地味顔令嬢の私を「嘘の告白」で笑いものにするつもりですか? 結構です、なら本気で惚れさせてから逆にこっちが盛大に振ってあげます!

日々埋没。

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「お褒めいただきありがとう存じますマルス様」 

「い、いや、別に……」

 ドックンドックンと心臓が早鐘を打つかのようにうるさく鼓動する。

(んだよ、こいつにドキドキするとか有りえねーだろ!)

 馬鹿にしていたハズのリーンベイルに不意打ちでしてやられるとは予想もしていなかったマルスは、胡乱げに彼女を見た。

「だ、だがなんでお前は急にそんなイメチェンをしたんだ?」

「嫌ですわ、学園内で人徳のあるマルス様と私は図らずも交際することになったのですから、その隣に立つにふさわしい女性になれるように務めただけに過ぎません」

「それにしたってお前の変身ぶりはチート過ぎるだろ……」

 ボソッとリーンベイルに聞こえない程度の声でそうこぼすマルス。
 しかしその分かりやすい反応からリーンベイルは予想していた目論見が達成できたと内心ガッツポーズを決める。

 ――まず一番最初に、リーンベイルとミネルバが取った対マルス籠絡作戦はなんてことはなく、とてもシンプルなものだった。

 それはすなわち、絶対的な容姿の暴力。
 向こうがイケメンっぷりを売りにするのなら、こちらもまたそれを上回る見た目で対抗するだけのこと。

「あんたは、磨けば光るダイヤの原石じゃない。逆よ、光り輝いているダイヤを薄汚れた布で無理やりくすませているに過ぎないわ。だけどそれももう終わり、これからのあんたは再び天女の羽衣に戻るのよ!」

 とはミネルバの談。

 本来リーンベイルは同年代において、おおよそ比類する者なき容姿の持ち主なのだ。
 ただ綺麗という普遍的な言葉では表せないほどに圧倒的な美しさ、それが彼女の持つ類い希なる才能。
 一度変装すれば、美人と反対の立場に位置するザ地味顔女になれるほどの。
 しかしそんなリーンベイルは同級生と比べても頭一つ抜けている見た目のミネルバですら真実の姿となった彼女の前では、それこそ路傍に転がる石ころに均しい。

 ――けれどリーンベイルはその容姿をこれまで封印し、なぜあえて地味顔女を演じていたのか。

 それはリーンベイルの父親に原因があった。
 彼女の父親は最愛の娘があまりにも美しすぎることを危惧し、将来学園に入学する際に悪い虫がつかないように変装することを強いていたのだ。

 ゆえに艶やかな黒髪は地味さを演出するようなおさげに、それから度が入っていない伊達眼鏡をかけさせて目立たない文学少女的な感じに。

 果たして父親の目論見は功をせいし、こうしてリーンベイルはいわゆる地味顔令嬢となった。

 だがそれとももうおさらばだ。
 ひっそりと目立たないように、あえてさなぎのままだった彼女は今や美しき蝶となって羽ばたくことになったのだから。

 ……そのきっかけとなったのがマルスとの一件なのは微妙なところだが。

「では遅れない内に参りましょうマルス様」

「あ、ああ、そうだな」

 そしてマルスの嘘告から始まったこれまた嘘の交際関係は、仲むつまじい演技をする二人のせいもあって瞬く間に学園中の噂となるのだった。
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