愛が重いだけじゃ信用できませんか?

歩く魚

文字の大きさ
80 / 124
第3章 秘密

入店

しおりを挟む
 連れてこられたのは、向かいの歩道に渡って二本くらい裏に入った場所にある店だ。
 さびれたビルの三階だか四階だかにあるということで、正直店のクオリティが不安になってきた。

「大丈夫ですよ。見た目はボロいけどお店の中は綺麗です」

 俺の心が読めたというよりは、同じように考えたり口に出す客が多いのだろう。
 怖いお兄さんが出てきた時は俺がどうにかすればいい。
 ナースがエレベーターのボタンを押し、俺たちを先に箱に入れてくれる。
 扉が閉まると、やはりさびれたビルらしく大きく揺れながら稼働した。
 四階で老人の動きが止まり、ドアがゆっくりと開く。
 降りてすぐに店というわけではないようだ。

「右側が私たちのお店です。左はうちの系列店ですよ」

 系列店があるってことはそこそこの人気があるのかもしれない。
 彼女に促されるままに店に入ると、その内装は予想とはだいぶ違っていた。
 床の色はありきたりなものだったが、壁紙は宇宙のような淡さと煌めきが混ざったものとなっている。
 部屋自体はかなり暗いが、小さな月のような照明がまばらに取り付けられているため視界は良好。

「思ってたよりロマンチックな空間だね」
「私ももっと怪しい場所を想像してました」
「みなさんそうおっしゃるんですよ~。気に入ってくれました?」

 3人が頷く。
 ここはガールズバーに近い体系なのだろうが、一風変わった内装のおかげで夜感は少ない。
 感じたとしてもおしゃれなバーにいるような気分だ。
 しかも、流石に机は無茶だろうが、カウンターの足元なんかは光が微妙に行き届いていないため、掃除をサボっても客にバレない。
 汚れが目立たない工夫が感じられる点も……これは良くないか。

「あ、お席ついてもらって大丈夫ですよ」

 内装に感心して座ることを忘れていた。
 左から七緒、俺、紫の順に座ると、カウンター越しにお姉さんが話しかけてくる。

「それじゃあ改めて、私はカナタって言います。よろしくね~」

 金髪で中性的な顔立ちのカナタ。
 サバサバした性格っぽいし、女性人気もありそうだ。

「女性がくることも多いんですか?」
「結構多いですよ。仕事終わりのコンカフェの子とか、祝日だと普通に女の子二人で来てくれたりもしますね」

 紫も言っていたが、女子も可愛い女子が好きなんだったな。
 それを主軸にやってみても面白いだろう。

「カナタさんのお客さんはどんな人が多いんですか?」

 左の席から質問が飛んでいく。

「そりゃあまぁおじさんが多いですよ。私、結構ズバズバ言っちゃうタイプなんですけど、そういうのが嬉しいみたいで」

 確かに、他人との関係を穏便に済ませようと思うばかりで、自分が本当に伝えたいことを伝えられずにいる場合が多いのだろう。
 以前にもそういう部分を直したいという依頼が何件かあった。
 
「社会生活では常に気を使って接していますし、真っ向からぶつかってくれるが気持ちいいんですかね」
「かもですね。正直こういう風にしたら売れるっていうのはないと思います。むしろ自分を偽らない方がいいみたいな」
「たとえば私みたいに愛想がなくてもいいってこと?」

 今度は右からの質問だ。

「お姉さんとんでもなく可愛いし、むしろクールだからこその魅力があると思いますよ。お姉さんだったら……家族間の会話がないおじさんとか、あとは普通に女の子人気が出まくると思います」
「へぇ……ちょっと嬉しいかも」

 持ち味を活かすということだな。
 っていうか、カナタの分析はすごく分かりやすいのだが、家族間の会話がないおじさんってリアルすぎるからやめてほしい。
 思春期の娘に避けられてるパパとかな、同じくらいの年頃の子に話聞いてもらえると嬉しいんだろうな。

「ただ、個人個人で気をつけてるのこととか違うかもです。暇そうな子と変わってきますね」
「ありがとうございます」
「でも、ちゃんとドリンク入れてくださいね?」

 揶揄うように言って、カナタは去っていった。


「どうも~カナタちゃんから呼ばれてきましたユカです~お二人ともとっても可愛ですねむしろお兄さんも可愛いです!」
「おお……」

 やってきたのは小柄でハイテンションのお姉さんだ。
 彼女はナース服はナース服でも、謎に露出の多いものを身に纏っている。

「…………先輩?」
「目の前に相手がいるのに視線を逸らすのは失礼だろ」
「はい有罪」

 あとでどうにかして減刑しなくては。
 各々で適当に注文を済ませて話を聞くことにした。

「…………ってわけで、お話聞けたら嬉しいです」
「あ~~私はあんまりそういうのは気にしてないかも? 強いて言えば話が一方的にならないようにしてるくらいかなぁ。あぁでも、お客さんの中にはこっちに話してて欲しい人もいるから相手の反応を見てって感じかな? その子はどんなタイプなんだろ、お兄さんはどう思います?」
「あー、えっと……」
「相手に興味持てる子なら目につく部分を話題にしてみるとかいいですよね~そうじゃなかったら初回のお客さんように会話のテンプレートを作っておくのもありかなぁ他には――」

 怒涛のマシンガントークで入り込む余地がない。
 しかもところどころで使えそうな情報も入っているから話を聞き流すのも勿体無いし、かなり体力を持っていかれそうだ……。
 そこからさらに10分ほど演説は続き、バテる俺たちとは反対に彼女は胸を張って去っていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。

東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」 ──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。 購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。 それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、 いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!? 否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。 気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。 ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ! 最後は笑って、ちょっと泣ける。 #誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。

元おっさんの幼馴染育成計画

みずがめ
恋愛
独身貴族のおっさんが逆行転生してしまった。結婚願望がなかったわけじゃない、むしろ強く思っていた。今度こそ人並みのささやかな夢を叶えるために彼女を作るのだ。 だけど結婚どころか彼女すらできたことのないような日陰ものの自分にそんなことができるのだろうか? 軟派なことをできる自信がない。ならば幼馴染の女の子を作ってそのままゴールインすればいい。という考えのもと始まる元おっさんの幼馴染育成計画。 ※この作品は小説家になろうにも掲載しています。 ※【挿絵あり】の話にはいただいたイラストを載せています。表紙はチャーコさんが依頼して、まるぶち銀河さんに描いていただきました。

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

クラスで3番目に可愛い無口なあの子が実は手話で話しているのを俺だけが知っている

夏見ナイ
恋愛
俺のクラスにいる月宮雫は、誰も寄せ付けないクールな美少女。そのミステリアスな雰囲気から『クラスで3番目に可愛い子』と呼ばれているが、いつも一人で、誰とも話さない。 ある放課後、俺は彼女が指先で言葉を紡ぐ――手話で話している姿を目撃してしまう。好奇心から手話を覚えた俺が、勇気を出して話しかけた瞬間、二人だけの秘密の世界が始まった。 無口でクール? とんでもない。本当の彼女は、よく笑い、よく拗ねる、最高に可愛いおしゃべりな女の子だったのだ。 クールな君の本当の姿と甘える仕草は、俺だけが知っている。これは、世界一甘くて尊い、静かな恋の物語。

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の逢坂玲人は入学時から髪を金色に染め、無愛想なため一匹狼として高校生活を送っている。  入学して間もないある日の放課後、玲人は2年生の生徒会長・如月沙奈にロープで拘束されてしまう。それを解く鍵は彼女を抱きしめると約束することだった。ただ、玲人は上手く言いくるめて彼女から逃げることに成功する。そんな中、銀髪の美少女のアリス・ユメミールと出会い、お互いに好きな猫のことなどを通じて彼女と交流を深めていく。  しかし、沙奈も一度の失敗で諦めるような女の子ではない。玲人は沙奈に追いかけられる日々が始まる。  抱きしめて。生徒会に入って。口づけして。ヤンデレな沙奈からの様々な我が儘を通して見えてくるものは何なのか。見えた先には何があるのか。沙奈の好意が非常に強くも温かい青春ラブストーリー。  ※タイトルは「むげん」と読みます。  ※完結しました!(2020.7.29)

恋人、はじめました。

桜庭かなめ
恋愛
 紙透明斗のクラスには、青山氷織という女子生徒がいる。才色兼備な氷織は男子中心にたくさん告白されているが、全て断っている。クールで笑顔を全然見せないことや銀髪であること。「氷織」という名前から『絶対零嬢』と呼ぶ人も。  明斗は半年ほど前に一目惚れしてから、氷織に恋心を抱き続けている。しかし、フラれるかもしれないと恐れ、告白できずにいた。  ある春の日の放課後。ゴミを散らしてしまう氷織を見つけ、明斗は彼女のことを助ける。その際、明斗は勇気を出して氷織に告白する。 「これまでの告白とは違い、胸がほんのり温かくなりました。好意からかは分かりませんが。断る気にはなれません」 「……それなら、俺とお試しで付き合ってみるのはどうだろう?」  明斗からのそんな提案を氷織が受け入れ、2人のお試しの恋人関係が始まった。  一緒にお昼ご飯を食べたり、放課後デートしたり、氷織が明斗のバイト先に来たり、お互いの家に行ったり。そんな日々を重ねるうちに、距離が縮み、氷織の表情も少しずつ豊かになっていく。告白、そして、お試しの恋人関係から始まる甘くて爽やかな学園青春ラブコメディ!  ※夏休み小話編2が完結しました!(2025.10.16)  ※小説家になろう(N6867GW)、カクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想などお待ちしています。

サクラブストーリー

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の速水大輝には、桜井文香という同い年の幼馴染の女の子がいる。美人でクールなので、高校では人気のある生徒だ。幼稚園のときからよく遊んだり、お互いの家に泊まったりする仲。大輝は小学生のときからずっと文香に好意を抱いている。  しかし、中学2年生のときに友人からかわれた際に放った言葉で文香を傷つけ、彼女とは疎遠になってしまう。高校生になった今、挨拶したり、軽く話したりするようになったが、かつてのような関係には戻れていなかった。  桜も咲く1年生の修了式の日、大輝は文香が親の転勤を理由に、翌日に自分の家に引っ越してくることを知る。そのことに驚く大輝だが、同居をきっかけに文香と仲直りし、恋人として付き合えるように頑張ろうと決意する。大好物を作ってくれたり、バイトから帰るとおかえりと言ってくれたりと、同居生活を送る中で文香との距離を少しずつ縮めていく。甘くて温かな春の同居&学園青春ラブストーリー。  ※特別編8-お泊まり女子会編-が完結しました!(2025.6.17)  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

処理中です...