体育会系の魔法使いは呪文が覚えられない~暴死するか先輩と寝るかの二択です~

清田いい鳥

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33 調子に乗った者の末路5

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 あれ以来、ルカディが俺に近づくことはなかった。

 こっそりと家宅捜索のようなものは入ったようだが、やはり何も出て来なかったらしい。今でも普通に学園に通っているのを見かける。

 というか、俺を見かけると慌てて視線を逸らしたり、そそくさと逃げるようになった。ははん、さてはブルーノ先輩に何か釘を刺されたな。阿呆め、先輩の恐ろしさに今頃気がつくなんて。

 惚れた腫れたに疎めの俺は、奴が俺のことを本当に好きだったのかは全然分からない、とブルーノ先輩に言ったら、『恋した奴のやることではないかな。どっちかというと性欲。あと私利私欲』と言っていた。



 俺はモテてるー、とただ浮かれポンチになっていただけだが、俺の声、いや歌声って本当に色っぽい感じになるらしい。

「高くて少年っぽいのに、甘ったるくて少し掠れて大人びてるから年齢不詳の魅力があって。あのときの声みたいになる」

 ええ……。前にそういうこと言われた記憶があるけど、からかいの意味合いが強いと思ってた。これからはちょっと歌いにくい。

 間違えないよう必死になって声出してるけど、それもベッドで追い詰められてるみたいでエロいらしい。ベッドで…。追い詰め……。

 実技試験のときはしょうがないけど、そこらで乱用するのはやめておこう。
 真面目に呪文を暗記する特訓もしよう。



 あと、私利私欲というもの。やはり先輩が詰めてたらしく、刑吏役を勤めた先輩の話によると、ルカディは俺が多量に持っている魔力を得たいというのが一番の目的だったとか。

 治療魔術に使う薬や道具。あれを生産するには、物凄く大量の魔力を使うそうなのだ。

 治療魔道具が高いのは、生産用の魔力を買うだけでコストがかかっているから。そこを値上げとかされちゃうと生産が追いつかなくなってしまう。魔道具関係の界隈ではよくある話だそうだ。

 ルカディは長男だ。おそらく跡継ぎであろう彼は、俺をどうにかしてでも伴侶にして、生産のために俺を使い、自分のとこの独占製品を大量に販売したかった。

 奇しくも俺の婚約者は商売敵の息子。俺を得られればライバルは苦しむし、自分達は儲けられるし、一挙両得。お家のためとはいえ、俺の意思を完全に無視した、まさに私利私欲。

「魔力は金の成る木。あればあるほど重宝される。僕がネオくんの防犯に力を入れる理由が分かったかな?  気を付けるんだよ。まあ、僕が絶対守るけどね」

 先輩が特別俺の守りを固めてくれるのは、俺に対する愛情だけじゃなくて、俺の身を本当に心配してくれているから。

 学園の防犯対策がガチガチなのは、ご子息ご令嬢を親の代わりに守るだけでなく、誘拐防止のためでもあるから。

 一定水準から、それを超える魔力を持つ者を、平民だろうが何だろうが纏めて学園にブチ込むのは、貴重な人材育成だけではなく、当人の個人情報を把握して、悪用したりされたりするのを防ぐためでもあるから。

 学園の外にいくときは、制服を着ないこと。申請を出すこと。一人行動は慎むこと。

 防犯魔道具は必ず身につけること。
 万が一異常を検知すればそれを目印にして、警備兵が魔獣で空を飛び駆けつけるため、絶対に外さないこと。

 うちの学園にはこんな規則が存在する。一例だ。他にもまだまだある。中での行動が自由なわりに、外に出るときは逆に厳しい。

 案外自由だけど過保護なとこもあるなー、なんて呑気に思っていた俺ら。知らないうちに国と沢山の大人達に守られていたのだ。
  


「ねえ先輩? 馬鹿なことを聞くようだけど、俺の魔力を、先輩の家の────」
「本当に馬鹿なこと聞くねえ君は。そんなこと一回も考えたことないよ。そんな余裕はなかったよ。好きだから。愛してるよイレネオ」

 ブルーノ先輩は俺の鼻を摘まんで、そう答えた。超照れた。



 ────────



 ところで、俺にはちょっとした野望がある。

 前にブルーノ先輩がブッ倒れたとき、魔力を流しまくってなんとかしたという実績が俺にはある。

 その後病室でイチャコラしてたとき、全然動けない先輩の上からチューしたり、手を押さえたりを、やらせてもらったときの優越感が忘れられない。

 またやってみたい。

 多分、いや絶対アレを突っ込むのはさすがにやらせてもらえないだろうから諦めるとして、口から魔力をドバドバ流してヘロヘロにさせたい。いつも一方的に流されてばっかりで対抗できたことがないんだもん。

 あの強い先輩を。無敵な先輩を組み敷く。
 ひょ──! 考えただけで楽しそ────!!



 ──────



「ということで、先日はどうもありがとうございました。本日はわたくしが上に乗らせて頂きます」
「ん? サービスしてくれるってこと?」

 先輩は俺の野望も知らず、いいよ、とにっこり微笑み、おいで、と俺の腰を掴んで引き、ボスンと膝の上に対面で乗せてきた。

「違う違う! 先輩は動かないで欲しいの!」
「えー?」

 こらこら! 首にチューしようとすんな!

「駄目だ、全然伝わってない。ねえ先輩、縛ってもいい?」
「えっ、う────ん…………いいよ」


 随分熟考したな。

 だが、言質は取ったぞ。


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