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ifストーリー エルビス編
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俺は、決意した日から体力を取り戻す事に専念した。表向きは大人しく従順に振る舞い、目立たない様に。
あの子に作れと言われた物も黙って作った。
エルビスさんに抱かれてから、1週間ほど経っていた。でも、あれきり。俺なんかつまらなかったのかもな。初めてだったから、されるがままだったし。
でも、変わらずに誠実に世話をしてくれる。そんな日が続いていた。
「…ま。…ャンヤ様。起きて下さい。」
「……んんっ。エルビス、さん?」
まだ薄暗い中、エルビスさんに起こされた。
「起きて下さい。さぁ、これに着替えて。」
俺は言われるがまま、被って腰で紐で縛る簡単な服に着替えた。布の質もいつもより低い。
もしかして、今日?
無言のまま目を見つめると、エルビスさんは黙って頷いた。
その上からフード付きの上着を着せられた。
そして、エルビスさんは背中にバッグを背負って、口元に指を1本当ててから俺の手を引いた。
俺達は暗く静かな中、裏の通路を歩く。裏の扉をそっと開けると人影があり、ビクリと震えた。
しかし、エルビスさんは驚く事なく進むと、そこにいたのは料理長のハンスさんだった。
2人に導かれるままに奥の荷車の籠に入れられ、上に何かかけられた。
エルビスさんは…?本当に来てくれる…?
そのままひたすらジッとしていると、暫くして話し声が聞こえ、馬車が動き出した。
このまま出られるのか?その先は?ひたすらに不安なまま、震えながら揺られ続けた。
どれ位そうしていたのか。馬車が止まりガヤガヤと話し声がした後、また静かになった。
出ても良いのか?それとも…。思い切って出ようとした時、上にかけられた布や物が外された。
「ジュンヤ様。」
囁くようなエルビスさんの声がした。その声に、俺は泣きたい位安心した。本当に来てくれたんだ!
籠から出され、フードを被り手を引かれた。
「こっちです。静かに。」
頷いて、ただひたすら付いていく。裏のとびらを開け薄暗い街を抜けて、人通りの少ない通りの家に入った。
エルビスさんは鍵を厳重に確認した。
「ひとまず…ここは安全です。怖かったでしょう?」
「エルビスさん、ありがとう。でも、あなたは本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫です。着いてすぐですみませんが、御髪の色を変えさせて頂きます。」
「はい。このままじゃ動けないですね。」
エルビスさんが用意した道具で、髪と眉毛の色を抜いて茶髪にした。
「こんな…、せっかくの美しい黒が…。」
エルビスさんは、俺の髪を撫でて、一粒涙を零した。しかし、そんな感傷を振り払う様に頭を振って、エルビスさんも服を着替えた。いつもの侍従の服ではない。
「相手の目を見ない様に気をつけて下さい。まつ毛と瞳は変えられないので。」
「はい。」
「それから…あなたは私の親戚の子供という事にします。親が亡くなり、遠縁の親族の所に行くんです。名前は…そう…ジュードはどうでしょうか?
私の事はエイデンと呼んで下さい。あまりに違う名前だと違和感があるでしょうし。」
俺は了承して、俺のプロフィールを懸命に覚えた。
「行き先は南の街という事で。実際は北を目指し、あなたをトラージェに連れて行きます。」
「トラージェ?カルタスと揉めてるんじゃないんですか?」
「ですから、保護を求めます。私に任せて下さい。とにかく、今は急いで外門を抜けなくては。」
「分かりました…。」
そして、夜が明けるのを待ち、門を抜ける為出発した。
「乗り合い馬車に乗ります。親を亡くしたショックで話せない事にしましょう。良いですね?それと、少し乱暴な扱いをしてしまうかもしれませんが、お許し下さい。」
「はい。大丈夫です。ここを出られれば…?」
「王都から離れれば、かなり楽になります。さあ、行きますよ。」
俺達は手を繋いで門へと向かった。しかし、門の周囲がやたらと騒がしかった。
まさか…。
「あれはいつもの事です、大丈夫。」
そうか、王都に出入りする人間はみんなチェックしてるのか。頷いて、冷静さを保つ努力をする。
何人も並ぶ後ろに並び、1人進む毎にドキドキと心臓が早鐘を打つようだ。
「王都を出る目的と名前を言え。」
「エイデンとジュードだ。姓はない。親が死んだので、遠縁の俺が叔父のいるの南の街へ連れて行く所だ。」
「おい、お前。返事をしろ。」
門兵に問われたが、黙って俯いていた。
「少々酷い死に方をしたので、話せなくなってる。あまり無体を言わないでくれ。」
「……そうか。そんな細っこいから、苦労したんだな。可哀想に。よし、行け。」
「ありがとうございます。ほら、行くぞ!」
そのまま、手を引かれ完全に門の外に出るまでは安心出来ない。振り向きたいのを我慢して、エルビスさんの合図を待って歩き続ける。
「ひとまず、抜けました。まだバレていない様です。乗り合い馬車で移動しますよ。」
色んな街へ向かうという馬車が沢山あった。これなら、俺がどこに向かうかなんて分からないかも、早く出発したい。
エルビスさんは、北へ向かって1番遠くへ行ける馬車を選んだ。まだバレていなかったのか。明け方にここを出られて良かった…。
エルビスさんに甘えてしまっているが、なんとか役に立たなくちゃな。
沢山の人が詰め込まれた馬車が出発して、王都が見えなくなるまで、俺はずっと外を見ていた。
あの子に作れと言われた物も黙って作った。
エルビスさんに抱かれてから、1週間ほど経っていた。でも、あれきり。俺なんかつまらなかったのかもな。初めてだったから、されるがままだったし。
でも、変わらずに誠実に世話をしてくれる。そんな日が続いていた。
「…ま。…ャンヤ様。起きて下さい。」
「……んんっ。エルビス、さん?」
まだ薄暗い中、エルビスさんに起こされた。
「起きて下さい。さぁ、これに着替えて。」
俺は言われるがまま、被って腰で紐で縛る簡単な服に着替えた。布の質もいつもより低い。
もしかして、今日?
無言のまま目を見つめると、エルビスさんは黙って頷いた。
その上からフード付きの上着を着せられた。
そして、エルビスさんは背中にバッグを背負って、口元に指を1本当ててから俺の手を引いた。
俺達は暗く静かな中、裏の通路を歩く。裏の扉をそっと開けると人影があり、ビクリと震えた。
しかし、エルビスさんは驚く事なく進むと、そこにいたのは料理長のハンスさんだった。
2人に導かれるままに奥の荷車の籠に入れられ、上に何かかけられた。
エルビスさんは…?本当に来てくれる…?
そのままひたすらジッとしていると、暫くして話し声が聞こえ、馬車が動き出した。
このまま出られるのか?その先は?ひたすらに不安なまま、震えながら揺られ続けた。
どれ位そうしていたのか。馬車が止まりガヤガヤと話し声がした後、また静かになった。
出ても良いのか?それとも…。思い切って出ようとした時、上にかけられた布や物が外された。
「ジュンヤ様。」
囁くようなエルビスさんの声がした。その声に、俺は泣きたい位安心した。本当に来てくれたんだ!
籠から出され、フードを被り手を引かれた。
「こっちです。静かに。」
頷いて、ただひたすら付いていく。裏のとびらを開け薄暗い街を抜けて、人通りの少ない通りの家に入った。
エルビスさんは鍵を厳重に確認した。
「ひとまず…ここは安全です。怖かったでしょう?」
「エルビスさん、ありがとう。でも、あなたは本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫です。着いてすぐですみませんが、御髪の色を変えさせて頂きます。」
「はい。このままじゃ動けないですね。」
エルビスさんが用意した道具で、髪と眉毛の色を抜いて茶髪にした。
「こんな…、せっかくの美しい黒が…。」
エルビスさんは、俺の髪を撫でて、一粒涙を零した。しかし、そんな感傷を振り払う様に頭を振って、エルビスさんも服を着替えた。いつもの侍従の服ではない。
「相手の目を見ない様に気をつけて下さい。まつ毛と瞳は変えられないので。」
「はい。」
「それから…あなたは私の親戚の子供という事にします。親が亡くなり、遠縁の親族の所に行くんです。名前は…そう…ジュードはどうでしょうか?
私の事はエイデンと呼んで下さい。あまりに違う名前だと違和感があるでしょうし。」
俺は了承して、俺のプロフィールを懸命に覚えた。
「行き先は南の街という事で。実際は北を目指し、あなたをトラージェに連れて行きます。」
「トラージェ?カルタスと揉めてるんじゃないんですか?」
「ですから、保護を求めます。私に任せて下さい。とにかく、今は急いで外門を抜けなくては。」
「分かりました…。」
そして、夜が明けるのを待ち、門を抜ける為出発した。
「乗り合い馬車に乗ります。親を亡くしたショックで話せない事にしましょう。良いですね?それと、少し乱暴な扱いをしてしまうかもしれませんが、お許し下さい。」
「はい。大丈夫です。ここを出られれば…?」
「王都から離れれば、かなり楽になります。さあ、行きますよ。」
俺達は手を繋いで門へと向かった。しかし、門の周囲がやたらと騒がしかった。
まさか…。
「あれはいつもの事です、大丈夫。」
そうか、王都に出入りする人間はみんなチェックしてるのか。頷いて、冷静さを保つ努力をする。
何人も並ぶ後ろに並び、1人進む毎にドキドキと心臓が早鐘を打つようだ。
「王都を出る目的と名前を言え。」
「エイデンとジュードだ。姓はない。親が死んだので、遠縁の俺が叔父のいるの南の街へ連れて行く所だ。」
「おい、お前。返事をしろ。」
門兵に問われたが、黙って俯いていた。
「少々酷い死に方をしたので、話せなくなってる。あまり無体を言わないでくれ。」
「……そうか。そんな細っこいから、苦労したんだな。可哀想に。よし、行け。」
「ありがとうございます。ほら、行くぞ!」
そのまま、手を引かれ完全に門の外に出るまでは安心出来ない。振り向きたいのを我慢して、エルビスさんの合図を待って歩き続ける。
「ひとまず、抜けました。まだバレていない様です。乗り合い馬車で移動しますよ。」
色んな街へ向かうという馬車が沢山あった。これなら、俺がどこに向かうかなんて分からないかも、早く出発したい。
エルビスさんは、北へ向かって1番遠くへ行ける馬車を選んだ。まだバレていなかったのか。明け方にここを出られて良かった…。
エルビスさんに甘えてしまっているが、なんとか役に立たなくちゃな。
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