ガシャドクロの怪談

水雨杞憂

文字の大きさ
18 / 59
オカルト研究会

2

しおりを挟む
 放課後、紀糸と僕はさっそく部室と部員を紹介すると言って(むりやり)連れてこられてしまった。 
 校舎の四階、多目的教室が並んでいる廊下の一番端。僕らはいたって普通の教室の扉の前に立っていた。 
 オカルト研究会の部室は使われていない教室を借りて使用しているらしい。教室札にセロハンテープで付けてある画用紙に可愛らしい文字で「オカルト階研究会」と書かれていた。何故か花のイラストも添えて……。 
 そんな疑問を抱きながらも僕らは古川にいざなわれ教室に入って行った。 
 オカルト研究会と言うくらいなので身構えていたが意外にも日当たりのよい、本棚が多いだけの普通の教室であった。普段見慣れている机がすくないだけ広く明るく見える。 
  
「ようこそっ! 私たちのオカ研へっ!」 
「意外と普通の教室なんだ」 
  
 紀糸が僕と同じ感想を述べる。 
  
「あっ、確かにオカ研って言うと怪しい所を想像するよね。でも、大丈夫。そんな物、私が置かせないからっ」 
  
 一般人からしてみたら頼もしい言葉だが、趣味の安住の地を求めて集まって来た者にとっては堪ったもんじゃないだろうか。 
  
「はぁ……、姉さん。そんなこと言って今日もちゃんと来るんだね……」 
  
 教室の中央に置かれた机で本を読んでいた人影が言った。 
 その容貌は古川の面影を持った中性的な男子であった。古川より背は少し高そうだが眼鏡をしておらずよほど女性らしくも見える。ただ、読んでいた本はオカルト研究会にふさわしく、いかにも怪しげな表紙の本を読んでいた。 
  
「あんたが変な物にのめり込んでるからお姉ちゃんは心配なのっ! あっ、この子は私の二卵性の双子の弟の教宗のりむねよ」 
  
 そう言って理香が紹介する。横に並ぶとますますよく似ている。
  
「よろしくお願いします。古川教宗、一応これでもオカルト研究会の副部長です」 
「研究会なのに部長なんですね」 
「本当は副会長なんですけどね。活動上、副部長って名乗った方がわかりやすいんですよね」 
  
 教宗は自嘲気味に笑いながら言った。 
  
「僕は上切優希です」 
「古川さんと同じクラスの株掛です」 
「うんうん。で、あの部屋の隅に席を作ってるのが部長よ」 
  
 理香は僕らの自己紹介を満足そうに眺め、そして部屋の奥の方を指差す。
 入ってきたときは気が付かなかったが理香が指をさした先に人形やらぬいぐるみに占領されたやたらにファンシーな席があった。しかし、よく見るとそのぬいぐるみの並びに市松人形やフランス人形なども混じっている。場所が場所だけに少し気味悪さも漂わせていた。 
 その人形たちに埋もれるように一人女性らしき姿が何やら物を書いている姿が確認してとれる。どうやら彼女が部長らしい。 
 僕たちは挨拶をするためにその机に近づいていいく。
 しかし、彼女の姿を見た僕と紀糸は失礼なことに一瞬たじろいでしまった。 
 なにせ、猫背の姿勢でバサバサの長髪を垂らしながら書類を一心に書いている姿は呪いの言葉を刻む幽霊を連想させるものがある。しかも、ぶつぶつと書き留めていることをそのまま呟いているものだからなおさら不気味さを際立たせていた。 
 そうとう集中しているらしく、僕らが近づいても一向に気付く気配はなさそうだ。 
  
「部長っ、メールで連絡しておいた新入部員二人です! 連れてきましたよ」 
  
 理香のその言葉に部長はぐりんと首だけを動かしこちらを見る。長い髪は顔にもかかりその隙間から目を見開き僕と紀糸の間をきょろきょろと動いていた。 
  
「う…あっ……。理香ちゃん、あ…ありがとう」 
  
 そう言ってゆらっと立ち上がった彼女は相変わらず猫背であったが視線をちょっと上げなければならないほどの高身長で変な威圧感がある。髪も先程と変わらずばっさり被ったままだからなおさらだ、本人としては威圧しているつもりはまったくないのだろうだが。 
  
「どうも、理香さんと同じクラスの上切です」 
「かっ……株掛です」 
「ど…どうも。ぶ…部長の浅妻あさづま…です。ど……どうも……よ……よろしく」 
  
 部長はどもりながら言った。視線も落ち着かずかなり挙動不審の人である。立ち上がるついでに掴み取ったぬいぐるみをしきりに撫でている。 
  
「ところで、なんでこんなに人形があるんすか?」 
  
 当然の疑問を紀糸が投げかけてくれた。 
  
「友達…」 
「えっ?」 
「わ…私の友達だから」 
「これ全部、部長さんの私物なんですかっ?」 
「う…うん。だって、さ…寂しいでしょ? そ…それにね…人形は大切にすると他の物より魂が宿り易いの。も…元々人形はそのために作られたものだから…」 
「は…はぁ?」 
「ぐふふ……この子ね……と……特別、わっ……私が三歳の時から友達なの……。そろそろ、生き出すかも……そ……そしたら……か……可愛い……よね?」 
  
 段々、しゃべりに熱がこもっていく部長に僕らは顔を引きつらせ若干引き気味に話を聞いていた。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

偽夫婦お家騒動始末記

紫紺
歴史・時代
【第10回歴史時代大賞、奨励賞受賞しました!】 故郷を捨て、江戸で寺子屋の先生を生業として暮らす篠宮隼(しのみやはやて)は、ある夜、茶屋から足抜けしてきた陰間と出会う。 紫音(しおん)という若い男との奇妙な共同生活が始まるのだが。 隼には胸に秘めた決意があり、紫音との生活はそれを遂げるための策の一つだ。だが、紫音の方にも実は裏があって……。 江戸を舞台に様々な陰謀が駆け巡る。敢えて裏街道を走る隼に、念願を叶える日はくるのだろうか。 そして、拾った陰間、紫音の正体は。 活劇と謎解き、そして恋心の長編エンタメ時代小説です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...