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04.王子の悪行がとうとう彼のご両親にも知れ渡ったようです
「臣下から聞いたのだが、そなたがバイドルから婚約破棄をされたというのは本当か?」
一方的に別れを告げられた翌々日のこと、私は王宮に呼び出しを受けた。
どうやら国王様たちの耳にも例の一件が届いたようで、事の真偽を含め直接私の口から聞きたいということらしい。
「はい、悲しいことに本当でございます」
もちろん実際には毛ほどにも悲しくはないが、このぐらいの誇張は許してほしい。
「やはりそうか……。昨日そなたが王妃教育の場に訪れなかったから王妃も心配しておったのだ。あのバカめ、人の気も知らずに勝手なことを」
国王様は口元に蓄えた白いひげを撫でさすり、伏し目がちに言葉をもらした。
「国王様と王妃様には王妃教育に始まりあれほど良くしていただいたのに、私が至らぬせいでこのような結果になってしまい、なんとお詫びを申し上げればよいのやら」
私は国王様と王妃様をおそれ多くも第二の両親のように慕っている。
だからバイドル様はともかくお二人にご迷惑とご心配をかけてしまうことに心の底から申しわけない気持ちでいっぱいだった。
「よいのですよ、イーリス。あなたはなにも悪くありません。粗忽者のバイドルを相手にこれまでよく尽くしてくれました。むしろあなたに謝罪をしなければならないのはあの子の方です」
「そんな王妃様、私には勿体ないお言葉です」
「いや、儂たちもあれを初めての子だからと少々甘やかし過ぎた。おかげでわがまま放題で異性にだらしない男に育ってしまった」
「国王様も、バイドル様のあらぬお噂をご存知でいらしたのですか?」
「うむ、婚約破棄の一件のついでに臣下からそのことも聞き及んでおる。娼館に足しげく通うだけでは飽き足らず、なんと名だたる貴族令嬢たちにまで手を出していると言うではないか。まったく本当にどうしようもない愚息だ」
派手に女遊びをしていたとはいえ、一応国王様たちに知られないように箝口令を敷いているとは聞いてはいたが、さすがにいつまでも隠し通せる話でもないか。
特に娼館通いはまだしも、貴族令嬢をとっかえひっかえしているのは致命的だ。
場合によっては被害にあった貴族の家から反旗を翻されることも考えられる。
「このまま考えも改めずに恥晒しを繰り返すようではバイドルの王位継承も見送る必要がある。既に臣下たちからは第二王子であるブランに王位を譲ることも一考するよう諫言されておる。ただ、あれは良くできた子だがまだ幼い」
「そこでわたくしたちはこれを機に、最初で最後のチャンスとしてバイドルに再教育を施すことを決定したのです。その結果如何であの子の今後の処遇を決定することにしました。場合によっては王室からの追放処分もあり得ることでしょう」
これには私も驚いた。
一応譲歩しているとはいえ、バイドル様の廃嫡も視野に入れているというのは、なかなかに重いご決断だ。
しかし、それだけ本気だということだろう。
「バイドル様の再教育の件に関しては僭越ながら私も賛成ですが、それでしたらどなたが教育係を担当されるのでしょう。元婚約者の立場から進言させていただくと、並大抵の侍従ではバイドル様のお相手は務まらないと断言いたします」
「その点に関しては問題ない。優れた人材がいるからな。実は本日そなたを呼んだのも、その者と一度対面させる目的もあったのだ。ではその方、入って参れ」
「失礼いたします」
国王様からそう呼びかけられると、謁見の間に一人の使用人が現れ、少し距離を置くようにして私の横に並んだ。
本来であればこのような場に位の低いメイドが足を踏み入れることはまかり通らない。
なのにそれを許されるということは賓客相応の扱いを受けていることに他ならない。
……いったい何者なの?
一方的に別れを告げられた翌々日のこと、私は王宮に呼び出しを受けた。
どうやら国王様たちの耳にも例の一件が届いたようで、事の真偽を含め直接私の口から聞きたいということらしい。
「はい、悲しいことに本当でございます」
もちろん実際には毛ほどにも悲しくはないが、このぐらいの誇張は許してほしい。
「やはりそうか……。昨日そなたが王妃教育の場に訪れなかったから王妃も心配しておったのだ。あのバカめ、人の気も知らずに勝手なことを」
国王様は口元に蓄えた白いひげを撫でさすり、伏し目がちに言葉をもらした。
「国王様と王妃様には王妃教育に始まりあれほど良くしていただいたのに、私が至らぬせいでこのような結果になってしまい、なんとお詫びを申し上げればよいのやら」
私は国王様と王妃様をおそれ多くも第二の両親のように慕っている。
だからバイドル様はともかくお二人にご迷惑とご心配をかけてしまうことに心の底から申しわけない気持ちでいっぱいだった。
「よいのですよ、イーリス。あなたはなにも悪くありません。粗忽者のバイドルを相手にこれまでよく尽くしてくれました。むしろあなたに謝罪をしなければならないのはあの子の方です」
「そんな王妃様、私には勿体ないお言葉です」
「いや、儂たちもあれを初めての子だからと少々甘やかし過ぎた。おかげでわがまま放題で異性にだらしない男に育ってしまった」
「国王様も、バイドル様のあらぬお噂をご存知でいらしたのですか?」
「うむ、婚約破棄の一件のついでに臣下からそのことも聞き及んでおる。娼館に足しげく通うだけでは飽き足らず、なんと名だたる貴族令嬢たちにまで手を出していると言うではないか。まったく本当にどうしようもない愚息だ」
派手に女遊びをしていたとはいえ、一応国王様たちに知られないように箝口令を敷いているとは聞いてはいたが、さすがにいつまでも隠し通せる話でもないか。
特に娼館通いはまだしも、貴族令嬢をとっかえひっかえしているのは致命的だ。
場合によっては被害にあった貴族の家から反旗を翻されることも考えられる。
「このまま考えも改めずに恥晒しを繰り返すようではバイドルの王位継承も見送る必要がある。既に臣下たちからは第二王子であるブランに王位を譲ることも一考するよう諫言されておる。ただ、あれは良くできた子だがまだ幼い」
「そこでわたくしたちはこれを機に、最初で最後のチャンスとしてバイドルに再教育を施すことを決定したのです。その結果如何であの子の今後の処遇を決定することにしました。場合によっては王室からの追放処分もあり得ることでしょう」
これには私も驚いた。
一応譲歩しているとはいえ、バイドル様の廃嫡も視野に入れているというのは、なかなかに重いご決断だ。
しかし、それだけ本気だということだろう。
「バイドル様の再教育の件に関しては僭越ながら私も賛成ですが、それでしたらどなたが教育係を担当されるのでしょう。元婚約者の立場から進言させていただくと、並大抵の侍従ではバイドル様のお相手は務まらないと断言いたします」
「その点に関しては問題ない。優れた人材がいるからな。実は本日そなたを呼んだのも、その者と一度対面させる目的もあったのだ。ではその方、入って参れ」
「失礼いたします」
国王様からそう呼びかけられると、謁見の間に一人の使用人が現れ、少し距離を置くようにして私の横に並んだ。
本来であればこのような場に位の低いメイドが足を踏み入れることはまかり通らない。
なのにそれを許されるということは賓客相応の扱いを受けていることに他ならない。
……いったい何者なの?
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