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第3章 学試闘争編
エピローグ・・・源得の考え_思惑の数々_笑み・・・
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試験は表面上、何事もなく終了した。
結果、最後まで残っていた紅井勇士、四月朔日紫音、漣湊、速水愛衣の四人がバトルサバイバルの勝ち抜きとなり、後日四人の戦績を鑑みて順位が発表される。
生徒達は学生寮へと戻り、食事や風呂などを終えて就寝した。
その日の深夜。
源得はとある病室のベッドの脇に座っていた。
「…本当に良かった。命に別状がなくて…」
深々と安堵の息を漏らしながら、源得は目の前にいる教師であり部下の猪本へ言った。
胴体を包帯で覆い尽くす程に巻いた猪本が、ベッドに横たわりながら、元気がなく疲れのある顔で薄く微笑んだ。
「ご心配お掛けしました…。そして、申し訳ありません。…止めるどころか、相手の姿も覚えてなくて…」
猪本が目を伏せる。
猪本、風宮琉花、来木田岳徒、備品室の警備係二人は、何者かによって斬られ倒されていた。
幸い、全員傷は深いものの命の危険はなく、猪本以外の四人は眠っている。猪本も本来なら眠っていたが、事情を聴くために士器を使用して起こしたのだ。
「しかし分からない。結局『転移乱輪』を盗まず儂の前に現れんかった…」
源得が腕を組んで唸る。
その後、備品室の『転移乱輪』の個数は予備の分だけきっちりと残っていた。不可解だ。
「それも気になるところですが、」
猪本が声色を変え、彼の気になる話題に移る。
「学園長、『紅蓮奏華家』の件は全て上手く行ったと見ていいんですか?」
猪本の真剣な瞳、源得は力強く頷いた。
「ああ。そこは安心して構わない。…結果的に儂が出て本当に良かった。猪本が出ていた時点で確実に『紅蓮奏華家』の応援は仰げなかっただろう」
源得が安堵と共に苦笑すると、猪本もくくっと笑う。
「…そういう意味では、俺や庭島たちを倒してくれた漣、速水に感謝ですね」
二人の名前が挙がり、源得の眼が真剣というか、覚悟というか、一つの絶対的な目標を定めたハンターの眼になる。
そんな源得を見て、猪本がゆっくりと聞いた。
「…二人はやはり使えそうですか?」
「猪本、使えるとか、そのようなまるでこちらが上位者であることが当然と言わんばかりの言葉遣いは改めろ」
ぴしゃりと、源得が猪本に言い放つ。猪本が怯んだ様子を見せるが、二人に呆気なく倒された自分はその言葉をよく理解できた。
「彼我でどちらが使う人間でどちらが使われる人間かと問えば、間違いなく儂らが使われる人間だ。…分を弁えるのだ」
「も、申し訳ありません…」
「……速水愛衣の頭の回転は凄まじい。おそらく漣湊も同格。……さすがにまだではあると思うが、遠くない未来に『超過演算』へ至れると儂は確信している」
「……確か、漣湊は12歳まで、速水愛衣は8歳まで………『禁架』に保護されていたんですよね」
猪本の言葉に源得は「ああ」と呟いてから。
「…お前も、儂と同じことを考えてるようだな」
「ええ。……『禁架』の長、『AM』。『超過演算』の使い手。……彼女が二人のような逸材を見逃すとは思えません」
源得が頷く。
「『AM』はその気になれば『陽天十二神座』のもっと上の席次に着くこともできるであろうに、中立を頑なに貫き、第十席に甘んじるような事なかれ主義じゃから、無理に自分の陣営に引き込むような真似はせんと思うが、……『禁架』で保護している間、『超過演算』へ至れるような特別な教育は受けていた可能性は大きい」
「……学園長はお二人の待遇をどのようにするつもりですか?」
源得が眉間に皺を寄せ、重々しく口を開く。
「はっきり言って、二人が儂らの陣営に着くメリットはない。…二人は賢い。まずあの知能があれば将来は絶対安泰であり、こちらの仲間になることは危険を増やすことだ。
このままでは話にもならないが……しかし、来木田岳徒にも目を付けられてることは二人は当然気付いてるはず。…九頭竜川家は躊躇なく強引な手を使ってくる。……そんな来木田岳徒の思惑にも気付いているはずだ。……そこに、突破口があると儂は見ている」
「九頭竜川にどうされるか分からない内に、武者小路と紅蓮奏華の庇護下に入る、ということですか?」
「…半分正解じゃな」
「? それはどういう…」
首を傾げる猪本に、源得は確信を持って述べた。
「九頭竜川にどうされるか「分からない」、そんなわけがない。…九頭竜川の頭首も何度もテレビに映っているし、ネットの記録上には歴代頭首やその子の動画が溢れかえっている。…そういった情報から、九頭竜川が自分達をどう扱うのか、強引な手を使う前に呈示される条件とその信憑性に二人なら気付いている可能性が非常に高い。…つまり、九頭竜川を選ぶか、儂らを選ぶか、全ては二人次第ということじゃ」
源得の大胆な予測に、猪本が息を呑む。
「が、学園長……それはいくらなんでも…。それだともう『超過演算』に至ってますよ? さっき学園長がそれはさすがにないと仰っていたじゃありませんか…」
「猪本、お前も詳しくは知らないと思うが、本物の『超過演算』はこんなものではない」
「……っ。そう言えば学園長は若い頃に『超過演算』を持つ敵と戦ったことが…」
「『霊魂晶』を手に入れる前の話だ。…その『超過演算』を持つ裏組織の人間との対決は忘れん。…とても異様で、今でも儂が理解できないことが多い戦いじゃった。……だから、二人に取っては朝飯前だと思う」
実体験を元に行き着いた考えを、猪本は否定できなかった。
「……学園長が言うならそうなのでしょう。『超過演算』は『聖』や『白影』ぐらいでないと騙せませんからね」
「ああっ」
猪本の言葉に、源得が声を上げる。
「そう言えば紅井勇士が言っていたのだが、蔵坂先生が……」
その後の台詞は、猪本を今日一番驚愕させた。
◆ ◆ ◆
「湖音様、紫音様から届いたデータ、いかがいたしますか? 紫音様のご学友がまさか紅蓮奏華の者だったとは本当に驚きですが…」
「…紫音の友達から、利用するような真似はしたくないけど、この映像は使えるわ。紅井勇士本人だと分からないようにすれば九頭竜川との交渉材料としても十分使える。武者小路に目標を移させれば……時間稼ぎにはなる」
「最終的にはどうされるおつもりですか?」
「分からない。時間稼ぎしている間に紅井勇士のことを徹底的に調べてちょうだい。そこから希望を掴むしかない」
「畏まりました」
◆ ◆ ◆
「ジスト様。…ギスナからの連絡で、イルは失敗したようです。『転移乱輪』の予備がきちんと作動しなかったとか」
「そのようだな」
「どうしますか?」
「今はどうもしない。前以て命じていたように、顔は見られていないようだし、チャンスはこれからいくらでもある」
「……他の幹部の方からの苦情はどうしますか?『役立たずは引っ込め』だの『失敗したならイルとかいう奴の命令権を寄越せ』だの『そろそろイルとかいう貴方の切り札の正体を教えて頂戴よ』だの、色々来てますが」
「放っとけ。奴らもすぐ飽きる」
「…でもクレイ様の言うように、イルの正体をジスト様と極一部の者しか知らないことは相当反感買っていますよ」
「情報は命だ。他の奴らもそんなの抱え込んでいるだろう。相手にすることはない」
「でもそれで失敗してますからね。どうしても当たりは強くなりますよ」
「放っとけ。何もするな。それが一番だ」
「そこは自分も同感ですし、…分かりました。…で、次はどうしますか?」
「武者小路源得に関しては余計なことは言うな。しばらく様子を見る。………それと、アルガとクネリが外に出ないよう命じておけ。ルーランも含め、任せたいことがある。イーバ、当然お前もだぞ」
「? 分かりました」
◆ ◆ ◆
『聖』本部。
「以上がクロッカス及びカキツバタによる報告です」
赤茶色の髪を左に分けている女性、スカーレットが締めくくる。
青みがかった黒髪をかき上げながら、手元の資料を見て西園寺瑠璃は深い笑みを浮かべた。
「淡里深恋さんね。…いいじゃない。クローくんも太鼓判押してるし、大歓迎よ」
「分かりました。淡里深恋に関しては即座に通達します。近い内にしっかり顔合わせをしたいところですね。……しかし、心配です。このまま淡里深恋を獅童学園に留めておいていいのでしょうか」
「クローくんが言うには誰にも顔を見られたわけでもなく、ペアとして過ごしていた速水愛衣も騙し通す実力は本物であり、『聖』本部に収めるのは惜しい…だっけ。…そうねぇ。訓練しても、誰しもが『超過演算』を欺けるようになるわけじゃない。そう考えると、確かに惜しいわ。…ここはクローくんに一任するべきだと、私は思うけど」
「…そうですね。畏まりました」
西園寺瑠璃が別の資料に目を通す。
「それと気になるのはカキツちゃんの方ね。…クローくんが言うならもう潮時なんでしょうけど」
「…紅井勇士の超直感と言うべきでしょうか。運が悪かったとしか言えません。観念してカキツバタを戻すしかないでしょう。……ただ、この状態も見方によれば好機。リミットが付けられたカキツバタには最後までできる限りのことをしてもらいましょう」
「それでいいわ。カキツちゃんもそのつもりでしょう。………そして、一番気になるのがこれよね」
瑠璃がふふっと笑い、スカーレッドが呆れとも恐縮とも妥協ともとれる溜息をつく。
「全く、クロッカスには驚かされてばかりです」
「私もよ。さすが、未来の『聖』総隊長ね。……私が見る限り、この提案書に不備はない。そして、これが成功すれば『聖』に莫大な利益がもたらされる」
「同感です。…ですが、それはそれとして、クロッカスのこの予測は俄かに信じられません…」
「そこは直接確かめてもらいましょう」
スカーレッドが再度溜息をつく。
「そうですね。…では決行は三日後の深夜。
クロッカス直属小隊による、『十刀流のジスト』が現在居座る基地潜入殲滅計画を実行とします」
結果、最後まで残っていた紅井勇士、四月朔日紫音、漣湊、速水愛衣の四人がバトルサバイバルの勝ち抜きとなり、後日四人の戦績を鑑みて順位が発表される。
生徒達は学生寮へと戻り、食事や風呂などを終えて就寝した。
その日の深夜。
源得はとある病室のベッドの脇に座っていた。
「…本当に良かった。命に別状がなくて…」
深々と安堵の息を漏らしながら、源得は目の前にいる教師であり部下の猪本へ言った。
胴体を包帯で覆い尽くす程に巻いた猪本が、ベッドに横たわりながら、元気がなく疲れのある顔で薄く微笑んだ。
「ご心配お掛けしました…。そして、申し訳ありません。…止めるどころか、相手の姿も覚えてなくて…」
猪本が目を伏せる。
猪本、風宮琉花、来木田岳徒、備品室の警備係二人は、何者かによって斬られ倒されていた。
幸い、全員傷は深いものの命の危険はなく、猪本以外の四人は眠っている。猪本も本来なら眠っていたが、事情を聴くために士器を使用して起こしたのだ。
「しかし分からない。結局『転移乱輪』を盗まず儂の前に現れんかった…」
源得が腕を組んで唸る。
その後、備品室の『転移乱輪』の個数は予備の分だけきっちりと残っていた。不可解だ。
「それも気になるところですが、」
猪本が声色を変え、彼の気になる話題に移る。
「学園長、『紅蓮奏華家』の件は全て上手く行ったと見ていいんですか?」
猪本の真剣な瞳、源得は力強く頷いた。
「ああ。そこは安心して構わない。…結果的に儂が出て本当に良かった。猪本が出ていた時点で確実に『紅蓮奏華家』の応援は仰げなかっただろう」
源得が安堵と共に苦笑すると、猪本もくくっと笑う。
「…そういう意味では、俺や庭島たちを倒してくれた漣、速水に感謝ですね」
二人の名前が挙がり、源得の眼が真剣というか、覚悟というか、一つの絶対的な目標を定めたハンターの眼になる。
そんな源得を見て、猪本がゆっくりと聞いた。
「…二人はやはり使えそうですか?」
「猪本、使えるとか、そのようなまるでこちらが上位者であることが当然と言わんばかりの言葉遣いは改めろ」
ぴしゃりと、源得が猪本に言い放つ。猪本が怯んだ様子を見せるが、二人に呆気なく倒された自分はその言葉をよく理解できた。
「彼我でどちらが使う人間でどちらが使われる人間かと問えば、間違いなく儂らが使われる人間だ。…分を弁えるのだ」
「も、申し訳ありません…」
「……速水愛衣の頭の回転は凄まじい。おそらく漣湊も同格。……さすがにまだではあると思うが、遠くない未来に『超過演算』へ至れると儂は確信している」
「……確か、漣湊は12歳まで、速水愛衣は8歳まで………『禁架』に保護されていたんですよね」
猪本の言葉に源得は「ああ」と呟いてから。
「…お前も、儂と同じことを考えてるようだな」
「ええ。……『禁架』の長、『AM』。『超過演算』の使い手。……彼女が二人のような逸材を見逃すとは思えません」
源得が頷く。
「『AM』はその気になれば『陽天十二神座』のもっと上の席次に着くこともできるであろうに、中立を頑なに貫き、第十席に甘んじるような事なかれ主義じゃから、無理に自分の陣営に引き込むような真似はせんと思うが、……『禁架』で保護している間、『超過演算』へ至れるような特別な教育は受けていた可能性は大きい」
「……学園長はお二人の待遇をどのようにするつもりですか?」
源得が眉間に皺を寄せ、重々しく口を開く。
「はっきり言って、二人が儂らの陣営に着くメリットはない。…二人は賢い。まずあの知能があれば将来は絶対安泰であり、こちらの仲間になることは危険を増やすことだ。
このままでは話にもならないが……しかし、来木田岳徒にも目を付けられてることは二人は当然気付いてるはず。…九頭竜川家は躊躇なく強引な手を使ってくる。……そんな来木田岳徒の思惑にも気付いているはずだ。……そこに、突破口があると儂は見ている」
「九頭竜川にどうされるか分からない内に、武者小路と紅蓮奏華の庇護下に入る、ということですか?」
「…半分正解じゃな」
「? それはどういう…」
首を傾げる猪本に、源得は確信を持って述べた。
「九頭竜川にどうされるか「分からない」、そんなわけがない。…九頭竜川の頭首も何度もテレビに映っているし、ネットの記録上には歴代頭首やその子の動画が溢れかえっている。…そういった情報から、九頭竜川が自分達をどう扱うのか、強引な手を使う前に呈示される条件とその信憑性に二人なら気付いている可能性が非常に高い。…つまり、九頭竜川を選ぶか、儂らを選ぶか、全ては二人次第ということじゃ」
源得の大胆な予測に、猪本が息を呑む。
「が、学園長……それはいくらなんでも…。それだともう『超過演算』に至ってますよ? さっき学園長がそれはさすがにないと仰っていたじゃありませんか…」
「猪本、お前も詳しくは知らないと思うが、本物の『超過演算』はこんなものではない」
「……っ。そう言えば学園長は若い頃に『超過演算』を持つ敵と戦ったことが…」
「『霊魂晶』を手に入れる前の話だ。…その『超過演算』を持つ裏組織の人間との対決は忘れん。…とても異様で、今でも儂が理解できないことが多い戦いじゃった。……だから、二人に取っては朝飯前だと思う」
実体験を元に行き着いた考えを、猪本は否定できなかった。
「……学園長が言うならそうなのでしょう。『超過演算』は『聖』や『白影』ぐらいでないと騙せませんからね」
「ああっ」
猪本の言葉に、源得が声を上げる。
「そう言えば紅井勇士が言っていたのだが、蔵坂先生が……」
その後の台詞は、猪本を今日一番驚愕させた。
◆ ◆ ◆
「湖音様、紫音様から届いたデータ、いかがいたしますか? 紫音様のご学友がまさか紅蓮奏華の者だったとは本当に驚きですが…」
「…紫音の友達から、利用するような真似はしたくないけど、この映像は使えるわ。紅井勇士本人だと分からないようにすれば九頭竜川との交渉材料としても十分使える。武者小路に目標を移させれば……時間稼ぎにはなる」
「最終的にはどうされるおつもりですか?」
「分からない。時間稼ぎしている間に紅井勇士のことを徹底的に調べてちょうだい。そこから希望を掴むしかない」
「畏まりました」
◆ ◆ ◆
「ジスト様。…ギスナからの連絡で、イルは失敗したようです。『転移乱輪』の予備がきちんと作動しなかったとか」
「そのようだな」
「どうしますか?」
「今はどうもしない。前以て命じていたように、顔は見られていないようだし、チャンスはこれからいくらでもある」
「……他の幹部の方からの苦情はどうしますか?『役立たずは引っ込め』だの『失敗したならイルとかいう奴の命令権を寄越せ』だの『そろそろイルとかいう貴方の切り札の正体を教えて頂戴よ』だの、色々来てますが」
「放っとけ。奴らもすぐ飽きる」
「…でもクレイ様の言うように、イルの正体をジスト様と極一部の者しか知らないことは相当反感買っていますよ」
「情報は命だ。他の奴らもそんなの抱え込んでいるだろう。相手にすることはない」
「でもそれで失敗してますからね。どうしても当たりは強くなりますよ」
「放っとけ。何もするな。それが一番だ」
「そこは自分も同感ですし、…分かりました。…で、次はどうしますか?」
「武者小路源得に関しては余計なことは言うな。しばらく様子を見る。………それと、アルガとクネリが外に出ないよう命じておけ。ルーランも含め、任せたいことがある。イーバ、当然お前もだぞ」
「? 分かりました」
◆ ◆ ◆
『聖』本部。
「以上がクロッカス及びカキツバタによる報告です」
赤茶色の髪を左に分けている女性、スカーレットが締めくくる。
青みがかった黒髪をかき上げながら、手元の資料を見て西園寺瑠璃は深い笑みを浮かべた。
「淡里深恋さんね。…いいじゃない。クローくんも太鼓判押してるし、大歓迎よ」
「分かりました。淡里深恋に関しては即座に通達します。近い内にしっかり顔合わせをしたいところですね。……しかし、心配です。このまま淡里深恋を獅童学園に留めておいていいのでしょうか」
「クローくんが言うには誰にも顔を見られたわけでもなく、ペアとして過ごしていた速水愛衣も騙し通す実力は本物であり、『聖』本部に収めるのは惜しい…だっけ。…そうねぇ。訓練しても、誰しもが『超過演算』を欺けるようになるわけじゃない。そう考えると、確かに惜しいわ。…ここはクローくんに一任するべきだと、私は思うけど」
「…そうですね。畏まりました」
西園寺瑠璃が別の資料に目を通す。
「それと気になるのはカキツちゃんの方ね。…クローくんが言うならもう潮時なんでしょうけど」
「…紅井勇士の超直感と言うべきでしょうか。運が悪かったとしか言えません。観念してカキツバタを戻すしかないでしょう。……ただ、この状態も見方によれば好機。リミットが付けられたカキツバタには最後までできる限りのことをしてもらいましょう」
「それでいいわ。カキツちゃんもそのつもりでしょう。………そして、一番気になるのがこれよね」
瑠璃がふふっと笑い、スカーレッドが呆れとも恐縮とも妥協ともとれる溜息をつく。
「全く、クロッカスには驚かされてばかりです」
「私もよ。さすが、未来の『聖』総隊長ね。……私が見る限り、この提案書に不備はない。そして、これが成功すれば『聖』に莫大な利益がもたらされる」
「同感です。…ですが、それはそれとして、クロッカスのこの予測は俄かに信じられません…」
「そこは直接確かめてもらいましょう」
スカーレッドが再度溜息をつく。
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