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救済ルート
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「ははっ、許せないならどうすると言うんだ? お前の父親にでも泣きつくか? 僕がやったって証拠もないのに!」
「それは……」
マッディの言う通りだ。
一応この場での彼の証言さえあれば過去の犯罪も立証できる。
ただ第三者の判断材料としては、私たち女性陣がたんに口裏合わせをしているだけと捉えられる可能性もある。
明確にマッディを罪に問うためには、裁判時に彼の自白とも取れる発言をなんらかの形で第三者に提示しなければならないが、いざその時にしらを切られれば果たしてどうなるか分からない。
「……ございますよ」
次の言葉に窮する私の代わりに声を上げたのはコルダータだった。
「あっ、またお前か? なにがあるって?」
「ですから、証拠ならここにございます」
そう言ってコルダータが懐から取り出したのは小型の機械。
あれって……。
「こちらは録音装置です。これまでのやりとりはすべてこの機械にすべて記録されています。当然マッディ様の自白も含めて。こんなこともあろうかと携帯しておいて正解でした」
「なっ……!」
マッディの顔が青ざめる。
あれさえあれば自分を罪に問う際の動かぬ証拠になるということに気がついたのだろう。
私の侍女の用意周到さに舌を巻く。
「よくやってくれたわコルダータ。これで貴方も終わりね、マッディ」
「……確かにそれがあると僕は終わるね」
観念したように肩を落とすマッディ――いいえ違う、あの雰囲気はまだ諦めていない!
「だから……それをよこせぇっ!」
両腕をコルダータに向け、彼女に向かって駆け出す。
いけないあれを奪われては、どうにかして死守しないと。
コルダータもまた録音装置を庇うような動作をした瞬間――これまでなりを潜めていた影が突然マッディの前に躍り出る。
「邪魔するなロアンナ、また痛い目みたいか!」
「はっ、毎日遊んでばかりで女に養ってもらって生活してるような優男に家事仕事で鍛えたメイドが力で負けるわけ――ないでしょ!」
勢いそのままに殴りかかろうとするマッディの腕を取った彼女は、そのままの勢いで――かつての主を湖に向かって投げ飛ばした。
「うわぁあぁあっ!」
目の前でドボンと大きな水柱が立つ。
「ごぼぼぼぼぼっ! ……ぷはぁっ、ひいっ」
途端マッディがあっぷあっぷと溺れ始め、必死になってその場で掻くようにもがいている。
「アッアッアンティーラッ、たす助けてくれっ、黙って見てないで、さぁ!」
「…………」
ロアンナでもコルダータでもなくこの私に救いを求めるなんて、まさかまだこの期に及んで同情を引けるつもりなのだろうか。
だとしたら、お生憎さま。
さっき貴方はロアンナになにをした?
貴方のせいで罰を受けたコルダータには謝罪の言葉はないの?
私に悪夢を植え付けたのは誰だと思っているのかしら?
だからこそ、返答は既に決まっていた。
「無理ねぇ。私まで溺れてしまうもの。それともなに、貴方はたかがクズ男のために私の貴重な命を投げ捨てろというの? 見返りもないのに冗談じゃないわ」
吐き捨てるようにマッディに告げた。
それから私は踵を返し、コルダータとロアンナを促してこの場から立ち去ろうとする。
「アアアアンティーラァァァッ‼」
背中越しにマッディの恨みのこもった叫び声が突き刺さるが無視をした。
あれだけ余裕があればこちらが手を貸さずとも自力でどうにかするだろう。
なのであえて振り返らず、私は最後に彼にこう言い残す。
「――さようならマッディ。生きていたら今度は法廷で会いましょう」
「それは……」
マッディの言う通りだ。
一応この場での彼の証言さえあれば過去の犯罪も立証できる。
ただ第三者の判断材料としては、私たち女性陣がたんに口裏合わせをしているだけと捉えられる可能性もある。
明確にマッディを罪に問うためには、裁判時に彼の自白とも取れる発言をなんらかの形で第三者に提示しなければならないが、いざその時にしらを切られれば果たしてどうなるか分からない。
「……ございますよ」
次の言葉に窮する私の代わりに声を上げたのはコルダータだった。
「あっ、またお前か? なにがあるって?」
「ですから、証拠ならここにございます」
そう言ってコルダータが懐から取り出したのは小型の機械。
あれって……。
「こちらは録音装置です。これまでのやりとりはすべてこの機械にすべて記録されています。当然マッディ様の自白も含めて。こんなこともあろうかと携帯しておいて正解でした」
「なっ……!」
マッディの顔が青ざめる。
あれさえあれば自分を罪に問う際の動かぬ証拠になるということに気がついたのだろう。
私の侍女の用意周到さに舌を巻く。
「よくやってくれたわコルダータ。これで貴方も終わりね、マッディ」
「……確かにそれがあると僕は終わるね」
観念したように肩を落とすマッディ――いいえ違う、あの雰囲気はまだ諦めていない!
「だから……それをよこせぇっ!」
両腕をコルダータに向け、彼女に向かって駆け出す。
いけないあれを奪われては、どうにかして死守しないと。
コルダータもまた録音装置を庇うような動作をした瞬間――これまでなりを潜めていた影が突然マッディの前に躍り出る。
「邪魔するなロアンナ、また痛い目みたいか!」
「はっ、毎日遊んでばかりで女に養ってもらって生活してるような優男に家事仕事で鍛えたメイドが力で負けるわけ――ないでしょ!」
勢いそのままに殴りかかろうとするマッディの腕を取った彼女は、そのままの勢いで――かつての主を湖に向かって投げ飛ばした。
「うわぁあぁあっ!」
目の前でドボンと大きな水柱が立つ。
「ごぼぼぼぼぼっ! ……ぷはぁっ、ひいっ」
途端マッディがあっぷあっぷと溺れ始め、必死になってその場で掻くようにもがいている。
「アッアッアンティーラッ、たす助けてくれっ、黙って見てないで、さぁ!」
「…………」
ロアンナでもコルダータでもなくこの私に救いを求めるなんて、まさかまだこの期に及んで同情を引けるつもりなのだろうか。
だとしたら、お生憎さま。
さっき貴方はロアンナになにをした?
貴方のせいで罰を受けたコルダータには謝罪の言葉はないの?
私に悪夢を植え付けたのは誰だと思っているのかしら?
だからこそ、返答は既に決まっていた。
「無理ねぇ。私まで溺れてしまうもの。それともなに、貴方はたかがクズ男のために私の貴重な命を投げ捨てろというの? 見返りもないのに冗談じゃないわ」
吐き捨てるようにマッディに告げた。
それから私は踵を返し、コルダータとロアンナを促してこの場から立ち去ろうとする。
「アアアアンティーラァァァッ‼」
背中越しにマッディの恨みのこもった叫び声が突き刺さるが無視をした。
あれだけ余裕があればこちらが手を貸さずとも自力でどうにかするだろう。
なのであえて振り返らず、私は最後に彼にこう言い残す。
「――さようならマッディ。生きていたら今度は法廷で会いましょう」
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