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オカルト研究会
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放課後、紀糸と僕はさっそく部室と部員を紹介すると言って(むりやり)連れてこられてしまった。
校舎の四階、多目的教室が並んでいる廊下の一番端。僕らはいたって普通の教室の扉の前に立っていた。
オカルト研究会の部室は使われていない教室を借りて使用しているらしい。教室札にセロハンテープで付けてある画用紙に可愛らしい文字で「オカルト階研究会」と書かれていた。何故か花のイラストも添えて……。
そんな疑問を抱きながらも僕らは古川に誘われ教室に入って行った。
オカルト研究会と言うくらいなので身構えていたが意外にも日当たりのよい、本棚が多いだけの普通の教室であった。普段見慣れている机がすくないだけ広く明るく見える。
「ようこそっ! 私たちのオカ研へっ!」
「意外と普通の教室なんだ」
紀糸が僕と同じ感想を述べる。
「あっ、確かにオカ研って言うと怪しい所を想像するよね。でも、大丈夫。そんな物、私が置かせないからっ」
一般人からしてみたら頼もしい言葉だが、趣味の安住の地を求めて集まって来た者にとっては堪ったもんじゃないだろうか。
「はぁ……、姉さん。そんなこと言って今日もちゃんと来るんだね……」
教室の中央に置かれた机で本を読んでいた人影が言った。
その容貌は古川の面影を持った中性的な男子であった。古川より背は少し高そうだが眼鏡をしておらずよほど女性らしくも見える。ただ、読んでいた本はオカルト研究会にふさわしく、いかにも怪しげな表紙の本を読んでいた。
「あんたが変な物にのめり込んでるからお姉ちゃんは心配なのっ! あっ、この子は私の二卵性の双子の弟の教宗よ」
そう言って理香が紹介する。横に並ぶとますますよく似ている。
「よろしくお願いします。古川教宗、一応これでもオカルト研究会の副部長です」
「研究会なのに部長なんですね」
「本当は副会長なんですけどね。活動上、副部長って名乗った方がわかりやすいんですよね」
教宗は自嘲気味に笑いながら言った。
「僕は上切優希です」
「古川さんと同じクラスの株掛です」
「うんうん。で、あの部屋の隅に席を作ってるのが部長よ」
理香は僕らの自己紹介を満足そうに眺め、そして部屋の奥の方を指差す。
入ってきたときは気が付かなかったが理香が指をさした先に人形やらぬいぐるみに占領されたやたらにファンシーな席があった。しかし、よく見るとそのぬいぐるみの並びに市松人形やフランス人形なども混じっている。場所が場所だけに少し気味悪さも漂わせていた。
その人形たちに埋もれるように一人女性らしき姿が何やら物を書いている姿が確認してとれる。どうやら彼女が部長らしい。
僕たちは挨拶をするためにその机に近づいていいく。
しかし、彼女の姿を見た僕と紀糸は失礼なことに一瞬たじろいでしまった。
なにせ、猫背の姿勢でバサバサの長髪を垂らしながら書類を一心に書いている姿は呪いの言葉を刻む幽霊を連想させるものがある。しかも、ぶつぶつと書き留めていることをそのまま呟いているものだからなおさら不気味さを際立たせていた。
そうとう集中しているらしく、僕らが近づいても一向に気付く気配はなさそうだ。
「部長っ、メールで連絡しておいた新入部員二人です! 連れてきましたよ」
理香のその言葉に部長はぐりんと首だけを動かしこちらを見る。長い髪は顔にもかかりその隙間から目を見開き僕と紀糸の間をきょろきょろと動いていた。
「う…あっ……。理香ちゃん、あ…ありがとう」
そう言ってゆらっと立ち上がった彼女は相変わらず猫背であったが視線をちょっと上げなければならないほどの高身長で変な威圧感がある。髪も先程と変わらずばっさり被ったままだからなおさらだ、本人としては威圧しているつもりはまったくないのだろうだが。
「どうも、理香さんと同じクラスの上切です」
「かっ……株掛です」
「ど…どうも。ぶ…部長の浅妻…です。ど……どうも……よ……よろしく」
部長はどもりながら言った。視線も落ち着かずかなり挙動不審の人である。立ち上がるついでに掴み取ったぬいぐるみをしきりに撫でている。
「ところで、なんでこんなに人形があるんすか?」
当然の疑問を紀糸が投げかけてくれた。
「友達…」
「えっ?」
「わ…私の友達だから」
「これ全部、部長さんの私物なんですかっ?」
「う…うん。だって、さ…寂しいでしょ? そ…それにね…人形は大切にすると他の物より魂が宿り易いの。も…元々人形はそのために作られたものだから…」
「は…はぁ?」
「ぐふふ……この子ね……と……特別、わっ……私が三歳の時から友達なの……。そろそろ、生き出すかも……そ……そしたら……か……可愛い……よね?」
段々、しゃべりに熱がこもっていく部長に僕らは顔を引きつらせ若干引き気味に話を聞いていた。
校舎の四階、多目的教室が並んでいる廊下の一番端。僕らはいたって普通の教室の扉の前に立っていた。
オカルト研究会の部室は使われていない教室を借りて使用しているらしい。教室札にセロハンテープで付けてある画用紙に可愛らしい文字で「オカルト階研究会」と書かれていた。何故か花のイラストも添えて……。
そんな疑問を抱きながらも僕らは古川に誘われ教室に入って行った。
オカルト研究会と言うくらいなので身構えていたが意外にも日当たりのよい、本棚が多いだけの普通の教室であった。普段見慣れている机がすくないだけ広く明るく見える。
「ようこそっ! 私たちのオカ研へっ!」
「意外と普通の教室なんだ」
紀糸が僕と同じ感想を述べる。
「あっ、確かにオカ研って言うと怪しい所を想像するよね。でも、大丈夫。そんな物、私が置かせないからっ」
一般人からしてみたら頼もしい言葉だが、趣味の安住の地を求めて集まって来た者にとっては堪ったもんじゃないだろうか。
「はぁ……、姉さん。そんなこと言って今日もちゃんと来るんだね……」
教室の中央に置かれた机で本を読んでいた人影が言った。
その容貌は古川の面影を持った中性的な男子であった。古川より背は少し高そうだが眼鏡をしておらずよほど女性らしくも見える。ただ、読んでいた本はオカルト研究会にふさわしく、いかにも怪しげな表紙の本を読んでいた。
「あんたが変な物にのめり込んでるからお姉ちゃんは心配なのっ! あっ、この子は私の二卵性の双子の弟の教宗よ」
そう言って理香が紹介する。横に並ぶとますますよく似ている。
「よろしくお願いします。古川教宗、一応これでもオカルト研究会の副部長です」
「研究会なのに部長なんですね」
「本当は副会長なんですけどね。活動上、副部長って名乗った方がわかりやすいんですよね」
教宗は自嘲気味に笑いながら言った。
「僕は上切優希です」
「古川さんと同じクラスの株掛です」
「うんうん。で、あの部屋の隅に席を作ってるのが部長よ」
理香は僕らの自己紹介を満足そうに眺め、そして部屋の奥の方を指差す。
入ってきたときは気が付かなかったが理香が指をさした先に人形やらぬいぐるみに占領されたやたらにファンシーな席があった。しかし、よく見るとそのぬいぐるみの並びに市松人形やフランス人形なども混じっている。場所が場所だけに少し気味悪さも漂わせていた。
その人形たちに埋もれるように一人女性らしき姿が何やら物を書いている姿が確認してとれる。どうやら彼女が部長らしい。
僕たちは挨拶をするためにその机に近づいていいく。
しかし、彼女の姿を見た僕と紀糸は失礼なことに一瞬たじろいでしまった。
なにせ、猫背の姿勢でバサバサの長髪を垂らしながら書類を一心に書いている姿は呪いの言葉を刻む幽霊を連想させるものがある。しかも、ぶつぶつと書き留めていることをそのまま呟いているものだからなおさら不気味さを際立たせていた。
そうとう集中しているらしく、僕らが近づいても一向に気付く気配はなさそうだ。
「部長っ、メールで連絡しておいた新入部員二人です! 連れてきましたよ」
理香のその言葉に部長はぐりんと首だけを動かしこちらを見る。長い髪は顔にもかかりその隙間から目を見開き僕と紀糸の間をきょろきょろと動いていた。
「う…あっ……。理香ちゃん、あ…ありがとう」
そう言ってゆらっと立ち上がった彼女は相変わらず猫背であったが視線をちょっと上げなければならないほどの高身長で変な威圧感がある。髪も先程と変わらずばっさり被ったままだからなおさらだ、本人としては威圧しているつもりはまったくないのだろうだが。
「どうも、理香さんと同じクラスの上切です」
「かっ……株掛です」
「ど…どうも。ぶ…部長の浅妻…です。ど……どうも……よ……よろしく」
部長はどもりながら言った。視線も落ち着かずかなり挙動不審の人である。立ち上がるついでに掴み取ったぬいぐるみをしきりに撫でている。
「ところで、なんでこんなに人形があるんすか?」
当然の疑問を紀糸が投げかけてくれた。
「友達…」
「えっ?」
「わ…私の友達だから」
「これ全部、部長さんの私物なんですかっ?」
「う…うん。だって、さ…寂しいでしょ? そ…それにね…人形は大切にすると他の物より魂が宿り易いの。も…元々人形はそのために作られたものだから…」
「は…はぁ?」
「ぐふふ……この子ね……と……特別、わっ……私が三歳の時から友達なの……。そろそろ、生き出すかも……そ……そしたら……か……可愛い……よね?」
段々、しゃべりに熱がこもっていく部長に僕らは顔を引きつらせ若干引き気味に話を聞いていた。
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