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出会い
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「あの……ありがとう、ございました」
「え? 気にしなくていいよ。普通の子ならドン引きする対応だったし、俺」
男の子――七里ヶ浜悟と名乗った彼は肩をすくめた。
自分の行動を反省しているような行動だったが、その目は微塵も濁っていない。
どちらかといえば満足気。
「むしろ、よく俺を連れてきたね」
痴漢が去っていき、私は急に力が抜けて座り込んでしまった。
七里ヶ浜さんは私に肩をかして椅子に座らせてくれ、落ち着くまで一緒にいてくれた。
その後、「怖かったと思うし、これでカフェでも行って甘いもの食べな」と千円札を渡してくれようとしたが、私は断り、一緒に来てもらったのだ。
「私、あんまり人に強く言えなくて……すぐに良くないことばっかり考えちゃって。七里ヶ浜さんはカッコよかったです。普通なら、ああやって声を出せないと思いますし……」
「俺はただ後悔したくないんだよ。たとえ君――二兎さんに罵倒されることになっても、俺は同じ事をしてたし。要は自己満足だな」
そう言った彼の顔はどこか寂しそうだった。
「ま、しばらく俺と話して気分転換だ」
それから三十分ほど雑談し、私たちは友達のように気軽に会話できるようになった。
「――だから髪染めてたんだ。めちゃくちゃ綺麗に色入ってるよね」
「え、そうですか!? 嬉しい……親とか友達はあんまり褒めてくれなかったから……」
「マジか。確かに派手だとは思うけど、ムラもないし髪も綺麗だし、二兎さんが可愛いからアニメキャラみたいでめちゃくちゃ可愛いと思うよ」
「か、かわっ……」
先ほどとは違う意味で身体が熱くなる。
中学は女子校で異性と関わりがなかったことだけが理由じゃない。
惹かれていたのだ。自分を颯爽と救ってくれた彼に。
肩を貸してくれた時に感じたが、見た目よりもがっしりしていた。
年上の余裕? 安心感? そんなものを感じる。
「そういえば七里ヶ浜さんって、高校生ですか?」
「そうだよ、一年生。燎原坂って高校なんだけど」
「燎原坂!? 私も来年から燎原坂なんです!」
「後輩だったのか! それじゃあ来年……って言ってもあと数日で新年だし、今年からよろしく、だな」
「はいっ!」
一気に高校生活が楽しみになった。
白馬の王子様と、これから何度でも合法的に会うことができるんだから。
「部活とか入ってるんですか?」
「写真部だよ。なんか趣味を作ろうと思って始めたんだ」
「写真……いいですねっ!」
そこからは私の質問責めだった。
「犬と猫だったらどっち派ですか?」
「見た目は猫で中身は犬かな」
「今年を漢字一文字で表すと?」
「それは俺の仕事じゃないだろ……」
「好きな女の子のタイプはなんですか?」
「うーん……向上心のある子?」
「見た目とかはどうですか? アニメキャラとかでもいいです!」
「アニメキャラかぁ……あぁ、これなんだけど」
そう言って彼は、カバンに付けていたキーホルダーを見せてくれる。
「主人公がヒロインをシバいてくアニメなんだけど、この後輩キャラが可愛くて」
「後輩……」
「なんか、めちゃくちゃ毒舌で小悪魔なんだけど、実は主人公のことが一番好きで。他のヒロインも人気あるんだけど、俺は断然このアカネちゃん推しだね」
「なるほど……私も観てみますっ!」
これはいい事を聞いた、と思う。
二次元の三次元の違いはあれど、現実世界でも似たような女の子が好きになるはず。
帰ったらすぐにチェックしよう。
結局、私と七里ヶ浜さんは二時間ほど話し込み、彼は私を目的の駅まで送ってから帰っていった。
MINEを聞くという発想に至らなかった自分に怒り狂ったのは、さらに数時間後のこと。
私が彼のことを「先輩」と呼ぶことができるまでの数ヶ月間、私は悶々とした勉強時間を過ごしたのだった。
「え? 気にしなくていいよ。普通の子ならドン引きする対応だったし、俺」
男の子――七里ヶ浜悟と名乗った彼は肩をすくめた。
自分の行動を反省しているような行動だったが、その目は微塵も濁っていない。
どちらかといえば満足気。
「むしろ、よく俺を連れてきたね」
痴漢が去っていき、私は急に力が抜けて座り込んでしまった。
七里ヶ浜さんは私に肩をかして椅子に座らせてくれ、落ち着くまで一緒にいてくれた。
その後、「怖かったと思うし、これでカフェでも行って甘いもの食べな」と千円札を渡してくれようとしたが、私は断り、一緒に来てもらったのだ。
「私、あんまり人に強く言えなくて……すぐに良くないことばっかり考えちゃって。七里ヶ浜さんはカッコよかったです。普通なら、ああやって声を出せないと思いますし……」
「俺はただ後悔したくないんだよ。たとえ君――二兎さんに罵倒されることになっても、俺は同じ事をしてたし。要は自己満足だな」
そう言った彼の顔はどこか寂しそうだった。
「ま、しばらく俺と話して気分転換だ」
それから三十分ほど雑談し、私たちは友達のように気軽に会話できるようになった。
「――だから髪染めてたんだ。めちゃくちゃ綺麗に色入ってるよね」
「え、そうですか!? 嬉しい……親とか友達はあんまり褒めてくれなかったから……」
「マジか。確かに派手だとは思うけど、ムラもないし髪も綺麗だし、二兎さんが可愛いからアニメキャラみたいでめちゃくちゃ可愛いと思うよ」
「か、かわっ……」
先ほどとは違う意味で身体が熱くなる。
中学は女子校で異性と関わりがなかったことだけが理由じゃない。
惹かれていたのだ。自分を颯爽と救ってくれた彼に。
肩を貸してくれた時に感じたが、見た目よりもがっしりしていた。
年上の余裕? 安心感? そんなものを感じる。
「そういえば七里ヶ浜さんって、高校生ですか?」
「そうだよ、一年生。燎原坂って高校なんだけど」
「燎原坂!? 私も来年から燎原坂なんです!」
「後輩だったのか! それじゃあ来年……って言ってもあと数日で新年だし、今年からよろしく、だな」
「はいっ!」
一気に高校生活が楽しみになった。
白馬の王子様と、これから何度でも合法的に会うことができるんだから。
「部活とか入ってるんですか?」
「写真部だよ。なんか趣味を作ろうと思って始めたんだ」
「写真……いいですねっ!」
そこからは私の質問責めだった。
「犬と猫だったらどっち派ですか?」
「見た目は猫で中身は犬かな」
「今年を漢字一文字で表すと?」
「それは俺の仕事じゃないだろ……」
「好きな女の子のタイプはなんですか?」
「うーん……向上心のある子?」
「見た目とかはどうですか? アニメキャラとかでもいいです!」
「アニメキャラかぁ……あぁ、これなんだけど」
そう言って彼は、カバンに付けていたキーホルダーを見せてくれる。
「主人公がヒロインをシバいてくアニメなんだけど、この後輩キャラが可愛くて」
「後輩……」
「なんか、めちゃくちゃ毒舌で小悪魔なんだけど、実は主人公のことが一番好きで。他のヒロインも人気あるんだけど、俺は断然このアカネちゃん推しだね」
「なるほど……私も観てみますっ!」
これはいい事を聞いた、と思う。
二次元の三次元の違いはあれど、現実世界でも似たような女の子が好きになるはず。
帰ったらすぐにチェックしよう。
結局、私と七里ヶ浜さんは二時間ほど話し込み、彼は私を目的の駅まで送ってから帰っていった。
MINEを聞くという発想に至らなかった自分に怒り狂ったのは、さらに数時間後のこと。
私が彼のことを「先輩」と呼ぶことができるまでの数ヶ月間、私は悶々とした勉強時間を過ごしたのだった。
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