リセット

爺誤

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三章

3-2

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「田中、俺を昏倒させろっ」
「はっ?」
「早く」 

 ボスっと鈍い音が腹のあたりでして、俺は意識を失った。



 目覚めたら車の後部座席に寝かされていた。
 運転席で田中がスマホをチェックをしている。
 俺が起きた気配を察して、話しかけてきた。

「……で、何があったんですか?  襲われるかと思いましたよ」
「……発情ヒートだ」
つがいがいたら反応しないのでは?」
「…………運命の、……今更そんなことがあり得るのか?」

 健吾を得てから俺はオメガの発情期ヒートには反応しなくなった。
 だから抑制剤も持っていなかったし、我を忘れて相手に襲い掛からないためには田中に頼むしかなかった。
 田中は空手の有段者だ。「一撃で昏倒させられます」と誇らしげに言っていたのを聞いていて良かった。

「つくづく、アルファやオメガというのは動物的で残念ですね」
「あぁ?」
「それさえなければ非常に優秀なのに、勿体ないです」
「そうだな。俺も残念だよ。自分がこんなに本能に逆らえないなんて」

 認めるしかない。
 あの場にいたのは俺の「運命の番」だろう。
 見てしまったら終わりだと、とっさに車を片付けている田中のところまで走れたのは僥倖だあとは対処を考えなければ。
 今更運命だろうと何だろうと、健吾以外と番うつもりはない。
 俺が気付いたんだから、相手も気付いただろう。もし調べられたりして、健吾に危害を加えられたら困る。危害じゃなくても、俺の運命の番だと健吾に申告されたら迷惑だ。

 できることなら相手を遠ざけたい。海外とか、そのあたりまで飛ばせないだろうか。

「田中、あの場所にいたメンバーの中で、あの後不審な行動を取ったオメガがいたら知らせろ。そいつは絶対に俺と、俺の家族に近づけさせるな」
「私の業務は仕事に関することだけだったと思うんですがねぇ」
「頼む。他に信頼できるものがいない」

 思案気に腕を組んだ先の手の平が上向きで、親指と人差し指で丸が作ってある。しぶしぶの口調とは別に、顔は笑っている。田中め……。

「ボーナス査定最高にしてやるよ。ついでに新支社長だ」
「頑張らせていただきます!!」

 スキップでもしそうな勢いで出ていく田中の頼もしい背中に、今日の衝撃が少し薄れた。
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