俺を殺す君に!

馬酔木ビシア

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 誰かさんによって乱された情緒をしばらく玄関前で整えて、俺は玄関に入り。





「要兄っ!!!!!!!!!」



「ぐっふぅ!」 

 



 毎回恒例、棗に弾丸アタックされてダメージを受けた。なんか今日はいつもより勢い凄すぎてちょっと流石に兄ちゃん倒れそうだったわ。



「要兄要兄要兄……」


「待って棗それ新手の呪詛か何かかな??」


「本物の要兄…」


「え、俺がいない間に偽物の俺とか現れたの???」





 誰だ、誰なんだ偽物の俺。何があったんだ修学旅行の間。棗が要兄botと化してるんだけど。




「あら!お帰りなさい要ちゃん!!無事に帰ってきてくれて嬉しいわ!!」



「母さんただいま!ん、今帰りましたぁ!」






 奥からパタパタと駆けてきた母さんは俺を見て安心したように微笑んだ。うーん、控えめに言って女神かな??





「要っ!!!!おかえりぃいいいい!!!!」




「うわ父さん、ただいま」




「うわって何っ!?」





 今度は父さんまで号泣しながら玄関にやって来て、俺の反応に嘆いた。いや、ごめん、ちょっとびっくりしただけだよ。決して大人のガチ泣きに引いたとかではない。




「さあさあ、ご飯にしましょ!」





 要ちゃんのためにたくさん用意したのよ、と母さんがホワホワ笑うので、俺は速攻で手を洗って荷物を適当に床に置き、リビングに向かう。その間、棗はずっと俺の腰に抱きついて離れなかった。





「棗ー、どしたー」





 なかなか重量があるので一旦ソファに座って顔を覗き込むと、棗は俺の腹にぐりぐりと頭を埋めた。






「ずっと会えなくて寂しかった……」






 聞いた?俺の弟が優勝です。異論は認めない。







「はあああああ、ほんと可愛いなぁ棗は!!!」







 くしゃくしゃっと髪の毛を撫で回すと、やっと棗はくすぐったそうに笑った。可愛い可愛い可愛い。
 

 まぁ、腰に回した手は離してくれないんですけど!!!まぁそれも可愛いから良し!!




 夕飯になると流石に手を離したが、食べ終わったらまた俺のところに来てぎゅっとくっついて離れなかった。まさにコアラ。ま、可愛いからなんでもいっか!



とここで、俺は一番大事なことを思い出して席を立った。





「あ、そうだ俺お土産あるんだった!!!」






 俺は急いで玄関に置きっぱなしにしていた荷物から紙袋を取って、3人にそれぞれお土産を渡した。まずは、母さんから。





「あら、八ツ橋!!ありがとう要ちゃん、買ってきてくれたのね!とっても美味しそう」





 母さんは一番に顔を綻ばせて、俺の体を抱きしめた。俺はマザコンなのですかさず抱きしめ返した。母さん、俺のオアシス……喜んでくれてありがとう。




「父さんにはこれね」



「えっ、これ、要が?」



「うん、俺がやった」




 父さんに渡したのは、体験で作れるガラス細工で、お酒を飲む用のグラスだ。知ってる?俺の父さんって中々の酒豪なんだよ、こう見えて。模様が綺麗に出て、我ながら自信作だ。

 父さんは、要が、僕に…とか感激しながら泣いている。うーん、大袈裟でちょっと照れる。





 んで、これが本命。





「棗、これは棗にあげる」




「え……」





 袋を差し出すと、棗は不思議そうにした後、恐る恐るといった感じで受け取った。





「わっ、綺麗…」





 取りだした箸置きを見て、棗が目を輝かせる。リビングの照明に透かして、穴が開くほどそれを凝視していた。





「それ、箸置きなんだけど…綺麗だから棗にって思ってさ。嫌だった?」






 ちょっとやっぱり渋かったかな、と思いながら聞くと、棗はブンブンと首を振って俺の目を見た。




「そんなことない!!絶対ない!!おれ、おれ、一生大事にする!!割れても壊れても、小さくなっても、死んでも大事にする!!!使わずにずっと部屋に飾っとく!!」



「いや使ってくれ、そして割れたら流石に危ないから捨ててくれ」



「じゃあ割らない!!」






 使って捨てるという選択肢は棗にはないんだろうか。うーん、我が弟ながら立派なブラコンになってしまったなぁ。でもまぁ、えへへ、と棗が嬉しそうに箸置きを握りしめているからいっか!!!!俺の弟が世界一だからな!!





 あ、そーだ、颯斗のとこにも渡して来ないと。






 時計を見ると、まだ7時半だった。うん、早い方が良いよな。今なら颯斗もまだ起きてるだろうし。




 棗の機嫌が良いうちに、と俺は紙袋を持って颯斗の家にピンポンしに行った。最近はあんまりピンポンする機会も減っちゃったなぁ、と呑気に考えていると、すぐに颯斗が出てきた。俺がピンポンすると、いつも絶対颯斗が出る。これは多分、昔俺が毎日のように凸しに行ったからだな、ごめん。




「要、帰ってきたんだね」



「お、久しぶり颯斗。うん、さっき帰ったんだ」





 颯斗はまだ制服のままで、わずかに着崩した姿で爽やかに出てきた。今日も世界一かっこいい、俺の最推し。あらゆる病気に聞く素晴らしい顔面である。元気出た。元気出すぎて今夜眠れないまであるかもしれない。


 そんな尊い颯斗に俺はニッと笑いながら、




「これ、お土産」




 と言って袋を手渡した。





「和菓子の詰め合わせと、シャーペン入ってる。お菓子はみんなで食べてな」



「うん、ありがとう。母さんにも言っておくよ」



「シャーペンは、完全に俺の独断と偏見で選んだんだけど……いらなかったら捨ててな…」






 俺センスないから、颯斗が持つにはちょっとまずいデザインだったらとか考えてめっちゃ時間かけて選んだんだよな……正直結構心配だ。






「ふふ、ありがとう。どんなものでも要が選んでくれたものは嬉しいから、捨てたりなんてしないよ。僕はものに執着はないから」







 ふわり、と王子スマイルで答える颯斗は多分神様か何かだと思う。どうしよう、推しが、推しが尊くて優しくて死にそう。なんで俺の周りってこんなにイケメンで紳士なセリフ吐ける人多いの?惚れてまうやろ……。





 神様、今日も推しが尊いですありがとう。颯斗は永遠に俺の最推しだ…。





 心の中で合掌しながら、修学旅行での土産話に花を咲かせる。颯斗はにこにこしながら俺の話をずっと聞いてくれて、けれど途中で俺の首元を見ると眉を顰めた。少し低い声で尋ねられる。








「……そのペンダント、どうしたの」








 あっ、ペンダント…そうだ、ずっと着けたままだった。






「あ、これ、友達がさっきくれてさ……綺麗だよな」






 胸元からペンダントを引き上げてよく見えるようにすると、颯斗がすん、と真顔になってペンダントを持つ俺の手首を掴んだ。そしてペンダントトップの四角いタグを摘んで裏返すと、小さく何かを呟く。













「『He is mine俺の』……誰が………ああ、あいつか…」








「なんて?」






 なんか英語みたいなのが少し聞こえたような気がしたけど、俺には呟きが小さすぎて聞き取れなかった。



 颯斗は俺の疑問に、パッと手を離して、にっこりしながら言った。





「ううん、これ京都オパールなんだなって。綺麗だね」






 すっげぇ、颯斗、見ただけでこの石が何か分かるんだ!うわー、やっぱ馬鹿な俺とは違うな。





「そうそう、錫と京都オパールのペンダントなんだって。キラキラしてて綺麗だよな」





「……うん、似合ってるね」






 少し間があったけど、颯斗も微笑んで頷いてくれた。推しに似合ってるって言われる事ほど嬉しいものはないよね!!



 っと、そろそろ時間やばっ。思ったより話し込んじゃった。





「ごめんな颯斗、長い間話して!!そろそろ俺帰るわ!!ありがとな!!」




「うん、こちらこそありがとう。またね、要」








 慌てて颯斗に別れを告げて、俺は家に戻る。





 さてっ、最推しにも会えたし、今日は早く寝るぞー!
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