ガシャドクロの怪談

水雨杞憂

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オカルト研究会

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 この間の事件から一転、学校は今日も平和だ。 
  
「おいっ、能久! 絶対に、ぶっとばすっ!」 
「紀糸が旨そうな弁当を広げてるからいけないんだろぉ!」 
「だからって残しておいた卵焼き食うやつがあるかっ! ガルルル……」 
  
 今日も……平和だ。 
 昼ご飯を盗られて唸りをあげ牙をむき出しにする紀糸を七緒は羽交い絞めにしている。七緒が止めなければ能久の首を食いちぎりそうな勢いだ。 
 僕たちは教室の隅に集まりいつものように昼休みを過ごしていた。紀糸が暴れるのも僕たちにとっては毎度の光景である。 
 この学校は床がカーペットになっているため床に直接座って友達と円を作って弁当などを広げて居るものも多く、僕らのグループもいつもの定位置、窓際の日当たりのよい位置で輪を作っていた。 
  
「悪い、悪いって。これやるから許してくれ」 
  
 能久はそう言ってコンビニのビニール袋から菓子パンを一つ取り出し紀糸に投げてよこした。 
 紀糸は腕を抑えられているためそれを器用に口でキャッチし、わざと聞こえるように舌打ちをして気を静めた。 
 そして解放された紀糸は、ストンと胡坐あぐらをかいて食事を再開した。彼女は気にしていないがこの体勢のせいでチラチラと気を散らせる。 
 もう少し七緒を見習って女性らしさを付けてもらいたいものである。 
 基本的に物静かな七緒は優等生な丈のスカートを丁寧に伸ばし、きれいな正座で黙々と箸を進めていた。 
  
「お願いしまーす! 誰かおねがーい!」 
  
 大きな声を出し、クラス中の食事グループを回っている女の子がいた。 
 肩までぐらいに切られたショートカットにやや大きめの眼鏡を掛けている姿。あれは、同じクラスの『古川理香 ふるかわりか』のようだ。
 何かA5サイズほどの紙を配って回っているようである。 
 そのうちに、僕たちのグループにもやってきた。 
  
「お願いしまーす。お願いし……あっ!株掛さんに宮奥さん、あと上切君も確か部活やってなかったわよねっ!」 
「なんだと思えば部活勧誘だったんだね」 
  
 僕は、古川が持っていた手書きをコピーしたようなチラシを見て納得した。 
  
「そうなのよっ! 最低でも部員を5人にしないと廃部になっちゃうのよ! だからお願いっ! 名前だけでもいいからっ! 参加してくれればそれに越したことは無いけど……」 
「ところでなんの部活なんだ?」 
  
 興味本位に能久がチラシを受け取る。そして、チラシを見た彼はなんとも言えない表情をした。 
  
「オカルト……研究会……?」 
「ええ、そうよ」 
「ハハ……。古川さんって意外にもこういうの好きだったんだ……」 
  
 紀糸もハキハキ答える古川の顔を見ながら、乾いた笑いを携えて言った。 
  
「いえ、勿論嫌いよ!」 
「「えっ」」 
  
 ここの場の一同が頭にハテナを浮かべる。 
  
「だってそうじゃない? どれもくだらないことばかり。全部化学的、物理的に証明できるもの、オカルトとかいい加減な言葉で片付けるのが私には許せないのよっ!」 
「それとオカルト部に何の関係が?」 
「オカルト研究会だったらここら辺の怪奇現象や噂が入ってくるでしょ? それをいち早く分析して解決するのっ! それに、それを盲信してる人たちの更正よっ!」 
  
 拳を握りしめ、熱く語る彼女の前で複雑な心境だ。 
 なにせ、怪奇現象を二度ほど体験してしまっているのだから。あれは、化学的、物理的に解決できなさそうである。 
  
「ごめん、わたし、家の手伝いで忙しいから」 
  
 考えているうちに七緒が断った。 
 古川は予想していたように「ありがとう」と呟くと肩を落とした。 
  
「ごめっ……。アタシも……」 
「僕はいいよ」 
「ウェエッ?」 
  
 僕の言葉にみんな意外そうな反応をする。 
 ちょうど僕は怪奇を解決する約束をガーシャと結びつつも実際何して良いのかわからずに手をこまねいていたところだ。 
 目的も彼女のものとある意味一致するため都合が良い。 
  
「あ……ありがとーっ!」 
  
 古川は歓喜の声をあげ僕の手を握りぶんぶん振り回した。 
  
「で、株掛さんはっ?」 
  
 初めての入部希望者に目をキラキラ輝かせ希望の瞳で紀糸のほうに目を向けた。 
 その純粋な瞳に紀糸はたじろぎ目をそらす。 
  
「えっ…。ああ……うん。アタシも暇だし入ってもいいよ」 
「株掛さんもっ! ありがとーっ!」 
  
 古川は今度は紀糸の両手を握りぶんぶん振り回した。その反動に耐えられず体も振り回されながら空笑いをしていた。 
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