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03.ナターシャSide〜画策する女〜
しがない男爵家の長女として生まれたわたくしは、幼い頃からお母様にもっと上を目指しなさいと口を酸っぱくして言われながら育った。
男は自分より学のある女を嫌う、だから貴方も頭の悪い女性を演じなさい、それから女の武器を駆使して相手を逆に籠絡してやるのよ――それがお母様からの教えだった。
だからわたくしもその教えに従い、媚び売りの練習と、いざという時のための閨事の勉強を怠らなかった。
嫁に出るしかない貴族令嬢が上に行くためにはより偉い立場にあり、なおかつ御しやすい殿方を捕まえる必要があったが、そのためには性的誘惑――ハニートラップは極めて有効的な方法であるからだ。
しかしわたくしにはある重大な欠陥があった。
それはこの女としては未成熟な体つきだった。
ともすれば女児と見紛うほどに幼い体では下手に露出の高いドレスを着ようものなら、かえって背伸びをしたがる子供を彷彿とさせるだろう。
ゆえにわたくしは殿方を引っ掛ける手段として早々に色じかけは諦め、その代わりに愛嬌があり小動物のように可愛らしい女の路線で行くことにした。
これならば相手に警戒されずにベタベタと肉体接触を謀りやすい。
女性から好意を匂わせるようなスキンシップを取られ、それを嫌に思う殿方はまずいない。
そしてその点ではこの国の第一王子バイドルはまさに適任と言えた。
端正な顔立ちともてはやされるバイドル王子の裏の顔、もとい悪評を知らないわけではない。
婚約者がいながら女遊びの激しい王子、それは貴族令嬢の中では割と共通の認識であり、実際に彼と関係を持った令嬢は数しれないという。
ただ実情までは詳しく知られていない。
さすがに醜聞を恐れる令嬢からすればみだりに王子との爛れた関係を暴露するわけにはいかず、また貴族令嬢としてのプライドから手酷い振られ方をしたなどと喧伝《けんでん》する者はいないからだ。
おかげで被害者は増えに増え、今では彼の誘いに乗るのは脳内お花畑な世間知らずか、側室入りを目指す野心家くらいなものだ。
けれどもわたくしは彼女たちとは同じ轍を踏むつもりはない。
王子の懐まで潜り込むために貴重な処女性まで失ったのだ、絶対に彼をモノにしてみせる!
でも幸か不幸か、わたくしと王子の浮気現場を件の婚約者に見咎められるという事態に陥った。
その時はこれでわたくしの夢も潰えたかと落胆しかけたものの、なんと王子はまさかの婚約破棄をその婚約者――イーリスに告げたのだ。
つまり彼は婚約者の彼女ではなくこのわたくしを選んだということ。
であれば必然的に新たにわたくしと婚約を結ぶ意志があるに違いない。
これまでの努力がついに報われた瞬間だった。
捨てられたイーリスには悪いけれど、可哀想な貴方に代わってあの男はせいぜいわたくしが利用し尽くして、上流階級をのし上がってやるのよ。
男は自分より学のある女を嫌う、だから貴方も頭の悪い女性を演じなさい、それから女の武器を駆使して相手を逆に籠絡してやるのよ――それがお母様からの教えだった。
だからわたくしもその教えに従い、媚び売りの練習と、いざという時のための閨事の勉強を怠らなかった。
嫁に出るしかない貴族令嬢が上に行くためにはより偉い立場にあり、なおかつ御しやすい殿方を捕まえる必要があったが、そのためには性的誘惑――ハニートラップは極めて有効的な方法であるからだ。
しかしわたくしにはある重大な欠陥があった。
それはこの女としては未成熟な体つきだった。
ともすれば女児と見紛うほどに幼い体では下手に露出の高いドレスを着ようものなら、かえって背伸びをしたがる子供を彷彿とさせるだろう。
ゆえにわたくしは殿方を引っ掛ける手段として早々に色じかけは諦め、その代わりに愛嬌があり小動物のように可愛らしい女の路線で行くことにした。
これならば相手に警戒されずにベタベタと肉体接触を謀りやすい。
女性から好意を匂わせるようなスキンシップを取られ、それを嫌に思う殿方はまずいない。
そしてその点ではこの国の第一王子バイドルはまさに適任と言えた。
端正な顔立ちともてはやされるバイドル王子の裏の顔、もとい悪評を知らないわけではない。
婚約者がいながら女遊びの激しい王子、それは貴族令嬢の中では割と共通の認識であり、実際に彼と関係を持った令嬢は数しれないという。
ただ実情までは詳しく知られていない。
さすがに醜聞を恐れる令嬢からすればみだりに王子との爛れた関係を暴露するわけにはいかず、また貴族令嬢としてのプライドから手酷い振られ方をしたなどと喧伝《けんでん》する者はいないからだ。
おかげで被害者は増えに増え、今では彼の誘いに乗るのは脳内お花畑な世間知らずか、側室入りを目指す野心家くらいなものだ。
けれどもわたくしは彼女たちとは同じ轍を踏むつもりはない。
王子の懐まで潜り込むために貴重な処女性まで失ったのだ、絶対に彼をモノにしてみせる!
でも幸か不幸か、わたくしと王子の浮気現場を件の婚約者に見咎められるという事態に陥った。
その時はこれでわたくしの夢も潰えたかと落胆しかけたものの、なんと王子はまさかの婚約破棄をその婚約者――イーリスに告げたのだ。
つまり彼は婚約者の彼女ではなくこのわたくしを選んだということ。
であれば必然的に新たにわたくしと婚約を結ぶ意志があるに違いない。
これまでの努力がついに報われた瞬間だった。
捨てられたイーリスには悪いけれど、可哀想な貴方に代わってあの男はせいぜいわたくしが利用し尽くして、上流階級をのし上がってやるのよ。
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