり」 
  
 ガーシャがうつ伏せでテレビを見ながら煎餅を咥えた口で迎える。 
  
「なんじゃ? そんなところで立ち尽くして?」 
「この前の道があったところ見てきたよ」 
「また行ったのか……。懲りないやつじゃ。また、囚われても知らんぞ」
「とくに何もなかったよ」 
「だろうな、大体は妾が喰ったからの」 
「それで、思ったんだけど」 
「?」 
  
 ガーシャの不思議そうな表情の前に僕は言うべきか一瞬悩んでから続けた。 
  
「この前みたいに、怪奇現象で困っている人を助けられないかなって」
「は?」 
  
 僕の言葉に口が塞がらないガーシャの口から煎餅が落ちる。 
  
「優希、貴様は阿呆か? 一人では何もできなかっただろうに!」
「だからさ、今度は初めからガーシャに協力してもらってね」 
「呆れすぎて笑いも出ぬは。妾がなぜ優希の戯言に付き合わんとならんのじゃ」 
「あ、もちろんタダとは言わないよ。美味しいと噂のパン屋のあんパンを買ってきてあげるからさぁ」 
「はぁ、妾は今の供物で満足しておるわ。しかも食べ物でつろうなどと……」 
「まぁまぁ。あっそうだ、この間のお礼もかねて一つ買ってきたよ」 
  
 僕はそう言って持っていた紙袋をごそごそと漁った。 
 ガーシャは全く興味なさそうなふりをして僕の手の動きに全神経を集中させている。 
  
「いくつか種類があってね、どれを買おうか迷っちゃったけど」 
  
 付け加えて袋から焼きたてのあんパンを出した。 
 部屋一帯に香ばしい香りが充満する。 
  
「ふぉあぁぁ……♪」 
  
 ガーシャが声にならない歓喜の声をあげ犬のようにあんパンにくぎ付けになっている。 
  
「フランスあんパンって言うらしいんだけど」 
「そんなのはあとでいいわ!早く、茶を……いや、牛乳かの? いやっ、茶じゃ! 渋めの茶を淹れよっ!」 
  
 ガーシャがあまりにも急かす様に言うので僕は急いでお茶を淹れてくることにした。 
 ちょうど、ポットにお湯があったため直ぐにお茶を淹れて部屋に持ってくると、机に置いたあんパンと突っついたりくんくんと匂いを嗅いでいるガーシャの姿があった。 
  
「遅いぞ、優希! どれだけ妾が待ったと思っておる! さぁ、お茶にするぞ!」
  
 「そんなに待たせてない」と言いたいところだが堪えて、お茶をガーシャの前に置き自分も座る。 
 すると、ガーシャは待ってましたと言わんばかりにあんパンを掴み一口サイズに千切る。生地が固いためいつも見たく千切れないようでだいぶ大きめの欠片になっていた。 
 それを気にせず、大きさに合わせるように口をあけ放り込んだ。 
 そして、お茶を啜る。 
 すると間もなく「ブワッ」と涙を流した。 
  
「どどどうしたの?」 
「うう、失敗じゃ。妾は選択を誤った……。このパンの塩気には牛乳の甘みが合うというもの。妾がそんなことにも気づけぬとは……」
  
 眼球が残った方の瞳でポロポロ涙を流しつつも、口と手は止まることなく食べ続けている。 
 喜んでるのか、悲しんでいるのかよくわからない。 
  
「まぁ、他にも色々種類あったからね」
「なぬっ! 何故それを言わぬっ! 早う、早く買ってくるのだ」
「地味に高いんだよ。それに、今日のはこの間の怪奇のお礼だし」
「うぬぬぬ……。なら、早う依頼を持ってこぬかっ! 今度は完璧にこの茶の時間を完成させようぞ。いや? 他にもあると言ったな?」
「んー。あんまり覚えてないけど抹茶あんパンに、梅あんパン、栗あんぱん、揚げあんパンとかもあったなぁ」
  
 もうだめだ。ガーシャは宙を見てよだれを垂らしている。 
  
「むぅ……。悩むぞ悩むぞ。次は何を喰らおうか……」
「あのさ、忘れてるようだけど怪奇を解決した時の報酬だからね?」
「分かっておる、わかっておる。はぁぁ……♪ さて如何ほど美味なるや…」
  
 もう僕の声は届いてはいないようだ。どうやら、夢中になると周りが全く見えなくなる節がある。 
 彼女とこのような約束をしたのは本当に正しかったのだろうか。 
 約束してなんだが波乱な生活が続きそうである。 
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