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02.両親に報告したら、みんなで浮気男の悪口大会になりました
「――だ、そうです」
侯爵家の屋敷に帰った私は、さっそくその足でお父様とお母様に事の次第を報告した。
婚約破棄に至った経緯を包み隠さず話し終えたところ、お父様の全身がぶるぶると震えだす。
持病の発作かしら?
「……これだけは聞かせてくれ、イーリスは王子とその、本当に致していないのか?」
「実の娘に真剣な表情で聞くことがそれですか。セクシャルハラスメントに該当する話なので言及を避けたいところではありますが……ええ誓って私は彼と性行為を行ったことはありません。時代錯誤だと馬鹿にされましたが、そこは淑女らしく貞操観念はしっかりしているつもりですので」
「――よっしゃセーフ! がははっ、どうだあのバカチンカス王子め! わしの可愛いイーリスがお前みたいなヤリチンの誘いになんか引っかかるわけないんだっつーの! やーいバーカバーカ、バカイドル! お前の母ちゃんマジ王妃~!」
私と同じ蔑称を思いつく辺り、血は争えないなと思った。
「お父様、下品な言い回しはやめてくださいな。仮にも栄えある子爵家の家長なのですから」
お父様もバイドル様のことがお嫌いなのは重々承知していたけれど、さすがにこの年甲斐もないはしゃぎようはみっともない。
「おっほん、すまんすまん。いやぁ、あまりにも嬉しくてな。わしはな、王子とはいえあの色ボケとお前が婚約しているのがずっと嫌だったんだ。そりゃ最初はこの国で一番若くて綺麗な貴族令嬢を王子の妻として娶りたいからウチのイーリスが選ばれたと聞かされた時は喜んだものだがなぁ、あまりの第一王子の素行不良っぷりにそのことを後悔したもんだ」
「私だってそうですよ。いくら国王様と王妃様に気に入っていただけてるとはいえ、本当はあんな普段の言動と下半身が直結してる男をパートナーにするのは不服でしたから」
「あらあら、王子の悪口大会ならわたしも混ぜてちょうだいな。みんなであのダメ王子をけちょんけちょんにこき下ろしてあげましょうよ」
それはいい、とお母様の提案に乗った私たちは家族一丸となってあの人の駄目な部分を列挙していった。
すけこまし、脳内ピンク、無責任後宮。
そのどれもが、やはり彼の女性関係のだらしのない点に繋がっていって、あまりの酷さに最終的には誰からともなく憂国のため息をついた。
「しかし、本当にあんなのが第一王子でこの国は大丈夫だろうか? 色々と女性問題を起こしてはいるが、王位継承権第一位だからなぁ」
「本当にそうね、あなた。あんなのが国王に即位されたら、きっと市民暴動が起きるわ。ああ想像しただけで恐ろしい」
二人の意見はもっともだ。
そろそろバイドル様が改心されない限り、その先に待っている未来は明るくはない。
ただ残念なことに今のあの人にそれを期待するのは無理な話ではある。
元婚約者であった私がいくら諌めても、まるで聞く耳を持たなかったのだから。
彼を変えることができるのはもっと強烈な――そう王子という権力に物怖じせず、かつ圧倒的な矯正の能力を持つ教育係に他ならない。
――そんな折、私は出会ったのだ。
表情はさながら氷のように冷たく、それでいて炎のような温かい心の持ち主と。
最強にして、最狂にして、最凶なそのメイド、メリーヌタの再教育と。
侯爵家の屋敷に帰った私は、さっそくその足でお父様とお母様に事の次第を報告した。
婚約破棄に至った経緯を包み隠さず話し終えたところ、お父様の全身がぶるぶると震えだす。
持病の発作かしら?
「……これだけは聞かせてくれ、イーリスは王子とその、本当に致していないのか?」
「実の娘に真剣な表情で聞くことがそれですか。セクシャルハラスメントに該当する話なので言及を避けたいところではありますが……ええ誓って私は彼と性行為を行ったことはありません。時代錯誤だと馬鹿にされましたが、そこは淑女らしく貞操観念はしっかりしているつもりですので」
「――よっしゃセーフ! がははっ、どうだあのバカチンカス王子め! わしの可愛いイーリスがお前みたいなヤリチンの誘いになんか引っかかるわけないんだっつーの! やーいバーカバーカ、バカイドル! お前の母ちゃんマジ王妃~!」
私と同じ蔑称を思いつく辺り、血は争えないなと思った。
「お父様、下品な言い回しはやめてくださいな。仮にも栄えある子爵家の家長なのですから」
お父様もバイドル様のことがお嫌いなのは重々承知していたけれど、さすがにこの年甲斐もないはしゃぎようはみっともない。
「おっほん、すまんすまん。いやぁ、あまりにも嬉しくてな。わしはな、王子とはいえあの色ボケとお前が婚約しているのがずっと嫌だったんだ。そりゃ最初はこの国で一番若くて綺麗な貴族令嬢を王子の妻として娶りたいからウチのイーリスが選ばれたと聞かされた時は喜んだものだがなぁ、あまりの第一王子の素行不良っぷりにそのことを後悔したもんだ」
「私だってそうですよ。いくら国王様と王妃様に気に入っていただけてるとはいえ、本当はあんな普段の言動と下半身が直結してる男をパートナーにするのは不服でしたから」
「あらあら、王子の悪口大会ならわたしも混ぜてちょうだいな。みんなであのダメ王子をけちょんけちょんにこき下ろしてあげましょうよ」
それはいい、とお母様の提案に乗った私たちは家族一丸となってあの人の駄目な部分を列挙していった。
すけこまし、脳内ピンク、無責任後宮。
そのどれもが、やはり彼の女性関係のだらしのない点に繋がっていって、あまりの酷さに最終的には誰からともなく憂国のため息をついた。
「しかし、本当にあんなのが第一王子でこの国は大丈夫だろうか? 色々と女性問題を起こしてはいるが、王位継承権第一位だからなぁ」
「本当にそうね、あなた。あんなのが国王に即位されたら、きっと市民暴動が起きるわ。ああ想像しただけで恐ろしい」
二人の意見はもっともだ。
そろそろバイドル様が改心されない限り、その先に待っている未来は明るくはない。
ただ残念なことに今のあの人にそれを期待するのは無理な話ではある。
元婚約者であった私がいくら諌めても、まるで聞く耳を持たなかったのだから。
彼を変えることができるのはもっと強烈な――そう王子という権力に物怖じせず、かつ圧倒的な矯正の能力を持つ教育係に他ならない。
――そんな折、私は出会ったのだ。
表情はさながら氷のように冷たく、それでいて炎のような温かい心の持ち主と。
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