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14 秘密の話
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いつもの奇行だけど害はないからちょっと付き合ってやって、とマサルとコージに頼まれたけれど、ジョーの話はいつもとは違うものだと私は思った。
二人から見えない位置まで来ると、ジョーが地面に転がる岩を示すから、二人で適当な岩に座った。
正面からジョーの顔をじっくり見るのは、初めてかもしれない。まっすぐな黒髪に漆黒の瞳、肌の色は私より黄色寄りの白に、平坦気味だけど整った配置の顔。
「フェアリー、おれさまは何歳に見える」
そう言うジョーは私の座る岩より少し大きな岩に乗っているから、少し目線が高い。
「十四、五歳でしょうか」
「マサルとコージは?」
「二十歳前後です」
マサルとコージはこの世界でも成人に見えるが、ジョーは難しい。身長だけでも伸びていたら童顔で通っただろうけど。
「おれたちは同級生、つまり同じ歳だ」
「種族が違うのでしょう?」
「ははっ、そういう解釈か。この世界には歳のとり方が違う人間型の種族がいるのか」
「いません。でも、あなた方の世界ならありうるのかもと考えました」
ジョーは首を横に振った。顎までの長さで揃えられた黒髪がさらりと揺れる。
「ないよ。おれたちがダンジョン……魔物溜まりを攻略していた話をしたよな。そこに、魔術書があったんだ」
異世界に放り出された三人の中でも、魔法に傾倒していたジョーは元の世界に帰れる可能性があると信じていたらしい。
魔物溜まりを攻略している時に見つけた魔術書はいかにも胡散草いものだったけど、彼は試してしまった。その結果、老いない身体と流転の加護を得たのだという。
「それは賢者の書ですね。実在していたなんて」
贈り物が毎日届いていた頃、誰かが贈ってきた古文書に書いてあったのが賢者の書だ。解読してみると冒険譚になっていて面白かった。聖女らしくしていなければならなかった当時の私には、古文書の形式でもなければ読みたいと言えるものではなかったけれど。
ジョーもああいうのが好きなら、奇妙な言動も理解できる。
「やはり知っていたかフェアリー。ならば戻る方法も知っているか」
「魔法は不可逆なものがほとんどです。できるとすれば、歳を取る魔法をかけることではないでしょうか」
魔法に限らず、戻れないものがほとんどだ。失った時間、人との関係……あの人はいま何をしているのだろう。
今の身分では会えるはずのない優しい年上の友人を思った。年は私とマサルたち三人との間だから、すっかり大人になっているだろう。
「また魔法か。なぁフェアリー、魔法研究の有名な国とか場所を知らないか」
「ありますが、入るのが少し大変なところだと聞いています。学院や貴族からの紹介状がないと難しいはず」
「よし、貴族に会おう。王都に行けば会えるのか」
「平民が簡単に会えるかどうかは知りません」
「む、そうか。フェアリーが貴族と関われないことはわかっている。この先は己の力で切り拓いていこう」
「どうしてせっかく不老なのに戻りたいんです?」
「友を見送って生きているのはつらいからだ。おれさまはあいつら以外の友がいないからな!」
大人になった友人に囲まれて、時の流れの違いに焦りが出てきたらしい。子どもだった私が、ジョーよりも背が高くなっていたこともあるようだ。
「ぼくは友人に数えていただけませんか?」
村には私と同じぐらいの子どもがいなくて、歳の近い友人がいない。マサルとコージは歳が離れている感じがあるけれど、今のジョーは同年代だ。精神年齢も外見相応に思える。
「むむ。仕方ない。現地の友人はすべてムチムチぷりぷりの美少女に限定したいところだが、フェアリーは特別だからな!」
男臭さのない中性的な容姿をしているくせに、ずっと女性の理想を唱えているところが少し可哀想で可愛い。貴族ではない平民の男性は体格がいいほうが女性に好まれるから。
「ふふ、ありがとうございます。ジョー」
「やめろ、おれさまを誘惑するな。おれさまはびーえるにはならないんだ!」
すっかり調子が戻った様子のジョーが、また変なことを口走っていた。
二人から見えない位置まで来ると、ジョーが地面に転がる岩を示すから、二人で適当な岩に座った。
正面からジョーの顔をじっくり見るのは、初めてかもしれない。まっすぐな黒髪に漆黒の瞳、肌の色は私より黄色寄りの白に、平坦気味だけど整った配置の顔。
「フェアリー、おれさまは何歳に見える」
そう言うジョーは私の座る岩より少し大きな岩に乗っているから、少し目線が高い。
「十四、五歳でしょうか」
「マサルとコージは?」
「二十歳前後です」
マサルとコージはこの世界でも成人に見えるが、ジョーは難しい。身長だけでも伸びていたら童顔で通っただろうけど。
「おれたちは同級生、つまり同じ歳だ」
「種族が違うのでしょう?」
「ははっ、そういう解釈か。この世界には歳のとり方が違う人間型の種族がいるのか」
「いません。でも、あなた方の世界ならありうるのかもと考えました」
ジョーは首を横に振った。顎までの長さで揃えられた黒髪がさらりと揺れる。
「ないよ。おれたちがダンジョン……魔物溜まりを攻略していた話をしたよな。そこに、魔術書があったんだ」
異世界に放り出された三人の中でも、魔法に傾倒していたジョーは元の世界に帰れる可能性があると信じていたらしい。
魔物溜まりを攻略している時に見つけた魔術書はいかにも胡散草いものだったけど、彼は試してしまった。その結果、老いない身体と流転の加護を得たのだという。
「それは賢者の書ですね。実在していたなんて」
贈り物が毎日届いていた頃、誰かが贈ってきた古文書に書いてあったのが賢者の書だ。解読してみると冒険譚になっていて面白かった。聖女らしくしていなければならなかった当時の私には、古文書の形式でもなければ読みたいと言えるものではなかったけれど。
ジョーもああいうのが好きなら、奇妙な言動も理解できる。
「やはり知っていたかフェアリー。ならば戻る方法も知っているか」
「魔法は不可逆なものがほとんどです。できるとすれば、歳を取る魔法をかけることではないでしょうか」
魔法に限らず、戻れないものがほとんどだ。失った時間、人との関係……あの人はいま何をしているのだろう。
今の身分では会えるはずのない優しい年上の友人を思った。年は私とマサルたち三人との間だから、すっかり大人になっているだろう。
「また魔法か。なぁフェアリー、魔法研究の有名な国とか場所を知らないか」
「ありますが、入るのが少し大変なところだと聞いています。学院や貴族からの紹介状がないと難しいはず」
「よし、貴族に会おう。王都に行けば会えるのか」
「平民が簡単に会えるかどうかは知りません」
「む、そうか。フェアリーが貴族と関われないことはわかっている。この先は己の力で切り拓いていこう」
「どうしてせっかく不老なのに戻りたいんです?」
「友を見送って生きているのはつらいからだ。おれさまはあいつら以外の友がいないからな!」
大人になった友人に囲まれて、時の流れの違いに焦りが出てきたらしい。子どもだった私が、ジョーよりも背が高くなっていたこともあるようだ。
「ぼくは友人に数えていただけませんか?」
村には私と同じぐらいの子どもがいなくて、歳の近い友人がいない。マサルとコージは歳が離れている感じがあるけれど、今のジョーは同年代だ。精神年齢も外見相応に思える。
「むむ。仕方ない。現地の友人はすべてムチムチぷりぷりの美少女に限定したいところだが、フェアリーは特別だからな!」
男臭さのない中性的な容姿をしているくせに、ずっと女性の理想を唱えているところが少し可哀想で可愛い。貴族ではない平民の男性は体格がいいほうが女性に好まれるから。
「ふふ、ありがとうございます。ジョー」
「やめろ、おれさまを誘惑するな。おれさまはびーえるにはならないんだ!」
すっかり調子が戻った様子のジョーが、また変なことを口走っていた。
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