俺を殺す君に!

馬酔木ビシア

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 その後、俺と彗先輩は丁嵐先輩の予言通り何事もなくふっつーに残り15分の新歓を過ごし、どちらも捕まることなく平和に新歓の終わりを知らせる音楽を聴くことができた。なんか拍子抜けである。いやまぁ、さっきまで色々ありすぎだったんだろうけど。
 
 あ、でも一応他の鬼役の生徒に見つかって追いかけられたりはしたよ?ただ俺も先輩も割と足早いし……何より、さっきまで薫さん一派と鬼ごっこ(という名の死闘)してたから身体のギアが上がっちゃってて並みの生徒じゃなかなか追いつけないスピードになってたんだよね。で、その結果見事に逃げ切って終了。薫さんに歓迎(笑)されるとかいう、俺が思ってたのとは違う新歓になったけど……ま、まぁ、逃げ切れたからとりあえずヨシ!

 というわけで、俺は隣でクールなご尊顔のままクールな雰囲気を出している彗先輩と一緒に講堂への招集に従った。向かってる途中に周りの生徒にやたら見られたところで、あ、そういや俺と彗先輩の間に熱愛とかいう意味わからん誤解生まれてるんだったと死んだ目をしたが今更遅い気がして諦めた。先輩すいません、絶対近いうちに誤解解いてみせるんで……。

 着いたところでやっと、学年が違う俺と先輩は別々の場所に分かれた。じゃあな、とボソッと言った声までイケボとかどういうことなの?前世で俺がやってたら普通に陰キャの目覚めになってるところなんだけど。
 え、今?今は俺でもギリ許されるんじゃね?だって腐っても俺も破滅の登場人物なわけだし、正直この顔で現実生きてたらモテモテだと思うんだよね。この世界の主要キャラが整いすぎてるから俺レベルが凡人になってる気がするけど。

 なんて自分のポテンシャルについて考えてたら後ろからよく知った声がかけられた。
 
 
「あ、成瀬君!」

「よっす~かなめん」
 
「おー、深春。と夏木」

「おまけ扱いでウケる」
 

 俺の学園のオアシス、深春の後ろでたははと笑う夏木にその妙な呼び方やめたら態度考えてやるよと返しておく。そのあだ名マジできしめんみたいなんだよ。俺は麺類じゃない。

 そういえば、二人には一回も合わなかったな、と思い座席を引き出しながら聞いたら、深春は定刻まで捕まえずにじっとやり過ごし、夏木は夏木で適当な子を探して無難そうな子を捕まえたらしい。人気者も大変ってことかな、さすが未来の会計サマだ。

 とか思ってたら、急に深春が目を輝かして身を乗り出さんばかりにこっちを見る。
 

「それで僕らのことよりも、成瀬君はどうだったの!?」

「え、どうだったとは」

「またまたぁ~、氷室センパイと一緒に講堂来てた癖にさぁ」

 ニヤニヤしながらせっついてくる夏木に俺はため息を吐きそうになった。あーハイハイそれね。そうだこいつら腐ってるんだった。ここはでかい声ではっきり訂正しなければ。ついでに誤解してる皆の衆にも聞こえる声でね!

 「あのなぁ、前も言ったけど俺と彗先輩はそういうのじゃないから。俺から見た先輩は推し、先輩から見た俺は後輩。新歓で一緒に行動してたのは100パーセント先輩の善意だし、特に二人が想像してるあれじゃないからな?」

いたって健全だし、俺と先輩は。そもそも俺は先輩のキューピッドになりたいわけであって、当事者とか恐れ多いし色々無理。ヒロイン以外のなんかいい感じの人と先輩をくっつけてあわよくば見守りたいとか思ってる人間だから。

 「そうかなぁ……成瀬君はそう思ってるかもしれないけど、氷室先輩も同じように思ってるとは限らないかもしれないよ」

「はは、いや無い無い、そんな訳無いって」


 だって、彗先輩の好みはヒロインの真澄みたいな清純そうな子なんだから。俺は俗っぽいから彼みたいに純粋じゃないし、自分で言うのもアレだけど意外と打算で動いたりする奴だからね。真澄とは比較するまでもなくかけ離れたタイプだ。

 まぁ俺は、推しである先輩が幸せに暮らしてくれたらそれだけで満足だし。先輩の笑顔には1億の価値があるからね。1スマイル1億円、スマイル0円とは違うんだよ。

 納得いってなさそうな二人は置いておいて、話は終了とばかりに視線を外すとちょうど2年生のゾーンからこちらを見る彗先輩と目が合った。手を振ろうかな、と思ったけどすぐに先輩が目を背けたのでやっぱりなと笑う。大丈夫、俺には分かる。先輩は本命の相手には微笑むけど、興味がない人の方は見ない。俺は真澄じゃないから目が合って麗しい笑みを向けられることはないけど、目が合って視線を交わせるくらいには俺のことを後輩として気にかけてくれてるってことだ。それだけでめっちゃ嬉しい。だって推しの後輩だぞ???そんなん嬉しくないわけないよな。
 一人ニヤニヤしながら座席に座ってたらちょっと変な目で見られた。おっとあぶねぇ、俺のヲタク顔が広まってしまう。


 

 __パチンと、電気が消えた。


 

「っお、」

 

 突然のことに小さく声を出すと、すぐに光度の下がった照明がステージ上に点いた。続けて放送がかかった。

 
 『定刻になりましたので、ただいまから幽谷学園新入生歓迎会表彰式を行います。まだ座席に着席されていない方は速やかにご着席ください』

 
 周りがざわざわしながらも、みんなが席に着く。アナウンスから3分ほど経ち会場が静まったところで、スポットライトがパッと舞台の入り口を照らした。

 
「「「きゃああああああああああ!!!」」」

 
 瞬間、そこに立っていた人影が露わになって割れんばかりの歓声が響く。俺は最悪なことに耳を塞ぎ忘れてそのかめはめ波みたいな叫び声をモロに鼓膜に食らった。み、耳っ、……みみ、われる。どっから声出してんのみんな。


 ううっ、耳キーンってなってる……許せねぇ……。

 誰だよ元凶は、その面拝んでやるとカスみたいな八つ当たりでステージ上を睨んだら柔和な笑顔。生徒会長様である。一気に毒気を抜かれた。うんこの人ならしょうがないかな!!
 え?ちょろい?いやぁ、俺生徒会長さんとか保健医の柊先生みたいなゆるふわ癒し美形には強く出れないんだよね。あのあふれ出る母性の前では成すすべがないってやつ。しかもこの人原作に関係ない人だからなおさらね、うん。

 ステージ上で優しそうな笑顔を浮かべる会長さんは静かに、と人差し指を口元に持っていった。秒で静まった。すげぇ、みんな忠犬ハチ公だな。

 満足そうに会長さんが微笑む。

 
「ふふ、ありがとう。みんないい子だね」


 ばったんばったんとなぎ倒されたレベルで軽率に気絶の音がした。それを手慣れたように場外に運ぶ人がいるんだけどもう俺は突っ込まないからね。

 
 「新歓は楽しんでもらえたかな?生徒会が頑張って企画したから、みんなが楽しんでくれてたら嬉しいな」


 その言葉に歓声で答えるみんな。そこの君、また鼓膜死んだんじゃね?とか思っただろ!さすがに2回目はない。今度はちゃんと予測して耳塞いだ。

 
 俺はやればできる子なので誰か褒めて!お宅の息子さんは褒めて伸びるタイプですよ!!


 ……今更だけど俺ってたまに一人で何言ってんだろうね。

 
 

 
 

 

 
 

 

 

 

 
 

 
 

 
 
 



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

お久しぶりです……



 
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